アルピ交通事務局のアニポケネタ倉庫   作:アルピ交通事務局

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勝てば勝つほど惨めになる

 

「あ、シゲル……はじまったな、ポケモンリーグが」

 

「…………」

 

「オレ、水のフィールドだった。オーキド博士がポケモンを入れ替えないかって話が来たからクラブの存在を思い出してさ、シゲルはどうだった?」

 

「……けたよ……」

 

「え?」

 

「だから、負けたよ……ハナミヤに」

 

「なっ!?」

 

 俺達の試合が終わったのでサトシの顔を見に行った。

 

 サトシはこれから試合で気持ちを落ち着かせている中で俺達が現れた。

 緊張している心とこれから大舞台で最高のポケモンバトルが出来るんだという2つの思いが混じり合っていた。

 

 シゲルの顔を見ればシゲルに試合結果を聞いた。

 ここで何時もの軽口でもなんでもなく物凄く重そうに答えた……小声だった為にサトシは聞き取れず思わず声が出ればシゲルは素直に負けたことを告白した。

 

「ハナミヤが、シゲルを……そんな」

 

「残念だが事実だ……お前も初戦敗退なんて情けない醜態を晒すなよ」

 

 シゲルならばきっと勝ち進む事が出来る。

 色々といがみ合いはしているが心の何処かではシゲルは優秀で強いポケモントレーナーだと認めている。今まで自分の先を行っていたのだから今回もサクッとポケモンバトルに勝利をする……そう思っていたのだが、俺に負けたことを告げられれば戸惑いを隠せない。

 

「サトシ選手、間もなく試合ですので準備を」

 

「は、はい!……いくぞ、ピカチュウ」

 

「ピッ……」

 

 シゲルがまさかまさかの1回戦負けという事実を受け入れられないサトシ。

 物凄く強いトレーナーじゃなくて俺に負けた。サトシの奴は俺とシゲルじゃシゲルの方が優秀なトレーナーだと認識していてその結果が飲み込めなかった。

 

「ねぇ、あれって」

 

「オーキド博士の孫らしいよ」

 

「ボロ負けしたよな」

 

「オーキド博士は昔はブイブイ言わせてたのに、受け継がなかったんだな」

 

「っ……」

 

 フハッ……最高だな!!

 

 サトシが試合をするから選手控室を出ていくようにポケモンリーグスタッフに言われたので会場を歩く。

 シゲルも隣を歩いているのだが周りからの視線に気付いた。ポケモン取扱免許を貰った年にポケモンリーグに出場、ジムバッジ8個のところを10個も手に入れた。オーキド博士の孫という称号も持っている。

 

 周りは当然、それ相応の期待をしているもんだ。

 それなのに結果はボロ負け、激闘という激闘を繰り広げたわけでもなく1回戦や2回戦で見る今までは運が良かったり自分にとって楽な道での育成をしていたトレーナー達と同じ結果を見せた。

 

 オーキド博士と言えばポケモン研究の第一人者で各方面で顔が知られている。

 過去に色々な事で功績を残している立派な偉人だろう。そんな偉人の孫が華々しいデビュー戦を飾ったらそりゃ周りは期待する。

 

 その期待を見事なまでに裏切った。初戦敗退、オーキド博士の子供が名を上げていないから孫も名を上げていない。隔世遺伝みたいな事は特に無い。今まで周りからちやほやされていたシゲルだったが、周りから期待して損したという嫌な視線を徹底的に浴びる。

 負ければその時点で終わりなのがポケモンリーグ、シゲルは全くと言って爪痕を残せておらず……サトシがクラブをキングラーに進化させ見事に使いこなして3タテをした。

 

「っ!!」

 

 何時もバカにしていて基本的な力の差がハッキリしている。だがここぞという時の勝負強さは確かなサトシが見事に勝利した。

 シゲルの中にある感情がぐちゃぐちゃになっていく……サトシの事をビギナーズラックと言う簡単な言葉で片付けようとしない。それで片付けてしまえば自分は運にさえ見放された。選ばれなかったトレーナーだと絶望に染まる。

