磯野家の奇妙な冒険~ある日、家族全員スタンド使いになってしまった~   作:XX(旧山川海のすけ)

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第30話 恐るべき隣人

 伊佐坂(いささか)先生の手には万年筆のようなものが握られていた。

 あまり見ないタイプの万年筆だ。

 キャップが嵌められるような形状に見えないのだ。

 

 ……ひょっとしたら、マキシマムプリズナーのスタンドとしてのヴィジョンは、万年筆なのかもしれない。

 

 伊佐坂(いささか)先生はマキシマムプリズナーの基本的な能力は、初期の岸部露伴のヘブンズドアーと同じだと言った。

 

 だとすると「本にした相手の頁に文字を書き込むことで、相手に絶対服従の命令を与える能力」があるはずだ。

 岸部露伴の能力で一番恐ろしい能力。

 

 三郎とノリスケもそれにやられたんだろう。

 

(どうしよう……?)

 

 文字を書き込まれたら終わりだ。

 例えば「伊佐坂(いささか)先生に服従する」なんて書き込まれたら、カツオはもう逆らうことが出来ない。

 精神力は関係ない。これはそういう能力なのだ。

 

「さて。まずは伊佐坂(いささか)難物(なんぶつ)に攻撃を加えることは出来ない、と書こうか」

 

 伊佐坂(いささか)先生はそう言ってカツオの頬の頁をめくり、そこにさらさらと書き込む。

 カツオは「終わった」と思った。

 

 今、もう反逆の一手を打つことは不可能になった。

 

 絶望するカツオ。

 

「これでもう安心だ」

 

 伊佐坂(いささか)先生は自分の絶対的安全性を確保し

 

 次に

 

「じゃあ、人格に歪みが出るかもしれない命令を書き込む前に、カツオくんの人生を見せてもらうとするかね」

 

 そんなことを言い出したのだ。

 カツオは

 

「……人格的な歪み……?」

 

 そんな言葉を絞り出す。

 伊佐坂(いささか)先生は頷き

 

伊佐坂(いささか)難物(なんぶつ)のために弓と矢を奪い取って来る、なんて書きこむと、本当のカツオ君に歪みが出る可能性があるからね」

 

 そんな恐ろしいことを口にした。

 

 思えば……

 

 三郎さんも、ノリスケおじさんも。

 人を襲うような人間では無かった。

 

 全て、伊佐坂(いささか)先生の命令によるものだった。

 そして今、その2人は納屋で縛り上げられて口を噤み続けている。

 

(僕もああなってしまうのか)

 

 この作家先生のために、親しい人を裏切り、襲うことを躊躇わない人間に。

 悔しかった。

 

 だけどカツオには何もすることができない。

 

「さてと。現役小学生の人間性とはどんなものだろうね……?」

 

 そんなカツオの心をガン無視し、伊佐坂(いささか)先生はカツオの頁を捲った。

 

「……何々? 自分は大器晩成型。学校の勉強は思わしくないけど、世の中には中学校しか出て無くても偉くなった人もいる……? ハッハッハ、それはまあ完璧には間違いでは無いねぇ」

 

 伊佐坂(いささか)先生はカツオに記載されている内容に興味を持ったらしい。

 

「思った通りカツオ君には面白いことが書かれているね。こういうのが個性的で面白いんだ。尖った人間性でないと、面白い話は書くことが出来ない……とまでは言わないが、難しくなる」

 

 伊佐坂(いささか)先生は顔は笑っているが、目は笑っていなかった。

 自分が本にした人間の人生に集中している。

 

 カツオはそれが恐ろしいと思った。

 

 この人物の前では、全ての人間が資料なのか……!

 こんな、こんな人間が近所に居たなんて……!

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