●月▓日 スゴいぞセキエイ大会
昨日の日記を読み返し、サブタイトルをつけ忘れていた事に気付く。
はじめての大会なのである程度は追い詰められるのは覚悟していたが日記のサブタイトルを付け忘れるのはかなり追い詰められた状況だった。コレは世に言う甲子園の魔物的なものだろうかと考えるが、そういう事を考え続ければ沼に嵌る。泣き言を言いたいのは山々だが泣いている場合じゃない。泣き言を考えている暇があるならばなにか出来ることを探す、目的に対する無駄な足踏みはしないでおこう。
セキエイ大会の参加者と関係者は全ての施設が無料である。
何故かあったテニスの壁打ちが出来るスペースで黙々と壁打ちを続ける。1時間ぐらいぶっ通しで壁打ちをして気持ちの整理を行う。やはりアレだな。テニスとポケモントレーナーの二刀流が厳しいかと思ったが意外となんとかなる。感覚的に言えば勉強の息抜きにやるスポーツぐらいの感覚だが。
1時間ぐらいぶっ通しで壁打ちを終えたのでカレンが「美味しいものでも食べましょう」と言ってくれる。
食に関しては日本人なので拘る。と言うかこっちの世界の料理も日本人の舌に合う様に出来ている。なにせ日本人が作った世界だから。げんこつハンバーグ的なのが無いのかを探せば一口サイズのグレン風火山ハンバーグの無限ハンバーグ店があった。
わんこそばよろしく無限にハンバーグが出てくる無限ハンバーグ、しかもグレン風火山ハンバーグだ。グレン風火山ハンバーグは普通に美味いので黙々と食べる。食事中になにかしらの会話はしない。ただひたすらに胃袋の限界までグレン風火山ハンバーグを食べる。
コレを食べているとげんこつハンバーグを思い出す。
満腹になったので今度はお茶を楽しむ。飲茶じゃない、純粋なお茶だ……お茶に関しては出身的に妥協は出来ない。
軟水の75℃のお湯を使い1分間蒸らす……他の県民はコレが出来ないと知った時は割と衝撃だったな。
お茶が出来たのでゆっくりと飲む。
グレン風火山ハンバーグを食い過ぎたが胃袋に余裕がある。お茶を流し込む余裕がある。お茶を飲めば色々と思い出す。深くは書かないが前世の事だ。閻魔大王が後続の憂いを断ち切る事をしてくれたので深くは考えない様にしている。しかし俺は今、ポケモンリーグ・セキエイ大会という晴れ舞台に立っている。少しは自慢したいと言う思いはある。
「いかん、油断するとここに来れた時点で満足してしまう」と俺は言葉にする。言葉にしないと分からないこともある。
人間はなにかを満足するとある程度は他を妥協出来る。セキエイ大会に出れるだけでもスゴい事だ。しかし忘れがちかもしれないがコレは地方リーグだ。地方リーグを優勝してはじめて全国大会に、チャンピオンリーグに出れる。地方リーグに出れるだけで満足したらそこで詰んでしまう。見た目が手塚国光なのに油断する……セキエイ大会、いや、ポケモンリーグの魔性の魅力は恐ろしい。
もうちょっと遅めに大会の会場入りをした方がよかったのだろうか?
1回目だから当たって砕けろの精神で行った方が良い。肝心なところで踏み込む精神力、コレは割と大事だろう。勝負になったら色々と変わるがそれまでの間に色々な泣き言を言っている俺はホントに情けない。俺達ならばいけるぜ!と言う自信が無い。
大会が始まる前に気落ちする。色々な要素で気持ちが落ちていく。コレはホントに洒落にならないと思い瞑想をする。
何処かに答えがあるとは思わない。ただ気持ちを落ち着かせる。昨日のカレンは俺を普通の状態に戻すのにスゴく必死だった。やっとの思いで普通の状態に戻したのにそれなのにたった1日で不安定な状態になる……俺のメンタルは貧弱だな。
瞑想をしているとピロリロリンと備え付けのパソコンにメールが入った。
なんだ?と思いメールを開けばセキエイ大会の聖火ランナーに選ばれた。ファイヤーの炎を灯す例のアレ、確実にオリンピックを意識した物である。カレンが「運を呼び寄せた甲斐があったわね」と最近大きくなってきたデカい胸を張る……俺は勝てる為に色々な事をしないといけない。まだ強いのか弱いのかハッキリと分からない。なんの結果も残せていないのだから結果がプラスに、いい方向に繋がる形になるのならば使える手は使おう。
俺は聖火ランナーを引き受けることにした。
コレで気分を落ち着かせる事が出来る……なにかしらのキッカケを手に入れる事が出来るとは思っていたがキッカケが手に入った。
