磯野家の奇妙な冒険~ある日、家族全員スタンド使いになってしまった~   作:XX(旧山川海のすけ)

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第5話 違和感の正体

「風邪だって聞いたのに元気だな」

 

 中島は寝巻姿では無かった。

 長袖のシャツに、半ズボン。

 普段着だ。

 

 中島は暗い廊下を歩いて自分の部屋にカツオを連れて行きながら

 

「午前中にすっかり治ったんだ」

 

 そう、何気ない感じで返す。

 カツオはその中島の言葉を「ふぅん」と聞き流した。

 

 別に疑うような内容では無いし。

 風邪程度、朝突然掛かってもおかしくないし。

 そして半日寝てるだけで治っても別に変じゃ無いだろ。

 

「まぁ、無理するなよ」

 

 でも、なんとなくの違和感が拭えず。

 そう返すカツオの声はどこか固かった。

 

 

 

 中島の部屋は、カツオの部屋同様の和室で、畳敷き。

 そこに学習机が1つ置かれている。

 

 部屋には押入れがあり、そこに布団を入れてるんだろう。

 中島はこの部屋で寝起きしているはずだから、布団が無いのはそういうことだろ。

 

 部屋は暗く、カーテンを閉め切っていた。

 中島は部屋に入って、まず電灯を点ける。

 

 カツオは中島が畳の上に腰を下ろしたので、自分もそれに倣って腰を下ろした。

 

「まあ、元気そうで良かったよ」

 

 言いつつカツオは時計を探した。

 カツオは腕時計を持っていないので、この部屋にあるはずの時計が重要だと思ったからだ。

 カーテンを閉め切っているから、外の明るさで時間が予想できない。

 時計が確認できないと困る。

 

 しかしその前に

 

「なぁ、中島」

 

「なんだい磯野」

 

 中島は微笑んでいる。

 

 カツオは

 

「何でカーテンを閉め切ってるんだ?」

 

 思ったことをまず訊いた。

 こんなの暗いし、電気代が勿体ないだろ。

 

 理解できない。

 

 カツオのそんな当然の問いに

 中島はこう返す。

 

「さっきまで寝ていたからだよ」

 

 さっきまで寝ていた?

 午前中に風邪は治ったのでは?

 

 いや、それよりも

 

「えっ、でも布団ないよな?」

 

 さっきまで寝ていたなら、布団を片付けるのは変では?

 困惑したカツオはそこを確認しようとした。

 

 中島が何もせずにゴロゴロ寝ていることが好きな怠惰な少年であるなら、それもありだろう。

 でも中島はそうでは無かった。少なくともカツオの認識の中では。

 カツオと一緒に楽しく野球をすることが好きな少年だ。

 

 だから寝ていたというならば、横にならないといけない理由があるはずなのだ。

 カツオはそこを訊ねようとする。

 

 しかし

 

「それよりも!」

 

 中島がカツオの言葉に被せるように口を開く。

 

「磯野! 今日学校で何があったか教えてくれ!」

 

 学校であったことを教えろ。

 病欠した人間がそれを訊くのは極めて自然だ。

 

 変な質問ではない。

 

 カツオはなんだか疑問に思う部分はあったが

 

(そもそも僕は、中島がどんなスタンドを得たのかを知りたくて来たところもあるし)

 

 そう思ったのと。

 

(そういえば第3部でホリィさんがスタンド使いになる強さが無いせいで倒れてたな)

 

 その可能性に思い当たり、自分の感じた違和感を拭い去る。

 そうだよ。あり得るんだと。

 風邪が治っても、なんとなく横になりたい。

 そんな感じになっても変じゃ無いだろ。

 

 じゃあいいか。

 

 そう思ったカツオは気にしないことにして

 

「実はクラスの皆、スタンド使いになったんだよ」

 

 今日クラスであった大事件を話すことにした。

 

 

 

「そうか……花沢さんがラブ・デラックスで、早川さんがスパイス・ガールか……」

 

 中島は衝撃を受けていた。

 まさかクラスメイトが全員スタンド使いになるなんて。

 信じられない事だろう。

 

 目を丸くして呟く。

 

 そして

 

「で、磯野はどんなスタンドを得たんだ?」

 

 中島は身を乗り出すようにして訊ねて来る。

 明らかに興奮している。

 まぁ親友のスタンドだ。興味あるに決まってる。

 

 けれどもカツオは

 

(……どうしよう?)

 

 迷った。

 

 もし自分が得たのが、スタープラチナやゴールドエクスペリエンスレクイエムなら嬉々として語っただろう。

 誇らしげに。

 

 だけど自分が得たのは原作に登場したことも無い、読者が考えたようなヘボスタンド。

 ぶっちゃけ、恥ずかしいと思っていた。

 

 でも、親友相手に見栄を張って嘘を言うなんて……

 

 迷う。

 なので

 

「悪い、ちょっと時間を見せてくれ」

 

 結構話した気がするし。

 暗くなる前に帰らないといけないのは、小学生であるカツオにとっては当然のことなので

 

 それを理由にカツオはこの会話を打ち切ろうとした。

 中島はその言葉に

 

「ちょっと待ってくれ」

 

 押入れを開き、その中にしまっている畳んだ布団の上から

 

 ……目覚まし時計を取り出した。

 

 押し入れに時計……?

 

 何でそんなところに時計を?

 

 困惑する。

 まるで隠しているようじゃないか。

 

「……4時10分だね」

 

 中島の言葉。

 その言葉に

 

「えっ、まだそんなもんなの?」

 

 カツオはさらに困惑する。

 だいぶ話したのに。

 

 4時半くらいになってるものかと……

 

「中島、その目覚まし電池大丈夫か?」

 

 カツオは立ち上がり、時計を見ようと近づく……

 

 そのとき。

 

 カツオは見てしまった。

 押入れの奥。

 

 そこに

 

 白い石で出来た何かがあることを。

 

 それは仮面で……

 

 男性的な顔を象っている。

 そしてその唇の端に、確かに牙の存在が見て取れた。

 

 ……これは

 

 間違いない。

 

 

 

 石仮面じゃないか!

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