実家に帰るのは割と気不味い。
俺にとっての親は居るには居るだろうが、この人じゃないと心の何処かで線引きをしている。第二の人生をエピソード記憶が欠けたが自分は日本人だと自覚している状態で送るのは色々と気持ち悪い。
「あ、おかえり。ココア飲む?」
だがまぁ、それでも俺の家なので居心地を良くしねえといけねえ。
家族にまで猫を被るのは流石に疲れる。1から10まで全てを曝け出すのは無理だろうがそれでも何処かに心の壁は感じる……ったく、ややこしい事をしてくれた。
家に帰ると母親がココアを作っていた
トキワジムでサカキと色々と話をした後にトキワシティのポケモンセンターで家に連絡を入れてマサラタウンに帰るとは言っているから帰ったことは驚かない。
ポケモン取扱免許が下りた年にポケモンを貰ってポケモンリーグなんて快挙!なわけねえ。ポケモンを貰った年にポケモンリーグに出れる奴等は一定数居る。
ただここ数年はハズレ年で大した成果を上げることが出来てねえ。今回もそうかと思えるが話は別。オーキド博士の孫のシゲルがポケモントレーナーとして旅立った。
3世タレントなのが特に辛いと思わず、それを誇りに思っているシゲル。
お坊ちゃんは後々常にオーキド博士の孫扱いされるのが嫌な思春期でも迎えるか。
「ポケモンリーグ・セキエイ大会に出る為のジムバッジ8個、ゲットした」
ここでは猫被らず素の自分で居る……内弁慶だ外弁慶だ思われても構わねえ。
四六時中普段の自分になれない方が精神的に辛いからこれで構わねえ。
母さんにジムバッジが入っているバッジケースを見せる。
順番こそ違えどサトシと丸被りしているジムバッジ、それを見た母さんはココアを口にする。
「貴方のゴールはそこじゃないでしょ?……それは皆の通過点。シゲルくんはもう突破しててサトシくんも突破出来そうだから浮かれない……でもまぁ、おめでとう。よくやったわ」
「通過点か……まぁ、それもそうか」
俺の目当ては原作キャラをボコボコに、特にマサラタウンのサトシを圧倒的な力で倒すことだ。
皆と一緒に強くなるだなんだ言ってて大して強くならない精神論だけの馬鹿野郎、それでも世界最強になれてしまう。そんな奴をプチッと潰して嘲笑う。
妨害工作はしねえよ。なんでもありだったら他のことをする。
俺の狙いは純粋にサトシを倒して嘲笑う……自分のやり方でと必死になってる奴に対して違うやり方でハッキリとした結果を残す。
壁にぶち当たってるのが分かるが突破する方法が分からない。
そうしている間にライバル達はポンポンとサトシを抜かしていく……ホントならば1番になれる奴は都合の良い展開により一番になる様になっていただけで、いざ現実となれば雑魚だった。
なにか特別ななにかをしているわけじゃない、普通のことをやってコツコツと積み上げた奴が勝つ。
普段が情けないけど大事な場面だけ勝ったり真面目になったりいいことしたりしてる奴が急にコロッと評価が変わるのは気に食わねえ。気持ち悪い。
「ああ、そういえばロケットコンツェルンと契約したのね」
「……なんで知ってんだよ?」
「急にお中元が送られたから何事かと思って訪ねたら、優秀なトレーナーだから将来的にはスポンサー契約をって」
特に誰かに言ったわけでもなんでもねえロケットコンツェルン契約について母さんが知っていた。あのクソボスがお中元……いや、確かにお中元やお歳暮を贈るぐらいの関係性には発展してるとは思うが堂々と送ってくるか普通は。
まぁ、将来的にはスポンサー契約をしたいからロケットコンツェルンと関わり合いがあるという設定を作り上げることが出来た。これから先、ロケットコンツェルン関係でなにかがあった場合それを上手く利用して行動する事が出来るからそれでいい。
「ったく、余計な事をしやがって……」
「家の経済事情を気にしてるなら余計な事よ……こう見えて稼いでるから」
「なにしてんだよ?」
「デイトレーダー……今月も適当にやって50万ほど稼げたわ。一人親でもなんとかなるものよ」
デイトレーダーで適当にやって50万稼ぐってどんだけだよ。
そういう電子の不透明な金は何時暴落するか分からねえから扱いが難しいのに……つか、一人親だったのかよ。
「まぁ、セキエイ大会に出れる時点でオーキド博士も私もウハウハなんだけれど」
「それ絶対に生々しい話だろう!純粋に子供がポケモンリーグに出れたとかじゃなくて」
「両方よ、両方」
両方って、生々しい話で嬉しいのを認めやがったか。
この世界で一番の死活問題、それは金だ。
RPGならば敵を倒せば金は貰える。ポケモンのゲームでも敵を倒せば金を貰える。だがあくまでもそれはゲームでの話でありこの世界じゃ違う。
対戦後にお小遣いをカツアゲするシステムは無い。
