魔法少女はニチアサ展開に付き合いたくないって話。   作:暁真

67 / 72
勘違いは行動で解けって話。

 

「……意外と寝心地良いのねそこら辺の草って」

『あまり推奨はしたくないがな』

 

 丘超え森超え野原超え……ずに一度休憩。幾ら最適化(フォーマット)しているとはいえ丸一日走り続ければ集中力が乱れるので体力を温存して行こうと少し横になったのだが……どうも惰性が勝ってしまったらしい、見上げていた星空は目覚めると見事な青空に変わっていた。初めて寝そべる草のベッドは思ったより快適だったらしい、たまにはこうしてアウトドアも悪く……いや今そういう感想言ってる場合じゃないんだ。早く霊峰に行かないと。

 

「エンネアちゃん、起き……」

 

 さっさと支度を整えない事には始まらない。起こさなかったって事はまだ寝てるだろうエンネアちゃんとついでにファウヌスを起こして早く……と思ったのだが。

 

「……どういう状況?」

「ああ、おはよう……寝ぼけてたのか何だか知らないけどがっちりホールドされてこの通り……」

「zzz……」

 

 起こそうと思って見てみればそこにはファウヌスをぬいぐるみの如く抱きしめて爆睡するエンネアちゃんの姿が。ちょっと可愛……じゃない起こさないと。

 

「エンネアちゃん……エンネアちゃん?」

「お母さ……ぁ」

「……」

 

 ……起きる前の寝言で何故ファウヌスを抱きしめて寝ていたのか大体理解してしまった。こればっかりは私が何か言うものでもない、というか言えない、あの子は……パテルは私達が躊躇していたせいで死んだような物なのだ。身体が冷たくなっていく感覚をエンネアちゃんは未だに覚えてしまっているのだろう、多感なあの時期にああなったのだから尚更だ。

 

「……お見苦しい所をお見せしました」

「大丈夫よ、身体に問題は?」

「ありません、行きましょう」

「あの僕いつまでギュッてされてればいいの?」

「……後5分くらいいいか?」

「う、うぅん、まあそれくらいなら……」

 

 いやお前はお前でそこは妥協するなよファウヌス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……これ何処まで登ればいいのかしら?」

「1番重要な部分は山頂にあるけど皆が拠点にしてる所までなら大体中腹くらい」

「つまりロムルスが居るなら山頂ね」

「まあ半日あれば着くでしょう」

 

 さっさと身支度整え急ぎ霊峰オリンピアへ。近づけば近づく程地形が荒れているのはまあそういうことだろう、今までは比較的安全地帯だったが此処からはいつ戦闘になってもおかしくない。というか所々焦土になってるわクレーターできてるわ……間違いなくバッカスの仕業だろこれ。

 

「ファウヌス」

「分かってる、1番安全なのは「1番早いルートを教えなさい、危険でもいいから」なんで!?」

「我々は最適化(フォーマット)されている、多少の荒れた道など大した障害ではない」

「ついでに言えば体力も無尽蔵って訳じゃないけど丸一日走っても少し疲れるくらいで済む、だったら早めに着く方がいいわ」

『無茶を言う、と昔なら言っていただろうが……できてしまうのだからやらない方が面倒、と返すのだろうな、君は』

「当然よ。全部終わらせて引退するって決めた以上無駄な面倒は避けたいの」

「君たちの身を案じて言ったんだけどなぁ……そこまで言うんだったら教えるよ、けど泣き言言わないでね?」

「いっつも泣き言言ってるやつに言われたくないわ」

「同感です、仲間たちへの説明でも考えておけ」

「単純に心配しただけなのに酷いなぁ!」

 

 荒れた地形の中には比較的新しい焼け焦げた跡が残っていた。どうやらバッカスが消えてもタルタロスの方針はさして変わりないらしい、いつ次の襲撃が来るか分からない以上ちんたら安全な道を登るよか危険でも早い道を通ってさっさと合流した方がいい。なんならあっちはゲートを開けるんだから拠点の強襲とか普通にあり得るしな。

