魔法少女はニチアサ展開に付き合いたくないって話。   作:暁真

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メロドラマは程々にって話。

 

「なんで、そんな……いや、そうか、時間遡行(リバース)で……」

「うん、あの時私は3歳くらいの子供になって……別の世界に飛ばされた」

 

 やっぱり自分の体を自分じゃない意識が動かしているというのは不思議な物だ。こればっかりは慣れるもんじゃないし慣れたくない、けどまあ……不思議と気分は悪くない。

 

「だから今は18歳で……30も離れちゃったね、年齢」

「……シルウィアと、同い年か」

「私お母さんなのに身長も年齢も抜かされちゃいそうだよ、こうなったのは……ほぼほぼ自業自得だけど」

「そんな事はない、あの状況ではあれしかなかった……なかったのは、分かっているんだ……」

「ロムルスさん……」

 

 というか疲労が速攻回復してきてないか?凄いな最適化(フォーマット)、疲れないだけじゃなくて回復しやすいまであるとは。いやでも回復してきてるってことは……

 

「……あの時私たちは遅すぎた。決断を早めていればタルタロスの実働部隊が壊滅する前に共闘できただろうし、ティフォンを倒し切れていたかもしれない」

「だから君のせいじゃない、原因は……私のエゴだ」

「それでもだよ、何より……パテルも、死ななくて、済んだかも、しれない」

「……」

「だからさ、こう、再会しても喜べばいいのかなんだか分からないんだ。失った物を忘れたみたいで」

「そんな事はありません、2人ともあの状況では最善を尽くしたはずです……誰が咎める物ですか」

「それでも私達が後回しにしすぎた事は事実だ、変わる事はない」

「こうして責任を引き受け合いしてるのだって意味はないし……だから……だから……」

「レムスさん!?」

 

 ……やっぱりこうなった。(レムス)がダッシュでロムルスに抱きつきに行く、凄まじい速さ。ロムルスも咄嗟に対応できなかったのかなすがまま抱きつきを許す、側から見たら完全に事案な光景だ……けど。

 

「……ごめん」

「レムス?」

「ごめん、なさい、ロムルス」

「……何が?」

「勝手に限界強化(オーバーマキシム)使った事、生きてたのに何も言わなかった事、中途半端にクロノデバイスを残したせいでシルウィアまで狙われてしまった事、それに、それに……」

 

 ロムルスの服を握りしめる手が強くなる、顔の微妙に湿気た感覚が涙と気づく頃には自然と彼の胸に顔を埋めていた。なんというか……事案から父と娘になったというか……実際には夫婦なんだけど。

 

「貴方と、同じ時間、過ごせなく、なって……私、こうなっちゃったから、最後まで、貴方と一緒に、居れなくて……!」

「……」

「貴方を1人で行かせてしまう、貴方だけを先に見送ってしまう!ずっと、ずっと最後まで一緒に居たかったのに、なんで、なんでっ……!」

「……レムス」

「これが罰なの!?私はただ守りたかっただけで!変わらない日常を続けたかっただけなのに!なのに、こんな、こんな事っ……!」

「レムス」

「ぁ……」

 

 どうも感情が追いついたらしい。ロムルスが背中に手を回してくる。(弍乃)が別人格でよかったな(レムス)、後で思い出して顔を覆う羽目にならないようにしてやるから今は泣いとけ、暫くはこっちで引き継いでやる。

 

「いいんだ、もう」

「でもっ、私……!」

「関係ない。私が歳を重ねようが、君が若返っていようが……生きて、帰ってきてくれたんだ。今は、それでいい」

「ロム、ルス……」

「本当はまだ言うべき状況ではないけど……」

 

 

 

 

 

 

「おかえり、レムス」

 

「……ただいま。ただいま、ロムルス……!」

 

 

 ……ったく、わんわん泣き散らして子供じゃないんだからもう。聞いてるこっちがむず痒くなる、エンネアちゃんとファウヌスなんか無言で頷き合って生暖かい目で見てるぞ。いつから此処は戦場からメロドラマの撮影現場になったんだか。

 

「ロムルス殿!?」

「……ああ、すまないキロン。勝手に飛び出してしまった」

「貴方の判断を疑っている訳ではありませんが……その人間は?」

「私の妻だ」

「妻!?」

「いやまあなんというかこう複雑な事情があるというか……」

「ファウヌス!?なぜ此処に、いや待て隣のそいつは……!」

「流石に正気に戻った……と言って許してもらえる所業はしてないからな。デバイスを預けた所で信には値しないか」

「その子は大丈夫だ、私が保証する」

「しかし……」

 

