魔法少女はニチアサ展開に付き合いたくないって話。   作:暁真

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呉越同舟は案外単純って話。

 

「お前、お前、は……」

「あら、そういえばこの身体は貴方のお母さんの物だったわね、エ、ン、ネ、ア、ちゃん?」

「ティフォン!お前は、お前だけはっ!装神詠唱(アームドコール)、イアぺトスッ!」

「エンネアちゃん!」

 

 パテルの姿を騙られた上でのあの煽り、娘であるエンネアちゃんが正気でいられるはずがない。分かっていたのに止められなかったのは動揺から復帰するのが遅かったこっちのミスだ、わざわざ煽ったってことは対抗手段を持っているはずなのに何故止めない私!

 

「ま、恨み言は……じっくり甚振りながら聞くとしますか」

「時空加速(クロノアクセル)、八倍速(エイトスクロック)ッ!」

「人の話はちゃんと聞くべきっすねぇ……破神機構(アウェイクファンクション)、ティフォン」

「案の定……!時空加速(クロノアクセル)、十倍速(テンスクロック)!」

 

 無策で来るわけないと思っていたがデッドコピーを量産しているとは思わなかった、記憶が確かならあれも自動詠唱は可能な筈、下手に突っ込んでは返り討ちにあう……だったらこっちが対抗できるように時間を稼ぐしかない。

 

「テルス、時間結界発動準備!範囲は霊峰オリンピア全域!」

『範囲が広い、起動まで2分はかかるぞ!』

「承知の上よ、起動さえできれば時間は稼げるっ!今はエンネアちゃんを!」

「その声を、その姿をっ!騙るなぁぁぁぁぁぁ!」

 

 今のエンネアちゃんにはいつもの冷静さがない、無鉄砲に突っ込んでも結果は見えている。どうにか此方でフォローをしなければ最悪死ぬ、また失ってたまるか!

 

「おお怖い怖い、そんな顔もできるようになったんすねぇ」

「黙れ黙れ黙れっ!お前があの人をっ!母さんをっ!」

「ま、どうでもいいんすけど」

「巫山戯るなぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 案の定自動詠唱で時空加速(クロノアクセル)を合わせてきやがった。怒りのあまり錬成(アルケマイズ)すら忘れてるエンネアちゃんの攻撃が通るわけもない、此処は……

 

「呪文詠唱(アーツコール)、錬成(アルケマイズ)!」

「あら、やる気っすか?デバイスのスペック差は一番理解していると思ったんですけど」

「それが戦わない理由になるとでも!エンネアちゃん落ち着いて!まずは錬成(アルケマイズ)を!」

「っ……すみま、せん。呪文詠唱(アーツコール)、錬成(アルケマイズ)……!」

 

 これまた自動詠唱で錬成した杖がエンネアちゃんを薙ぎ払う前に割って入り受け止める。あくまでデバイスの出力と自動詠唱が負けているだけで呪文(アーツ)の質に関しては同等、こいつの慢心癖を考えれば時間を稼ぐくらいは余裕だ。問題は……

 

「しかしまあ随分と無駄な事をするもんですねぇ」

「何の事かしら、いつもの負け惜しみ?」

「いやぁ?知ってる筈じゃないですか、私は封印される直前に可能な限り分身を用意した事。何度私を倒そうが終わりはない、いつかそっちが負けるだけの事」

「3回も負けてる癖によく吠えるわね、自分が弱いってこと自覚してるのかしら?」

「仲間に頼らなきゃ封印が精一杯の奴に言われた所で説得力ないっすねぇ」

「だったら気の向くままに吠えてなさいっ!」

 

 ……時間を稼ぐ事はできても決め手に欠ける。無理くりリミッターを解除すればある程度攻撃は通るだろうけど倒すまでには至らない、ロムルスが調整をどれだけ早く終わらせてくれるか次第だ。

 

「なら吠えるを通り越して……噛みつきましょうかねっ!」

「甘噛みでかまってちゃんアピールかしら!」

 

 時間稼ぎの鍔迫り合いは武器を捨てて格闘戦を仕掛けてきたティフォンによって中断、拳を槍で受け切るのも無理があるため此方もまた格闘戦に移行。マルス程ではないが一撃一撃が重い、元のこいつにそんなパワーはなかった筈、露骨にデバイスの出力差だなこれは……!