 

「と言ってもこのほぼ崖みたいなところが一番早「分かった、行きましょうレムスさん」ちょっ!?」

「遅れないことねファウヌス」

「道案内より先に行くとか遭難しても知らないぞぉ!」

 

 ファウヌスの言う一番早いルート、つまりはこの崖をさっさと登頂すべく先に登り始めたエンネアちゃんにやや遅れて登山開始。当然命綱や楔なんて便利な代物は……いや、錬成(アルケマイズ)で作れはするし何なら浮遊(フロート)加速(アクセル)かけてとっとと登頂するのが一番早いのだがそれだと二人が付いて来れないし何より今呪文(アーツ)を使ってしまえばあらぬ誤解を生むし使えない。結構難儀なものである。

 

「クライミングって結構スリリングなのね」

「競技の話ならこんな握ったらすぐ崩れるような脆い突起はありませんから。それに休憩を取る余裕だってある」

「確かにね、まあ私たちは休憩が必要なほど貧弱じゃないわけだけど」

「なんで話しながら涼しい顔で登れるの……?」

最適化(フォーマット)した人間は魔力機関から送り出され血液中に散逸した魔力を個別に伝達するための第二の血管が生成される。これにより外部からのアプローチに頼らずともある程度自分の意思で呪文(アーツ)に似た作用を引き起こせるようになるのだ』

「つまり私たちは詠唱無しで剛健(ストレングス)を使っているようなものってこと。ついでに言えばデバイスを介さないから呪文(アーツ)反応もないわ」

「まあ最適化(フォーマット)するにあたってある程度身体能力の増強もされているがおおむねレムスさんとテルスの説明通りだ、単純なドーピングというよりは無駄を無くす効率化と覚えておけばいい」

「成程……僕がこの情報を知るメリットは?」

「ない」

「ないわね、本当に説明だけ」

「だよね」

 

 そういう意味では直感で自動詠唱を使いこなせてしまう二美と最適化(フォーマット)の相性は抜群に良かったんだろうな、なんて微妙にどうでもいいことを考えながら微妙に脆い突起を手繰り崖を手早く登っていく。視界にゴールが見えているしこの分なら1時間はかからないだろう、登頂したら少し息を整いて拠点見つけてファウヌスに誤解解かせてロムルスの首根っこ掴みに行く、うん完璧。

 

「しかしまあわかりきってはいましたが景色が変わり映えしませんね、崖と石と多少の草木だけです」

「楽しい登山の方がご希望だったかしら?」

「まさか、急いでるのにそんな悠長なことは言ってられません」

「素直でよろしい。テルス、一応索敵もやってるわね?」

『当然だ、今の所目立った呪文(アーツ)反応は検出されていない……今のところはだが』

「微妙に不安にさせてくるのをやめなさいフラグじゃないんだから」

『やはり君はアニメ……というか二美に頭を毒されすぎてないか?』

「多少は認めるけど毒されてるまでは言い過ぎ。私から二美の要素を抜いたら虚無しか残らないわよ?」

『開き直るな』

「いいじゃないかテルス、私もレムスさんがこんな愉快な人になってるとは思いもしなかったが」

「逆に貴方は何をどうしたらそう育つのよエンネアちゃん……」

「……人肌恋しかった、ではダメですか?」

「……それを言われたら私としては何も言えないわ」

「言えないの!?」

「黙ってなさいこっちの問題よ、というかこれに関しては私にも責任が『弐乃』何かしらテルス物凄い嫌な予感がするのだけど」

 

 あまりにも光景が変わり映えしないのでエンネアちゃんと雑談してたら物凄い変なタイミングで名前を呼んできたテルス。非常に、非常に嫌な予感がする。具体的に言えば私たちが今まで割いてきた労力が全部無駄になるくらいの。