しかしまぁ、ファイヤーの聖火ってどういう風に入手して保存をしているんだ?オリンピックの聖火はなんか太陽光を反射させて熱を凝縮して灯しているらしいがファイヤーの聖火はまんまの炎だし何処かの段階で消えたりするリスクもある。ジョウト地方はホウオウの聖火だったりするし……どういうルートで入手したのか……図鑑に伝説のポケモンの写真が載ってるしジョーイさんがむげんのチケットを持っていた事からポケモンリーグ協会の誰かがファイヤーとかホウオウとかの伝説のポケモンを持ってる説がありえそうだ。
●月★日 物差しは正しく
俺達は早目に来たが、そろそろ普通の段階、普通にジムバッジを集めた人達とかが会場入りしている。
バスでセキエイ大会の観戦する人達が団体で来ていたからやはりポケモンリーグはこの世界では一大イベントなんだなと実感する。
シゲルがやって来た。腕にはZリングがついていた。
しまキングの大試練を突破しZリングを無事にゲットすることが出来たみたいで「なにZを手に入れたんだ?」とあえて聞いてみる。シゲルが答えないならそれは仕方がない。普通は答えない、答える必要が無い。しかしシゲルは一切の嘘を使わない。心理戦を一切せず、ミズZ、コオリZ、ハガネZ、カクトウZ、ノーマルZの5つを見せた……コオリZとハガネZは脅威的じゃないが、ミズZ、カクトウZ、ノーマルZは危険だな。と言うかどれもカメックスに使えるZワザだ。エースに代わる第二のエースでなくエースを今よりも更に強くしよう……時間的にも間違いではない考えだ……アローラに行ったのだから練習時間を少し減らし他のZクリスタルを探せば良かったなと少し後悔する。Zクリスタル自体が神秘的なアイテムだからカレンの念写で見つからないからめっちゃ地道に探さなくちゃいけないのが難点だが。
シゲルはやはり大きくなっているなと思っているとシンジとも遭遇する。
シンジとシゲルは初の顔合わせだなと思っているとシンジが「3世の威光で勝てるほどにポケモンバトルは甘くはない」とシゲルを煽るがシゲルは「僕はオーキド博士の孫としてはなくオーキド・シゲルとして名を残す。だからなにも問題は無いさ」と言い切った。
シンジがシンジなりに煽ったがシゲルは自分がオーキド博士の孫というコンプレックス云々を完璧に乗り越えている。この心の強さはバカには出来ない。
「そのリングは?」とシンジが俺とシゲルが装備しているZリングについて気付いた。
どうやらシンジはZワザを知らなかった……アローラ地方は外の地方との交流が少ないからアローラ地方独自の文明、Zワザは実は結構なマイナーなものだったりする。シンジにZワザについて自慢げに語るシゲルはメガシンカ以外にもそんな物があったのか!となる。
Zワザの価値……Zワザは必殺技だが相手を倒すことだけが必殺技じゃない。
盤面を無理矢理動かす、危機的状況を脱出する、そういうのも必殺技だと僕のヒーローアカデミアで言っていた。シンジは直ぐにZワザの価値を見抜く。入手難易度だけを言えば割と低い。しまキングかしまクイーンに頭を下げる。転生者組は特例だが、基本的にはそこから試練を与えられてZリングを貰いZクリスタルを自力で探す。大体はそんな感じであり、シンジはクチナシさん辺りを頼れば良い。あの人はアローラで数少ないアローラは良いところだと知っているうえで外の世界を熟知している人だからな。
ただシンプルにめんどくせえと言うだろう。しかしクチナシさんにやる気を出させればZリングは貰える。ハラさんからだとシンジの人格面で失格になる可能性が結構高い。クチナシさんははぐれものとかを受け入れる感じだからな。
Zリングはメガシンカよりも入手難易度が低い。アローラ地方が平穏ならば永遠に使えるものだ。
シンジは時間が余ったらZリングを手に入れようと決意する……と言うことは今回はシンジはZワザを使ってこない。メガシンカはメガシンカ出来るポケモンが限定的だしメガストーンを装備するアイテムを装備しているから分かりやすい。
シンジみたいな強い奴が強い武器を使ってこない。
コレだけで少し心にゆとりが生まれるがシゲルはZワザを使ってくるので油断する事は出来ない。
シゲルもシンジも無事に大会の出場登録を済ませた。
ジムバッジを8個以上手に入れこのセキエイ大会の出場条件を満たした後はどうしていたのか?と聞けばシンジは実家の育て屋で修行をしていたと言った。実家が育て屋は強いな。生まれた頃からポケモンに触れ合いポケモンバトルに関する知識を蓄えて生のポケモンバトルを見ることが出来る……舌が肥えるのでなく目が肥えているだろうな。
ポケモンバトルに関するあれこれの知識が当たり前の様に身に付いている、理屈抜きでシンプルに強い。
シゲルも打倒サトシ!打倒テヅカ!と色々と考えていたが同じ歳の奴で高レベルな奴が他にも居るとは思っていなかった……油断していたな。