 

「何処に行くんだ?」

 

「……僕の、僕のセキエイ大会はここで終わった。だから僕がここに居る理由は無いんだ!!」

 

「おいおい、お前のことをライバル視しているサートシくんが頑張ってる……おっと、お前は負けてサートシくんは勝っちまった。友人として応援したくてもサトシが勝てば勝つほどにお前は惨めになるよな」

 

「っ!!」

 

 シゲルはセキエイ大会に負けたからセキエイ高原を去ろうとする。

 ライバル視しててお互い意識し合っている関係性であるサトシの快進撃を見ないのかと言いながらも、本心を当てる。

 

 ここは本気で挑んでる奴等がぶつかる場所だ。

 1回でも負ければ終わりだが、だからこそ実力がハッキリと分かる場所でもある。周りからの期待を裏切り、裏切られた周りは期待して損したと言われ、一応は意識しているサトシが勝った。1人の友人として応援をしたいが既に敗北しているシゲルにとってサトシが勝てば勝つほどにシゲルが哀れになる。

 

「自分が惨めにならないように逃げるなら逃げろよ……」

 

「……」

 

 俺に言われた事が当たっていたのかシゲルはポロポロと涙を流す。

 どうして自分はここに居ないのか、これから大会が終わるまでセキエイ高原に居続けたらシゲルは自分自身が無様でみっともなくて情けない三流だと感じる。シゲルは負けたと言う現実を受け入れて逃げた。

 

「フハッ……いいね……」

 

 周りから囃し立てられていると思えば結果は1回戦にあっさりと敗退。

 シゲルが絶望を味わった……キヨシ達と違って俺はこの光景を見る為に死ぬ気で努力をしている。

 

 オーキド博士は孫の晴れ舞台が見れなかった。サトシはシゲルの戦う姿を見れなかった。周りはオーキド博士の孫なんてこんなものかと期待して損をして呆れていた。最高だ。

 

「なんだ、お前も出てたのか」

 

 そんなこんなで全ての1回戦が消費されてそれぞれが2回戦に駒を進めた。

 次の俺の対戦相手と対戦するバトルフィールドを知ろうとセントラルのポケモンセンターに向かえばクロスが居た。

 

「出てたもなにも、なんの為にアローラに居たと思ってんだ」

 

「井の中の蛙自慢をしたかったからじゃないか?……俺はアローラなんかじゃ終わらない!最強を目指す!」

 

 伝説級のポケモンに6タテされてボコボコにされたのに、よく立ち直れる。

 とは言え、あの敗北は意味のある敗北だ……クロスは強いポケモンを求めている。ミュウツーと言う理不尽な強さを持っているポケモンが居た。じゃあ、あんなに理不尽な強さを持っているポケモンをゲットすれば言うことを聞かせればとなる。

 

 弱いポケモンを育成して云々じゃなくて最初から強いポケモンを育成してだ。

 お陰様と言うべきか、しまキングのハラさんから人間性に問題がありとZパワーリングを貰うことが出来てねえ。どっちかと言えばダメな人間である俺ですらゲットする事が出来ていると言うのに情けねえ。

 

「次の対戦相手はサイゾウ選手、草のバトルフィールドよ」

 

 クロスが次の対戦相手とバトルフィールドを聞き終えたので俺は次の対戦相手とバトルフィールドを聞く。

 ボコボコにして壊してやりたいのはサトシとクロスぐらいで目ぼしいのは他には特にいない……ここで偶然の出会い!なんて事も無い。

 

 転生者は5人、俺、キヨシ、ミブチ、ハヤマ、ネブヤだけだ。

 サトシキラーならぬ転生者キラーな存在が居るかもしれねえが気にしていたらキリが無い。

 

「毎試合ガラガラだな」

 

 対戦相手のサイゾウのデータを確認する。

 余程ガラガラに自信があるのか全てのジムでガラガラを使っている。コレはガラガラがエースであるという自信を持っている証だ。

 

