磯野家の奇妙な冒険~ある日、家族全員スタンド使いになってしまった~   作:XX(旧山川海のすけ)

7 / 41
第7話 近距離パワー型

 咄嗟にカツオはスタンドを出していた。

 

「ジャイアントスター!」

 

 カツオの背後に現れる、バネのようなものがくっついたギブスを身に着けた屈強な人影。

 それはカツオの一歩前に出ると、飛び掛かって来る中島に思い切りバットによる一撃を加えた。

 

 バットは中島の腹部を捉える。

 

「KUAAAAAAA!」

 

 中島はアルファベットの悲鳴を上げながらぶっ飛び、押し入れに突き刺さる。

 その瞬間、カツオは部屋を飛び出した。

 

 逃げなければいけない。

 

 中島は吸血鬼になってしまった。

 そして自分を襲って来たのだ。

 

(どうしてこんなことに)

 

 平屋の廊下を走り、玄関に出る。

 

 キチンと靴を履く暇は無い。

 かかとを踏みつぶすようにして自分の靴を引っ掛け、走り出す。

 

 紐靴であるなら不可能な芸当だ。

 

 カツオは走りながら靴を履き直し、考える。

 

 中島の家を出るときに、時計を見た。

 時間は5時を回っていた。

 

 ……あのとき、中島はまだ4時だと言ったのに。

 この暗さ……

 

 そう。

 10月に差し掛かっているので、今の日没は5時なのだ。

 まだ日が落ちて間がないのか、少し明るいが。

 

 

 なのでおそらく……

 中島は、外に逃げられても問題の無い時間まで、自分を引き留めておきたかったのだ。

 つまり……

 

(中島のやつ、最初から僕を襲うつもりだったのか)

 

 そうとしか思えない。

 そこに考えが至ったとき。

 

 カツオは涙を流していた。

 大切な親友が、違うものになってしまった。

 

 こんなことって……

 

 そして感傷に浸ろうとしたとき

 

「磯野ー」

 

 ……背後から。

 中島の声が聞こえて来た。

 

 

 

 自宅を目指していたカツオは、咄嗟に方向を変えて公園に飛び込む。

 自宅に連れ帰れば自分の家にはスタンド使いたちがいる。

 

 その中に、クレイジーダイヤモンドを使用できる姉がいるのだ。

 

 帰り着ければ助かる。

 確実に。

 

 だけど

 

(中島がそれを許してくれない)

 

 ここから家まで隠れる場所が無い。

 道中で追いつかれたらそこでジエンドだ。

 

 なので……

 

(ここに隠れて、やり過ごすしかないよ)

 

 公園に飛び込み、カツオは公園の植え込みに姿を隠した。

 

 気づくな……気づくな……

 

 そう願い、中島が通り過ぎてくれることを願った。

 しかし

 

「磯野ー。居るんだろー?」

 

 ……中島は公園の中に入って来た。

 声が聞こえる。

 

「ぼくたち、親友だよな? だったらぼくの渇きを共有して欲しいんだよ」

 

 親友だから、自分の仲間になれ。

 そう親友は言っている。

 

 カツオは絶望した。

 

「ぼくの仲間になって、深夜の野球をしようぜ」

 

 中島……

 その言葉で中島との思い出が、急速に過去のものになる。

 

 悲しかった。

 親友だったのに。

 

 だが

 

 そんな悲しみは

 

「見つけた」

 

 その言葉を間近で耳にしたとき。

 恐怖に変化した。

 

 反射的に再びカツオはジャイアントスターを発現させた。

 

 バットは背後から覗き込んでいた中島の顔面を捉える。

 

「BUGYAAAAAAAA!」

 

 中島は再びアルファベットで叫び声をあげ、ぶっ飛び。

 すぐに起き上がった。

 

 そして

 

 バットの一撃を喰らい吹っ飛んだ歯や、折れた鼻を自分の手で再配置して。

 負傷を再生させていた。

 

 ただ、割れた眼鏡だけは戻らない。

 中島は眼鏡を捨てる。

 

 そして言った。

 

「……磯野のスタンド。2度味わって思ったんだけど」

 

 ニヤリ、と微笑みながら。

 

「間違いなく、近距離パワー型だよな」

 

 そんな微笑む中島の口元には。

 長く伸びた犬歯が光っている……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。