「5人部屋か……二段ベッドが2つと1段ベッドが1つ」
「オレ、一番上のベッドがいい!」
「じゃあ、アタシはハヤマの下ね」
「悪いんだけど、俺は下でいいか?体が大きいから天井に当たりそうだ」
「なら、オレが上か」
「おい、俺が一段ベッド確定かよ」
ケンタロスに引かれてやって来たのは5人部屋の宿だ。
2段ベッドが2つと普通のベッドが1つ。ハヤマが一番上がいいと言うからミブチが下に入り1つ埋まりキヨシが体が大きいから下がいいと言い、ネブヤが上を選び、俺がなにかを主張する前に1段ベッドが確定した。
「あら、不満なの?」
「勝手に話を進めるんじゃねえって話だ……全員それぞれ各地方から飛行機でやって来た。今日は疲れてるから活動は明日にする事が決まって自由な時間が生まれた。ここは腹を割るぞ……お前等は週刊少年ジャンプを知ってるか?」
「ああ、知ってる」
「つーか、もう全員察してるからいいじゃんか!」
「ハヤマ、確認は大事なのよ」
俺達が転生者かどうかの確認をする為に週刊少年ジャンプを知っているかを聞けば知っているとキヨシは答える。
ハヤマは既に色々と察している時点でいちいち確認なんかしなくてもいいと言うが、ミブチは確認が大事だと言っている。
「確認つってもよ、顔合わせてもう察したんだからもう必要ねえだろ?」
「……気付けば知らない場所に居た。周りにある道具から情報を収集した結果、この世界がアニメのポケットモンスターの世界に酷く類似している世界で、特に準備する期間も無くて各地方を代表するポケモン博士から最初のポケモンを貰った……コレで間違いないな?」
「ええ……ホントに驚いたわ。目覚めれば知らないところで、パソコンとかテレビがあったから情報は得られたけれども」
「でもさ!でもさ!ポケモンの世界じゃん!スッゲえ面白そうって言うか面白い世界じゃん!」
「なんでとか考えるよりもどういう風に楽しむか考えた方がいいだろ?」
顔を見た時点で色々と察したからこれ以上の余計な確認は不要だと言いたいネブヤ。
俺は俺の身に一番最初に起きたことを言えばミブチも同じ目に遭っている。他の3人も否定しないから同じ状況なのは確かで、ハヤマとキヨシはこの世界は面白いと主張する。
「んなわけねえだろうが、馬鹿共が。ちっとは異変に気付けよ」
「異変って……誰がオレ達をこの世界になんて言われても分かんねえよ」
「違う。もっと根本的な部分だ……ハヤマ、お前分数の割り算のやり方は分かるよな?」
「ハナミヤ、オレがバカっぽいから聞いたのか!?そういうのはネブヤだろ!」
「いいから答えろ」
「分子と分母を分けて掛け算する計算だろ?こんなん誰でも分かるだろう」
「じゃあ、それを何時何処で習った?」
「んなの小学校だろ」
「あら、じゃあその小学校は何処の県にあるかしら?」
「それは……あれ?」
どうやらミブチは俺と同じ答えに行き着いていてみたいだな。
ハヤマの奴が分数の掛け算は小学校で習ったと言っているが具体的にはその小学校が何処にあるかが分かっていない。
自分の通っていた学校をまともに言えない。
ハヤマはなんで?となって必死になって思い出そうとするが思い出せない。
「自分自身を構成する記憶が欠落してるけど、しっかりと自我を持ってる。記憶喪失になった人間みたいな感情じゃなくて物の好き嫌いとかそういうのもハッキリとしてる」
「おぉ、その事か……別にいいんじゃねえのか?こうしてハッキリと人格を持って生きてるわけだしよ」
「元の人格がどうのこうのなんて気にしないわ……むしろアタシ達は被害者よ?」
キヨシも気付いている。ネブヤも気付いている。ミブチも気付いている。
気付いてなかったのはハヤマだけで、ハヤマはその事に軽くショックを受けている。なんで気付かねえんだよ。
ネブヤは気にしない。ミブチはむしろ被害者と言う。
「一応、俺も俺なりに調べてみたけどアルセウスみたいな凄い力を持ったポケモンが俺達を呼び寄せたわけじゃないみたいだ」
「フハッ……ますます気持ち悪いじゃねえか」
「気持ち悪いって……なにが?」