 ただガラガラ以外の戦績が乏しくない。

 最終的にガラガラが問題を解決している。その為にガラガラのレベルが高く、他のポケモン達がこのポケモンリーグに出るには少し物足りない育成が足りないレベルのポケモンが多い。

 

 ポケモンを平等に育てるのは不可能だ。

 エースが決まったり試合の流れを変える役割を持った奴が居れば自然とチームバランスが崩れる。チームバランスが崩れる=悪い、と言うわけじゃない。エースに任せてエースに足りない要素や出来ないことのフォロー、そのポケモンが居るだけで牽制になるブラフ、もしかしたらを思わせないといけねえ。

 

 エースの役割は本当に色々と異なる。

 一番強くて頼りになりここぞという時を決めてくれる強さ

 とりあえず出しておけば確実に勝利を手にする安定性

 持っていると見せつけるだけで相手は真正面からの戦闘を避けて、でも他にポケモンが出てきたらの答えの無い問題に閉じ込める圧倒的な存在感。

 

 エースは一番強い存在なのかもしれねえが、それを上手く活かせるパーティ構築をしていない。

 ただ純粋に強くなった……ネブヤですら純粋に強いだけじゃなくて作戦云々を真面目に考えているがこのサイゾウは論外だな。

 

『さぁ、ポケモンリーグ・セキエイ大会!ここ草のフィールドも白熱したバトルで盛り上がってまいります!」

 

「これより2回戦を行います!使用ポケモンは3体のシングルバトル、交代はありでメガシンカ、Zワザ、テラスタルは何れか1つは使用可能!」

 

 緑コーナーには俺が、赤コーナーにはサイゾウが立っている。

 シゲル戦で大体の感覚は掴めたと試合会場に飲み込まれる事は無い。サイゾウは目を閉じて瞑想をして気持ちを落ち着かせている。

 

「サイゾウ選手から!」

 

「ゆくでござる!ガラガラ!」

 

「ガラッ!!」

 

 ルーレットは赤に止まりサイゾウから先にポケモンを出すことに。

 サイゾウの1体目はガラガラ……ミブチの奴が持っていたアローラガラガラと遜色が無いレベルだ。

 

 エースを任されているポケモンだけあってかレベルは結構高い。

 これに8人のジムリーダーが敗れたと言われても納得をすることが出来る強さを持っている。

 

「いけ、ギャラドス」

 

「ゴォオオ!!」

 

『サイゾウ選手のガラガラに対し、ハナミヤ選手はギャラドス!相性の上ではハナミヤ選手が有利!』

 

「相性など拙者のガラガラには無意味でござる!」

 

「ガラッ!!」

 

「じゃあ、大口を叩いた成果を見せてくれよ……審判、ベースはこおりのキバだ!」

 

 相性の上では不利だがそんなのはものともしない!自分達は勝つんだ!と燃えている。

 鬱陶しいことこの上ないしこの手のタイプは1回でも勢いを手に入れたらその時点で強さが跳ね上がる。だったらやることは1つだ。

 

「レイジングジオフリーズ!」

 

 こおりのキバをベースにした、こおりタイプのZワザ、レイジングジオフリーズをぶつける。

 回避不可能、相殺も同じZワザじゃねえと出来ねえものでガラガラはカチンコチンに氷漬けにされて氷が砕け散りガラガラが中から出てきて倒れた。

 

「ガラッ」

 

「ガッ……ガラガラァ!?」

 

「ガラガラ、戦闘不能!ギャラドスの勝ち!」

 

『お、おおっと!!ハナミヤ選手、試合開始早々にいきなりのZワザ!回避不可能なこおりタイプの強力な一撃をガラガラを襲い、ガラガラ、なにも出来ず虚しくダウン!』

 

「っく……」

 

「威勢のいい事を言ってた割には大したことがねえな」

 

