『ず、随分と……唐突ね……』
『私も思った。いやそのね、私高校生だし一人暮らしもできるよーとは言ったんだけど……流石にお婆ちゃんの介護ってなると事情が事情』
『……それは』
『うん、あんまり余裕とかなくなっちゃうからさ……此処を離れる事になった』
『まあ、ええ。引き留めても仕方ないわね……でもその、どうするの?デバイスとか、色々』
『んー、あいつら私達を狙ってるからこの街にしか来ないだけでもしかしたら引越し先にも普通に現れる可能性もあるし、スマホ買ったとはいえ弍乃との連絡手段にもなるし持ってはおきたいんだけど……いいかな、テルス?』
『構わない、君とディーデバイスオルドの適合率は異常なまでに高いからな。また守るために新たな
『ありがと。まあそういう訳で……ごめん弍乃、本当に』
『やめなさい……笑顔で見送れなくなっちゃうじゃない』
『ま、それもそうか。んじゃいつも通り他愛のない話でもしようよ』
……表向きは取り繕ってるけど2人とも顔が少し曇ってる。そりゃあ今までずっと仲良くやってたのに突然離れ離れになりますってなればこうもなるか。
「
「タイミングが悪すぎた……のかなぁ?」
あの写真の通りならこのちょっと後辺りで……
『……え?二美、帰ってないんですか?』
『そうなの、どこか泊まりに行くとかも言ってなかったし……何処に……』
『っ……ひとまず警察に連絡してください、私も探しますっ!』
『え、あ、弍乃ちゃん!?』
『テルス!ディーデバイスの反応探す!早く!』
『分かっている……ダメだ、反応なし』
『反応なしってどういうことよ!?この街にないって事!?』
『そうなる、考えられるのは……』
『考えてる場合じゃない!早くっ、手遅れになる前に!』
やっぱりだ。多分私の時みたいに不意を突かれてそのまま……
「……反応が消えた、ということは」
「多分、そういう事、だと」
次の記憶へ向かう。此処は……最初に二美さんが変身した路地裏?随分と土砂降りで……
『二美っ!』
『……ん、ああ。どうしたの弍乃?』
『どうしたもこうしたもない!3日も何処へ行ってたのよ!?私や皆がどれだけ心配してたのか分かる!?』
『ごめんごめん、それは謝る』
『いつも通りのノリで許される訳ないでしょう!?ひとまず』
『……弍乃』
『テルス、今余計な事は……』
『構えろ』
『は?何を……っ!?』
『……流石に見抜くかぁ、やっぱテルスは優秀だね』
……二美さんがディーデバイスをぶっきらぼうに構えながら放った光弾をかろうじて避けた弍乃さんが凄い動揺した顔になってる。雨なのもあってぐしゃぐしゃだ。
『二美、なん、で?』
『なんでって……まあ、仕事だから?』
『彼女の適合率が98%まで上昇している。つまりは……』
『違う、違う!そんなキャラじゃないでしょう貴方!?もっと呑気でだらしない癖にアニメやゲームの話題には勢いよく食いついてくるのが貴方でしょう、ねえ!?』
『それはそれ、これはこれ……テルスを渡して、弍乃。そうすれば何もしないから』
『彼女を正気に戻すには一度デバイスを破壊するしかない……だから構えろと言った』
『嫌よ!私は……私は、友達を傷付けたくなんか……!』
『でもテルスを渡す気もないんだよね』
『私達が今まで何のために戦ってきたか知ってるでしょう!?全部無駄になんてできる訳がない!』
『だったら……仕方ないよ』
『何が……!』
『冷静になれ弍乃!彼女を助けるにはそれしかないんだ!』
『……っ!』
『
『
分かってはいた、分かってはいたけど目の前で繰り広げられる凄惨な光景に思わず目を背けてしまう。あまりにも、見ていられない。
『アハッ、ハハハ!こーんなに強かったんだねぇ弍乃!でもさ、私も強くなったんだよ!こんな感じでさぁ!』
『なんでこんな事をしなきゃいけないの!?私は強くなりたくて強くなった訳じゃないっ!テルスを、貴方を守るために、私は!」
『だからテルスを渡してくれればもうそれで終わりって言ったよ!』
『それで貴方は戻ってくるの!?』
『さあね、お役御免か次の仕事があるかのどっちか!』
『だったらテルスは渡せないっ!でも、でも……!』
『隙ありだよ!』
『ガッ……』
二美さんが言ってた通り動揺した状態でも弍乃さんは
『ねえ、私もこれ以上弍乃を傷つけたくないの、分かってくれる?』
『……なら、なんで、戦うの……!』
『それが仕事だから、かな。そういうものだと割り切って』
『できる訳ないでしょう!私は、私はっ……!』
『今の彼女に言葉は通用しない……やるしかないんだ!』