「自分自身を構成するエピソード記憶が大きく欠けている。その割にはポケモンに関する知識だけは物凄くある。人格は既に出来上がっていて、5人が奇跡の如く無冠の五将だ。コイツはもう誰かが仕組んでる」
俺1人ならばともかくここに無冠の五将の5人が揃っている。
俺はオーキド博士、キヨシはウツギ博士、ミブチはオダマキ博士、ハヤマはナナカマド博士、ネブヤはアララギ博士。
5人とも各地方を代表するポケモン博士が送り出したポケモントレーナー、そして全員が無冠の五将を幼くした見た目をしている。
「アタシ、これでもガチのオカルトの知識はあるけど……こんな超常的な事を偶然なんて言葉で片付けれないわ。誰かが仕組んでる……多分だけど、この世界を物語として観測する事が出来る世界の超常的な存在がアタシ達を」
「その為だけに作られた命だったら?」
「っ!!」
俺に関するエピソード記憶が欠落していて人格が生まれている。
1から10まで見た覚えがないポケモンに関する知識を記憶している。なら作られた命の可能性がある。
「……それは考えなかったわけじゃない……でも、ご飯は美味い!って感じるしポケモンバトルは楽しい!って感じる。作られた命でそういう風に色々と運命を操作されててもこの思いは紛れもなく本物だよ」
「いちいちそんな細けえ事を考えるなよ。オレなんて記憶が欠落してることよりもこの世界の肉料理がなんの肉なのか気になってて飯が喉を通らなかったんだぜ?」
キヨシは自分が作られた人格、記憶、命だと考えなかったわけじゃないが割り切る事は出来ている。
ネブヤの野郎はそんな事よりもこの世界の肉料理がなんの肉かが気になっていた……まぁ、確かに肉は気になるけどよ。
結論から言えばポケモンは食用のポケモンも居るとだけ……ポケモン自体が他のポケモン食ったり縄張り争いするから人間だけが食わねえのはエゴだ。
「この世界を第四の壁を通して見ることが出来る誰かがアタシ達を送り込んだ。もうそれでいいでしょ?この辺は下手に考えれば色々とややこしくなるんだから」
「俺もどうすればって考えてアルセウスに聞いたりしたから……ハナミヤ、楽しんでこうぜ!」
「っち……」
言っていることは一応は理解出来るが受け入れたくねえ。
ハヤマは言われて気付いたが他の3人はこの世界を生きるという覚悟を決めている。キヨシは悩んでたみたいだが答えは出した……アルセウスに会ったってなにしたんだよコイツは。
「アタシ達が無冠の五将なのは……なんでかしら?」
「アレじゃねえの?ポケモンって植物の名前が多いから。オレ達全員植物が入ってんじゃん!」
全員が無冠の五将の容姿をしている理由が分からないミブチ。
ハヤマがオレ達全員が植物に由来する名前が入っていると言えば誰も特になにかを言い返せなかった……まさかそんなクソしょうもねえ理由でこの容姿かよ。
まったくよ……なにがしてえんだ?
俺と同じ立ち位置の人間を他にも用意している。ポケモンに関する知識を持っている転生者、普通は1人で良い。
それなのにも関わらず無冠の五将の5人になった。俺達の内の誰か1人だけがこの世界の猛者達と戦えと、それを見たいって思いがある。だが、何故か5人……ホビーアニメはそのホビーについて知っているだけで武器になる。
アニメのポケットモンスターはゲームにポケットモンスターと大分異なる。
だが、それを理解することさえ出来れば後は特に問題は無い。ただ単に技を指示するだけじゃなくて移動の行動も指示したり技の細かさを指示出来る。ただ持っている技をぶつける以外、カウンターシールドみたいな事が可能だ。
「色々と考えてるかもしんねえけどよ、この世界はアニポケに似てる世界で俺達が居る時点で物語は崩壊してる。いちいち細けえ事を考えるなよ。んな事する暇あるなら筋肉でも付けろ!力イズパワーだ!」
「お気楽ね……でも、同感だわ。サトシが世界一にならないと絶対にダメな理由は無いし仮にあってもそれを優先して諦めろなんてムカつくわ」
「やっぱやる以上はてっぺん目指さねえと!」
