「カゲ!?」
「……」
クチバシティに滞在して4日目、ニドキングに他のタイプの技の基礎を伝授した。
ほのおのパンチ、れいとうパンチ、かみなりパンチの3色パンチをニドキングは覚えた。コレが使えるのならばかえんほうしゃ、れいとうビーム、10まんボルトも近い内に覚えるだろう。
3色パンチだけでなくバブルこうせんも覚えた。そろそろクチバジムに挑みに行く頃合いだなと思っていれば技の特訓相手のヒトカゲが眩い光を放つ。
「リザッ!」
ヒトカゲはリザードに進化した。
元々ある程度は育っていて、序盤の2つのジムを攻略出来ればそこからはヒトカゲが仕事をしまくる。だからこの進化はいい傾向だが……一応の確認はしておく。
「リザードになったんだな……」
「リザ!」
ポケモン図鑑を取り出してリザードのデータを確認する。
ヒトカゲからリザードに進化してなにか新しい技を覚えたかどうかの確認だが特に無い。リザードからリザードンだとタイプが1つ追加されてリザードまで無かった翼を持っているから色々と変わるが、ヒトカゲからリザードへの進化は体格が少しゴツくなった程度だろう。
「進化出来たじゃねえか」
「リザッ!」
進化する事が出来たことを褒めればリザードは炎を吐いた。
やきつくすを使った……進化したことで少しだけ好戦的になってる。ヒトカゲだった頃の温厚で何処か奥手だった性格は消えている。
「ちゃんと俺の言うことを聞くよな?」
元々はダイスケのヒトカゲ狙いだったがクロスのヒトカゲになった。
ダイスケのヒトカゲの場合、ヒトカゲからリザードに進化したら言うことを聞かない可能性がある。そういう時を想定してボコボコにする予定だったが、クロスのヒトカゲだからその辺は問題は無い。だが、ヒトカゲからリザードに進化して性格が少し変わった。
進化すれば性格が急に変わるはこの世界では極々普通のことだ。
クロスのヒトカゲもリザードンになる。ダイスケのヒトカゲもリザードンになる。
キミに決めたのその後の展開について特に語られてねえからクロスのヒトカゲでリザードンになったリザードンの事細かなデータは分からねえ。幸いにもトレーナーとして未熟なサトシの言うことを聞くが……制御出来ないヤンチャな奴だったら少しまずい。
リザードは進化したことを喜んだ。俺も一応は褒めてやった。
性格が好戦的に変わったのと俺と一緒に居たからを理由に言うことを聞かなくなる可能性があるからそこの確認をしたが特に問題は無かった。無いならそれ以上の余計な事は考えねえ。それで終わりだ。
「ニビジムと言いここと言い、堂々とすれば呆れてなにも言えねえな」
ポケモンの調整を終えたから翌日にクチバジムに向かった。
クチバシティに来たもののクチバジムを実際に見るのははじめてだ。雷マークの巨大な入り口……ここが如何にもでんきタイプを扱うジムですよとアピールをしている。
ハナダジムはなにかの施設っぽい感じだった。だが、ニビジムは灰色の岩で固められていた。いわタイプのジムですアピールをしている。どんなポケモンを使ってくるのかを調べるのもトレーナーの技量だろう。サトシ?あいつはただのバカで例外だ。
「ヘイ、ボーイ。こんなところになにをしに来たんだい?」
「ポケモントレーナーが来ると言えば目的は1つ、ジム戦だ」
「っは!またか!最近は骨のねえガキばかりで退屈をしているんだ……ユーは同類か?」
「さぁ、どうだろうな……ただコレだけは確かだ」
「ほぉ……多少はマシみてえだな」
クチバジムに入ればマチスに声をかけられる。
対戦するトレーナーが歯ごたえが無くてつまらない、俺もそれの同類かと聞いてきたのでジムバッジが入っているバッジケースを見せる。既に3つのジムバッジを持っている。そこから考えてビギナーズラックや相性の良いポケモンだけで攻めたわけじゃないとマチスは察した。
「これよりクチバジムジム戦を行います!使用ポケモンは1体のシングルバトル!」
例によって身分証明証とポケモンを登録すればバトルフィールドに立った。
公認の審判がこのジムのルールについて述べたので互いにモンスターボールを取り出す。
「ゴー!ライチュウ!」
「いけ、ニドキング」
「ライライ!」
「ニド!」
マチスのポケモンはライチュウ、対する俺はニドキング。
事前の情報通りだがマチスはニヤリと笑みを浮かべていた。
「試合開始!」
「ライチュウ、なみのりだ!」
「ライラーイ!」
「!」
「甘いぜボーイ!そろそろそれだけで通じないのを教えねえとな!」
ライチュウはなみのりを使った。
ライチュウがなみのりを覚えることは知っているが使ってくるとは思わなかった。だが、使ってくる理由は分かった。
俺の持っているジムバッジの数は3つだ。
最初に貰ったポケモンと旅の道中で出てくる野生のポケモンをゲットしジムに挑む。特定のタイプのジムに弱点のタイプのポケモンを用意して攻める。