 

「レムスさんっ!」

「邪魔をするんじゃないっすよぉ!」

「仲間に頼らなきゃどうこう言ってたのはそっちでしょうにっ!」

 

 ラッシュをどうにか拳で捌いている内に息を整えたエンネアちゃんが背後から強襲、こっちが仕掛けていた訳でもないため対応は間に合ってしまったがガードは緩んだ、今のうちに仕掛け……

 

『上だユノ!』

「雷霆(ケラウノス)っ!?間に合わ……」

「自動詠唱は把握済みなのに油断したっすねぇ!」

「ガッ……」

 

 思いっきり回し蹴りを叩き込もうとした瞬間に上空から降り注ぐ雷霆(ケラウノス)をまともに被弾、今まで食らった事はなかったが、身体が、痺れ……!

 

「こんのぉ!」

「そんな大振りが当たる訳ないっしょ!」

「だったら数を増やすまでっ!三重詠唱(トリプルコール)、錬成(アルケマイズ)、拡散(デュフュージョン)、複製(ジェミニ)!」

「時空加速(クロノアクセル)中にやったところでさぁ!」

 

 ……ダメだ、一旦落ち着いたと思ったけどエンネアちゃん冷静な判断ができてない。武器の取っ替え引っ替えは奇襲性だけ見れば高いけど自動詠唱がある以上どうやったって先手を打たれる、あれじゃただの的だ。

 

『時間結界発動まで1分!』

「ちょっと借りるわエンネアちゃん!」

 

 とはいえ無駄打ちって訳でもない。どうにか立ち上がって生成された武器の中から槍を上空にシュート、避雷針替わりにしてからこれまた宙に浮かんだままの武器を足場に跳躍する。

 

「挟撃すれば当たるとでも?」

「それならもっと小賢しくするわ、この場で一番スペック差を理解しているのは私よ!」

「だったらさっさと諦めるのが賢明って理解するべきっすねぇ!」

「そうした方が面倒なのよ!」

「それを往生際が悪いって言うんすよ!」

 

 雷霆(ケラウノス)を誘うつもりで飛び上がったがどうも失敗に終わったらしい、踵落としをしたところでカウンターを貰うのは目に見えているため着地後の回し蹴りに変更……まあ当たらないな。

 

「そのまま返すわ!1度負けて2度負けて3度負けて!此処で4回目よいい加減成仏しなさい!」

「また勝つ気でいる?この状況で夢見すぎじゃないっすかねぇ!」

「誰よりも夢を見ていたあの子の身体でっ!これ以上喋るなっ!」

「口を噤めティフォン!母さんを、母さんをこれ以上汚すなぁぁぁ!!」

 

 喋れば喋るほど怒りのボルテージが上がっていくのを理解しているのか今回のティフォンは煽りに煽ってくる。ああ確かに効果的だ、実際私もエンネアちゃんも繊細な動きが取れていない、どうしても直情的になって理性的な判断が微妙に遅れる。

 

「墓荒らしはしてないんだから勘弁してほしいっすねぇ、たまたま本体が持ってた情報から得た複製体ってトコですよ……ま、君達の記憶も参考にしてるけど」

「何処まで……何処まで死者を弄べば気が済むっ!」

「廃棄物の再利用っすよぉ!」

「……」

 

 ただ、お前は何処まで行っても人を見下している。だから知ろうともしないし分からない。

 

「だから大人しく「呪文詠唱(アーツコール)、吹雪(ブリザード)」あーら急に落ち着いちゃって、諦めでも付きましたか先輩「黙れ」おっとぉ?」

『時間結界、発動!』

「……レムス、さん?」

 

 念の為に吹雪(ブリザード)で足留めし余裕を持ってチャージが終わった時間結界を展開。エキドナに憑依してた時もやってた手だがまた引っかかるあたり学習していないらしい。

 

「前使ってたデバイスを回収してるってことは時間凍結(クロノフリーズ)が使えない事は知ってる筈なのに……わざわざ逃げ道封じただけっすか?」

「逃げる?何処に?」

「へえ、ほんっとうに勝つ気なんすか……けどねぇ!」

 

