魔法少女はニチアサ展開に付き合いたくないって話。   作:暁真

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感極まると逆に思考が冴えるって話。

 

「やったことはあるけど生身でやると違和感が凄いわね……!」

 

 時間凍結(クロノフリーズ)の制限時間は60秒。着身(マギアライズ)していれば60秒もあると言えるが生身ではどうしても機動力が制限される、とはいえやってることはルール違反も甚だしいので60秒しかないというのは贅沢だろう。ともかくまずはこの時間になるだけ数を減らす。

 

呪文(アーツ)も制限されてるのが面倒ねっ!」

『ロムルスを見つけるまでの辛抱だ、我慢しろ』

「分かってる!」

 

 同時行使を使えれば話は早かったのだがクロノデバイスが相変わらずぶっ壊れる少し手前状態なのでオーバーヒートを防ぐため時間凍結(クロノフリーズ)中は不可能、肉体労働とかごめん被るのにこうして一々鎌を振りかぶって両断する芸のない作業の繰り返し。6秒に1体ペースは正直遅い、爆発に巻き込んだ程度じゃ機獣(ヘカトンケイル)は大して傷も付かないし半分まで減らすとか言っておきながら無理そうだ。

 

『残り30秒』

「10秒になったら再通知!」

 

 とか考えてるうちにもう制限時間が半分経過。現状仕留められてるのは5体だし……あーいや待てよ?

 

「テルス、単発なら呪文(アーツ)は行けるのね」

『そうだが……全く無茶をする』

「文句なら(弍乃)じゃなく(レムス)に言って、急いでるのよ!」

 

 ちまちまと一体一体両断するのをやめ全身を使って大鎌を勢いよく回転。追尾(ホーミング)を使えない分命中率は落ちるがそこは数打ちゃ当たる理論で誤魔化す、別にマルスやティフォンを相手にしてる訳じゃないんだから多少雑でいいんだ雑で。

 

『残り10秒』

「んじゃ……爆ぜなさいっ!」

 

 テルスのカウントと同時に勢いを付けた大鎌を投擲、同時に分裂(スプリット)で複製する。当然時間停止中のため大量の鎌が同じ向きで静止するシュールな絵面が発生するがまあ私以外知覚できないしこれはいいや。というか戦いにダサいもなにもないだろ。

 

『時間だ、離脱しろ』

「分かってる!」

 

 鎌を投げ終えて残り時間は4秒、さっき両断した奴らの爆発に巻き込まれないように近くにいた奴の装甲を踏み台にして跳躍。流石に無傷で済ませられる高さまでは飛べないがそこは浮遊(フロート)でどうにかしてやればいい、少なくとも爆風に吹っ飛ばされるとか情けないことにはならないはずだ。

 

時間凍結(クロノフリーズ)終了!』

「連鎖爆発ならワンチャン2体くらいは潰れてくれるかしら?」

『望み薄だ、エンネアと協力して残りを片付けろ』

「でしょうね」

 

 時が動き出すと同時に動き出した大鎌達は勢いよく動力部に突き刺さり連鎖的に爆発。やっぱりそこそこ外れたがそれは回収してまた使えばいい、問題はどれくらい減ったかだけど……

 

「……思ったよりは減ったって事にしときましょう」

『そうしておいた方が面倒じゃない、それと来るぞ』

「ええ」

 

 両断したのが5体に投擲したのが刺さって爆発したのが8体、差し引きで残り25体。あんまり仕留められなかったな、まあ泣き言を言っても敵は減ってくれないんだ、さっさと残りを片付けよう。

 

「レムスさん!」

「ジャストタイミングね、使いなさい!」

「あれこれ僕に直撃コース!?」

「寝ぼけた事を言うな、直撃させるのは目下の獣だ!」

 

 外れて地面に刺さった鎌を再利用すべく引き抜いたタイミングで少々遅れてエンネアちゃんとファウヌスが転移。あちらは降下するまで錬成(アルケマイズ)をする余裕などないためこちらで作ったハンマーを転送(トランスポート)で転送。

 

「巻き込まれないでくださいよレムスさんっ!」

「誰に言ってるのかしら!」

 

 彼女が勢いよくハンマーを着地点の機獣(ヘカトンケイル)に振り下ろしたタイミングで此方も近くに居た奴を両断して跳躍。

 

「お前も吹き飛ばされるなよ!」

「流石にそこまで軽くない!」

「ならしっかり掴まっていろ!」

 

