ジムバッジが残り2つで、いよいよ大詰めだ。残す2つジムはセキチクジムとグレンジムだ。
「カイリキーで参加します」
旅のルートを算出し、セキチクジムへ向かう道中P−1グランプリという大会を目にした。セキチクジムとグレンジムではカイリキーの出番が無いので実戦経験を多く積む為に参加するかとカイリキーでの参加を申し込んだ。
「あ、ハナミヤ!」
「なんだお前か」
参加を申し込んで選手控室に居るとサトシと遭遇する。
そう言えばここでサトシも出てくるんだなと思い出したんだが……タケシも隣に居る。
「あんた、正気か?」
「イシツブテ、そして俺の愛に不可能は無い!」
「もう1回言おう。お前、正気か?」
タケシもP−1グランプリに参加している。
参加しているが出場ポケモンがイシツブテだ。確かにイシツブテは物理攻撃と防御が売りだがいわタイプ……右を見ればかくとうタイプ、左を見ればかくとうタイプ。なんだったらサトシが連れているのもかくとうタイプのオコリザルだ。
明らかに不利だってのに負けに来たのかコイツは?
まぁ、無様に負けるならそれはそれで見ておきたいね。
「…………さてと……」
厄介な事はさっさと片付けておこう。
P−1グランプリにサトシが居る=ロケット団が居るのと同義だ。早いうちに事を終わらせておくかとサワムラーを連れたトレーナーが便所に向かっているのを見た。
「うぐっ!」
「悪いけど、P−1チャンピオンはあたしの物よ」
「ついでにおミャーのサワムラーもニャ!」
「自前のポケモン用意って無理か」
「ニャニャ!?見られた!?」
「あ、お前はこの前の!」
サワムラー使いの優勝候補のトレーナーをシャツとパンツ1枚にし、眠らせたロケット団。サワムラーが入っているモンスターボールをムサシが手にしておりその光景を見られたとニャースが慌てるがコジロウが俺に気付く。
「お久しぶりですね」
「なに、コジロウ?あんた知り合いなの?」
「同じロケット団員だよ」
「見ない顔だニャ?」
「まぁ、働いている部署が違うんですよ……にしても、P−1グランプリに出るんですか?」
軽く自己紹介を済ませた後にP−1グランプリに出るかどうかを聞いた。
「当然よ!このサワムラーとあたしがP−1チャンピオンになってやるわ!」
ロケット団の仕事的にはそのポケモンを奪えば終わりなんだがなに考えてんだよ。
称号とかに欲が目が眩んで本来の仕事を疎かにする……ラブリーチャーミーな敵役であって、悪役じゃない。悪人とかカッコいいと思えて越えてはいけない悪人の一線を越えられないヘタレな存在だな。
「そういうお前は?」
「ポケモンの育成です」
「言っとくけど、後輩だからって手は抜かないわよ!」
「ええ、そういうのをされるのは嫌なので。ああ、でも出来れば俺との試合では不正はしないでくださいね」
「そんなことをしなくても問題ないニャ!」
んなわけねえだろ。テメエらは中途半端な小銭を稼ぐチンケな悪党だからそういうチマチマしたことは意外とする。
顔合わせは無事に果たしたからこれでいい。サワムラーを取り返さないかって?そんなことをするかよ。何処かの段階でサトシがサワムラーのトレーナーを見つけるか、不正行為をしてくるロケット団を撃墜するかのどっちかでサワムラーが元鞘に戻らないなら戻らないまでだ。
『レディース・アンド・ジェントルメン!ただいまより格闘ポケモン達の祭典!P−1グランプリを行います!』
P−1グランプリは行われる。
第1試合はタケシのイシツブテvsエビワラー、言うまでもないがタケシのイシツブテは勝てない。負けを認めるのもトレーナーとしての義務だとタオルを投げて負けた。
純粋にトレーナーとしての腕を磨く為にP−1グランプリに出たんじゃなくて諸事情があってP−1グランプリに出た。優勝しなきゃ意味が無く、サトシに命運が託された。
「カイリキー、準備は万端だな?」
「リキ!」
「カポエラー、やるぞ」
「カポ!」
試合が1つずつ行われて俺の試合の番が来た。
対戦相手のポケモンはカポエラー、対戦経験が無いがエビワラーとサワムラーよりはマシなポケモンだ。
『3分間12ラウンド勝負!1ラウンド目、開始!』
今までは時間制限が無かった試合だったが今回は時間制限がある。
タイムアップで決着がつかなかった場合は判定勝ち……だが、ここまでの試合で判定で終わった試合は無い。1ラウンドで大体決着はついている。
「カポエラー、こうそくスピン!」
試合ごとに技を4つ選んでいい、特殊攻撃及び変化技の禁止、接触物理技のみ可能。
格闘ポケモンに向いている試合で相手は早速仕掛けてきた。カポエラーは逆立ちして頭の角をリングに置いたと思えば独楽の様にくるくると回転した。