『……そう、なの、ね。そうするしか、ない、のね』
『何をゴチャゴチャ言ってるのかなぁ!私との戦いに集中してほしいんだけど!』
『……ええ、そうするわ。私の……そして、貴方の、ためにっ!』
『っ、動きが変わっ……!?』
それでも声を荒げて無理矢理身体を動かして……凄く、痛々しい。本調子では決して無い筈なのにウェスタを圧倒しているのは才能故か、それとも極まった覚悟故か。
『
『カ……ハッ……』
『弍乃!』
『本当にこれでいいのねっ!?』
『賭けにはなるが彼女を救える唯一の方法だ!』
『どっちにしろこれしかないって事じゃない!頼むわよ……!』
『
シルウィアさんの時やけに手慣れた様子だったのは此処で一度経験したから……いやでもこの時の記憶は自分で消したんだったよなあの人、思ったより身体がやり方を覚えているタイプなのかもしれない。二美さんの事はよく知ってるから
『……ん、あれ、弍、乃……?』
『二美っ!』
『あは、は……ごめ……』
『喋らなくていいから!ねえ、ねえ!?』
『落ち着け……気絶しただけだ』
『……なら、いいわ』
『何処へいく気だ?』
『……二美の家よ。届けて、帰る』
『そう、か』
……此処まではいい。オルドは壊れたけど二美さんを助けて、帰って。何をどうやったら此処から自分の記憶まで消す事に……
『……テルス』
『なんだ、弍乃』
『いつになったら、あいつらは諦めてくれるのかしらね』
『奴らを全て倒すか、君が諦めて私を手渡すか、だろうな』
『全て倒すって、どれだけかかる?』
『分からない』
『……そう』
二美さんを送り届けてすぐだろう、自分のベッドで膝を抱えてる。
『……』
『弍乃?』
『もう、やだ』
『……』
『ねえテルス、教えてよ。いつまで私は戦い続ければいいの?いったいいつになったら貴方を元の持ち主の元へ返せるの?』
『分からない、としか』
『ふざけないで!?貴方を拾ってからずっとよ!戦って、戦って、また戦って!それで私は何か得たの!?』
『友は、できただろう』
『ええできたわ!かけがえのない友達が!でもそれすらも利用されて、壊されて!得てきた物は全部離れていって!結局失うばかりじゃない!?』
「弍乃さん……」
「……最初から強い人だと、思ってました。けど、違うのですね」
考えてみれば当然の帰結だ。二美さんのお陰で真人間になったとはいえ、いや、だからこそ弍乃さんはただの女の子なんだ。戦い続けて段々精神が擦り減っていって止めに親友と戦わされて、狂わない方がおかしい。
『これ以上何のために戦えばいいの!?また失うため!?おかしいじゃないそんなの!終わりも何も見えないのにどうして戦おうとするのよ!』
『落ち着け弍乃、君の言うこともわか』
『本当はわかっていないくせに!貴方は自分の安全が確保されればそれでいいんでしょう!?こっちの事も知らないで!』
『違う!確かに最初はそうだったかもしれないが……!』
『だったら違わないも同然よ!今日限りで貴方はもう使わない!なんで、なんでっ……!』
『……弍乃』
『今更何!?言いたいことがあったのなら『二美から着信だ』……二美、から?』
此処まで取り乱した弍乃さんを見たことがない。自分の記憶を封じたのはこの激情を抑え込むため?……いや、違う。そうだったら弍乃さんはきっとテルスを捨ててしまっているだろう。何か別の……
『やっはろー、大丈夫……な訳ないか』
『そっちこそ電話なんかしてる暇ないでしょう!?なんでこんな時に……!』
『いやぁそのさ、私なんか体力有り余ってる感じがするんだ』
『感じがするだけよ休みなさいこっち今それどころじゃ『だから一旦気持ち切り替えようよ』待って貴方何するつもり』
『デートしない?明日確か休みでしょ』
『……嫌って行っても連れて行くでしょう貴方、なら拒否するだけ面倒よ』
『うーんいつものノリ、じゃあ明日ね。絶対だよ、絶対』
『分かってる、それと遊びに行くだけなのにデートって……切れた』
『……落ち着いたか?』
『こんなのショック療法よ……ともかく、私は二度と貴方を使う気はない。それだけは、絶対』
「……」
「三葉さん?ちょっと顔が怖いですが……」
「いや、なんかその、羨ましいなぁって」
「何がですか!?」
やっぱり相棒ってずるい……何がずるいかと言われるとちょっと言語化できないけどああも荒れてる弍乃さんを簡単に落ち着かせてしまえる信頼関係は……素直に羨ましい。
「……此処から、最後の写真に繋がるのかな」
「おそらくは」
使わないって言ったはずなのに弍乃さんは律儀にテルスを持って二美さんと遊びに行った。まあスマホ代わりなんだからないと不便だし面倒って思ったんだろうな。