ゲームをやっていればそれは普通にすることだ。
だが、相性の良いポケモンばかりを用意していても意味は無い。俺のエレキッドがじめんタイプに対して有効打になるこおりタイプのれいとうパンチを覚えれる。4つ目のジムバッジとなれば自分と同じタイプの技以外、特に弱点となるタイプに対して強いタイプの技を覚えて攻める戦術があるとジムリーダーは教える。
マチスが笑みを浮かべたのはでんきタイプのジムだからじめんタイプのポケモンさえゲットしていればどうにでもなると、タイプ相性だけを突けばポケモンバトルに勝つことが出来ると考えているトレーナーに対して弱点を補うサブウェポンで攻める。
コイツも今までみたいに弱点のタイプのポケモンでバトルさえすれば勝てると思わせての予想外の攻撃をする。
「フハッ、予想外だが予想の範囲内だ」
なみのりを使ってきたことに関しては予想外だがライチュウがなみのりを使えることを知らないわけじゃない。なんだったらなみのりはライチュウのサブウェポンとしての代表格だ。
でんきタイプは基本的にはじめんタイプに攻撃が効かない。
だからサブウェポンに頼る。その中でもライチュウはサブウェポンが豊富だ。
「ニドキング、尻尾を地面に叩き付けてジャンプしろ」
「ニド!」
「ワッツ!?」
「弱点対策はしてるんで」
津波に乗って襲いかかってくるライチュウに対してニドキングは尻尾を地面に叩き付けて飛んだ。ライチュウの出した津波よりも上の高い場所に飛んでライチュウのなみのりを回避した。
「なるほど、もうワンステップ先を行ってるトレーナーか」
ポケモンの技ではない行動の指示をしたのでマチスは納得した。
ジムバッジ1〜3個は弱点のタイプを用意して勝てるのを教える。
ジムバッジ4〜6個は自身のタイプ以外のサブウェポンを使う。
ジムバッジ7〜8個はポケモンの技以外の指示を出す戦闘をする。
新人トレーナーは
弱点のタイプを用意する。
そのポケモンにとっての弱点を補うサブウェポンを覚える。
技以外の行動の指示を覚える。
この3つを覚えればとりあえずはこの世界でのポケモンバトルはしっかりと出来ているから地方リーグに出れると認められる。
そして翌年からはジムリーダーと本気のバトルが出来る。自身の長所を活かし弱点を補うサブウェポンを覚え技以外の細かな行動を指示するジムリーダーとのバトルは膨大な経験値になるだろう。
マチスは既に俺が技以外の細かな行動の指示が出来るレベルのトレーナーになっていると気付く。
「ニドキング、ドリルライナーだ」
「ライチュウ、アイアンテールで弾きな!」
ドリルライナーで攻めればライチュウはアイアンテールを使う。
タイプ相性では勝っている。パワーも似たりよったりでマチスの狙いはそこじゃない。アイアンテールを使いニドキングの回転する自慢の角を弾いて反らした。
「ライチュウ、なみのりだ!」
「ニドキング、ドリルライナーで地中を掘ってライチュウの後ろにいけ」
ニドキングはじめんタイプ、でんきタイプの技は通じねえ。
でんきタイプの技はじめんタイプにだけは相性が悪い。だから、でんきタイプのポケモンは唯一無二の弱点であるじめんタイプ対策をする。
でんきタイプのエキスパートのマチスはでんきタイプのポケモンを熟知している。じめんタイプのポケモンとの戦い方も熟知している。
ニドキングの時点で10まんボルトなんかのでんきタイプの技は全て全滅で攻撃技をなみのりにし、他の3つの技の枠はニドキングの攻撃を反らしたりするのに使っている。
「技を技以外で使う段階にもいるか」
ドリルライナーで攻撃をせずに穴を掘った。
なみのりは真正面からしか来ないからライチュウが立っている場所よりも後ろに移動すれば回避出来る。だからドリルライナーで穴を掘ってライチュウが立っている場所の後ろに移動した。
マチスは俺が4個目のジムバッジをゲットしようとしているトレーナーに対して与える試練、そのポケモンのタイプと異なるタイプの技を相手も使ってくるからどういう風に対応をするか?の段階は過ぎている。移動に対する指示だけでなく移動と技を兼ね合わせた指示を出す事も可能だと評価を改める。
「ヘイ!さっきから攻め手を変えないな!コレは1vs1のタイマンだぜ?」
ライチュウはなみのりとアイアンテールを使った。
対するニドキングはドリルライナーのみであり、ドリルライナーで攻めてドリルライナーで移動して回避している。
技の枠はまだ3つ余っており、ニドキングのゴツい見た目から連想出来るガンガンとした攻めをしていない。
マチスは手をあまり変えない俺に対して軽く煽ってくる。
そういうのありなのか?と思ったが、審判が特になにも言わないのでありなんだろう。
口撃戦は出来ないわけじゃねえが、やったところでしょうもねえボロを出す。
