●月◯日〜●月*日 強さの秘密
連日連夜修行をしているとシゲルがアローラ地方にやって来た。遊びに来たわけではなく、Zワザを求めてやって来た。
カメックスナイトを手に入れるよりもZワザを選んだ……まぁ、誰でも簡単に使える物だから汎用性は高い。
「ほぉ、お前がマサラタウンの一番星とやらか」とアトベにシゲルを紹介するとそう返ってきた。
オーキド博士の孫扱いはシゲル的にどうなんだろうか。ポケスペのグリーンはオーキド博士を誇りと思っているがそれはさておき孫としての色眼鏡で見るのだけは止めてくれとは思っている……有名人や名家の血筋はどうしてもそういう眼鏡が。
シゲルの奴に聞いたが、サトシはポケモンバトルの特訓をしてるのかしてないのかよく分からないらしい。
有名な試合を動画で見たりイメージトレーニングとか瞑想とかはしているのを見たと言っていたが……普通にダメだと思う。
ありかなしかで言えばありな特訓だ……サトシに合っている特訓でもある。そこは否定しない。でも、今のサトシに足りないのは特別な何かではなく積み重ねていく1だ。
サトシが1を積み重ねるんじゃなくて唐突に3とか7を積み上げるタイプだ。
唐突にと言っているがなにかしらのイベントが起きる。体験して学ぶでしか学べないという実戦に強いと聞こえだけはいい言葉が出る。タケシとカスミを相手にバトルの練習をしているのかを聞けばしていないらしい。
「刻むではなく盛るをやっちまってて足踏みしてる典型的な一例だな」とアトベは認識する。
刻む?とシゲルは疑問に思っているのでホワイトボードに階段を書いた。そこに4つのマグネットを用意する。
1番上の段には俺とアトベ、その次の段にシゲルがいる。
サトシが何処かと言えば5段ある内の2段目だった……シゲルは俺達が上に居るのはやや納得がいかないが、サトシの立ち位置は納得が出来た。しかしそれは違うぞと俺はサトシの立っている立ち位置、一番下の段に挑むところに居るというところにマグネットを置いた。
「いくらなんでもバカにし過ぎだよ。あんなのでもリーグの出場資格は満たしている」
シゲルはなんだかんだでサトシの一部は認めている。
だから俺やアトベの認識が間違いだと思っているだろうからポケモンの名前を書く。
ピカチュウ、ゼニガメ、ピジョン、リザードン、フシギダネ、ケンタロス、クラブ、ベトベトン、オコリザルの9体だ。
ピカチュウ=【10まんボルト】【でんこうせっか】
ゼニガメ=【みずでっぽう】【こうそくスピン】
ピジョン=【つばさでうつ】【でんこうせっか】
リザードン=【かえんほうしゃ】【ちきゅうなげ】
フシギダネ=【はっぱカッター】【たいあたり】
ケンタロス=?
ベトベトン=?
クラブ=?
オコリザル=【きあいパンチ】【メガトンパンチ】
コレを見てなにかピンと来るかと思ったがサトシが持っているポケモンとその技ぐらいだ。
その認識で良い……が、問題はここからでありサトシはここから先の成長を見ていない。サトシはポケモンと一緒に強くなろうとしている、それそのものは良いことだし全員が通る道だ。じゃあ、ここのなにがいけないかって言えばサトシはその次のステップを踏み出す事をしない。
ポケモンは強靭な足腰を手に入れたりして強くならないといけない。
じゃあ、トレーナーも筋肉ムキムキになって強くなるのか?と聞けば「そんなの全然スマートじゃないね」と否定をする。
それはまさにその通りだ……ジムからジムに行く冒険が出来るレベルの強靭な足腰があればそれで充分なんだ。
ポケモンは成長し進化する。ならば、トレーナーも成長し進化する。
しかしここで1つの問題がある。ポケモンにはタイプや能力という方向性が決まっている。リージョンフォームやフォルムチェンジ等でタイプが変わるポケモンが居るがそれを除けば見た目が大きく変わってもタイプが大きく変わるわけじゃない。自分が使っているポケモンなんだからなにが出来てなにが出来ない、なにを鍛えたい、なにが出来るようになりたい、そういう方向、矢印がある。
シゲルはサトシに自慢する知識がある。それを使ってバカにしていた。その行為はさておき言っていた事に関しては間違いじゃない。