じゃあ、どうやって金を稼いでるかと言えばポケモン関係の協会からの支援金を貰っている。
優秀なポケモントレーナーを育成する為にジムバッジをゲットしたり、ポケモンリーグで好成績を納めたりすれば支援金を貰える。
ポケモントレーナーとして旅をするのに充分なお金を貰えて、ポケモンセンターは無料。何処で採算性を取ってるかと言われれば色々だろう。
ポケモンリーグは大会関係者は無料だが、そうじゃない奴等は有料だ。
飲食店にポケモン用品店にバトルフィールドを整備する業者と色々とある。全国区かどうかは話は別だが地方リーグは大抵はその地方で放送されるもんだ。
裏で莫大な金が動いている。
その莫大な金をポケモントレーナーの活動支援金になっている。奨学金とかと違って返さなくていいものだ。
地方リーグ出場となればドンッとデカい支援金が入ってくる。その支援金はポケモンの修行やメンテナンスに必要な経費だ。その上でリーグ優勝とかをすれば色々と金が入る。
そのトレーナーを送り出した研究所も優勝すれば支援金が入ったりする。
世の中、見えないところで金が動いているもんだな。
「じゃあ、オーキド博士の研究所に行ってくるわ」
「ええ……夕飯はなにがいい?」
「肉じゃがで」
ココアを飲み終えて一息ついた。
オーキド博士の研究所に向かうことを告げれば夕飯をリクエストされるので肉じゃがと答えた。旅の都合上、下手に煮物が作れねえ。ポケモンセンターの肉じゃがもなんかしっくりと来ねえしな。
「おぉ、ハナミヤか。無事に帰ってこれたんじゃな」
「帰ってきて早々にそれを言いますか?」
オーキド博士の研究所に行けば帰ってくることが出来たことをオーキド博士は喜んだ。
普通はおかえりとかそういう言葉だろうと思って呆れた。
この世界じゃ音信不通のポケモントレーナーとかが当たり前の様に居る。
サトシの父親やタケシの親父のムノーがいい一例で、俺も1年目にして音信不通になるトレーナーになってんじゃねえのかの心配があったみてえだが帰ってきて早々にその言葉はねえだろう。
「シゲル以外は小まめに連絡をくれんからの」
「そこまで報告する成果を上げれてないですからね……他の3人は?」
「シゲルは既にセキエイ大会の出場権を手に入れたがポケモン探しついでに9個目、10個目とジムに挑んでおる。サトシはおつきみやまのポケモンセンターから連絡があっての。トキワジムに挑み勝利すればセキエイ大会に出れる……もう1人は音信不通での。最初は順調じゃったが上手く行っておらん」
フハッ、可哀想だねぇ。設定上存在しているだけの奴は。
サトシみたいな主人公補正を持っている人間の主人公補正の余波を受けちまって、名前すらも語られていない。
俺が立っている立場の本来のこの人間とそいつは設定上は存在しているが詳細について全くと言って語られてない。
オーキド博士だけが知っている哀れなトレーナーだ。まぁ、ヒトカゲを選んでも近隣のジムがヒトカゲと相性が最悪なジムしか無いから上手くいかないのは当然だろうがな。
「それでハナミヤよ、セキエイ大会までの2ヶ月半お前さんはどうするつもりじゃ?」
「ああ……実はですね」
俺はアローラ地方に行く事を話した。ロケットコンツェルン主催のアローラ地方を学ぼうという極々普通の事をしに行く。
目当てはZワザ……ロケットコンツェルンが裏で最終的にはZワザが手に入る様に調整をしてくれる事は省く。
「なるほど、アローラ地方にポケモンリーグか……その為にはまずアローラの人間が外の世界を知ることが大事じゃの。む?」
「どうしました?」
「いや、従兄弟のナリヤからメールが……おお、噂をすればなんとやら!」
アローラ地方に一時的に行くことについて賛同をしてくれるオーキド博士。
従兄弟のオーキド博士(アローラの姿)ことナリヤ・オーキドからメールが入った。なんだとメールの内容を確認すればアローラにポケモンリーグを作る為の話をククイ博士から持ちかけられていて、オーキド博士が送り出したトレーナーの俺が送られてくる事が書かれていた。
ナリヤ・オーキドはゲームじゃリージョンフォームに関する研究をしているポケモン博士だが、アニメではポケモンスクールの校長もやっている。一応はアローラの住人の中でも数少ない外の世界の過酷さや厳しさを知っているトレーナーだ。
オーキド博士はマサラタウンの子供にポケモンを渡す仕事をしている。
大抵の奴はトレーナーになってポケモンリーグを目指している。オーキド博士はそんな奴等の活躍をテレビ越しは勿論、生でも何度も何度も見ている。
オーキド校長はアローラポケモンリーグについてポケモンリーグを色々と見ていて詳しいオーキド博士から意見を聞きたい。
