魔法少女はニチアサ展開に付き合いたくないって話。   作:暁真

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一番槍は前哨戦って話。

 

「呪文詠唱(アーツコール)!」

「錬成(アルケマイズ)!」

 

 私達が浮遊(フロート)を使って空中迎撃に向かう傍らでテトラとネプトゥーンの拳が交差する。「あいつは抑えとく」なんて言ってた時は八雲にそれはもう弄られていたけど互角にやり合っているのを見ると大して心配はいらなそう、アポロだった時よりもずっと強くなってる。

 

「ディアナ、上飛んでるのお願い!ケレスは地上の、ウェヌスとユピテルは私の撃ち漏らしを!」

「オッケーミネルヴァ!」

「撃ち漏らしってもう切る気!?速いなぁ!」

「出し惜しみなんてしてられないからね!時空加速(クロノアクセル)、五倍速(フィフスクロック)!」

 

 見たところ投下されてる奴らは試作型じゃなくて大半が旧型、あれが投入される前に一掃しておきたいってのもあるけど何よりテトラの戦いを邪魔させたくない。荒らされないうちに……!

 

「テルスさんが居なくても、これくらいはぁっ!」

 

 テルスさんを使っていた頃は戦闘補助に頼りっぱなしだったけどティタノデバイスではそうも行かない、自力で変速して自力で飛ぶ方向制御して……弍乃さんが諸々投げっぱなしだったのもわかる大変さ。でもシルウィアさん達は最初からこうだったんだから今更泣き言なんて言ってられない。

 

「時間制限が来る前に、なるだけっ!」

 

 地面に落ちる途中の奴、ゲートから出たての奴、攻撃姿勢に移行してる奴……とにかく視界に移るのを片っ端から斬り捨てて飛び続ける。まだ五倍速だから頭も比較的痛くならないしこの分なら後4分くらいは維持できそう。総力戦という割に出し渋っているのは気になるけど気にしてちゃ温存しなくていい物まで取っておいてしまう、今は目の前だけ考えればいい。

 

「……やっぱり、遅い」

 

 そうして数分斬って飛んでを繰り返していたけどやっぱりおかしい、次々現れるのは旧型ばかりで一向に試作型が出てくる気配はなし。あいつらは時空加速(クロノアクセル)に対応してるから出てきてすぐ速度を合わせて迎撃ってのを想定してたんだけど此処までないのは変だ、3人魔導士(マギスター)が離反してバッカスが居ないこの状況で戦力を遊ばせておく余裕もないだろうし……何か裏がある?

 

「皆別途警戒!時間切れ狙って別働隊が来るかも、シルウィアさんを消耗させないようにして!」

「あいつらまだそんな余裕あるの!?」

「ないとは言い切れませんが……それならシルウィアさんは下がって、此処は私達で対処します!」

 

 一度時空加速(クロノアクセル)を切って皆に注意勧告。時間切れ寸前に飛んでこられちゃこっちも対応できない。時間結界貼ってクールタイムを確保するってのもできなくはないけどそれは制限時間までにテトラがネプトゥーンをどうにかできてる事が大前提、想定は常に最悪を、何が起きてもいいように……!

 

「テトラ、そっちは!」

「これが大丈夫な様に見えるんなら随分と能天気なことで!」

「交戦中に軽口を叩く態度の悪さは相変わらずなようだな」

「生憎性分だ、そっちの長物に執着する悪癖もまんまで変わりねぇなぁ!」

 

 テトラは籠手を纏った両手で三又槍を振るうネプトゥーン相手にインファイトを仕掛けている。弓よりも明らかに手慣れているしあの分なら1人でも心配なさそう、って言いたいんだけど……

 

「じゃあちょっと助太刀!」

「助けてくれって言った訳じゃねえんだが?」

「後ろは紗七達が守ってくれるからね!」

「数だけ増やしてどうにかなるとでも思っているのか!」

「いつぞや数だけ増やして奇襲してきたのはどっちかな!」

 

 懸念している時間切れ後の奇襲が本当にあるのなら今ネプトゥーンに付き合う暇はない。早めに決着を付けてないと後に差し支える……というか負担がシルウィアさん1人に集中してしまう。だったらやるべきは如何に速く彼女を撃破するか。

 

「合わせてテトラ!」

「後からしゃしゃり出てきていいご身分だなえぇ!?そっちが合わせろ!」

「貴様が他人に合わせられる訳がなかろう……」

「悪りぃが今は仕事じゃなくて個人的な付き合いなんでなっ!付与詠唱(チャージコール)、変形(トランスフォーム)!んで持って二重詠唱(デュアルコール)、速射(ラピッド)、追尾(ホーミング)!」

 