 時間の流れが元に戻ったことで落下していく武器の中から大鎌をキャッチし横薙ぎ、軽いバックステップで避けられるが想定済み。

 

「呪文詠唱(アーツコール)、吹雪(ブリザード)」

「ちっ……面倒な事を!」

 

 回避先はさっき吹雪(ブリザード)を起爆した場所だ。再度放てばお前を数秒程度封じれる鎖ぐらいにはなる。

 

「二重詠唱(デュアルコール)、衝撃(インパクト)、追尾(ホーミング)」

「時空加速(クロノアクセル)が中断された?お前達、何を……」

 

 ティフォンが拘束を外すのに躍起になりマルスが数秒で変化した状況を飲み込めていない間に大鎌の強化を終了。奴が自由になるまでの間に高速回転させてチャクラム状の衝撃波を複数生成。

 

「シュート」

「随分と考えたみたいじゃないですか!でも「忘れてもらっては困る!」ああそういや居ましたねぇ!?」

 

 飛ばした弾は丁度抜け出した奴に回避されるかと思ったがエンネアちゃんが妨害してくれたお陰で数発命中、組み立ててたプランが一部ご破算になったが寧ろファインプレーだ、ありがとう。

 

「ハハ……やってくれるじゃないっすか。さっきまであれ程怒り心頭だったのに」

「何を言っているの?」

「あぁん?」

 

 教えてやるよティフォン、人っていうのはな……

 

「私は怒り続けてるわ、昔も今も……お前っていう存在に」

 

 沸点を超えに超えると一周回って冷静になる生き物なんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……弍乃さん大丈夫かなぁ」

「確かにもうオリンピアに向かってから4日程経ってますが……そんなものではないでしょうか?ちょっとした旅行くらいの経過時間ですしそろそろ帰ってきそうです」

「戦場真っ只中に乗り込むのを旅行と例える能天気さが母親譲りならそうなんじゃねえか?」

「物の例えです、物の」

 

 弍乃さんがエンネアとファウヌス連れてオリンピアに向かってから早い物で数日経った。ファウヌスはともかくあの2人なら多分大丈夫だろうとやれる事をやってはいるのだが……すぐに戻ってくると言った割には遅くて少し心配になってしまう。二美さんに相談したら「そういう奴だから」って言われたけど不安なものは不安なのだ。

 

「しかし珍しいなお前らだけとは、八雲達はどうした?」

「紗七は部活。八雲は生徒会にお呼ばれ、五葵ちゃんは家の用事。何もないの私だけ」

「ゲートの感知情報もありませんしそれじゃあ此処で話すこと話そうって三葉さんに誘われまして」

「だってこうでもしないとシルウィアさん冷凍食品しか食べないんだもん」

「それは……」

 

 こうやって連れ出せる時にシルウィアさんを連れ出しておかないとこの人徹夜と壊滅的な食生活でダメになるんだからしょうがない。最近は色々察してくれたのか八雲のお父さんもシルウィアさん用に色々作ってくれるし……なんだかんだ予定が空いたら此処に集まるのが1番良い。もしゲートが開いても皆ですぐ行けるし。

 

「ま、客の事情はとやかく聞かねぇが他に行く場所ないのかよお前ら。喫茶店は間違いなくとりあえずで来る場所じゃないぞ」

「いつあいつらが来るか分からないって思うとあんまり人の居る場所に行く気が起きなくて……」

「それはそうだがなぁ……」

 

 タルタロスの事さえ考えなければテーマパークだとか映画館だとか色々行ってたかもしれないけどそんな場所で戦闘になったら目も当てられない、そう考えたらどうしても行きづらい。

 

「……1日でも早く、この戦争が終わればいいのですが」

「そりゃああっちの機嫌次第だろ……ん?」

「テトラ?」

 

 なんて事を話していたらテトラが何かに気づいたようにデバイスを取り出した。もしかして弍乃さんが修理した時に何か仕込んだんだろうか?