 あーったくもうマスコット共のリーダーっぽいミニ馬来てんのにまだ泣き続けてるのか(レムス)。確かにロムルス探しに来たのが第一目的だけどやる事それだけじゃないからな?さっさと変わりたい所だけども……

 

「まあその……細かい事は妻が泣き止むまで待ってくれないか?長い間離れ離れだったんだ、もう少し余韻に浸らせてやってくれ」

「……分かりました、貴方を信じましょう」

「いいの!?一触即発の雰囲気だったのに!?」

「相変わらず一言多いなファウヌス。私とてオリンピアの参謀だ、信の何かくらいは理解している」

 

 こいつこっちに来てからどれだけ信頼稼いでんだ。普通もうちょっとギスる場面じゃないの此処?いやまあオリンピアが結構穏やかな場所だったってのもあるんだろうけど。

 

「……随分と寛大だな、貴方は」

「我々は元来争いを好まない、抜く必要のない矛を振り翳すような愚行など以ての外だ……怨み辛みを忘れた、という訳ではないが」

「それは承知の上。私は許されるために来たのではない、為さなければならぬ事のために来た」

「なんか2人とも気が合いそうな波長だね……」

「無論お前も話は聞かせてもらうぞファウヌス」

「なんでぇ!?」

 

 ま、あっちは心配なさそうだ。後は(レムス)が満足するまで待って……

 

「……時にレムス」

「なに」

「いつまでこうしている気かな?」

「満足するまで」

「……そうか」

 

 ……いやそこは諦めないでもらえるかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そうか、君が飛ばされた世界に偶然テルスが転送されて」

「記憶を失った私はそのまま適合者(デヴァイサー)になった。魔力暴走に巻き込まれてあの世界とケイオスを2回行き来してるから多分偶然とかじゃなくて世界の座標が近いんだと思う」

『ゲートを開く時のタイムラグを計算したが地球とケイオス、地球とオリンピアでは前者が約1.3秒ほど早かったからな』

「恐らくオリンピアとの座標も近いのだろうな、そうでなければファウヌス君がその世界……地球に辿り着いた説明が付かん」

「うん、だからあいつを……ティフォンをどうにかしないと今度はオリンピアだけじゃなくて地球が危ない。ロムルスもバッカスがあいつだった事は気付いてたの?」

「状況証拠だけではあるがね。奴が使役する機獣(ヘカトンケイル)からは常に微量ではあるがティフォンの魔力が検出されていた。意思を持ったように動く訳だよ、何せ自分の意思で操っていたんだから」

「隠す気は……あるにはあったんだろうね、多分」

 

 あの後不貞腐れた(レムス)が落ち着くまでそこそこ時間を食ってしまった。一向に主導権返してもらえないから半ば強引に奪ってロムルスに即バレたの恨むからな?いやなんでちょっとした仕草で人格切り替わったのわかるんだよこいつ……

 

「……そうか、最近は魔導士(マギスター)が襲来する頻度も下がったのか」

「君の言葉を信じるのなら此処は侵略する世界ではなく実験場となったのだろうな……ふざけた事だ」

「全くだ、世界の存続のためならまだしも半ば遊び半分で他者を踏み躙って良い道理などない……ティフォンの置き土産はそこまでタルタロスを腐敗させたか」

「まるで元はまともだったみたいな「まともでなければ今頃ケイオスは滅んでいた」ゴメンナサイ」

 

 あっちはあっちでなんか打ち解けてるしこっちはこっちで話すか。聖地とか言われてる大層な場所にこんな立派なラボ作っちゃって、ほんとシルウィアの親だよお前は。

 

「……で、レムス。いや、今は弍乃って呼んだ方がいいのかな?」

「どっちでもいいよ、貴方の前に居るとどっちにしろ(レムス)に引っ張られる。やっぱり本来は(弍乃)の方が異物みたい」

「それでも君は君だろう?年齢が年齢だし娘みたいなものだよ」

「それはちょっとやだな、シルウィアとの関係が姉妹になっちゃう」

「確かに。どっちが姉かで喧嘩しそうだ」

「仮にそうなったとしてあんな神経質に見えてその実だらしない子を姉とは認めないわ。家事くらい教えてから別れなさいよ全く……」

『君がいうか』

「だまらっしゃい、事実を述べただけよ」

「……時間が、なかったからな」

「分かってる、まあそれはそれとしてシルウィアにちゃんと謝る事」

「勿論……さて、本題に入ろうか」

 

