アルピ交通事務局のアニポケネタ倉庫   作:アルピ交通事務局

116 / 118
そして幕が降りていく

 

「勝った……のか……」

 

 試合終了の宣言がされた。最後の1体にまで追い込まれていた。土壇場になって発揮されるシゲルの底力はバカには出来なかった。

 ただどうしても勝ったという印象が薄い。ラティオスが居なければ勝てなかった可能性がとても大きい。Zワザもそうだ。勝てた事は頭では分かっている。だが心で理解をするのに時間がかかってしまう。歓声が鳴り響く中でシゲルが俺のもとに歩み寄ってきた。「負けたよ……君の優勝だ、テヅカ」と俺の優勝を喜んでくれる。限界ギリギリにまで追い詰めている中で敗北をした。ホントならばシゲルは負けた悔しさで涙を流してもいい。それでもシゲルは俺に握手を求めてきたので俺は握手に応じた。

 

「コレでハッキリとはまだ決まっていない、次も負けない」

 

「次こそは勝ってみせる」

 

 既に次を見据えている俺とシゲル。実況が「長きに渡る激闘もここで1つの結末を迎えました!今年は大豊作!優勝、準優勝、そして3位までもが今年ポケモンを貰ったスーパールーキー!ポケモンバトル界に新たなる旋風が巻き起こるのか!」と試合を終えたのに更に盛り上げてくるのだが、もう終わりだ。ポケモンリーグ・セキエイ大会の優勝者は俺だ。シゲルとの握手を終えればポケモンセンターに向かう。ポケモンセンターに向かえば優勝おめでとう!と歓迎の言葉で出迎えられたが俺は深く気にせずに淡々とポケモン達を回復させる。

 

「あんなに強いシゲルを倒すだなんて」とサトシは驚いた。俺に話しかけに来るかと思ったのだが話しかけることはなかった。それほどまでに今のサトシと俺の間に大きな力の差がある。シゲルはセントラルのポケモンセンターじゃない別のポケモンセンターに向かった。オーキド博士から聞いたがやっぱり涙を流していた。とても悔しい、確かに勝ち筋は作ってあったのに俺はそれを軽く上回った。悔しいと思えるのならばそれをバネにする。あまりいい経験とは言えないがシゲルは負けを味わった。そこから立ち上がれて戦える奴はとても強い。

 

「やったわね、クニミツ」とカレンが優勝した事を我が事の様に喜んでくれる。カレンは最初から俺が勝つと信じており、何かに祈ったりはしなかった。純粋な実力で俺がシゲルに勝ってほしいと思っており、やはりキッカケは開幕の【アルティメットドラゴンバーン】だった。シゲル相手に開幕ブッパは正しかった。そのおかげで主導権を握ることが出来た。だが、シゲルの事だ。必ず何処かでもカメックスナイトを手に入れる。メガカメックスになればZワザクラスの技を何発か使える。戦闘不能にならない限り戦ってくるヤバいのが来る。今回はZワザでどうにかなったが次は無いだろう。

 

「まだ終わっていない」とカレンに言う。試合は文字通り全て終わったのに、表彰式の事を言ってるの?と聞いてくるのだが表彰式はまだだ。シンオウリーグ・スズラン大会について調べないといけない。アトベの奴が勝ち進んでいるかどうかの確認だ。アトベは成果を出さなければ家を継がないといけない中々に崖っぷちなところに立たされているがだからといってそのプレッシャーに負けることは無い。

 

 アトベは金持ち感覚が苦手なだけでそれ以外のスキルはしっかりと持ち合わせている。シンオウリーグ・スズラン大会はどうだとネットで検索し……アトベは見事に優勝を決めていた。シンオウリーグ・スズラン大会も中々の曲者揃いだったが最後にエンペルトで【スーパーアクアトルネード】で相手のポケモンを倒してキッチリと決めた。流石はアトベだ。アトベも同じ事を考えていたのか連絡が入った。「どうやら無事に地方リーグの優勝は出来たようじゃねえか」と言ってくる。「結構危ないところもあったがお互い無事に勝ててなによりだ」と言い返せば「なにを言い出すかと思えば……まだ地方リーグだ、全国じゃねえ」と呆れられた。チャンピオンリーグを地方リーグと言うんじゃない!