「そうそう!全力で頑張って全力で勝ちに行って全力で楽しむ……ハナミヤがアローラに俺達を集めたのだってホントはZワザが目的だろ?それなら難しく考えるなって」
おいこれ、俺が悪いのか?ネブヤもミブチもハヤマもキヨシも割り切っている……ネチネチと言っている俺が普通にバカに見える。
他の4人と馬が合うわけでもないから、これ以上は無意味……俺もそういう風に割り切っておく。キヨシがサラッと語ったがアルセウスに会っても答えは出なかった。そうなった以上は深く考えても意味は無い。
「はい、これでこの話はおしまい。アタシ達が深く考えてもコレだ!って答えが出るわけじゃないし何かがしたいってわけでもないでしょ?これ以上深く考えたら人格にまで影響があるわよ」
「っち……」
一応はミブチが言っている事は正論だ。
別になにか目的があるわけじゃない。この世界に1つの命として生きる覚悟が出来ている。俺達をどうにかしようとしている神様側のコンタクトは無かった。じゃあ、そういうことだ。
「そ・れ・よ・り、アタシとしてはハナミヤ以外が連れてきた女の子について気になるわね!」
「お前だってサイトウと一緒に来てんだろうが」
この話はこれでおしまいだとなり、ミブチは一緒に来た女の子について興味津々だ。
ネブヤがサイトウと一緒に来ている事について指摘すればニッコリとミブチは笑みを浮かべる。
気持ち悪いっつーか、その辺の話題になれば完全に俺は蚊帳の外だな。
「いや……まぁ……色々と失敗したって感じだな」
「失敗ってなにが?」
「ルチアに好かれて、ルチアが皆のコンテストアイドルじゃなくて普通のコーディネーターになった……すまん……」
「あ〜そういう感じ?別にいいんじゃねえの?世界が滅びるとかそういうヤバそうなの以外なら無視しても」
キヨシは少し気まずそうにし、答える。
今をときめくコンテストアイドルのルチアがなんの因果かキヨシに惚れてしまった。皆のコンテストアイドルじゃなくて普通のポケモンコーディネーターになり、ポケモンコーディネーターとして活動をしている。
アイドルに彼氏とか彼女とか居たら普通に問題だ。
ラブライブとかアイドルマスターでオリ主が原作キャラといい感じの空気を出してるけども冷静に考えて普通にアウトだからな。
ハヤマは別に世界が滅ぶとかそういうヤバい案件じゃないし、ブレイクしてもなんにも問題は無いと気にしない方がいいと言う。
「まぁ、どういう関係って言ったら……彼氏彼女な関係だな!スズナと一緒に居て楽しいし、ジムリーダーとして頼れるしさ。スズナがジムを開ける事が出来ないから今回この話が無かったらキッサキシティでスズナと修行してたし」
「どっち側が告ったの?」
「いや、告ってないよ。でも、お似合いのカップルって言われて頷いてくれたし今回の話をしてキッサキシティ離れるって言ったら、自分も行くって言い出した」
「なによそれ!ちゃんと白黒ハッキリとしなさいよ!!」
「じゃ、シンオウリーグ・スズラン大会優勝したらで!」
ハヤマはハッキリと彼氏彼女の関係性と言ったがどっちが告ったかについては答えないと言うか答えがない。
なんかそういう感じの空気が成立していてお互いに否定していない。今回も自分も行くってついてきてくれた。それを聞いたミブチは白黒ハッキリとさせなさいと乙女な怒りを見せている。ハヤマはシンオウリーグ・スズラン大会に優勝したら告白すると決意した……フラグじゃねえよな?
「で、あんたは?」
「男と女の関係性だよ」
「一番ありえねえ組み合わせだろう?」
ハヤマが終わったのでネブヤとタロの関係性について聞いた。
男と女の関係性だとタロはハッキリと認めたが、知識的にあるタロの人間性からしてネブヤと相性が悪そうだろう。
組み合わせ的には一番ありえねえ。
俺はハッキリとそう言ったしミブチ達も言わないだけで心の何処かでそう思っており、酷いことを言うなとかそういう反論はしてこない。
見た目が中学の根布谷永吉じゃなくて洛山の根布谷永吉だ。顔とか体格は幼いが見た目も中身もネブヤは根布谷だ。
可愛いは最強とかいう脳みそピンクな考えをしてるタロとなにがどうすればそういう関係性になるんだよ?
