変身ヒーローズは謎の世界で開拓中 作:筆人矢
──ぼやけた視界で、耳鳴りの激しいなか、何かが聞こえる。
「──親父、どうしてあの人は自分を改造したんだ?」
「ああ、それはヒーローとして、だね」
「どうしてだ? なんでそんなことをするんだ? 自分の身体が惜しくないのか?」
これは……昔の記憶か?
ガキの頃の……親父の研究所に訪れた時の、記憶。
「そうしてでも、誰かを守りたいんだろうね」
「どうしてそれで改造になるんだ?」
「え?」
もともと親父は人体研究の第一人者で、人体の良心的な改造に携わっていた。
ヒーローの改造手術を何度も行っていたっけか。
それで、俺は──。
「なんで守るために失わなきゃいけないんだ? あいつら、自分のことは守らないのか?」
「イゾウ、君は……」
「俺は──」
俺は、この時なんて言ったっけ──…………?
「──はっ!」
一気に視界が鮮明になった。
先ほどまでの光景が一気に消え去る。
どうやら見ていたのは夢だったらしい。
「…………?」
辺りを見渡す。
既にわかる、異常な光景が俺の視界中に広がっていた。
星空のような、そうではないようなキラキラとしたモノが浮かぶ空。
大地は白色に近く、しかし雪ではなく、熱くもない。
そして、背後に何やら巨大な光の壁があった。
「──いや、柱か?」
よくわからない。
ここは一体どこなんだろうか。
この場所はどこなのだろうか。
あの時、確かクソおやじを殴って異世界のパワーやらなんやらを俺が防いだんだが──。
「その時に俺、異世界に飛ばされたか?」
これが一番あり得そうな説だ。
でなければ、ここまで理解不能な状況の空間、地球には存在しない。
あるいは宇宙の何処か、という可能性も今思いついたが……宇宙のヒーローは聞いたこと自体はあるが俺がヒーローとして活動している最中では一向に出会ったことがない。
縁もなにもないのに突然宇宙に飛ばされるなんてこと、理解できるわけがない。
なので、個人的には前者の説だな。
あるいは……ここが死者の世界、というヤツなのかもしれない。
この謎の世界を歩いていると、廃墟のようなものを見つけた。
いや、残骸と言った方が正しいのだろうか。
「こりゃあ……どっかの街か?」
それはまさに街だった物であり、今や人っ子一人すらいない、無人にして崩壊した廃墟群であった。
ひび割れ、砕かれたレンガの壁。
燃えている木製の家屋たち、そしてグチャグチャに散らばる骨の山。
「…………」
特段やることのなかった俺は、それを見過ごす気にもなれず──骨の山を、地中に埋葬してやることにしたのだった。
仏教なんかも全然知らないから、まあ、形だけのお祈りを一緒に捧げてやった。
この骨たちが元はどんな暮らしをしていたのか、それはもうこのガラクタの山になっているだろうが……それでも、まあ、静かに眠ってほしい。
そんな感じのことを頭の中で数回唱えて、その場を離れる。
「ん?」
思えば、この廃墟と白い大地との境目はどうなっているのだろうか。
この場所に立ち入るさいはそこまではっきりと見ていなかったかもしれない気がしたので、出ていく際にはしっかりと見ておこうということにした。
そうしてこの廃墟と白い大地の境目に戻ってきて、遺跡との境目を確認してみる。
すぐ見ただけでもこの廃墟の異常性がわかった。
「なんだ、この切れ目……紙がやぶれたみたいな断面してやがる……」
折り紙をやぶった際、色のついた部分の下に白色の、薄い紙の部分が付いているかのような……あのような断面だった。
断面は尖ってはいたが、鋭くはなかった。かといった硬くもないし、柔らかくもない。
触った感触から言えば……この断面は、白い大地と同じ素材でできているのではないか、と思った。
「ここは一体何なんだ……?」
思えば思うだけ不思議な世界だ。
こうして変な廃墟があるかと思えば、その断面はこうもペラペラみたいな感じで。
まさに異世界だが、何か違う。
異世界と思えない。
この感覚は俺の右腕から、全身の内側──怪人としての俺が、ヒシヒシと感じていた。
俺の全身の改造は、時空を渡ることを念頭に置かれた怪人として設計されたらしいことを検査してくれた医者から聞いた。
だからだろうか。
この空間が異世界ではない、と俺の身体が叫んでいるかのような気になっているのは。
「──そう言えば、異世界にはユグドラシル宇宙理論とか言うのがあるって聞いたな……」
異世界出身のとある魔法少女から聞いた、眉唾物の理論だったか。
確か──俺たちの世界は異世界含め巨大な世界樹の『葉っぱ』であるとか何とか……。
……
「……じゃあ、ここは『枝』、なのか?」
そう思うと腑に落ちる部分がある。
天空に見える星のようなものは『葉』であり『異世界』そのもので、そこから落ちてきた──『崩壊した世界』の断片がこの地に多少の影を残している。
そんなところか?
とはいえ、何も確定事項も存在していない状態で推論だけで考えている状態だ。
もうちょっとこの世界のことを理解しておかないと……。
そう思った矢先。
「ん?」
星の1つからキラリ、と何かが飛び出たような光が出てきた。
それはグングン速度を上げながら、別の星へ向かうように天空を横切ろうとして──。
──何を血迷ったのか、移動方向を直角に変えた。
光はグングン速度を上げて、この世界の重力に引かれ始めた。
つまり、ここに落ちて来る。
「は?」
「わああああああぁあっ!! 止まって止まってえええええええ!!!」
まるでもなにもないぐらい、隕石かと見間違うほどの衝撃波と共に降ってきたそれは確かに人の言葉を発したのだった。