 

「オレ達は無事に勝てた。次はユキムラ、その次はシライシだ……何処に挑むつもりだ?」「ジョウト地方、順番通りに巡るつもりだ」と答えるとアトベは少し残念そうにする。ユキムラは絶対にジョウトリーグに出る。シライシは絶対にホウエンリーグに出る。だから確実に誰かと戦うことが出来ない。下手をすれば今回だけかもしれない。「なにを心配している……ただ勝つだけ、それが俺達がしたいことだ」と不安そうにしているアトベに言った。「はっ、それで情けない面を見せるんじゃねえぞ?あーん?」

 

 一触即発な空気を醸し出しているがアトベとはこういう関係性であり仲は決して悪くはない、お互いに色々と本音や愚痴を零せる。

 カレン達は俺達の関係性について聞いてこない。ただの腐れ縁で通しており、なんかあるんだなと察しているが深くは聞かない大人の対応をしている。

 

「ケイゴが貴方を倒しちゃうから、残念ね……でも、仕方ないわ」とマリーが言ってくる。アトベを信じているのだなと思っていれば珍しく額に青筋を立てたカレンが「残念なのはそっちよ。クニミツがチャンピオンリーグで快勝しまくるわ。1回戦で当たったら恥かも」と言い争う。バトルするのは俺とアトベなのだからあまりそういう言い合いをしないでほしいとテレビ電話の通話を切った。

 

「珍しいな、感情的になるだなんて」とカレンが口喧嘩していた事について聞いてみる。それを聞けばなんかカレンが呆れていた。「バカにされているのは悔しいのよ!私はクニミツが一番だって思っているから尚更で……その……頑張ってて勝ってる貴方が好きだから」と途中でなんか自爆しているカレン。なんだこの可愛い生き物はと思いながらも母さんに連絡を取った。「息子がチャンピオンリーグに出るから有給を取れたみたいよ」と言ってくる。もし俺がチャンピオンリーグに出ることが出来なかったのならば父さんの有給休暇は別の形で消費されていたのだろう……ホントの意味での休みをもらえているか少し不安だが俺は見に来た価値はあったなと思わせるバトルをすればいいだけだ。

 

 ポケモン達の回復を終えた。誰かが物凄い重傷だった、と言うことはなかった。逆にシゲルはドードリオとカメックスが重傷だった。やっぱ開幕Zワザはキツかったか。だが、こっちもニンフィアが何かをしようとする前にZワザを受けたので育てが足りないとかしか言えない。

 

 ポケモンリーグ・セキエイ大会の閉幕式が行われる。1位2位3位の壇上が用意される。シンジは「ありがとうございます」と3位の表彰状を貰った。3位でも立派なことなのだがシンジは嬉しそうな素振りは一切見せない。まだ自分は3位程度の実力なのだと自分に言い聞かせており次に出るポケモンリーグでは絶対に優勝してみせるという気迫が伝わった。

 

 2位のシゲルは準優勝のトロフィーを受け取る……受け取るが、視線をチラリと優勝したトレーナーが貰えるトロフィーに目を向けた。タマランゼ会長は「次は掴むんじゃよ」とシゲルが心の底から優勝することが出来なかった事を悔しいと思っているのだと見抜き、次のポケモンリーグでの優勝を期待している。

 

 サトシ?……おめでとう!の一言で終わった。ベスト8なので決して悪いというわけではないが、それでも上には上が居ると思い知らされていた。今までなんだかんだトラブルが起きながらも順調に上手くポケモンバトルで勝ち進んでいたのだが、そのなんだかんだが通じない世界。オーキド博士に聞いてみたが、サトシは修行するぞ!と燃えていた割に暇だった……だからおつかいを頼んだらしい。

