銃口を向けられて殺されたくない時は、年齢を下の方にサバを読むのが人情。しかし、四歳はやりすぎ。四歳なわけがない。そんなコメディです。

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銃口を向けられて殺されたくない時は、年齢を下の方にサバを読むのが人情。しかし、四歳はやりすぎ。四歳なわけがない。そんなコメディです。


四歳なわけがない子供

「まだいたのか!」

 

ジャックは、気配を感じ、とっさに銃口を向けました。

 

子供でした。さっき自分が殺した、敵のギャングチームのうちの誰かの子供か??

 

「ガキか。。。」

 

ジャックは銃口を向けたまま、しばらく止まっていましたが、ふと、力が抜けたような笑みを浮かべると、こう言いました。

 

「坊主、お前は殺されるかどうか、怯えて固まっているな。正直に言おう。オレも殺すかどうか迷っている。お前、何歳だ?」

 

「四歳です」

 

ジャックは笑い出しました。ニヒルな笑いや、不敵な笑みとかではなく、ゲラゲラ笑い出したのです。

 

ジャックは、いや、ジャック役の俳優は、笑いがようやくおさまると、監督に涙目で話しだしました。

 

「監督、もう僕、無理です!絶対に笑ってしまいます。だって、どう見ても中一か小学校6年ぐらいですもん。

 

子供ながらに、殺されたくないから、ちょっと下にサバ読んで答えるシーンなのは、分かりますけど、四歳て!!四歳は絶対ないから、笑ってしまいます!!いや、ほんまに50回もNG出してすいません!!でも、セリフ変えてもらえませんか?絶対四歳じゃないといけないんですか?」

 

「ダメだ。助かりたいがあまり、映画の設定では10歳なのに、四歳ととっさに言ってしまうところが、このマフィア映画の隠れたこだわりポイントだ。ちなみに、この子の実年齢は14歳だ」

 

「それ、なんで言うんですか!実年齢!絶対また笑ってしまいます!!14歳の奴が、銃を向けられて、殺されたくないからって、四歳ですって!!!あかん!お腹痛い!!なんで実年齢言うんですか!!!」

 

ジャック役の俳優は、またゲラゲラと笑いだしました。

 

「実年齢は関係ないだろ!しっかりしろ!この子の年齢は10歳だ!!」

 

「いや、それにしても、殺されたくないからサバ読むとしても、9歳でしょ!ヤンチャして8歳とかでしょ。お祭り騒ぎで、7歳でしょ!!!

 

4歳は、絶対に笑います!!!僕じゃなくても!セリフを『9歳です』に変えてください!お願いします!!」

 

「ダメだ」

 

「いや、四歳なわけないもん。映画観てる人も変やと思いますよ。四歳です、のセリフだけカメラ割り変えて、別撮りにしてくださいよ。そしたら!」

 

「セリフはこだわりがあるから、絶対に変えないし、ワンシーンで撮影しきるという手法にこだわってるから、ダメだ」

 

「じゃあ、監督、このシーンだけ、スタントマンに言わせてください。背中ごしに。僕は絶対に笑ってしまいます」

 

その瞬間、監督がブチギレました。

 

「ガタガタ抜かすな!!!俳優として恥ずかしくないんか!カス!!ハードなカーチェイスシーンでスタントマン使うなら、まだしも!!

