「……此処はあまり変わらないか。私が外れ値だっただけ、と」
シルウィアの時と同じように0時で止まった時計が大量に並んだ空間をただひたすら落ちていく。一度慣れてしまえば後は慌てる事なく身を預けるだけでゲートが見つかるまでちょっと暇だ、ぶっ通しで戦ってた訳だし少し仮眠でも……
「……流石に速いね」
いつもならあと数分かかるのだが今回はもう白いゲートが見えている。別にこれは実際に落ちているわけではなく記憶へのリンクをデバイスが繋いでいるだけ、クロノデバイスのスペックを考えればカオスデバイスより速くダイブできるのは自明の理、テルスの支援もあるし尚更だ。
「それじゃ……行くか」
見た目的に彼女の歳は24〜6かそこら、ティフォンによる災害は間違いなく経験してるだろう。そこから何が出てくるかは分からないができれば善良な性格である事を祈る、間違ってもやばい奴じゃない事も。
「5年前からずっとって話なら、まだまともであってほしいけどね……!」
とはいえ祈ってどうにかなることでもないのでさっさとゲートに突入、ホワイトアウトした視界の中で景色が形作られるのを……もう出来上がってきてる、はっや。流石クロノデバイス……これ自画自賛になるのか?
「……これは」
だいぶして早々形作られたのは廃墟と化したケイオスの一角、環境音は大雨に破砕音、そして……
『トレース、こっち!』
『お姉ちゃ、お母さん、が……』
『分かってる!でも今此処でトレースも死んだら母さんが死んだ意味がない!』
『……う、ん』
『あいつが離れているうちに早く此処を……!』
幼い頃のマルスとその妹だろうか、妹の方はどことなく三葉ちゃんに似ている。手を繋いで廃墟の外へ抜け出そうとしている、つまり此処はまだティフォンが居る……薄々察しがついてしまった。
『もうすぐだよ、此処を抜ければ……』
『お姉ちゃんっ!』
『トレース!?何をっ……』
廃墟からもうすぐ市街地へ抜けられるという所で妹がマルスを押し出してそのまま転げ落ちていく、俯瞰しているから分かるけど上から瓦礫が……
『……えへ』
『待って、待て、やだ!こっちへ来てトレース!』
『ごめんね、お姉』
……立ち上がったマルスが手を伸ばしたタイミングで廃墟が崩壊、彼女の妹はそのまま崩落に飲み込まれて、消えた。
『……嘘、だ』
『トレース、冗談でしょ!?ねえ、ねえったら!?』
『……あ、あぁ……』
パニックになる彼女を嘲笑うかのように視線を向けるティフォン。状況から推察するにこいつが廃墟を崩したらしい、偶然か意図的かは知らないが封印される前からずっとこの調子か。相変わらず反吐が出る程……
『シイッ!』
『───!』
『……ひ、と?』
……今乱入したのは、私か。つまり此処はティフォンが最後に暴れた地、私が死ぬ気で戦ってどうにか奴を封印した場所。正直必死すぎて当時の事はあまり記憶に残せてない、だけど……
『なん、で……』
……彼女の記憶には。
『なんでっ、もっと早く来なかったの!?』
相当、忌々しい物として残っているらしい。
(……分かってる、貴方もやるだけの努力はしたんだって)
「……マルス」
(その名の戦士はもう死んだ、今貴方と話しているのは何もできなかったか弱い人間。死んでないだけの抜け殻)
「随分な言いようだね、マルスとしての人格は随分と大きく様変わりしてたみたい」
(実際そうだよ、私は……あんな自分に自信を持てない、寧ろ自分が嫌い。何も守れなかった、ただ恐怖に怯えるしかなかった)
「それは後で聞こうか、今は……まず君を取り戻す」
(……)
景色が切り替わる、今度は……格闘場?