サトシがコレからどんなポケモンをゲットするかは知らない、俺達と言うイレギュラーが居るから原作通りじゃない可能性がある。離脱しているオコリザルが居るのがその証拠だ。
この方向性、矢印を決める!っていうのは普通のトレーナーならば皆がやっていることだ。
中には特別ななにかがあるが、大抵は普通の事だ。まぁ、分かりやすく言えば【ひのこ】から【かえんほうしゃ】に進化させようとかだな。それはトレーナーとして通る道だ……と言うかぶつかるべき普通の壁で皆がなにかしらの手で乗り越える。
サトシの場合……運命力と言うべきか、環境ガチャがヤバすぎた。
フシギダネ、ヒトカゲ、ゼニガメ……何処に生息しているか分からない御三家をゲットした。群れのリーダーのベトベトンをゲットした。そいつらは戦う意思はある。ロケット団との戦いがありロケット団を倒してしまう。そしてそのロケット団がホントに大事な場面、主にジム戦で余計な事ばかりするから皆がやっているジム戦を挑めていない。仮に挑んでも1回は負けていたりするし、お情けのバッジだったりする。
タケシとカスミに責任転嫁するつもりは無い。
あの2人もお情けのバッジとか言っているがあの2人は渡した側の住人だ……ジムバッジが勝った証ならばそこに情は要らない。まず第一に勝てたか負けたか、第二にその勝ち方は綺麗だったり考えられた勝ち方だったのかだ。
サトシは本来ぶち当たるべき壁にぶち当たらなかった。普通ならば早々にゲットできない激レアなポケモンを3体もゲットしてしまっている。3体ともポテンシャルはとても高い。その内の1体はエースと呼べる実力を現段階で持っている。言うことを聞かないという点があったがそこは改善された。
じゃあ、改めて聞くがポケモンと一緒に成長しよう!と言う考えを持つトレーナーがレベルアップするのはどうすればいいか?
それを聞いたシゲルは考える。
ここで直ぐに聞き返さずに考える事が出来るのでやはり強敵だなと思いながらも、結局のところの答えが出る。
ポケモンの中には安定した強さや安定しない強さとかそういうのはある。それは仕方がない事だ。出来れば安定したいけども、生き物は機械と違って100回同じことをやって100回とも同じ風に出来ているわけではない。
美味しいご飯に炊けるかと科学的に研究した結果が素材に拘った上でも最後に運の要素があると言うデータもあるというからな。
サトシはエースではない。最後を託せる奴でもない。最初にとりあえず確定で1発奪える速攻が出来る奴でもない。
サトシはそれらを上手く扱わないといけないポケモントレーナーだ。だから全てを満遍なく扱えるようになる……と言うのが理想図だが人間得意不得意がある。そしてサトシはポケモンが今持ってないタイプだから欲しい戦力だからゲットするんじゃなくて人間性が合うからゲットしたりしているところとそいつが居るからゲットしなくてもいいという考えがある。
ポケモンには物理攻撃と特殊攻撃がある。
だから、同じ【ほのお】タイプでも【かえんほうしゃ】主体の特殊型と【ほのおのパンチ】なんかが主体の物理型、メガシンカ前提な特異なタイプの3種類を揃える……そこがまぁ、ベストだろう。でもそれが出来るのはゲームのポケモンで、育成期間云々もある。
だからサトシの9種類のポケモンだけは悪いとは言わない。それにだけ育成の力を込めればポケモンリーグ優勝も出来る。
それを言えば「サトシが?」と驚いている。負けず嫌いなところがあるとは言えサトシが優勝出来ると思っていない……が、俺の目が間違いなければサトシはその気になればポケモンリーグを優勝する事が出来る可能性はあると思っている。
ピカチュウとフシギダネを進化させない、ゼニガメも嫌だと言うのならば進化させない。
進化、と言うのが無しでもどうにかする事が出来る。ただし、コレはサトシがスゴいのでなくサトシの持っているポケモンが強い、その認識が正しい。色々とあるが分かりやすく言えば正しく道を用意したりすればサトシは上に行けるんだ。
その事を言えばシゲルは呆れる。
「それは誰もが同じでその正しい道って言うのが分からなくて四苦八苦するんじゃないか……いや、でも……」
「他の人はコレで成功したから自分もコレで成功しよう、なんてのは甘すぎる考えだぜ?」