 

笑ってまうからスタントマン使う??情けなくないんか、コラア!」

 

監督は目の前のテーブルを、蹴りあげました。現場は、一気に緊張感に包まれ

 

ジャックの背中は凍りつき、一気に笑う空気が吹き飛びました。

 

「監督!今なら絶対いけます!すいませんでした!どうかしてました!!」

 

そして、撮影が開始されました。

 

ジャックは、子供に銃口を向けました。

 

「ガキか。、、、、

 

坊主、お前は殺されるかどうか、怯えて固まっているな。正直に言おう。オレも殺すかどうか迷っている。お前、何歳だ?」

 

「四歳です」

 

ジャックは、ゲラゲラ笑い出しました。

 

「四歳なわけないやろ!アハハ!あかん!もうあかん!!」

 

ジャックだって笑いたくないのです。ジャックは笑いながら泣いていました。

 

何度も何度も撮影は続きました。

 

ジャックは色々なことを試しました。

 

両親のセックスを見てしまった時のことを思い出しながら銃口を向けました。

 

「四歳です」

 

ジャックはゲラゲラ笑い出しました。

 

見かねた助監督がジャックの実のお母さんが病院で亡くなったという嘘の情報を教えたりしました。

 

「四歳です」

 

ジャックはゲラゲラ笑いました。

 

実際には、「四歳です」まで進むこと自体が、まるで、SASUKEの最終ステージに行くことみたいに珍しく、その前に、ジャックは子供を見るだけで、笑い出したりしていました。

 

とうとう、監督は、顔を真っ赤にして言いました。

 

「このシーンを一番最後に撮影する!!今日は撤収だ!!!」

 

月日が経ち、撮影はどんどん進みました。

 

ジャックは、作品に対するイメージ作りがどんどん進んでいきました。脚本の良さに引き込まれていくにつれ、俳優として、一皮も二皮もむけていったのです。

 

そして、半年後のことです。

 

もう、絶対に笑わない。そんな低次元の意識で俳優をしていない。

 

ジャックは自信を持ってラストの撮影に挑みました。

 

「5秒前、4.3.2.、、、よーいアクション!!」

 

監督の号令とともに撮影が進みます。問題のシーンです。

 

ジャックは、銃口を向けました。

 

「ガキか」

 

そう言って銃口を向けたジャックの肩がプルプル震えています。

 

思春期の子供の成長は恐ろしいものです。子供の身長が13センチほど伸びているのです。

 

こいつが、今から「四歳です」と言うのかと思うと、ジャックは、絶望的な気持ちになりました。

 

ジャックは、この半年間のことを思い出しました。

 

「四歳です」でNGを連発した夜は、浴びるように酒を飲みました。

 

翌朝、知らない裸の女が横に寝ていました。

 

お笑いのビデオを取り寄せ、笑ってしまったら最初から見直さないといけない、という笑わない訓練もしました。

 

ジャックは、ふと、肩の震えがおさまりました。

 

何も面白く感じません。お芝居の神様がいるとしたら、舞い降りたのです。

 

四歳です。

 

四歳です。

 

四歳です。

 

もう、何も面白さを感じません。ジャックは笑わないための心の旅に出て、地球を一周し、面白さの向こう側にたどり着いたのです。

 

肩の震えは、子供を前にした緊張の演技ともとれます。まだNGじゃない!大丈夫だ!!!

 

「坊主、お前は殺されるかどうか、怯えて固まっているな。正直に言おう。オレも殺すかどうか迷っている。お前、何歳だ?」

 

子供が答えそうになる瞬間、ジャックの脳裏に、知らん裸の女が浮かびました。

 

「あいつマジで誰やねん」

 

ジャックは今度はそっちが面白くなってきました。ヤバい!!!!

 

この、どう考えてもでかいガキが四歳ですと言わなければ、俺の人生に出現しなかった、裸の女なのです。

 

イヒッ。イヒッ。なんや、あの女、イヒッ。

 

「また会ってくれる?」とか言うてたぞ。

 

イヒッ。イヒッ。

 

ジャックは心の中で笑いました。この半年間で身につけたテクニックです。しかし、それも限界があります。

 

ガキめ!早くしてくれ!!!笑っちまう!!!このセリフがないところの緊迫感がダメなんだ!!

 

子供は答えました。

 

「よ、よんさ、ぶふーっ!!!!」

 

今度は、子供がツボに入ってしまっていたのです。

 

仕方ありません。箸が転んでもおかしい年頃です。

 

「監督!僕、む、無理です!こんなん、笑ってしまいます!!今日、15歳の誕生日です!!