「カイリキー、かわらわりだ!」
回転しながら突撃してくるカポエラーに対してかわらわりを使わせる。
カイリキーは拳を光らせてチョップを叩き込む……が、こうそくスピンの回転が強く弾かれた。
「カポエラーのこうそくスピンは攻撃、防御、移動の三位一体を兼ね備えた無敵の技なんだ!」
んなわけねえだろう。特殊攻撃でボコればそれで止まる。
カイリキーのかわらわりを弾いたのは驚いたが予想外じゃねえ。攻略法も既に見えた。
「カイリキー、右回転のDDラリアットだ!」
「リキ!」
「かくとうタイプのカポエラーにあくタイプのDDラリアットだと!?こうそくスピンで弾いてやれ!」
攻撃、防御、移動の三位一体のこうそくスピンに自信がある為に技は変えない。
他にも色々と選択肢があるし、こっちが何かを考えた上で行動を起こしたってのが分かってるってのになにもしない……脳筋。いや、そういうのが集まる場所か。
「カイリキー、足を掴め!」
「な、なにっ!?」
「リキ!!」
カポエラーと同じ右回転で回転してDDラリアットを使っていたカイリキー。
こうそくスピンを使ってくるカポエラーと接触した瞬間、カイリキーは3つの腕でカポエラーの足を掴みカポエラーのこうそくスピンを止めた。
「ちきゅうなげだ」
突如として回転を止められたカポエラーは焦った。トレーナーもこうそくスピンに自信があったからあっさりと止められた事に動揺を隠せない。その隙を逃さずカイリキーは4本の腕でカポエラーを持ち上げて高くジャンプしグルリと一回転し地面に叩き付けるちきゅうなげを使った。
「カポ……」
『試合終了ぅうう!!カイリキー&ハナミヤ選手、カポエラーの必殺こうそくスピンを突破したぞ!』
「リッキー!」
試合が終了し、歓声に湧くP−1グランプリのスタジアム。
カイリキーは自分が褒められていると分かれば嬉しそうにガッツポーズを取った。
本音を言えば浮かれるなだが、ここで変なことを言って調子を崩させるわけにはいかねえ。カイリキーは歓声を浴びて嬉しそうにしたが直ぐに次の試合があるのでリングを降りた。
その後、サトシの試合があった。
オコリザルが全くと言って言うことを聞いていないがサトシが身を挺してオコリザルを守った。その結果オコリザルが心を開いて言うことを聞き圧倒的な強さでワンリキーを倒した。
この前のバタフリーは全体的に物足りずパワーが無かった。
オコリザルはレベルも充分でサトシに対して従順になっている。
「この前は負けたけど今度の俺は違うぜ!」
「フハッ……さっきまでまともにオコリザルが使えなかったポケモントレーナーがなに言ってんだよ」
そんなこんなでサトシと再戦だ。
準決勝まで勝ち進んだ。もう1つの準決勝はエビワラーvsサワムラーで、ニャースとコジロウが不正をして勝った。
コレに勝ったらサワムラーと戦うことになる。
「オコリザル、メガトンパンチだ!」
「カイリキー、ばくれつパンチだ!」
試合開始のゴングが鳴り響いた。
オコリザルはメガトンパンチでカイリキーを殴りに行く。それに合わせてばくれつパンチで対抗する。メガトンパンチとばくれつパンチはぶつかり合い、オコリザルが弾き飛ばされた。
「ああ、オコリザル!大丈夫か!」
「ブギャ!……ギャザアア」
「オ、オコリザル?」
かくとうタイプのポケモンがかくとうタイプのばくれつパンチを使えばそりゃ強い。
オコリザルのメガトンパンチも決して悪くはねえが、カイリキーに対してメガトンパンチを使って拳がぶつかったんだから当然パワー負けする。
「フハッ、情けねえな」
「なんだと!」
「ばくれつパンチがどんな技かも知らねえし、オコリザルにメガトンパンチを使わせた。オコリザルを使いこなせてねえって言ってるも同然だ……」
このP−1グランプリじゃ使っていい技の制限はあるがそれでも色々と出来ることはある。それでもオコリザルはメガトンパンチを使った。いや、メガトンパンチしか使う技が無かった。
「さっきまでオコリザルは言うことを聞かなくて、やっと言うことを聞いてくれた……ここに居るトレーナーならば皆が当たり前の様に出来ている事をやっと出来るようになった。それで勝ち進んだとは運に恵まれたな」
「っ……運じゃない!オレの実力だ!」
「何処がだよ……カイリキー、インファイトだ」
ばくれつパンチを受けたオコリザルになにが起きているのかが分かっていないサトシ。
軽く煽った後にカイリキーにインファイトを指示すればカイリキーは4本の腕で猛ラッシュを叩き込んだ。ばくれつパンチを受けてこんらんしているオコリザルは回避することが出来ずインファイトの前に敗れた。
『決まったぁああ!強い!強いぞ!カイリキー!』