アローラのポケモントレーナーは娯楽としてのバトルはするが本気で1番を目指すバトルをしているのが圧倒的に少ない。
「ふむ……」
「俺1人だけじゃ限界はありますし……ウツギ博士、オダマキ博士、ナナカマド博士、アララギ博士が送り出した新人トレーナーに声を掛けるなんてどうですか?最終的にはZワザを手に入れれるならばトレーナーとしてこの上なく嬉しいので引き受けてくれるトレーナーは居ますよ」
多分だがアローラに実際に居てポケモンリーグ云々に関するレポートを出さないといけない。
別にそういうのを書く仕事は苦じゃないから構わねえが俺だけじゃ解決することが出来ないと言うか俺1人だけだと俺にかかる負荷がデカい。
他の地方のポケモンリーグの出場を目指しているトレーナー達、その地方を代表するポケモン博士が送り出したトレーナーならば安心して送り出すことが出来る。ポケモンリーグ運営に関してはロケットコンツェルン任せだが、ポケモンリーグやポケモンバトルの文化を芽吹かせるには俺だけじゃ無理だ。
「なるほど、それはいい案じゃの。早速、メールで連絡をしてみるかの」
その地方を代表するポケモン博士達にメールを打ち込むオーキド博士。
Zワザを会得することが出来るならば食いつくだろう。オーキド博士への話はしっかりと通した。ロケットコンツェルンが怪しいと思われる様な動きは見せていないし尻尾も出していない。
その間にやっておかなきゃいけないことがあると俺はオーキド庭園に足を踏み入れた。
「バナ!」
「よぉ、フシギバナ。早速で悪いんだが俺のポケモン達を集めてくんねえか?」
オーキド庭園に俺のフシギバナが居た。来てくれたかと嬉しそうな顔をしているが、他のポケモン達にも用事がある。
フシギバナはソーラービームのエネルギーをチャージし、花火として打ち上げた。サトシのフシギダネが使っていたソーラービームを応用したもので……こういう時に意外と使える。
「グォウ!」
「ガメ!」
「フィ!」
「ディン!」
「リッキー!」
「レブ!」
「ドォ!」
「ニド!」
「ディ!」
「ジババ」
「シェン!」
「ゴォオオオ!」
「ギャオス!」
「タマッ!」
フシギバナ、リザードン、カメックス、エーフィ、フーディン、カイリキー、エレブー、サイドン、ニドキング、ウインディ、ジバコイル、ギャラドス、パルシェン、プテラ、タマタマ……タイプバランスが変な風に偏っている。
つーか、アレじゃねえか?ニドキングとエーフィ以外は初代のライバルが出してくるポケモンだな。
御三家とナッシー、ウインディ、ギャラドスとフーディンとサイドン。ピカチュウ版はパルシェン、レアコイル、ナッシー……特に狙ってたわけじゃねえが、結果的にはライバルが使ってきそうなパーティ編成になっちまったな。
「サイドン、コレでお前を進化させる」
まだ俺が広告塔としての成果は上げられていないがそれ以外にロケット団で成果を上げていた。
褒美をくれると言ったので、サイドンがドサイドンに進化する為に必要なプロテクターを貰った。コレがあればサイドンをドサイドンに、ドサイドンに進化すればハードロックで弱点のタイプの攻撃を受けきれる。
まだ進化することが出来ることが分かればサイドンは嬉しそうにする。
ガキみてえにはしゃいでやがるが、まぁいいとタマタマを見た。タマタマは浮かない顔をしている。
「どうしてまだ自分ねえのかか?」
「タマッ……」
ストンタウンでポケモンを進化させるのに必要な石を購入した。
その中には当然、リーフのいしも入っているがタマタマにリーフのいしを使わなかった。石で進化するウインディ、パルシェン、ジバコイルは即座に進化させたのに自分だけは進化させてもらっていない。それにはちゃんとした理由がある。
「安心しろ。ちゃんと考えてるんだよ……このままお前をナッシーにしても大して旨味はねえ。少しフシギバナと出来ることが違うだけのポケモンになるだけだ」
タマタマを原種のナッシーにしたとして旨味が少ない。
フシギバナより高い火力で相手を殴る、ただそれだけになっちまう。それじゃあフシギバナとの使い分けが出来ねえ。
ナッシーには物理草アタッカーになってもらう。その為には通常のナッシーじゃなくてアローラのナッシーがいい。そう判断したから俺はリーフのいしを購入するだけ購入して終わらせた。原種のナッシーじゃなくてアローラナッシーにしてフシギバナとは違うアタッカーとして運用する為に。
「タマタマの時点で覚えれて覚えていた方が良い技はもう会得した。アローラに着いたらナッシーに進化させる……こっから2ヶ月は修行期間だ。あいつらをボコボコにする為にもみっちりと鍛えるぞ」
俺がそう言うとポケモン達は返事をした。コレで問題はないな。