「……やっぱ凄いなぁ、二美さん」
傷心中なんてお構いなしに二美さんは弍乃さんを振り回して映画見に行ったり遊園地行ったりコーヒー飲んだり……最初は無気力だったのにすっかりいつもの調子に戻っちゃって、扱いが上手いというかなんというか……でも、少し元気がないのも確かだ。
『あー、楽しかった!久々だね此処まで1日遊ぶのも』
『……そうね』
『ん、どしたの弍乃?』
……最後の写真のベンチだ。ってことは……
『ずっと失うばかりだと思ってた。戦って、戦って、戦い続けて』
『世の中に絶望したヒーローみたいなこと言うね』
『ヒーローなんて柄じゃないわ……けど、そうね。失ったと思ってただけなのかもしれない。目の前から消えただけでなくなったと思い込んで探そうともしなかったみたいね、私は』
『急に悟り開いたみたいな言い方しないでよ怖いよ?』
『だまらっしゃい、余計な茶々とかいらないわ。んん、まあその……ちゃんと戦って守ったものは残ってるみたい。でも、戦わなきゃそれすらまた失ってしまう』
『……』
『だから、また戦おうと思う。これ以上失いたくないの、守ってきた物も、貴方も』
『私も……って言いたいけど、デバイス、壊れちゃったもんな』
『分かってる。それに、貴方が私の弱点って事はあいつらも理解してる。デバイスがない今また同じ事になってほしくない。もう貴方を危険な目に遭わせたくない……!』
『じゃあ、どうするつもり?』
『……私が』
『貴方の中の、私との記憶を、消すわ……』
「……」
「二美さんの適合率はオルド以外は並以下でした。確かにそうするのが1番安全ではあったのでしょうが、これでは……」
守るために手放す、なんて言葉があったけどそれじゃあ自分は誰が守ってくれるのだろうか。こんな孤独を1人で抱え続けるなんて耐えられないだろうに……
「……あ」
……そっか、そういう事、なんだ。
『これで、よし』
『いいのか、弍乃。二美との記憶を自分も消すというのは理解できる。だが3年にも渡る記憶から特定個人だけを消去するのは身体への負担が……』
『それでもよ、これ以上二美を傷つけたくない。それに……居たはずの誰かがいないっていうのを覚えているのは、多分私が耐えられないわ』
『そうか、ならば私からはもう何も、いや、1つだけ』
『何よ、勿体ぶって』
『すまなかった』
『今更すぎるのよ……それじゃあ、私が起きたら上手い事誤魔化してちょうだいね』
『……ああ』
『
……二美さんとの思い出を全て金庫に閉じ込めて、
「……これで、全部でしょうか」
「これ以降は記憶の一部を失った状態ですし……多分」
この
(全く、自分でも思ってたんだけど人の記憶を見る事の何が楽しいのかしらね。面白いものでもないでしょうに)
「この声……」
「弍乃さん!」
やっぱりだ、ようやく聞こえた弍乃さんの声と同時に周囲がまた白一色になる。
「……ったく、何やってんだか私は。人生で3回も記憶喪失になるってどういうことよ」
「弍乃さ……いや、お母……でも……」
「はいはいシルウィアそういうのはどうでも……いや、今決めておくべきなのかしらね」
「決めるって……」
目の前に現れた弍乃さんは私のよく知る黒髪のロングコート。シルウィアさんがどう呼べばあたふたしてるのをさておいて……
「全部見た貴方達に改めて聞こうと思うの」
「私は誰?」
……シンプルで、難解な問いを投げてきた。
「まさか本当に全部倒しちゃうとはねぇ……いいわ、本気出してあげる」
「テトラ、もうすぐ
「分かってる、ちょっと手ぇ出せ」
「手?魔力は別に……」
「……わりぃな、
「なっ、テトラッ!?」
「あいつらに伝えろ!こっちで可能な限り抑えとくってな!」
「まっ」
「……余裕って事かしら?わざわざ1人で相手しようなんて」
「あ?何言ってんだお前、逆だ逆」
「ならなんで残ったのかしら」
「あいつはこの貧相な身体にも手を出そうとするろくでなしの女好きだからな、死ぬと分かってても私を助けようとする筈だ。んで持って私より強い、だから此処で共倒れされるよりはあいつらの助けになってもらった方が良い」
「へえ、随分と覚悟が決まってることで」
「拾った命の有効活用とでも言ってもらおうか……来な、私は案外しぶといぞ」
「ならお望みどおりたっぷりと可愛がってあげましょう……これでね」
「……はっ、そんなこったろうと思った」
貴方の変身ヒロインは何処から?
-
セーラームーン
-
リリなの
-
プリキュア
-
まどマギ
-
シンフォギア
-
その他