「3人とも大会が初出場なんだから自分は格下だと思わないと」とカレンが言えばシンジが「ヌルいな。物差しを正しく使えていない典型的な一例だ」と言い返す。カレンは「物差し?」と疑問に抱く。シンジはちゃんと言ってくれる。
「相手も自分もポケモントレーナーだ。ずっと同じレベルじゃない。調子のいい時と悪い時がある。調子が良く対戦相手が自分と相性が最高だった場合に出している力と調子が悪く対戦相手が自分と相性が最悪な場合だとレベルは大きく異なる。相手の最大値・最小値のどちらかを基準にして動いていたらミスをする。最初の大会なのだから自分は格下だと思い込み過ぎればホントは相手の方が下なのに勝てない、苦戦する状況が起きる。自分の物差しでしっかりと見極める。トレーナーとしての大事な基礎だ」
スゴく分かりやすく教えてくれた。俺はその意味を分かっていたがカレンやシゲルは分かっていなかった。
物差しでしっかりと見極める。コレだけはちゃんとしないといけない。初の大会だから格下だと思うのはいいが思い込み過ぎるのはダメだ……人間何事も程良くが大事だなと思い知らされるな。しかしシンジはしっかりとしている。既にその事に気付いている。なんでそんな事を言える頭になったのかを聞けばアトベと一緒に兄が出ているポケモンリーグを何度か観戦しに行った。そこで色々と見た。その上で色々考えた。そしてアトベに「物差しだけは間違えるな」と指摘された。
自分にとって尊敬する人である兄はきっと最強や無敵なんだと想像していた。兄は必死に努力をしている。シンジはその背中を見た。
だがそれでも勝てない壁が幾つか存在している。幾つかは突破出来たが、出来なかった壁があった。その壁に対する答えは自分らしさをぶつけることでシンジは自分らしさを気にしている。コンプレックスとかではない。ただ自分とはなんだという武器探しに必死だ。
やっぱり、全員が1回はなんだかんだでぶつかるか。
自分らしさと言う武器がなんなのかを……サトシはそういう壁にあまりぶち当たらないから天才肌だな。欠点はあるが。
しかし……シンジと言いシゲルと言い強化しまくりだな……シゲルは俺に指摘される、シンジはアトベに指摘される。アニポケのサトシのライバルでサトシとは違う答えを出すがそれまでの間は悩み続けている系のライバルは俺達が関与して成長している。逆を言えば俺達はサトシに深く関与していない。だからサトシが本来成長するところで成長するが、もっと成長しようと思えば成長する事が出来る部分を成長させていない。確実に何処かで詰む……まぁ、サトシが詰んだら世界が終わるとかそういうのは無い。劇場版関係が実際に起きると言うのならば問題は無い。劇場版の大体は悪者が出てくるのでそいつを倒せば良いだけだ。割と気楽に行ける。
キミに決めたとかココとかみんなの物語とかはそもそもで世界線が違うから起きないし。
聖火ランナー云々は2人には無かった。
カレンがパワーストーンとかで運気を高めてくれたから起きたこと……ホントに頭が上がらない。
因みにだがシンジは聖火ランナーに選ばれたら断るらしい。ゲン担ぎに頼りたくないと、運も実力の内ならば不運だって実力の内だ。不運ならば不運でそれを乗り越えるより強い力を極めるだけとのこと。シゲルは名誉ある事だから引き受けるらしい。
●月✫日 意外とこんなもんだった。
セキエイ大会に出場するぞ!な参加者が日に日に増えている。
当然と言えば当然なことなので驚かないのだが……なんというか血の気が多い奴が中には居る。自分達は最強だ!と思っている奴等が意外と多い。そこはまぁ、まだ理解出来る。だが大会に出ようとしているトレーナーに勝負をふっかけるのは良くないと思う。
シンジの奴があくどい笑みを浮かび上げていた。
ああ、コレはアウトだなと思った。シンジが血の気が多いトレーナーに勝負を挑み、大差を付け勝利した。
シンジは強い。血の気が多いトレーナーの実力はそこそこ……強いか弱いかで言えば強いとは思うがしっかりと上位互換は存在している、そんな印象だった。それを見てスゴいやアイツはもしかしたら優勝するかもしれない、そういう意見が飛び交う。その内の大半がこのセキエイ大会を生で見に来ている観客達だが一部はこの大会の出場者や出場者の関係者だ。
シンジの奴は相手の物差しをおかしくする為に動いた。
ここであのレベルかと納得する。スゴいとか脅威とかそういうのは一切感じない……自分の手札を見せる代わりに相手の物差しをおかしくする。どうせこの大会を勝ち進めば嫌でも手札は晒される。ならばあえて見せる。そうすることで相手が勝手に思い込んで自滅する。嫌がらせと言うかクソゲーと言うか…………でも、こういうのは格上やサトシの様な不安定なタイプには通じない。四天王やチャンピオンクラスとなると格だけでなくメンタルが違う。確かな実績から生まれる慢心ではない自信が生まれている。
