磯野家の奇妙な冒険~ある日、家族全員スタンド使いになってしまった~   作:XX(旧山川海のすけ)

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第1章 スタンド使いになりたくて
第1話 弓と矢


「母さん、会社のゴルフコンペでどういうわけか運よく優勝できたんだが」

 

「まあお父さん、それは良かったですね」

 

 

 

 ある日曜日の夕方。

 磯野家ではちょっとした事件が起きていた。

 

 この家の家長である父・磯野波平が、その日丸一日掛けて参加した会社主催のゴルフコンペで運よく優勝したのだ。

 そしてその優勝賞品が今、一家の食卓たる卓袱台の上に置かれている。

 

 磯野家のメンバー7人と1匹がじっとそれを見つめていた。

 そして

 

「父さん、これって」

 

 磯野家長男、丸刈り少年カツオが口を開いた。

 目を輝かせている。

 明らかに興奮していた。

 

「弓と矢だよね!?」

 

 弓と矢。

 それはスタンド使いの才能を引き出すための謎アイテム。

 その形状は原始的で、洗練されていない。

 だけどそれゆえに、このアイテムが持つ恐るべきパワーがひしひしと伝わって来る。

 

 波平が勤める山川商事主催のゴルフコンペの優勝賞品は「弓と矢」だったのだ。

 大人組4人は皆困惑していたが、子供たち3人は皆興奮していた。

 

「早速使おうよ! 僕、スタンド使いになりたいよ!」

 

 カツオの高揚した声。

 彼のスタンド使いへの憧れが手に取るように伝わる熱い声。

 

「そうよお父さん! 私もスタンド使いになりたいわ!」

 

 カツオの妹のおかっぱ少女ワカメもそれに同調。

 

 しかし父・波平は苦い顔だ。

 

「しかし、スタンド使いに覚醒出来ない場合は死ぬんだぞ? おいそれとは……」

 

「そうよ! 日常生活にスタンドなんて不要なんだから!」

 

 そんな父の言葉に、カツオとワカメ2人の姉のサザエがサポートするような言葉を続ける。

 

 折角スタンド使いになれるかもしれない可能性が目の前にあるのに……

 その危険性について恐れておらず、成功することしか考えていない子供たちはそんな大人たちの慎重な意見が到底納得できないでいた。

 

 そんなとき

 

「ママ」

 

 サザエの息子である刈り上げ幼児のタラちゃんが母親を見上げる。

 サザエは隣に座っている息子に

 

「何タラちゃん?」

 

 笑顔で応え。

 タラちゃんは

 

「ちょっとこれ、触っていいですか?」

 

 無邪気に卓袱台に乗った弓と矢を指差した。

 サザエは息子の言葉に少し思案したが

 

「壊しちゃダメよ?」

 

「壊さないですー」

 

 触りたがってるんだし、ちょっとくらい触ってもいいだろう。

 明らかに壊すとか、誰かを狙うとか危ないことをはじめたら止めさせればいいし……

 

 そう思い、彼女は息子が弓と矢を取ることを制止しなかった。

 

 そして

 弓と矢を握ったタラちゃんは

 

 

「えーい!」

 

 

 即座に。

 弓を引き、自分の母を矢で射貫いていた。

 全く躊躇いなしに。

 矢はサザエの首筋に深々と突き刺さり、明らかに致命傷の域に達していた。

 

 矢を放った当の本人……タラちゃんは

 

「僕はスタンド使いになりたいですー。グダグダ肝っ玉の小さいことをぬかすんじゃないですー」

 

 そう笑顔で言い放った。

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