 

 自分のなにが足りないのか、自分のなにが長所なのか、そういうのを1回見直すことが出来る絶好のチャンスが来たのに失敗した。

 サトシは経験することで一気にパワーアップするタイプだから誰かが教えたり何かしらのイベントが起きないと学ばない……王道的な主人公と言えば主人公だが、今の御時世勉強出来る系の主人公は意外と多い。

 

「チャンピオンリーグまで2週間しかないから、何処かに行くって出来ないわね」とカレンは言う。

 カレンが今からのスケジュールの確認、取り敢えずは明日にセキエイ高原を出る。1日かけてマサラタウンに帰省しポケモン達と顔合わせ、そこからポケモンリーグ・セキエイ大会優勝記念パーティの開幕。4日は自動的に消滅する。

 

 チャンピオンリーグが行われるトウキョウシティ行きの飛行機はマサラタウンを出てすぐにある空港から行ける。

 トウキョウシティに辿り着く事が出来るがそれでも会場の空気とかそういうのの確認をしないといけない。1週間ぐらいしか動けない。何処かに行ってポケモンをゲットする!なんて事は出来ないし特別な特訓も出来ない。

 

 覚えておいて損は無いタイプの技は大体は覚えさせているから、ここからは俺というトレーナーの持ち味を生かさないといけない。

 ポケモンの基礎的なスペックは上げつつも持ち味を活かす、それがこれからの課題。自分らしさという武器を探す事だ。

 

 ▲月☒日 ホントに終わった

 

 ポケモンリーグ・セキエイ大会が完全に終わった。ファイヤーの聖火が片付けられたりしており、ポケスロンの大会とかそういうのの準備に入っている。これ以上はここに居ても仕方がないのは分かっている。ポケモン達もリザードン以外をオーキド博士の研究所に送りカレンと一緒にセキエイ高原を後にする。

 

「君の優勝は嬉しいことだ」とシゲルは言ってくるがかなりの無理をしている。「このままマサラタウンに帰っても惨めだ……それを糧にして成長するんだろ?」と聞けばシゲルは考えが読まれていたなとなった。別に読んでいたわけじゃないが、準優勝ほど惨めなものは無いからな。

 

「Zクリスタルを増やしてくるよ」とシゲルはアローラに行くことを決めた。

 ゲームじゃ主人公は全てのZワザを持っているがこの世界じゃそうはいかない。全てのZクリスタルを持っているトレーナーはいないし、ミュウZとか完全に使い道が無かったりする。ミュウZ手に入れても何処でミュウをゲットしろという話だ。

 

 帰りの道は特に厄介な事は無かった。

 ポケモン達には優勝して終わりでなく優勝し次のステージに進んでいるのだと伝えている。休みを与えないといけないからそこでやはり2日が奪われる。明日も休みって状況じゃないと休もうにも休めないのが現実だ。

 

 ▲月∴日 トロフィーを引っ提げて

 

 マサラタウンに無事に帰ってこれた。オーキド博士は既に帰ってきており、パーティの準備に忙しい。

 母さんから聞いたがやはりシゲルが優勝するムードだったので俺が優勝した。マサラタウンの誇りだ!なんて言うがそういう奴等は大抵は関わっていない。シゲルとサトシとオーキド博士とカイドウ以外でマサラタウンの住人で仲が良いと言える奴は居ない。

 

 マサラタウンを旅立つ時に見送りに来てくれたのはカイドウぐらいだ……だが、それでも俺が優勝した事を喜んでくれている。

 それを無碍にするほどに非情な人間じゃない……とりあえず家についたので部屋に籠もる……だが、怠けると言うのがどうにも性に合わない。休む時に休むと言う事はしているが、休むのと怠けるのは少し違う。勿論、怠ける事もガス抜きという意味合いでは大事なのだろうが……肌に合わない。

 