 バトンタッチして前衛に入った私をフォローするようにテトラは籠手を弓に変形、援護射撃でネプトゥーンを崩そうと私が剣を振るう合間に射撃を差し込んでくれる。弓は苦手とか言ってたくせに結構的確な援護してくれるじゃん、謙遜も過ぎると嫌味になるよ。

 

「お前が、お前がこれ程の協調性を……?有り得ん、使命にすらいい加減に向き合っていた貴様がこんな!」

「いつまでも昔のこと引きずってんじゃねえよ。私はアポロじゃなくてテトラ・フローガ!別人の事話したって何の意味もねぇ!」

「それに今貴方が相手してるのはテトラじゃない、テトラと、私っ!」

「なあっ!?」

 

 私と切り結びながら意識はずっとテトラの方に行ってて隙だらけ、少しフェイントをかければ簡単に引っかかってくれる。テトラの射撃に合わせて剣を振り上げれば簡単に槍が弾き飛んで宙を舞う、ただ……

 

「ちいっ…… 時空加速(クロノアクセル)、九倍速(ナインスクロック)!」

「やっぱり……行くよテトラ!時空加速(クロノアクセル)、九倍速(ナインスクロック)!」

「バテたら承知しねぇぞ!時空加速(クロノアクセル)、九倍速(ナインスクロック)!」

 

 やっぱり此処で切ってきた、さっき温存してて大正解。ネプトゥーンがどれだけ慣れてるかによるけど時空加速(クロノアクセル)を使った戦闘にはこっちに分がある。あっちも長期戦に持ち込む気はないだろうし……此処で、ケリを付ける!

 

「加速した世界で矢は届くまい!」

「ハッ、固定観念に囚われすぎなんだよ!付与詠唱(チャージコール)、光線(レーザー)!」

「それに貴方が戦っているのは私、忘れないでよねっ!」

 

 ほんの少し詠唱が遅れたせいで武器の回収は許してしまったけどそれだけで不利になる訳じゃない、テトラが詠唱している間また距離を詰め攻撃させないよう連撃を仕掛ける。そこそこ慣れてきたようで振り方を変えても合わされてしまっているけど押し返されるって程でもない、だったらこのまま抑えておくのが一番良い。

 

「お前は昔っからそうだ!真面目じゃない、任務に真摯じゃないとか雑多に理由付けて他人を理解するのを拒みやがる!」

「理解するだけ無駄だからだ!貴様もウルカヌスもマルスもバッカスも皆事の重大さをまるで理解していない!世界が滅びる瀬戸際なのだぞ!?」

「だったらなんで話そうとしないの!?結局は貴方が勝手に決めつけて対話を拒絶してるだけじゃない!」

「話して理解できる輩がいるのならこんな惨状になどなっていない!まともなのはメルクリウスだけだ!」

「その理屈じゃあ一番まともじゃねえのはお前なんだよネプトゥーンッ!」

 

 テトラが煽って気が散ったのか動きに多少の乱れが見える。それと打ち合う度微妙に動きが遅くなって行ってるのを見るに時空加速(クロノアクセル)はやっぱり使い慣れてない、このままぶつかり合えば確実に崩せる隙が見つかる。そこを突いて……一気に決める!

 

「黙れ裏切り者がっ!滅びゆく世界を見捨てて敵に尻尾を振った分際で!」

「その滅びゆく世界に一度でも疑問を持ったことはねぇのかお前は!」

「結局貴方は自分が正しいって信じて耳を貸そうともしないだけじゃない!誰かを信じなきゃずっとそのまま同じ所にいるだけ!」

「平和ボケしているからそんな事が言えるっ……「隙ありっ!」なあっ!?」

 

 図星を突かれたのか単に焦っているのかは知らないけど少しよろけるくらい明確な隙を晒した所に横薙ぎを叩き込んで崩す。このまま必殺と行きたいけど……

 

「っ、クールタイム挟んでないと、こうなるんだね……」

「下がってろ、決めてやる!必殺詠唱(フィニッシュコール)!」

「こ、の……!必殺詠唱(フィニッシュコール)ッ!」

 

 クールタイムほぼなしでの連続使用は思ったよりデバイスと身体に負担がかかるらしい、急な脱力感に襲われて剣を杖代わりに少し蹲ってしまった。テトラがフォローに回ってくれたから良かったけど……最後まで任せてしまうのは気が引ける、今のこの状態でできるだけの支援を、どうにか……!

 

「年貢の納め時だネプトゥーン!極炎弓(ソルス・ブレイジング)!」

「此方の台詞だアポロッ!極海槍(エノシガイオス)!」

 

 テトラが番えた矢に燃え盛る魔力を一点集中し、ネプトゥーンが構えた槍に凄まじい水の奔流が纏わりつく。何かを差し込むなら……ぶつかり合う直前。

 

「落陽射(トワイライト)!ブチ抜けッ!」

「螺旋撃(スパイラル)!」

 

 チャージが終わった2人の必殺が起動し、放たれた矢と槍がぶつかり合う……直前、今!