 

「あー、あー……なるほどな、だからエンネアの奴……」

「エンネア?」

「おう三葉、八雲達に連絡入れとけ。最重要事項だ」

「最重要事項?」

 

 何か仕込まれてたという訳ではなかったらしい。でも連絡って何を?というかそもそも何に気付いたの?

 

「ちょっとこの前エンネアが連絡取ってた諜報員からありがたいご指示だ」

「諜報員?」

「おう、機密も機密だから名前は伏せるが……」

 

 

 

 

「明後日にネプトゥーンが機獣(ヘカトンケイル)の軍連れてカチコミに来る。決戦って奴だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええいちょこざいな!」

「癖が読めて来たと言いなさい」

 

 やっぱり衝撃(インパクト)で手数を増やすのは正解だったようで先程まで受け止められてばかりだった攻撃が僅かではあるが通じるようになっている。まあ通じるようになったのは頭が一周回って冷えたのもでかい、怒らせすぎも考え物だぞティフォン、どうせ学習しないだろうけど。

 

「此処で倒せずともその身体を騙る事だけはやめてもらう!」

「言われずとも今回限りっすよ!どうも逆効果みたいなんでね!」

「ええ、とても。だからさっさと駆除されてちょうだい」

『弍乃、仕留める保証はあるのか?』

「ロムルスを待つ、それだけ」

 

 ただどうしてもスペック差は2人だけでは埋められない。時間結界で霊峰全域を巻き込んだのはロムルスがクロノデバイスの改修を早く終わらせてくれると信じての事、終わりさえすれば確実に奴を仕留め切れる。だから今は時間稼ぎを……

 

「っ……おぉぉぉぉぉぉ!」

「マルス!?」

「正気に戻ってしまったようね……」

「はっ、これで2対2っすねぇ」

 

 そうだこいつも居るんだった。大剣構えて突進して来たマルスを迎撃すべく衝撃波の弾を再度生成、迎撃すべく……

 

「バッカスゥゥゥゥゥ!!!!!」

「……は?」

「え?」

 

 ……撃ち出そうとしたがマルスが向かっていったのはまさかの私ではなくバッカス。理解が追いつかないのかあいつもちょっとフリーズしている、そりゃそうだが……なぜ?

 

「なっ……敵はあの2人でしょうが!?なんでこっちを「巫山戯るな!」はぁ!?」

「ユノを倒すのは私だ!お前でも、ましてや他の誰でもない!」

「手柄を横取りされるのが悔しいってだけっすか!?なら「それだけではない!」あぁ……!?」

 

 勢いと火力の両立した連撃を初めて余裕のない顔で受けるバッカスを尻目にマルスは剣を押し込みながら話を続ける。よもやとは思うがこの流れは……

 

「3回だ!私は3回も正々堂々の決着を邪魔されてきた!1回目はあいつの後輩に水を刺され、2回目は決闘という体裁すら破壊された!」

「勝てりゃあ、いいんっすよ……!」

「それは貴様の考えだろう!そして3回目、今!真の決着を付けようとしたというのにまたお前は私の邪魔をしたっ!」

「だからと言って仲間を倒す気っすか!?」

「最早仲間ではない!貴様がティフォンだというのならお前はタルタロスの敵!何よりこれ以上決闘に水を刺されては……我慢がならん!」

 

 ……相変わらず分かりやすい奴だ。興味があるのは私との決着を付けることだけ、それ以外はどうでもいいし、邪魔をすれば烈火の如く怒り狂う。

 

「マルス、お前……」

「勘違いするなウルカヌス、これは単なる利害の一致!ユノと雌雄を決するために邪魔な障害物を排除しているだけに過ぎん!」

 

 手汗の滲むテンプレもテンプレな展開だ。けどこの状況においてはありがたい以外の言葉はない。

 

「それでいいわ、奴をぶっ倒すのに手を貸してくれるんでしょ?」

「無論だ!だが覚えておけよ、全てが終わった後に……」

「ええ、相手をしてあげる。全力の私で」

「そう来なくてはな!ならば行くぞ!」

 

 どうやらお前は地雷を踏み抜くのが異様に上手いようだな、ティフォン。

貴方の変身ヒロインは何処から?

  • セーラームーン
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