 此方が避難したのを確認したエンネアちゃんは巻き込まれないように爆発寸前の個体を残っている奴らの所へホームラン、またもや盛大な爆発が起こりただでさえ荒れ果てている地形が余計焦土と化していく。申し訳程度にしかならないが後で修復(リカバー)しておこう……敵じゃないアピールにしてはあまりにも露骨過ぎる気はするが。

 

『残り23、オリンピアの住人達が到着するまで推定約5分』

「これ鉢合わせた時の状態によっては更に勘違いされないかなぁ!?」

「そう思ってるのなら方便を考えておけと言ってるだろう!」

「にしたって随分と数が多い……!」

 

 着身(マギアライズ)してさっさと片付けたい衝動に駆られるがやったが最後マルスかネプトゥーンが飛んでくる。ネプトゥーンが来る分には対処できるからまだいいがマルスがすっ飛んできたら目も当てられない、最悪ここら一帯がクレーターと化すしロムルスが無事で居られるかどうかも怪しい。大変遺憾だがゲートが閉じるまでは生身でどうにかするしかあるまい。

 

時空加速(クロノアクセル)を使ってこないだけマシと思いましょう!」

「全くだわ……テルス、連続で練成(アルケマイズ)しても保つわね!?」

『単発の呪文(アーツ)であれば何ら問題はない』

「だったらプラン変更よ!」

 

 少しでも速く殲滅すべく戦法を変更する。機獣(ヘカトンケイル)を両断するまでは同じだが振り抜いた勢いのまま大鎌を投擲、突き刺さった物は爆発するまで特に回収することもなく即座に再錬成して同じことの繰り返し。少々魔力は使うが微々たる量だ、できると分かってるのなら最初からこうりゃよかった。

 

「同時行使はなるべく避けてくださいねレムスさん!使えるのは我々だけですから!」

「それ先に言ってよエンネアちゃん!?」

「何で君たちはこう報連相ができないのかなぁ!?」

 

 あっぶね、時間凍結(クロノフリーズ)中にやってたからバレてないだけで一歩間違えば余計面倒な事になってたじゃねえか。なんっでこう皆報連相を……って言ったらお前が言うなって言われるんだろうなぁ、理不尽。

 

『残り15』

「1/3には減ったわね、このまま終わらせる!」

『ついでに言えば現地住民の合流想定時まであと1分だ』

「だったらギリギリ間に合うな、方便は思いついたかファウヌス!」

「いや方便も何も普通に話せばいいと思うんだけど!?」

「普通に話せる状況ならそうしてる!できないから考えろって言ってるのよさっきから!」

『弍乃、それも重要だが悪い報告だ』

「今度は何!?」

『ゲートから追加反応1、機獣(ヘカトンケイル)だ』

「1体だけ……エンネアちゃん残り任せた!」

「レムスさん!?」

「この状況で単騎投入なんて試作型以外あり得ないでしょう!」

『幸いな事にゲートもこれで閉じるようだ、閉じ切るまで耐えてくれ』

 

 ……あれか?私が何かやろうとすると必ず想定外(ニチアサ)が発生する呪いでも付いてるのか?ざっけんじゃねえぞただでさえ抱えたくもない属性抱えまくってるのにこれ以上概念付与されてたまるか!

 

時間凍結(クロノフリーズ)が生身で使えるって事は時空加速(クロノアクセル)も使えるのね!?」

『できない事はないが時間を固定する時間凍結(クロノフリーズ)と時間の流れを切り替える時空加速(クロノアクセル)の負担は比べ物にならない、ゲートが閉じるまで約2分だ、無茶は「生身で耐えれるなんて甘い考えはしてないのよっ!」弍乃!』

 

 閉じつつあるゲートから降ってきた鳥状の試作型を視認すると同時に時空加速(クロノアクセル)五倍速(フィフスクロック)で起動、浮遊(フロート)を同時に詠唱して早急に終わらせるべく鎌を携え一直線で加速。

 

「っ……頭、痛いわね……」

『負担は比べ物にならないと言った筈だ!10秒で仕留めろ、それ以上はまともに戦えん!』

「やれると分かってるなら、最初から忠告なんかいらない、のよ……!」

 

 正直時空加速(クロノアクセル)も私達しか使えないんだから使った時点でバレそうなもんだが背に腹は変えられない、幸いゲートはもう閉じかけてるんだから今すぐマルス達が来る事はないしその間にロムルスとクロノデバイスの修理を……いやまずロムルスにフリーパスで会えるのか?