 唐突にぶっ込みやがって。思わず(弍乃)の口調が出てきたぞ、今そんな呑気に話してる場合じゃないのに。

 

「私が此処に居る事は多分ディーデバイスを解析して判断したな?」

「癖がそのまま残ってたからね。相変わらず簡略化しすぎ、限界ギリギリまで圧縮するのはいいけどエラー吐くギリギリだったよ」

「君が居ないとついな……それでだ。解析したということはあの最適化(フォーマット)理論を理解してくれていると思う」

「そうだね、本来体内に生成する魔力血管を着身(マギアライズ)のアーマー中に生成する逆転の発想。奇抜だけど調整が利く分既存の最適化(フォーマット)より扱いやすい、流石ロムルス」

「ぱっと見ただけでそこまで理解する君も相変わらずだよ。ならこれの目的も分かってるだろう?」

「うん、あの時の二の舞にならないように、でしょ?」

「その通りだ。だがこの理論を実証するためにはまず今あるデバイスを全てこの形式に調整し直さねばならない」

 

 ……随分と壮大な夢物語を語るな。けどまあその方がこいつらしい、何せ一般用のデバイスなんて絵空事を現実にした奴だ。

 

『アポロ、ウルカヌス、ウェスタは既に改修済みだ。となると残りは……』

「メルクリウス、マルス、ネプトゥーン……そしてユピテルとテルス、貴方。クロノデバイスをこの形式に改修しようとしたらほぼ1から作り直しになる」

「君が使って以来プログラムの調整も碌にできてないからな……本来はそのために来たんだろう?」

「そうだね、まずはこれを修理ついでに改修する。今のままじゃ魔力の変換効率が悪すぎる」

「データが取れたのが君がティフォンと戦った一回だけだったから下手に手を付けられなくてな……なら、まずはクロノデバイスの改修からか」

「それが1つ、ついでにもう1つ」

「……これは」

 

 ボロボロの私のクロノデバイスとは別に持ってきていたもう1つのデバイスを取り出し両方ロムルスの前に。多分こいつの存在は知らなかったろうな。

 

「ティフォンが作ったデッドコピー。ガワだけ似せた粗末な代物だけど……逆に言えば素体に使える」

「……しかし一体誰が使うんだ?君はもう既に自分のクロノデバイスを取り戻している。それに君以外に適合者(デヴァイサー)が現れるとは思えん」

「ロムルス、自分の言った事も忘れたの?」

 

 流石に2つめ作るよ!って言われるとロムルスも先入観に囚われるか。何せ私以外まともに扱えるどころか起動すらできなかった代物だし。

 

「……だがどうやって?これは適合率100%の人間、つまり君にしか起動できない。デバイス側で適合率を上げていく私のやり方では時間がかかり過ぎる」

「逆転の発想だよロムルス。クロノデバイスをベースにするんじゃない、ディーデバイスをベースにするんだ」

「成る程、あくまで機能拡張として使う、と。それなら多少適合率が下がっても支障はない、だがそれでも95%以上の適合率が必要だ。それにその適合者(デヴァイサー)のデータも「あるよ」流石に話が早いな」

「私は面倒事が嫌いだからさ、あらかじめ持ってきておいた。テルス」

『了解した』

 

 テーブルに置いたテルスから資料を投影しロムルスの端末にインストール。理論を把握した時にあの子の適合率を見てもしかしたら……と思ったが大正解だったようだ、これならいける。

 

「……適合率99%。凄まじいな、これ程親和性の高い子が地球に居たとは。しかし……」

「分かってる。間接的にとは言え私達が戦いに巻き込んだ子達、だからこそ……さっさと全て終わらせて、普通の女の子に戻ってもらいたい」

「……そうだな、そうしなければ。それが私達の責任だ」

「うん、だから始めよう。まずは私のクロノデバイスを改修してから」

 

 戦力は多いに越した事はない。全ての魔導士(マギスター)を元に戻してもティフォンはしぶとく復活のチャンスを狙っている、何がきっかけで封印が解けるか分かったもんじゃない……だから。

 

「この子の」

「ああ」

 

 

 

「「ミネルヴァ(三葉ちゃん)用のクロノデバイスを作る」」

 

 何があってもいいように、力を託そうと思う。

貴方の変身ヒロインは何処から?

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