「オコリザル……大丈夫か?」
「ブギィ……」
「…………っち……」
前のバタフリーが物足りないから今度はオコリザルで試してみたがコレでもない。
オコリザルもさっき言うことを聞いてくれるようになったから練度が足りない。だから、戦闘経験が少ないカイリキーのインファイトやばくれつパンチに破れる。
こんな勝てても意味が無い、負けて当然とも言えるような試合なんざつまらねえ。
必死になって努力したポケモンを軽々と倒す……それで味わえるものを感じねえと。こんな旨味のねえ試合じゃつまらねえ。
まぁ、だからと言ってサトシに対してなにかしらのアドバイスを送るつもりは無いがな。ジムリーダーのタケシやカスミが居て大抵のことは教えてくれるポケモン図鑑を持っていて更には御三家を持っていてその上で貴重なポケモンと出会う機会があるんだ。
環境や運に関しては他より圧倒的に恵まれている。
それに対して胡座をかいている。発破をかけられる事は何度もあってその度にミスを犯している……なにかを言うつもりは無いな。
『さぁ!遂に決勝戦!キックの鬼と言われるサワムラー、対するは4つの拳を用いての連打が売りのカイリキー!果たして、どちらが勝つのか!』
「な、なぁ、ハナミヤ」
「なんですか?」
「その……ここは先輩の顔を立てるって事でムサシに負けてくれないか?」
オコリザルを倒し決勝戦に駒を進めた。
これから試合がはじまるという空気の中でコジロウが話しかけてきた。わざと負けてくれと八百長を求めてきた。
「俺、一応トレーナーですよ?先輩とか後輩とか気にしてたら、こういう場所で毎回負けろってことになりますよ」
「いや、その通りなんだけどさ」
「ムサシが負けたらニャー達が八つ当たりを受けるニャ……」
「……そうですね……じゃあ、この試合が終わったらあのサワムラーをサカキ様に献上する、でどうでしょう?聞いた話だと最近ミスが続いているらしいじゃないですか。なにかしないと怒られますよ」
「あ、それなら……じゃ、頼むわ」
「ええ……ただ、俺も出来ないときがあるのでその時は先輩後輩とか言わないでくださいね」
ったく、ホントにこういうところの先輩後輩とかの上下関係はめんどくせえな。
ミス続きの元エリートなムサシ達と定期的に使える人材を送ったり自らが広告塔になると啖呵を切った俺。ロケット団の中じゃ俺の方が価値があると思うんだがな。
露骨に手を抜けば八百長が疑われる。
使える技が限定的だったから、そこを上手く利用しカイリキーにはわざと負けてもらった。
「素晴らしい!君のカイリキーもサトシくんのオコリザルと言い天才だよ!」
P−1グランプリはムサシの優勝で終わった。
ムサシは賞を1つ手に入れたぞと自慢げでコジロウとニャースはわざと負けてくれてありがとうと顔で返事をした。
サワムラーの本来のトレーナーが何時かは出てくるからさっさと出ていく様に言えばP−1グランプリが開催されている街から出て行った。
サワムラーの本来のトレーナーは出てきたが、既に後の祭り。俺はカイリキーを、サトシはオコリザルを回復させれば何処ぞのモノマネ芸人に似ているエビワラーのトレーナーが褒めてきた。
「いやぁ……優勝は逃しちゃいましたから……勝たないと」
「だったらカイリキーを預けないか?そのカイリキーならばかくとうタイプ最強を狙える!」
「結構です……それよりサトシのオコリザルの方がいいんじゃないですか?俺のカイリキーと違って全くなにもしてなくてあの強さなんですから」
「それもそうか……どうだいサトシくん?」
「…………オコリザル……悔しかったな」
「ブギィ」
オコリザルの永久離脱イベントが起きた。
どうせサトシには扱いきれないポケモンだからと巻き込まれた俺はサトシのオコリザルを推薦するがサトシは俺とカイリキーを見て悔しそうにしている。
「やっとオレ達一緒に戦えるんだ……アノキさん。気持ちは嬉しいんですけど、オコリザルはオレのポケモン。オレが育てます!」
「そうか……」
オコリザルを使いこなせなかった。その事からサトシはオコリザルを使いこなせるようになろうと決めた。だからオコリザルを預けないで手持ちにしておくと決めた。
サワムラーは奪われて、オコリザルは離脱しなかった……なにかが激変するかと言われれば激変するわけじゃないが少しずつ原作は壊れていく。
「ハナミヤ、次は絶対に負けない!」
「フハッ……せいぜい醜態は晒すなよ……」
んなこと思ってるわけねえがな。お前が無様に醜態を晒したりしてほしいから俺は必死に努力してるところがあんだよ。オコリザルを使いこなしてみせる!とか言って冷静さを欠いているお前なんざ簡単に攻略出来るぜ。