 

「堕ちなさいっ……!」

 

 彼方が時空加速(クロノアクセル)を起動する前に大鎌で両断。幾ら使えると言っても起動できなければただの機獣(ヘカトンケイル)と同じ、さっさと仕留めてエンネアちゃんの援護に……

 

「ぐっ……」

『だから言っただろう、時空加速(クロノアクセル)強制解除!』

 

 ……無理に使ったせいか頭痛と吐き気が酷い。テルスが切ってくれていなければ今頃浮遊(フロート)の維持すらできず真っ逆様に転落していた所だ、後から作られた技術の方が負担が大きいってどういう事だよ全く。ただ面倒な事にまだ機獣(ヘカトンケイル)は残っている。ゲートも閉じ切っていないし着身(マギアライズ)しなければこの状態ではお荷物、かといってしたらしたで間違いなく誤解を生むだろうし……クソッ碌な選択肢が無いぞ!?

 

「レムスさん!」

「大丈夫、よ……身体は、平気……!」

「いやどう見ても疲労困憊なんだけど!?」

「だまらっしゃい、残りがあれくらいなら、支援はできるわ……!」

「……無理は、しないでください」

 

 試作型を秒殺した以上下手に奴らも戦力は突っ込まないだろうと判断し着地した後は鎌を支えに呪文(アーツ)の詠唱準備。自動詠唱するにはどうにも頭がぐわんぐわんして集中できない、音声認証でどうにかして片付けよう。この状況なら……

 

呪文詠唱(アーツコール)……!」

 

 後の事を考えて強化(マキシム)は使わない、今はエンネアちゃんが楽に片付けられるように支援すればいいだけ……よし。

 

「「雷霆(ケラウノス)ッ!」」

 

 残りの奴ら全体に行き渡るように雷霆(ケラウノス)を行使、痺れた隙をエンネアちゃんに……って、あれ?

 

強化(マキシム)じゃないのにこれとは……伏せてくださいレムスさん!」

「心配、無用よ…… 二重詠唱(デュアルコール)結界(プロテクト)拡散(ディフュージョン)

 

 どうも奴らの耐久性を容易にブチ抜く一撃だったらしく爆発寸前の個体達を慌てて隔離。頭が正常ではないとはいえ魔力は全然残ってるから問題ない、時空加速(クロノアクセル)まで使ってしまったんだから同時行使も解禁だ。

 

「……これで、全部?」

「らしいな……大丈夫ですかレムスさん」

「ええ、なんとか、ね。それより……」

『……確認した。つい先程の雷霆(ケラウノス)は2つの地点で反応があった』

「2つ!?」

「でしょうね、片方は、私で……」

 

 ……どうやらさっきのは聞き間違いではなかったらしい。全く同じタイミングで同時に放たれたもう1発の雷霆(ケラウノス)、そしてこの場でエンネアちゃん以外にそれができる者を私は1人しか知らないし、なんならあの声を聞き間違える筈もない。大方時間凍結(クロノフリーズ)の反応を確認してすっ飛んできたんだろうな。

 

「……まさか」

「その、まさか、でしょう……よくよく考えたらあいつが自衛手段を持ってない筈がなかったわ」

「しっかりしてくださいレムスさん、だとしても何処に……」

「……ウルカヌス、いや、エンネアちゃん、なのか?」

「……!」

 

 エンネアちゃんの肩を借りどうにか立ち上がったタイミングで近くなる聞き覚えしかない声。吐き気をちょっと我慢してどうにか聞こえた方向へ目を見やる。

 

「……ぁ」

「……」

 

 ……ああ、やっぱり。ダメだ、(レムス)が抑えきれない、此処は一度主導権を委ねよう。こういう状況だと逆に無茶をしておいてよかったのかもしれないな、五体満足だったらダッシュで飛びついてた所だぞ。

 

「……実際には、初めて見た。あの人が……」

「ああ……お久しぶりです、息災なようで、何より」

「元に、戻ってくれたのか……それに、君は」

「……ふふ」

 

 とか言ってたらあっちの方から駆け寄って来た。確かに今は幻影(イリュージョン)を使ってないからそりゃあ分かるか、何せ昔の姿そのままだもん。結構老けたそっちと違ってさ。

 だからほら、泣きそうな顔しないでよ。こっちまで泣きそうになるじゃん。

 

 

 

 

 

 

「……レムス、なの、か?」

「……それ以外の、誰に、見える?」

 

 

 殴るとか言ってたけどごめん、撤回する。

 

 

 まずはゆっくりとこの奇跡が現実である事を確かめさせてよ、あなた(ロムルス)

貴方の変身ヒロインは何処から?

  • セーラームーン
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