 どうしたものかと思っていると「クニミツ、走りましょう」とジョギングウェアに着替えたカレンがやってきた。

 やはりなんでもお見通しなのかと俺はジャージに着替えて走り出す。やはり何もしないよりもなにかをしている方が心地良い。何時もは体力を作るためのランニングだが今回は違う。健康的な汗を流す為のランニングだ……マサラタウンの風が心地良いなと感じていればカイドウと遭遇する。

 

「優勝おめでとうございます!1回戦から見てました!」と深々と頭を下げてくるカイドウ。

 しっかりと見ていたことはとても嬉しい、そうかと頷いた。「優勝するのシゲルさんって感じでしたけど、俺はずっとテヅカさんが優勝するって思ってました」と教えてくれるカイドウ。「それなのに周りは優勝おめでとうだなんて、掌返しが酷いわね」とカレンは事実を知って呆れる。「そういう風に構われているだけまだいいだろう……サトシは完全にノータッチだぞ?」と言えば「あいつは……ホントにベスト8で間違いないのか?って思いました」とカイドウはシゲルvsサトシを見ていてサトシが一方的に蹂躙される姿を見てベスト8がまぐれにも程があると認識している。実際その通りだが。

 

 カイドウと軽く1kmを走り終えたので一休み。

「俺も……何時かは……」と呟いているカイドウに「お前は殻を破らないといけないところもあるにはある」と言っておいた。俺が目上で力を持っている人だと認識しているので何処か一線を引いているカイドウだが、ポケモンを貰って数年は自分よりも歳上のトレーナー達が相手だ。目上の人=絶対な体育会系のノリは危険だ……体育会系のノリだけはホントにいけない。

 

「殻を破らないといけないのはクニミツもよ……まだまだ限界点を越えていないわ。もっともっと強い相手と戦わないと」とカレンが指摘する。「アレでまだ限界点じゃないんすか!?」とカイドウは驚いているが「基礎的な力が強すぎるせいで、追い込まれた時に発揮する火事場のクソ力みたいなのが発揮する機会が早々に無いのよ。追い込まれた時に逆に火が着いて燃えるタイプは物凄く強いから」とカレンが教えてくれる。確かに追い込まれる程の激闘は4回しかしていない。基本的には追い詰められない様に普通の手を使っている。余程の事が無い限りは追い詰められないのでそこから発揮する力を出す機会は無い。まだまだ俺にも欠点はあったか。

 

 ▲月▢日 パーティタイム

 

 俺がポケモンリーグ・セキエイ大会で優勝した記念のパーティが開かれた。

 そこには……タケシとカスミは居るのだがサトシは居なかった。「サトシはどうしたんだ?」と聞いてみれば「貴方が優勝、シゲルが準優勝、自分はベスト8が余程堪えてるのよ」と言う……ならばと聞いた。「サトシが負けた原因はなんだと思う?」と。

 

「シゲルやテヅカと比べてトレーナーとしてのレベルが違いすぎる……ただ、コレに関してはサトシが悪いんじゃなくてシゲルとテヅカがとんでもなく強いからだ。サトシは例年通りならばしっかりとした強さを持っている。そして1回目の挫折を知った。だからここからサトシは強くなることが出来る」とタケシはサトシは負けてはいけないけれども負けて当然なところで負けた。その負けから更に成長する可能性があると信じている。

 

「2ヶ月の間に全くと言ってパワーアップしてないわよ。修行しようって考えていたけれど、なにも考えていなかったんじゃないかしら?目標はあっても、なにをしようとかなにが出来る様になろうとかそういう目的は生まれなかった……違うかしら?」とタケシとカスミに言えばなにも言い返せなくなる。修行をしよう!と考えても特になにかをしたわけじゃないからな。

 

「まだサトシは競い合う段階のトレーナーだからな……」と俺は意味深に言っておく。

 サトシはまだまだ未熟なトレーナーという認識をしつつもパーティを楽しんでいるとロケット団が現れたので【ダイナミックフルフレイム】で焼き払った。狙うならば俺ではなくサトシの方に行ってこい。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。