磯野家の奇妙な冒険~ある日、家族全員スタンド使いになってしまった~ 作:XX(旧山川海のすけ)
カツオはその声に聞き覚えがあった。
「ノリスケおじさん!」
波野ノリスケ。
今おじさんと言ったが、実際はカツオの年の離れた従兄。
父の波平の妹の子で、磯野家によく出入りしている人物だ。
妻帯者で、子供も1人いる。
そんな人物が、狭い建物の隙間のような道から緊張した面持ちで手招きをしていた。
九死に一生。
カツオはそちらにダッシュする。
普段のノリスケは問題の多い人物で、磯野家の冷蔵庫を勝手に漁り、中身を食べてしまうようなことをやらかす。
でも今はそれどころじゃない。
カツオは誰かに頼りたかった。
ノリスケはカツオの手を取った。
そして走り出す。
「カツオくん、遠くに何かに追われているように見えたのだけど、何で追われていたんだい?」
走りながらノリスケはカツオに問う。
カツオは
「クラスの女の子が、僕と戦おうとしているんだ!」
声量を抑えつつ、その問いに答える。
ノリスケはその言葉に
「ええっ、話が見えないな! どういうことだいそりゃ!?」
驚きを示しつつ、説明を求めて来た。
カツオは走りながら説明する。
クラス女子の花沢さんと一緒に下校していたら、突然スタンド攻撃を受けたのだと。
そのスタンド攻撃で、花沢さんが突然自分と戦おうとしてきたと。
「……スタンド。カツオくんはスタンド使いなのかい?」
ノリスケはカツオの話を聞き終えてそう返す。
ノリスケにはカツオのスタンドが見えていないのだろうか?
「僕のスタンド見えないの?」
なのでそう訊ねるとノリスケは頷き
「僕はスタンド使いじゃ無いからね」
そう真面目な顔で返した。
……そうなのか。
タラちゃんが最優先でスタンド使いにしそうな人物なのに。
カツオはそれが意外だった。
「しかし、どうしてカツオくんがスタンド攻撃を受ける羽目になったんだろうね?」
走りながら呟くように言うノリスケ。
カツオには心当たりがあった。
「多分、ウチの家の問題だと思う」
「磯野家の?」
カツオは頷く。
「実は父さんがゴルフコンペで優勝して、弓と矢を貰って来たんだ」
「そりゃすごいねぇ」
カツオの言葉にノリスケは心底驚いているように見える。
カツオはノリスケのその様子に少し誇らしい気持ちになる。
「それで、その弓と矢を盗もうとする誰かがいるみたいなんだ」
「そうなのか……」
ノリスケは思案する。
そして
「なぁカツオくん、僕に弓と矢を預けてみないかい?」
そんな提案をしてきた。
磯野家が謎の敵に襲われるのは弓と矢を持っているから。
ノリスケは、弓と矢を預けることの適当な手段への心当たりがあるらしい。
それが一体何なのかについては、ノリスケは教えてくれなかった。
今話せるような話じゃない、と言って。
けれども
(ノリスケおじさんの言うことにも一理ある)
弓と矢を安全な別の場所に預けられるなら、それに越したことはないのではないか?
そうなれば、もう襲撃者に奪われることを警戒しなくて良くなるのだから。
なのでカツオは
分かった。父さんに頼んでみる。
そう答えようとした。
でもそのときだった。
スタッと。
目の前に女の子が降り立ったのだ。
それは
「見つけたわよ磯野君」
……花沢さんであった。