正しい道を歩めばゴールに辿り着けるのは当たり前のことだが、その道が分からない。
アトベは他の特例と言うなの成功があるとしても最初に開拓した人しか成功しない。開拓して道を舗装して後に続く誰かに歩んでもらうのでなく、自分が歩くだけならばある程度の泥道、危険な道でも別に構わない。
「その正しい道は俺には心当たりがある……ただ、サトシはその道を歩むチャンスが来た時には意識してか無意識かは分からないが避けている。今もポケモンの育成にのみ集中する事が出来る環境下で胡座をかいている。自分のスタイルと適合しているポケモンが居て、そのせいでぶっつけ本番に強かったりする。ぶっつけ本番に強いのはサトシの地力が強いのでなくサトシの想像力や発想力、運がとても強い。想像力と発想力は特に強い。別に地力を鍛えなくても問題無いレベルで強すぎる。シゲルがサトシの中にある自分を倒してくる可能性、サトシが唯一シゲルに勝っている爆発力の正体がそれだ」
「…………成る程……発想力や想像力か……確かにそれは負けているよ」
「サトシのその辺は超一流だ……元からサトシのそっちのセンスが物凄く高いと言うのもあるが、高い爆発力が生まれる理由はしっかりとある。そしてそれは同時に致命的な欠点でもある。長所と短所がくっついてるからそれを切り離し、短所をなるべく消す。そこがポケモンでなくサトシが挑まなければならない課題だ」
「……サトシと昔からの付き合いがある僕が言うのもなんだけど、サトシをよく解析しているね」
「あの手のタイプの爆発力だけはバカに出来ない、ある意味1番の曲者だ」
俺には分かる……仮に今の段階でサトシとフルバトルをしたら負けることは無いが1体も倒されずに勝つのは不可能なのを。
サトシが持っている爆発力がスゴすぎる、どう頑張っても91%以上に可能性を引き出せない……あいつと戦った場合は1体は確実に戦闘不能にされる。【みちづれ】みたいな技を考慮してもだ。
「……やれやれ、とんだトレーナーだよ、サートシくんは……でも、正しい道を歩めば優勝出来るのか……僕は……僕は爆発力は負けている。それはどうすればいいんだ?」
「あーん、Zワザはお前なりの答えじゃねえのか?……テヅカが出した答えは必ずしも正しいってわけじゃねえ。お前の中で納得も理解も出来ているかもしれねえがそれが正しいとは限らない。今の自分には無い他のなにかを探す、そのなにかがきっとあると思っているならばそいつは意味がねえ。いや、そう思うようになった時点で誰かからのアドバイスがないとリターンが一切無い……そしてそのアドバイスが必ずしも自分にとって正しいわけじゃねえ。なにかあった時の責任は取れねえし逆に弱体化もありえる」
「お前はお前なりに考え、Zワザと言う答えを出した……シゲル、ポケモンリーグの優勝を狙いに行くのは当然の事だ……だが、負ける可能性は高い。俺達よりも先にポケモンを貰っているトレーナーは数え切れないぐらいにいる。その中で頂点を目指す。オーキド博士が言っていた様にポケモンを貰った最初の年にポケモンリーグは充分すぎる功績だ。2年掛かる奴が多い……もし、負けたのならばそれは自分の実力不足、それを素直に受け入れて学習する事が出来る器にお前はなっている筈だ。少なくとも俺やカイドウはそこが出来る」
「……………もし、もしZワザでダメだったら?」
「お前は欲しい物が分かっている、その正体を1枚ずつ暴いていく。1つずつ段階を上げていく。もし1段上がる事が出来ないと思うのならば、自分が上がれる高さにまで刻むんだ」
「……ありがとう、テヅカ」
シゲルの心の中で色々とモヤモヤがあった。
自分が出来ない奴と分かるのが怖いとかでなくこれ以上は届かない、上に上がる事が出来ないと言う恐怖が何処かにあった。
シゲルはとてもスッキリしたのでポケモンスクールを目指す。オーキド校長に会いに行く。
「いいの?あんなアドバイスをして……確実に化けるわよ」
シゲルの成長を促すアドバイスを送ったことをカレンに呆れられる。
俺と関わっている事で既にジョウトリーグの時よりも強くなっている……別に今更強敵が1人増えようが構わない。