 

僕の身長は162センチあります。それを、よ、よ、四歳て!よ、四歳なわけないし!!!あーっはっはっは!お腹痛い!お腹痛い!!セリフだと、笑ってしまうんで、片手で4本指を出すだけにしてください!」

 

ジャックは反対しました。

 

「そんなんされたら、ほんまにちっちゃい子供が年齢聞かれた時にやるやつやから、余計に笑ってしまうやろ!!!いひーっ!いひーっ!!!くぴーっ!!ちょぺーっ!」

 

半年間でジャックは笑い方も変わり果ててしまいました。

 

監督は激怒しました。

 

「おい、お前ら、ずっと何してくれてるねん!!いい加減にしろ!!!!もういい!」

 

監督は、怒って去っていきました。

 

一時間後、監督はスケッチブックを持って戻ってきました。目が殺し屋の目をしています。ジャックよりもジャック役にふさわしいほどの、恐ろしい目をしています。

 

「ガキと大根役者!ここに座れ!」

 

子供とジャックは床に座らされました。

 

スケッチブックの一枚目にこう描かれています。

 

“【四歳です】で笑わないためのアイデア集”

 

「今から俺が、スケッチブックをめくっていく。二人とも笑わなかったアイデアを採用する!!」

 

ジャックと子供はもうすでに笑いそうです。

 

ひとつめ!

 

【子供を別の子供で撮り直す】

 

ジャックがゲラゲラ笑いました。

 

「そんなことされたら、余計笑ってしまいます」

 

次!!

 

【また半年後に撮影する】

 

ジャックも子供も拍手笑いしています。

 

「そんなことされたら、僕の身長が!くぴーっ!」「あひゃひゃーっ!!そんなん余計に笑うーっ!!」

 

次!!

 

【次、笑ってしまったらお前ら二人ともノーギャラ】

 

二人は、シーンと静まり返りました。

 

監督が「これか?」と思った瞬間です。

 

ジャックと子供がのたうちまわって笑いだしました。

 

「そ、そ、そ、そんなことしたら、の、ノーギャラで、一体何やってんねん!!と思うから、余計笑ってしまう!!あひゃーっ!」

 

子供はその横で顔を真っ赤にして、笑いすぎで、ゲボを吐いています。

 

「おえーっ!!あはははは!ノーギャラだったら、プライベートなんで、僕がプライベートで年齢聞かれて、四歳って答えてることになりますよ!あひーっ!!!」

 

いつの間にか、撮影所に、ジャックが半年前に抱いた、裸の女が今日は服を着て、観に来てます。

 

ジャックと目が合いました。

 

「なんでおんねん」

 

ジャックは笑いころげて、脱糞しました。

 

それでも、殺し屋の目をした監督は、スケッチブックをめくります。

 

【逆に、NGになった回数のギネス記録を申請して、記録を超えるまでやる】

 

ジャックは、笑いながら、「それはいいアイデアだ!記録を更新したらしたで、話題性が出るし、記録がとだえたということは、撮影が成功したということだし」と思いましたが、もう呼吸困難で、それどころでは、ありませんでした。

 

ジャックは息が出来ず、痙攣しだしました。

 

ジャックは、この一時間後、搬送先の病院で亡くなりました。

 

故人のアイデアにより、スタントマンにそのシーンをやらせて、とりあえず映画は完成しました。

 

悲しいことに。

 

ジャックの葬式で、このことを思い出して、笑わない自信が誰もないので、撮影関係者は誰もいきませんでしたとさ。

 

おしまい。

 

 




芸人、ネタ作家、短編小説家。“理系の変な奴”は自分で髪の毛を切ります。それが私。ついでの用事が二個ないとお墓参りに行かないです。
Twitter、noteなど色々やってます。

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