「ニドキング、どくづき」
「ライチュウ、アイアンテール」
ここで2つ目の技、どくづきを使う。
紫色に輝いた拳でライチュウを殴りに行くが、ライチュウはアイアンテールで防ぐ……いや、違う。
「ラ、ライ!」
「グレートなパワーだ……だが、アイアンテールに対しては通りが悪い!」
アイアンテールとどくづきが拮抗している。
一瞬の油断も出来ない状態で押し合いをしている。どくづきはどくタイプ、アイアンテールははがねタイプの技。はがねタイプはどくタイプが効かない。
この世界では技と技のぶつかり合いがある。
技の威力が低ければ高い威力の技に負ける。たいあたりvsとっしんならば基本的にはとっしんが勝つ。そして技のタイプ同士の相性にも色々と問題がある。
かえんほうしゃvsねっとうになったら、みずタイプのねっとうがかえんほうしゃを鎮火する。かえんほうしゃvs10まんボルトとタイプ相性が普通の場合は爆発を起こすケースが多い。
今回はどくタイプとはがねタイプの物理技のぶつかり合いだ。
鋼になっている尻尾に毒の拳がぶつかり合う。毒の拳は本来ならば殴るだけでなく相手に毒を押し付けて相手のパワーを下げるが鋼の尻尾が毒を通さない。
ただの突きになっているが、俺のニドキングはちからずく個体だ。どくづきの相手をどく状態にする効果を失うがその分、威力が増している。
ライチュウのアイアンテールとニドキングのどくづきが拮抗しているが俺は笑みを浮かべる。
「この状態でも、ニドキングは技を使える。どくづきだ!」
「!」
右手だけしかパンチ系の技を使えない、左手だけしかパンチ系の技を使えない、そんな柔な鍛え方はしない。利き腕や利き足こそあるが基本的には両手両足で同じ技は使える。
アイアンテールで必死にニドキングのどくづきを抑えていたが、もう片方の手でニドキングはライチュウにどくづきを入れた。
「ライチュウ!」
「ライ!」
どくづきをまともに受けたがライチュウは立ち上がった。
両手でどくづきが使えると分かった以上はアイアンテールで拮抗する状況になれば終わりだとマチスは学習する。
「なみのりだ!」
ライチュウがニドキングを倒す技はなみのりだ。
くさむすびやめざめるパワー(氷)もあるがなみのりが一番の技……本来ならばここにでんきタイプの技が加わるんだろうが、ニドキングのじめんタイプの技が全てを台無しにしている。
「ニドキング、ドリルライナーで地中を移動しろ!」
「ニド!」
ライチュウのなみのりを避ける手段は見せた。
ドリルライナーによる移動と尻尾を用いてのジャンプ、ただ単になみのりを使ってもライチュウはニドキングに当てることは出来ない。
「ライチュウ、くさむすびだ!」
「フハッ、お決まりだな。だいちのちから!」
「ニドォ!」
ニドキングを動かせない様にするのに最適な技、くさむすびがある。
くさむすびをしてニドキングの移動を封じるつもりだがそれぐらいは読めている。ニドキングは地面を強く踏んでヒビ割れさせてライチュウのもとまで向かわせ地面からエネルギーを噴出させた。
「ラィ……」
「オーマイガー!!ミーの戦術を読んでいただと!?」
ドリルライナーやどくづきの近距離戦主体の技で攻めていたから頭の中から特殊攻撃が外れていた。ニドキングの見た目通り近付いて殴るポケモンバトルをするかと思っていたかもしれねえが、ニドキングはニドキングになった時点でだいちのちからを会得している。
ドリルライナーやどくづきで接近戦をさせてライチュウの戦闘スタイルを、切り札をなみのりに固定させてなみのりをぶつける為の戦術を取らせる。
くさむすびが来たから下手に移動することをせずに、その場所で使えるだいちのちからを使ってライチュウを倒した。
「ライチュウ、戦闘不能!ニドキングの勝ち!よって勝者、チャレンジャー!」
だいちのちからを当てることに成功し、ライチュウは倒れた。
審判はそれを見てライチュウを戦闘不能の判定し、俺がジムを勝ったのだと宣言をした。
「コレで後半戦か……」
ジムリーダーが手を抜いているのは分かっている。
クチバジム目的でジム戦を挑んできたトレーナーに対してポケモンバトルをしているが今のところは負け無しだ。
ただどいつもこいつも雑魚と呼べる奴等だ。
持ってるポケモンもポッポやラッタなんかのメジャーなポケモンか最初の3体の進化系、稀に色々と豊富なのが居るがそのタイプの技しか覚えさせていなくて使い切れてないトレーナーだ。
シゲルやマサトの様に知識があるトレーナーは少ない。
実戦で学ぶが基本的なスタンスで、今回のこのジム戦でニドキングのだいちのちからを隠し通しての近距離戦からの奇襲は実際に使うまで使えるかどうか分からねえ怪しい戦術だ。
まだ上澄みの連中にぶつかってねえが……そうじゃねえ連中は倒せる。それなら主人公達をボコボコにする事が出来る……楽しみだな。