スポーツの中にはエンジョイ勢とガチ勢が居る……ポケモンリーグはガチ勢が挑む場所だ。だから相手が強い方が楽しい。それに……言わなくてもシゲルは気付くと思う。サトシとシゲルはライバル関係だ。仮にサトシに常勝する事が出来たとしても俺という壁が立ち塞がる。その壁にぶち当たって挫折する……オーキド博士の孫なら見たことがあるだろう。トレーナーとして挫折する奴を。
俺は1から10までアドバイスはしないし、シゲルは考える事が出来る。考える事が出来るから問題は後は考える方向性を鍛える。ただただ純粋に知識を蓄えるのでなく、知恵になる知識を蓄える……シゲルはそれが出来るタイプだ。更に言えばサトシはそれが出来ないタイプだ。
シゲルはハラさんから大試練を受ける。
アドバイスらしいアドバイスは一切しない。他人に具体的なアドバイスを送ることが俺はしない。考えることこそがトレーナーの仕事だ。だから俺も頑張っているとマリーが「1から100までの数字を足したら幾つになるかしら?」と聞いてきた。
嫌がらせ、ではなくマリーからの挑戦状だなと認識を切り替え……「50以外の数字で100を作り続ける」と答えれば聞こえるレベルの舌打ちをしてきた。
悪いがそういう感じの問題はしっかりと勉強している。
マリーは1から計算して数字を叩き出すのでなく即座に答えを出す方法を考える事が出来るかしら?と挑戦状を叩きつけた。
1から100までの数字を足し算で足す、計算式はややこしいので書かないが49個の100が生まれ元からある100と合わせて5000,唯一足せなかった50を合わせ5050だ。
発想力や想像力は色々と考えるし意見の交流相手、カレンが居る。
100%俺が正しいとは思っていないから色々と言ってくれるから非常に助かる。
「Aの部屋に3つのスイッチが、Bの部屋に電球が3つある。この電球とスイッチは繋がっているがどれに繋がっているか分からない、どれがどのスイッチなのかAの部屋を1回利用するだけで当てる方法がある」
「つまんねえ知恵比べだな……」
俺の出した問題にアトベはサラッと答えを言った。
マリーはそれをわかっていなかったから悔しがっていた。カレンは1回聞いたことがある問題なのでヒントを出すべきかと考えていたがアトベも俺もヒント無しで答えたから普通に頭が良いのは羨ましいと言う。まぁ、頭は鍛えているからな。
●月※日〜●月☓日 リーグを目指して
カレンに「クラウンシティに行かないの?」と聞かれた。
クラウンシティにはエンテイとライコウが居る。そいつをゲットすれば戦力として充分すぎるぐらいに使える。
けど、俺は行かない……俺には既にラティオスとフリーザーが居る。
ラティオスはリザードンクラスになった。相性の上でフリーザーは倒せていないがそれでもリザードンクラスになった。
リザードンもフリーザーのおかげでレベルが段違いに上がった……筈だとは思う……ゲームでリザードンに覚えさせた方が良い技は全てマスターした。と言うか今持っているポケモン達は使えそうな技は全て覚えている。
多分、行けばライコウかエンテイのどっちかが挑戦権を与えてくれる。
アトベはアトベの人格でクラウンスイクンを惚れ込ませたところがあるが、クラウンスイクンには1回キッチリと実力は示している。
そしてビリジオンに対してもなんだかんだでエンペルトで1本奪った……何百回やって生まれる偶然の1回だったがアトベはそれを引き当ててビリジオンの心を開かせた。
ライコウとエンテイに魅力を感じないと言えば嘘になる。アトベからの紹介ならば挑戦権はくれるだろう。
クラウン産だから持っているだけでスゲえとなる……だが……シライシとユキムラに挑戦権を与える。譲る。
別に伝説のポケモンに頼ることに対する罪悪感は無い。
現実の世界大会では絶対に伝説のポケモンがパーティに入っている。6体全てが伝説ではない……だからこれから貰えるマスターボールは遠慮なく使う。伝説厨と言われればそこまでだろうが……アトベ達は確実に使ってくるからな……。
とりあえずは修行は終わった。
セキエイ大会が開催されるセキエイ高原付近に行く空港があるのでそこに向かう……マサラタウンを経由するけど家には帰らない。
テニスラケットもボールも既に家に送っている……「チャンピオンリーグで会うぞ」とアトベと俺とお互いに健闘を祈った。