まぁ、クリスマス回ということで
「クリスマス、ね」
某フライドチキン専門チェーン店の看板を横目に呟く。
別段何かあるわけでもない。
小さい頃はよくバーレルパックを親が買ってきたっけ。
もう覚えてないし、そもそもそんな時期があったかは疑問だけど。
そして。
「人多すぎ……都会かよ」
こんなド田舎の駅前が人でごった返している。
この辺り一帯を焼き野原にしてもっと見晴らしをよくしてやりたい、とは思ったが、ぐっとこらえた。
弾薬の無駄使いをすると、クライアントに小言を言われかねない。
代替案としては、ここら一帯をフーガしてしまいたい。が、あいにく俺にジュリョクはない。
あきらめて人波を縫うことにしよう。
……仮に、目の前に死にかけの人間がいて、助けるために猛毒の物を飲み込むとかいう、そんな勇気なんてものは、全くないのだが。
「はーっ……」
あいにく手袋を忘れたので、手に息を吐きかけながらすり合わせる。
狙撃の腕も鈍るので、冬は滅べばいいと思っている。
夏は夏で日傘だのなんだので的が絞りづらいので、夏も滅んでほしい。
春は花粉がつらいし、秋が落ち葉がかったるい。
やはり日本の四季は悪い文明だ。
「……にしても」
遅い。
集合時間はとうに過ぎてるはずだ。
まさかドタキャン?
だとしたらここまでくる意味がなかったことになる、非常に無駄な時間を過ごしたというわけだ。
そう考えて帰路に一歩踏み出した瞬間、ふと頭部に危機を感じて、歩いた勢いで、靴紐を結ぶふりをして屈む。
するとその約1秒後、俺の頭の上を何かが通っていき、ちょうどイルミネーションを飾っている木の幹に直撃し、大きく揺れた。
「銃弾……同業か?それとも」
――
俺の頭部を狙って撃たれたであろう弾は、俺の右側から来ていた。
そちらを顔を動かさずに見てみると、何か黒い影がビルの屋上で動いている。
何かしらの被害が出る前に片付けよう。
どうせ時間にはもう間に合ってないのだ。
向こうにも、俺が遅れてきたことを指摘される謂れはない。
……まぁ、此方にも俺が時間内に来ていた、ということを証明する謂れもないのだが。
さて、ゴミ処理を終えたので、集合場所に戻ると、すでに待ち人がいた。
急いできたのだろう、若干肩が上下している。
そこへ群がる、カスが5、いや6人。
俺のではないが、見てて気分が悪い。
よくもまぁ人が死にかけた場所でナンパができるもんだ、俺じゃなければ死んでいた。
ちょっとした礼儀を教えてやろう。
ちょうど手を伸ばそうとするやつの手を掴んだ。
「あ?んだテメェ」
「連れだが」
「んだよ彼氏持ちかよ。でもいいや、彼氏より気持ちよくさせてや――」
「会話対象は俺のはずだが。あと目を見て話せ。死にたくないならな」
至近距離で睨んでやれば、脱兎のごとく逃げ出した。
「……ありがとうございます。助かりましたわ」
「見てて気分が悪かった。ああいうのは嫌いだ」
「同感ですわ」
そういって息を吐く俺の待ち人……「
「あなた、手袋は?」
「……忘れた」
「ふふっ、昨日わたくしに散々防寒対策を講じておられたのに、お茶目ですわね」
そういうと祥子は左手の手袋を外し、俺の左手に着けた。
そして手袋を外した左手を、俺の右手とつないでから、自分のコートのポケットに手を突っ込んだ。
「なにを――」
「こうすればあったかいですわよ」
「……あのなぁ」
犯罪者の手をそう易々と握るもんじゃない、と言いたかった。
でも。
「楽しみですわね!」
「……そうか」
祥子の笑顔を見てたら、そんな野暮なことは言えなかった。
ましてや、こんな子に自分が殺人を繰り返しているなんて、言えるはずもない。
「……はーっ」
「なんだかさっきより白いような……」
「夜になりゃ温度は下がるからな。凍り付く前に建物に入ろう」
「えぇ、そうしましょう」
手袋をつけた左手より、つないだ右手のほうが、ずっとあったかかった。
デート編ですか?そこになければないですね~