悪い遊びをしている友達がいるなと思った。
●月▣日 なにかが掴めた
サトシが全然来ないから一応はオーキド博士に聞けば昨日マサラタウンを出たという。
細かくスケジュールを管理しろとは言わないが最低限のスケジュール管理はしろとは思った。
オーキド博士にサトシがなにをしていたのか?と聞いてみたら色々と体験していたと教えてくれる。
サトシは経験することではじめて身につくタイプ、だからオーキド博士は色々と経験させたと言うかサトシ自身が外に何かがあるはずだと外を求めている。外ではなく中に意見を求めることはしなかったのかを聞けばそういうのは色々と段階を踏まないといけない。オーキド博士は運も実力の内だと認識している。その逆、不運も実力の内なのも。だから何処かの段階でサトシは確実に壁にぶち当たる。
サトシは今は生意気なところがある。でも、オーキド博士の様な目上の人に対してはちゃんとした態度を取っている。
だったら頭を下げる事が出来る。他人に教えてくださいと言うことが出来る……でも……それだけだろう。それだけじゃきっとサトシだからこそぶち当たる壁を越える事が出来ない。それを言えばその時のサトシがどういう風に行動をするのか、きっとそれを指摘するライバルが居る。実際シゲルと言うサトシのライバルがサトシが弱点のポケモンで挑まない事を指摘した。俺がサトシのダメな部分を今もなんだかんだで気にしていて探りを入れている。だから、その壁がなんなのかサトシはしっかりと理解する時が来ればサトシならば乗り越えれる。方向性は違うけれどもサトシは天才だオーキド博士は太鼓判を押す。
俺は俺なりに頑張っている。シゲルもシゲルなりに頑張っている。
でも、オーキド博士はサトシの事を方向性は違うが天才だと言った。ハッキリと言えば悔しい……100の努力も1の才能には敵わない。ならば1000の努力をすればいい、10000の努力をすればいい、努力は才能を凌駕する。だったら、努力する事が出来る天才に対して凡人はどういう風に答えを出せばいいのか分からない。
「相手が同じ分野で格上なら競い合わない、他の持ち味を活かすんじゃ」
オーキド博士が悩んでいる俺に対してアドバイスをくれた。
格上の相手に対して同じ分野で戦ってはいけない、他の持ち味を活かす……頭に六角形のパラメーターが浮かんだ。
それはアニポケの最終無印で出てきたパラメーター、攻撃、防御、スピード、戦術、経験値、意外性の6つのパラメーター、マスターズエイトを勝ち抜いた4人のトレーナーでサトシが1番劣っている。ただしそれは総合力の話で攻撃とスピードと意外性は最大値だった。意外性だけは他の3人よりも上だった。チャンピオンクラス相手に戦える攻撃とスピードを意外性で活かす、そういう戦闘をする。
「持ち味を、俺自身の答えを探しているのですが……」
「それはワシには答えられない……なに、コレばかりは限界ギリギリにまで追い詰められて発揮するもの。だから、それまでは特別ななにかをしようとするのではなく自分にとっての当たり前、自分にとっての普通を貫く。2ヶ月前ならば特別ななにかが行けたが今は自分にとっての普通を貫く。自分にとっての普通を貫けばそれが個性になるからの」
自分では頭では分かっている事だが色々と不安が過っている。
カレンにも見抜かれているしオーキド博士には弱音を吐いてしまっている。サトシやシゲルの前では偉そうなことを言っているがダメな部分は普通に存在している。オーキド博士は刺激的な人生を送った人生の先輩としてアドバイスをくれた。
「白から黒までの全ての色を網羅しようなんてバカな真似はやめて、そんなのは神様だって出来ない事なの」
電話を終えればカレンに怒られる。
弱音を吐いた事に怒っているのでなくなんでも出来るや最適解探しをし続ける事がダメだと怒っている。人間は機械じゃない、感情論で動く。理論よりも理屈で動く。理論よりも理屈で動くから出来ることが無限にある。そしてその理屈を無視する理屈で動く理外の理屈もある……他の人に自分と同じ考えや意見を持っているのが分かった。だから方向性としては間違いじゃない。間違いじゃないと分かった。ただそれだけだった。でも……救われた、肩の力が少しだけ拔けた。普通の状態になってから生まれる不安要素が消えた。問題は無く楽しもうとなったら天衣無縫の極み状態になる……ポケモンバトルの世界でも天衣無縫の極みはあるのか。