 

「呪文詠唱(アーツコール)、雷霆(ケラウノス)ッ!」

「なっ……」

「決めてやると言ったろうが大人しくしてろっての!」

「じっとしてられないから、かな……!」

 

 雷霆(ケラウノス)を槍に直撃させ僅かだけど勢いを弱める。本当ならこっちも必殺ってしたかったけどこの脱力感じゃまともに決まりそうもない、だから……テトラを信じて、任せる。

 

「馬鹿な、お前に、私が?」

「どれだけ信じられなかろうが目の前で起こっている事が現実だ。あれだけコケにしてた私にお前は負けるんだよ、ネプトゥーン!」

 

 一瞬の衝突の後槍を弾き飛ばした矢は勢いそのままに姿勢を崩したネプトゥーンの元へと向かう。ちょっと大丈夫かな?って思ったけど問題なさそうだ、やっぱ自分が思ってるよりも強いじゃん、テトラ。

 

「敗因を教えてやるよ。ま、お前というかタルタロス全般に言える事だが……」

 

 当然避ける間もなく。

 

「もうちょっと他人を信じてみろっての、無理な話だと思うがな」

「な、あぁぁぁぁ!?」

 

 ネプトゥーンに直撃し、炎が彼女の身体を覆った。

 

「……はぁ、立てるか三葉?」

「大丈夫……ありがとテトラ」

 

 思いっきり脱力した身体をテトラに引っ張ってもらって立ち上がり時空加速(クロノアクセル)を解除。このままネプトゥーンデバイスを破壊できれば楽、って言えればよかったんだけど。

 

「ミネルヴァ、テトラ!」

「こっちは終わりましたが……そっちは!?」

「見ての通りだ、無茶しやがって」

「あはは……」

「装神(マキアライズ)が……下がってください三葉さん、後は私達で」

 

 思ったより連続使用は身体に堪えたようでまだ脱力感が残っている。皆より先に装神(マキアライズ)も解除されてしまったしネプトゥーンへの精神ダイブは任せる事になってしまいそうだ。でもまあ機獣(ヘカトンケイル)はどうにかなったみたいだしこのまま退散……

 

「……ま、だろうな。ただで返すつもりはないらしい。八雲、ネプトゥーンと三葉退避させとけ」

「大丈夫、まだやれるから……」

「その状態で言うことじゃないでしょ!?ほら早く下がる!」

 

 フラグ回収と言わんばかりに展開した巨大なゲートを見てちょっと乾いた笑みが溢れる。ただで終わる訳がないと思っていたけどネプトゥーンが此処まで用意周到だとは到底思えない。だったらメルクリウス?でも彼女だってネプトゥーンが負ける前提で策は組まないはず、じゃあ誰が……

 

「この後に及んで何が出てくるっての……!?」

「この大きさ、まさかとは思いますが……」

「ウェヌス?」

「前に一度見た事がありますよね、この規模のゲート」

「……あ」

 

 ケレスに手を取ってもらって少し離れた所で剣を支えに少しでも体力を回復する。ネプトゥーンは倒れ込んだままだけど変身が解除されてないからデバイスは破壊しきれてない、それも懸念事項なんだけど、それよりも。

 

「まさか……」

「ゲート、開きます……この感じは」

 

 空を丸ごと覆うレベルの巨大なゲートから出てきたのは確かに機獣(ヘカトンケイル)。けど旧型でもなければ試作型でもない……ただ、私達はこれを知っている。

 

「……嘘でしょ」

「2号機……って事かな。いつできたのかは知らないけど」

 

 ゲートの大きさに見合うような巨体、いろんな生物を混ぜこぜにしたような各部位。何より見覚えしかない頭部。

 

「私達だけで……やれるでしょうか」

「やるしかないでしょう。大丈夫です……きっと彼女よりは弱い!」

 

 まるでパチモノのような、装甲色の黒いエキドナさんが空から降ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……エキドナ!?」

「どうしたのエンネアちゃ……うわぁ」

「密かに2号機を製造していたってことか……案の定ゲートのジャミングまでしっかりしている」

「それは想定済みだよロムルス……エンネアちゃん、メルクリウスも同行してるんだよね?」

「ええ、今ゲートを通過しようとしたみたいですが……」

「その分だと弾かれたか、分かった。今からジャミングを解除する、一時的に穴は作れるだろうけど完全に解除できるまで私はこっちに残らなきゃいけない……予定通り、頼むよ」

「ええ……クロノデバイス、確かに届けます」

「よろしい……それじゃあ、頼んだよ」

「はい!行くぞゼクス!」

「大声で言わなくても分かってる……前哨戦として申し分もない、付き合うよ」

 

貴方の変身ヒロインは何処から?

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