変身ヒーローズは謎の世界で開拓中 作:筆人矢
この世界にはヒーローが数多く存在する。
仮面の戦士、戦隊、伝説乙女……とにかくたくさんいる。
そしてそれと同じくらい、敵の組織と怪人もいて、戦いがある。
ヒーローたちは、悪の組織を撃ち滅ぼすために、今日も戦い続けている。
少なくとも、俺もその1人だ。
「オラァ死ねクソおやじ!!!」
「グボァァッ!!!」
そして今、俺は最後の決戦中だ。
俺をこんな化け物の姿に勝手に改造手術しやがったクソおやじをボコボコにしていた。
俺──天坂イゾウは元は普通の男子高校生だった。
だが、親父のイカれた実験につきあわされ、結果的に肉体を怪人同然にするような手術を強制的に受けさせられた。
その結果、全身を黒い鱗の様な物で覆い、ドラゴンのような見た目になることが出来るようになった。怪人だよこれ。やってくれたな親父お前。
その後ヒーローが着てくれたが、俺の手術は完了していた上に元の人間に戻ることはできないと来た。
一応、人間の姿には戻れるが──右腕が上手く戻らなかったのだ。
右腕が真っ黒な鱗に覆われた、トゲトゲしい状態から一向に戻らない。
ヒーロー側の医者にも同行することが出来ずじまいとなってしまったのだ。
おかげで衣類は特注品に総置き換え。折角買ったカッコいいシャツも右側切り裂かないと着れないという深い悲しさを背負うことになった。
俺はヒーローとして怪人をぶちのめす活動を続けながら手術の後に失踪した親父の居所を探っていき──ついに親父の隠れ家を見つけたのだった。
「そんな悍ましい姿になりやがって!!! 人間の想いはどこに行ったよ、ええっ!!?」
しかし、親父はもはや俺の知る親父ではなかった。
親父は怪人組織に魂を売りさばき、人ならざるものになる実験を繰り返し──ついには自分自身をも化け物に変えた。
「グボッ、グ、舐めるなァっ!!!」
「舐めてンのはテメエだボケぇっ!!!!」
「イゾウ君、口調悪いよ!」
「るせえマナー講師!! 親子喧嘩に口出すな!!!」
「いや、それは……」
もはや人としての面影は親父からは消え失せた。
俺が殴る場所が親父の手なのか足なのか、顔なのか腹なのか股間なのかすらわからなくなっていた。
その気味の悪い肉の塊は、男か女かすらももはや明確ではなかった。
魔術的な呪詛や生物的な兵器を次々と肉の割れ目から生み出し続けるだけの、化け物に成ってしまっていた。
「これがお前の望んだ姿か!!? 俺よりデザインセンスが無いぜ親父!!! 俺の方がもっといいデザインにできただろうなあ!!!!」
「イゾウ君……」
「おちついて、私たちは私たちのするべきことを」
「……はい!」
俺が処理しきれない呪詛や化け物は、勝手に同行してきた戦隊やら魔法少女やらが勝手に処理してくれている。
おかげでとことん親父を殴ることだけに集中できる!
「──さぁっ、年貢の納め時だ!!!」
「ぐ、ガ、ァあっ──わた、しは……世界を超越した、生命タ──」
「じゃあな、クソおやじ!!!」
力をどこまでも込めた強烈な一撃。
それが親父だった肉の塊の中心を捉え抜いた。
手応えがある感触が、拳から、鱗から響く。
「──────…………──」
そして、肉の塊は呪詛やら化け物やらを産み出さなくなった。
完全に死んだ。俺が殺した。
親父を、実の父親を、俺が──。
「イゾウ君……」
「…………──っ!?」
俺らしくもない、センチな気分に浸っていると、突然どこからか嫌な音が聞こえだした。
ブクブク、ゴポゴポと水が溢れ出そうとしているような音だ。
それが、親父だった肉の塊の内側から聞こえてきた。
「──お前ら逃げろ! 親父はここを空間ごと消し飛ばすつもりだ!!」
「君はどうするんだい!?」
「受け止める!」
「何を言ってるんだ! できるわけが──」
「俺は時空移動用の怪人だぜ、できないどうりはない!」
俺の改造は、時空を移動する際に肉体を保護することを目的で取り付けられたものだろう、と医者は言っていた。
時空について、というのは俺には詳しくは解らないが、ある程度時空についての見識を広げて、異世界の力を利用する戦術ができるぐらいには詳しいつもりだ。
だからこそ、解る。
親父は俺を道連れにしようとしているってな。
「ダメだ、そんなこと──」
「もうここは持たない。行こう」
「待って! イゾウ君を──!」
「──彼の覚悟を、無駄にしないで」
「そんなっ──!」
「──そう易々と死んでたまるかよ」
思えばこの1年間、親父をぶちのめす為だけの日々だった。
元の人生は崩壊し、元の家では住めなくなり、元の暮らしはできなくなった。
ヒーローとしての日々は疲れる。
時にヒーローをやめたいとも思ったが、それでも、ここまでやって来たんだ。
「あと一歩を、邪魔されてたまるかよぉっ!!!」
右腕に全ての力を籠める。
異世界の力、充填。
怪人の力、充填。
ヒーローの力、充填。
俺の全ての力を込めて、このクソおやじの最後の置き土産を全力で食い止める。
あのマナー講師どもを、外に逃がせるぐらいのパワーに抑えるために。
──思えば、いちいち突っかかってきてうっとおしい奴だったけど、いてくれたおかげでまあ退屈しない日々が過ごせた。
「──────」
俺のその想いは、口に出ていたのだろうか。
それとも──。
そう思うよりも前に、拳が先に出た。
肉を抉り穿つ、全力の一撃が肉の塊を打ち抜く。
拳で貫いた穴の内側から、溢れ出ようとしてくるエネルギーを俺の力でできるだけ調和していって。
食い止めて。
くいとめて。
クイトメテ──。
そして──俺は、意識を失った。