「おいおい、言っとくが向こうの方から言ってきたんだぜ?」
「嘘でしょ……」
「いや、待て!なにか裏がある……そうだ!お父さんに似てるとかそういう感じのタイプ!」
告白をしたんじゃなくて告白をされた側だと言うネブヤ。
ミブチはありえないと戸惑いを隠せずキヨシはなにか裏があると考え、お父さんに似てるから好きというライクとラブの好きの意味合いを少し間違えている好意だと気付く。
「お前等、脳みそにカビでも生えてんのか?んなわけねえだろう……お父さんに似てるとかそういう奴じゃねえよ」
「嘘だろ……女心って分かんねえ……」
まだ顔が良いとかで済んでいるハヤマやキヨシは分かるがネブヤはガッチリ男子だ。
タロの親父であるヤーコンと似ているところはあるからそこでフラグが生まれたかと思ったが違うと当人が否定する。
ハヤマはタロの性格からなにを基準にネブヤを選んだのかが分からねえと……同性にモテるイケメンともまた違うタイプか。
「まぁ、フラグがあっただけでも良い事じゃない」
「で、ミブチはどうなんだよ?」
「アタシ?アタシもそういう関係性よ。サイトウったらガラル空手を極めたいとか思っているのはいいけど、青春を過ごしていないわ。ストイックなのは悪くないけど、なんていうか義務感とかそういうので動いてて楽しいとかそういうのを思えてないのよ。ストイックに過ごしながらも楽しむ青春を教えていたら、ね……可愛い子で大好きよ」
まだ話題に出していないミブチについてネブヤが聞いた。
ミブチは軽く惚気話をした……なんで他の4人から惚気話を聞かなくちゃなんねえんだよ。
「それで……ハナミヤは?」
「あのな、こっちはそういうのを考えてる余裕がねえんだよ」
4人は色々と割り切ることが出来てはいるが俺はそれに時間がかかっている。
今もこうして色々と余計な事を考えている。4人からすればそれは考えても無駄な事だがどうしても俺の頭から離れない。
確かに恋愛方面について考えたことが無いと言えば嘘になるが、余裕が無いのもまた事実だ。原作キャラは地雷案件が多いからサンタクロースに出会いが欲しいって言うぐらいだぞ。
「まぁ、お前が花宮真に性格似てるなら……」
「喧嘩売ってるなら買うぞ?」
「でも、自覚はあるんだろ?……ダメだぞ。ポケモンバトルは正々堂々としないと」
性格が花宮真に似ているから人間性が合う女が居なさそうとネブヤは言う。
喧嘩売ってるなら買うと額に青筋を立てている。キヨシの奴はポケモンバトルは正々堂々としろと言う。
「安心しろよ。ポケモンバトルは正々堂々とする。いや、むしろ正々堂々としなきゃ面白くねえ」
「なんか裏があるだろ?」
「潔く白状しなさいよ」
「決まってんだろ。主人公達をボコボコにすんだよ……あいつらは主人公補正なんかのおかげで強くなれている。進化していないポケモン、使っている技も戦術を一切考慮してねえ。それでも都合良く勝ててる……サトシ達がトレーナーとしてダメな奴だとハッキリと証明して嘲笑うんだよ」
俺が真面目にやっている一番の理由はサトシ達を嘲笑う為だ。
その為の努力は怠ったつもりは無い。ご都合主義でなんとか上手くいっている主人公を主人公補正を用いても勝つことが出来ない、そんな都合の悪い現実を押し付けて押し付けて押し付けて、心をへし折る。
サトシ達はどういう風に立ち直るか?いや、もしかしたら立ち直ることすら出来ないかもしれない。
何度も何度も挑んでもそれでも勝てない、そう思える力の差を思い知らせる。
サトシ達にはラフプレーをしない。
「根性だとか信念とか暑苦しく張り切ってる奴をプチッと潰す……そいつらとのバトルに対して雑魚は興味ねえと言ってやんだよ」
「悪趣味ね……」
「でもさ、勝てないのが悪いだろ?」
「本気で勝つ為の場所がポケモンリーグとポケモンワールドチャンピオンシップスだからな」
ミブチは悪趣味だと引いているがハヤマとネブヤの言っている勝てないのが悪いことに関して反論しない。
キヨシの奴はなにかを考えている。
「言っとくが、サトシに対してアドバイスらしいアドバイスは一切送ってねえ……当然、リザードンはまだ言うことを聞いてない」
「アドバイスを送ってないのか?」
「当たり前だろ?……言うことが聞かないポケモンに言うことを聞かせる方法を考えるのもトレーナーの仕事だ。第一、あいつは周りの環境に甘え過ぎてんだよ」
トキワシティにトキワジムがあったことを知らない、ジムリーダーがどのタイプのポケモンを使ってくるか知らない。
次に行くジムをそこに居るジムリーダーから聞いている。食事関係を全てタケシに任せている。
他よりも圧倒的に恵まれた環境にサトシは居る。
それなのにも関わらず大した結果を残せていない。それはサトシ自身が周りの環境に甘えている証拠だ。甘えるなとは言わねえがよ、トレーナーとしてやってなきゃいけねえ事をやってねえんだから怠惰にも程がある。
「あの手のタイプにアドバイスを送るにしても教科書開いて知識をつけろだけだからな……それを最も避けている。キヨシ、同情してアドバイスを送ってもあのバカは覚えねえよ。実戦でしか学ばないタイプだからな」
「まぁ……そうなんだけどな……ぶつかった壁は自力で突破しなきゃな」
下手にアドバイスなんかを送るって腹ならば困る。ジワジワと精神的に追い詰めておきたいからな。