『爆ぜろっ!』
『んなっ、こんなガキにぃっ!?』
リングの上で倍近くある体格の男性をノックアウトしてKO、周りの雰囲気から察するに随分とアングラな所だ。こんな所にわざわざくる理由なんて一つしか考えられない。
『これで5連勝だ、随分と動きがサマになってきたな。お前の強さへの渇望は羨ましいレベルだ』
『足りない』
『確かに上へ行くにはもっと飢える必要がある、だが……』
『上?何言ってるのこんな所の一番上とかハナっから目指してない』
……どうも強さへの渇望はマルスになる前から健在だったらしい。控室でトレーナーと不満気に話してる、ついでに口調もかなり荒くなってるし面影がほぼない。
『じゃあ何を目指してるんだお前は、初めからこんな所目じゃないって顔をしていたが』
『あれを倒せる程の力が欲しい』
『あれ?』
『決まってる』
あんな回想があったんだから答えは当然……
『ティフォンを、この手でぶっ潰す』
『……』
だろうな、この時点だと絵空事すぎて唖然とされてるが。
(貴方がティフォンを封じた場所……私が昔暮らしていた場所、セクターE。災害から復興していく中彼処だけは封印のせいで復興がそもそもできなかった、それに私は身寄りもなくて……真っ当な生活をするにはこうして稼ぐしかなかった)
「……祖父母は?」
(駆け落ち同然で絶縁されてた。だからあの時はトレースと2人で生き残ろうと頑張ってたんだ、頑張ってたのに……!)
「……」
(……今こんな事を話す場合じゃないや。私が知りたいんでしょ、さっさと行きなよ)
「……そうする」
彼女もあの子と……パテルと同じ、助けられなかった人達の1人だ。シルウィア時のような自己嫌悪とは違う私への嫌悪、だいぶ言葉を選ばなきゃ戻ってくる気はさらさらないだろう。此処で死なれたらこっちが面倒なんだってのに……
(……まあさっきまでので大体事情は分かったでしょ、後は私がマルスになった経緯だけでいい。ほんっとうにくだらないけど)
景色が再び切り替わる。此処は……夜の公園?
『クソッ、クソッ!あんな場所で幾ら強くなったってダメだって最初から分かってただろ私!もっと、もっと根本から……人間がアイツに立ち向かえる力が必要なんだ、あの時みたいにっ!』
1人で鉄棒に拳を打ち込んでいる。なんか鉄棒ひしゃげてきてるし人間としては随分上澄みにいると思うが……そうだな、確かにティフォンと人間が戦うにはデバイスが必要だ。人間のまま強くなったって同じ土台に立ってすらいない。
『このままじゃ皆の……トレースの仇なんて到底取れやしない。タルタロスに入ればあの力は手に入るかもだけど……私にそんな学歴、ないもんな』
あいつが口封じついでに洗脳して使ってるのがおかしいだけで本来タルタロスはしっかりとしたキャリアを積んでから行くものだ、学校をまともに出てないであろう彼女がまともに行けるルートはない。ないが……
『こんな夜中に随分と近所迷惑ね』
『……余計なお世話よ、警察でもないなら帰って』
『あら、これでも私一応タルタロスの人間なの。とりあえず器物損壊現行犯ね』
『あ……いや、これは、その……』
だろうな。やっぱりマルスをスカウトしたのもティフォン、此処までくると今のタルタロスメンバー集めたのほぼあいつじゃねえか?半分は口封じだろうけど。
『なーんて冗談よ、偶然見つけましたで現行犯は警察の役目、私は最初から貴方目当てで来たの』
『私……?』
『闘技場の最年少チャンピオン、それも女性。負け知らずの闘将……結構色々言われてるみたいね』
『……その分余計なあれこれも多い、恨み買ったり八百長の提案されたり……断り続けて最近じゃ干されかけてきてる』
この時点でアングラな所の事情知ってるの怪しいと思わなかったんだろうか。もしくはそれすら気にしないくらい焦っていたのか。
『でも貴方は強くなりたいだけなのよね?』
『まあ合ってる。私は強くなりたいだけ、いつかあれをこの手で倒せるように……』
『そんな貴方に良い提案があるわ』
『提案?』
『ええ、今タルタロスでは新しい戦闘用外装のテストをしてるの。でも問題が1つあってね……適性のある人間が足りないの』
『私にその適性があるって言いたいの?』
『あったりー。検査のデータをちょっと拝借して調べたから間違いなし、貴方には適性があるわ。間違いなく、ね』
さらっとアングラのデータ拝借してるし怪しいにも程があるだろ……
『……質問だ』
『何かしら』
『それは、あいつと戦えるほど強くなれるのか?』
『貴方次第ね、でもそうなるための土台にはなる』
『そうか。なら受けるよ、そのスカウト』
『疑わないのね』
『どうでもいい、今欲しいのは強さだけだ』
『素直な子は好きよ、じゃあいきましょうか』
「……」
ティフォンの提案を受けるまで目に光がなかったのは半ば自暴自棄だったからか。家族を助けてくれなかったタルタロスへの不信感もあっただろうに受けたのは……それほどまでに、追い詰められていたんだろうな。