 

『的中だ、ゲートを検知、数2、同じ場所に展開されている』

「だからフラグを立てるなって言ったのよ!」

『想定はしていた筈だ、今回は安全策が裏目に出たな』

「デバイスの反応はあるか?」

『現時点ではない。だがゲートが展開され続けている以上一度閉じるまでは着身(マギアライズ)を避けるべきだろう』

着身(マギアライズ)するなって大丈夫なの二人とも!?」

 

 案の定報告は穏便に済まそうとコソコソ行動してきた意味を台無しにするゲート展開の報。相変わらずいっちばん嫌なタイミングでちょっかいかけてきやがって、治安維持組織がみみっちいことばっかして……いや、これに関してはあっち側からすれば世界の存亡をかけた重大な作戦になってる訳だけど。

 

「さっきの説明忘れたのかしらファウヌス?」

「ただの機獣(ヘカトンケイル)程度ならば生身でもどうということはない。時空加速(クロノアクセル)が可能な試作型を態々こちらに回す余裕もないだろうしな」

「ならいいんだけど……」

「先に行くわエンネアちゃん。後からファウヌスと一緒に来て」

「ご武運を」

『どこまでならマルスとネプトゥーンが来ないと見る?』

「ロムルスが此処に居る以上呪文(アーツ)反応だけでは来ないでしょうね。テルスの言う通り着身(マギアライズ)をしなければ大丈夫でしょう」

時間凍結(クロノフリーズ)のチャージを終わらせている辺り相変わらず抜け目がないな。では、行くか』

「ええ、それじゃあっ!」

 

 座標は既に把握済みのため思いっきり登っていた崖からダイブ、ある程度勢いを付けた方が奇襲はしやすい。

 

「着地予測よろしく!」

『当然だ』

 

 そのまま転移(ワープ)を自動詠唱、ゲートの少し上くらいの位置まで飛ぶ。着地までの間に地形と戦力の把握を……

 

「……本当にファウヌスみたいなのがいっぱい居るのね」

 

 落下する最中見えたのは物量で圧せと言わんばかりに大量投下されている機獣(ヘカトンケイル)の軍勢と進軍方向の先にちらりと見えたマスコットっぽいやつらの群れ、分かってはいたが本当にファンタジーな異世界に来てしまったんだな私。此処に二美が居たら大はしゃぎしてるところだ、今回は諸事情で同行させてないけど。

 

『5秒前』

「ええ、せーので行くわ。せー……」

 

 とはいえ感傷に浸る暇なんてない。今やるべきはあの機獣(ヘカトンケイル)どもをどうにかして現地住民とコンタクトを取る事。そのためには……

 

「のっ!」

 

 最短で全滅させるに限る。着地ポイントの近くに居た手ごろな奴を勢いよく殴ってインパクト、んでもって反動をクッション代わりにふわりと着地。

 

『スキャン完了、残り38機』

「こっちに集中させてるだけあって無駄に数が多いわね……エンネアちゃんが合流する前に半分は減らすわよ」

『分かっている、言っておくが時間凍結(クロノフリーズ)は負荷の関係上2時間のクールタイムを必要とする』

「承知の上よ、それじゃあ……」

 

 爆発で奴らの注意をこっちに引き付ける片手間で大鎌を錬成。着身(マギアライズ)していないとはいえ最適化(フォーマット)された身体だ、これくらいはなんなく扱える。

 

「行くわ」

 

 いつものように鎌を構え。

 

時間凍結(クロノフリーズ)(フルカウント)

 

解放(リリース)

 

 挨拶代わりに時間凍結(クロノフリーズ)を起動し、さっさと終わらせるべく駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

貴方の変身ヒロインは何処から?

  • セーラームーン
  • リリなの
  • プリキュア
  • まどマギ
  • シンフォギア
  • その他
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。