(後はそっちの知ってる通り。この記憶を封じられてマルスになった私は
「ほんと随分とご熱心だったよね」
(単純に貴方が突出して強かったのもあるけど……無意識に覚えてたのかもしれない、クィリヌスである貴方を)
「……そっか」
(だから……)
回想を終え景色は再び真っ白な空間へ。目の前にはマルス……ではない元の彼女が現れる。
「だから、一言だけ言わせて」
「……いいよ」
現れるなり彼女は涙ぐんで、肩を震わせて……言いたい事は、分かった。
「なんで、あの時もっと早く来なかったんだ」
口にするなり感情が抑え切れないのか此方の肩を掴んでくる。
「なんで被害が出てからノコノコやってきたんだ!」
謹んで受け入れる。調整が終わってから秒で飛んでいったとはいえ間に合わなかったのも確かだから。
「あの時5分でも、いや、1分でも早ければ……!」
結果論、というのは私も彼女も分かっている。私とエンネアちゃんがパテルに化けたあいつを見て激昂したように、胸に燻る物を抑えきれていないだけ。
「トレースは……妹は、助かってたかもしれないんだ……!」
「……」
助かるかもしれなかった命、助けられなかった命。過去はどうやっても変えられない、このたらればに意味はない。
「私は……もう、どうだっていい。あんたに勝てなかったんじゃティフォンを倒せる筈もない。この力は暴力にしか振るえない……結局、誰も救えない……!」
「……君は」
だから、過去を振り返る事はあっても囚われちゃダメなんだ。
「君は、死にたいの?」
「生きる意味がない。守る物はとうに散った。振るう力は及ばず、大義は消え失せた。空っぽなんだ、私は」
「そっか、でもさ……」
死者の代弁なんて私にする資格はないけども。
「君の妹は、君に生きて欲しくてああしたんじゃないの?」
「……分かってるよ、でもやっぱり許せないんだ。私は。あんたみたいな
「私が英雄ってのは周りが勝手に言ってるだけだよ。君と同じで大切な人を助けたくて我武者羅にやっただけ」
「周りは結果論でしか物を語らない、過程がどうあろうと結果だけが全てなんだ。だから……」
「だから、今はまだ過程だよ」
「……え?」
未来まで決めつけるなんてして良いはずがない。過去は流れゆく物、未来は選び行く物。
「ティフォンはまだ生きて復活の機を窺っている。奴を完全に消滅させない限り本当の終わりは訪れない」
「貴方も、私に力を貸せって言うんだね」
「貸せとは言ってない。決めつけるにはまだ早いってだけ……決めるかは、君次第」
「……やっぱずるいや、大人って。そこまで自分で立ち直れって言われたら意固地になっちゃう」
「狡賢く生きるのが大人って生き物だからね。答えが出たようで何より」
吐き出す物吐き出してから投げかけてみたけど結構上手く行ったみたいだ。涙は残っているけど憑き物が落ちたような顔をしている。
「決めたよ、自分で決めた。貴方達と一緒にティフォンと戦う。戦って……トレースに、妹に誇れるような自分でありたい」
「素直でよろしい。君は……」
「ゼクス」
差し出した手を取る前に彼女は涙を拭って。
「ゼクス・ベルム、それが私の本当の名前。よろしくね、英雄サマ」
「私も英雄ってガラじゃないけどね……」
「じゃあ弍乃って呼んだ方がいい?」
「個人的にはね。今の私にはレムスも、クィリヌスの名も重すぎる」
「じゃあよろしく、弍乃」
「うん、行こう」
しっかりと握り直した手を取って、光が眩しくなる方向へ歩き出した。
「ん……」
「レムス!」
「レムスさん!」
「……待ってたの?」
「いつティフォンが二の矢を仕掛けてくるか分からない状況でしたから……」
記憶の復元が終わって目覚めたかと思えば側にロムルスとエンネアちゃんの姿。守りに徹しろって言ってたのに全く……
「……その様子だと成功したんだね」
「ええ、なんとかなったわ」
「じゃあ……」
「ええ、けど今はまだ眠らせてあげて」
ゆっくり身体を起こして周囲を見やる。ティフォンが何かしてきそうな素振りもないし……
「ようやく、憑き物が落ちたみたいだから」
今は穏やかな顔で眠りに就く彼女を、そっとしてあげよう。
貴方の変身ヒロインは何処から?
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セーラームーン
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リリなの
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プリキュア
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まどマギ
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シンフォギア
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その他