 自慢のガラガラで熱い激闘が!と言う展開にはならず、たった一撃でガラガラは倒された。

 ペースを作る前に全てを潰されてサイゾウは焦りを見せておりガラガラをボールに戻した後、次のポケモンを出した。

 

「ゆけ!ドードー!」

 

「ギャラドス、このままいくぞ」

 

 さっきのガラガラと違って強そうな印象が無いドードーが出来た。

 ガラガラのレベルは高いがドードーのレベルは低い。エースをここぞという時に活躍させる戦闘を重視した結果か、エースをフォローするポケモン達の育成が足りていない。

 

「ギャラドス、りゅうのまい!」

 

「ドードー、ダブルアタック!」

 

 フハッ、苦し紛れにも程があるな。

 ダブルアタック仕掛けるがりゅうのまいを舞い踊るギャラドスに弾き飛ばされた。ダブルアタックを当てること自体は成功しているが全くと言ってダメージになってねえ。

 

「ギャラドス、りゅうのまい!」

 

『攻撃のチャンスはある様に見えるが、己の力を上げることを重視するか!』

 

 んなわけねえだろう、バカか。

 今の攻撃でドードーの力がどれくらいなのかが分かった。レイジングジオフリーズを使うのにこおりのキバを使っていて、このりゅうのまいで技の枠を2つだ。残りの技を使う前にサイゾウがどうするかの確認だ。

 

「ドードー、こうそくいどうで撹乱しろ!」

 

 こっちが攻めてこない以上は向こうも下手に動くつもりはないのか?

 いや、攻撃をしてこいと言わんばかりにこうそくいどうで素早さを上げて撹乱をしている。

 

 ギャラドスは目で追おうとするがドードーは思ったよりも早くて追いかけるのをやめる。

 

「追いかけても無駄だ……狙いは分かっている」

 

「ドードー、ドリルくちばし!」

 

「こおりのキバだ!」

 

 こうそくいどうで撹乱をして素早さを上げたドードーは攻撃に転じる。

 読み通りドリルくちばしで攻めてきたのでこいつだとこおりのキバで対抗をする。ぶつかり合うこおりのキバとドリルくちばし、勝負を制したのはこおりのキバを使ったギャラドスでドードーは倒れた。

 

「ドードー、戦闘不能!ギャラドスの勝ち!」

 

『ハナミヤ選手のギャラドス、2連勝!このまま3連勝で勝利となるか!』

 

「っ……」

 

 ガラガラで勝負を上手い具合に作ろうとしたら開幕のZワザでペースを崩された。

 ドードーを出して試合をどうにかしようとしたが、残念ながらドードーに試合を動かす力は無かった。

 

 頼りになるエースが真っ先に撃墜された。

 エースだけでポケモンバトルは出来ないと他のポケモンでとなるが、サイゾウのガラガラは強さでエースの座をもぎ取った。

 心の何処かでコイツで勝てるのか?と言う不安が生まれている。こっちはZワザなんかはもう使えないがそれを踏まえて残り1体で勝てるのか、頼れるエースならばともかくコイツではと心の何処かで負けを認めかけている。

 

「いけ!ゴルダック!」

 

「コバ!!」

 

 サイゾウの3体目のポケモンはゴルダックだった。

 俺も人のことを言える義理じゃねえがこの草のバトルフィールドに適合したポケモンじゃねえ……つか、草のバトルフィールドはなんのポケモンが優勢なんだ?他の3つと違って利点があんま見えねえぞ。

 

「ギャラドス、パワーウィップだ」

 

 みずタイプのゴルダックにこおりのキバは効果は薄い。

 ゴルダックが使える技でこのパワーウィップに対抗する手段は無い……と言うよりはあったとしても間に合わない。

 

 ゴルダックはじこあんじを使えるがじこあんじを使うのに一手使わないといけない。

 上がってるのは素早さと物理攻撃だけで防御力は上がっていない。パワーウィップを受ければどうなるのか?言うまでもない。

 

「ゴバ……」

 

「ゴルダック、戦闘不能!ギャラドスの勝ち!よって勝者、ハナミヤ選手!」

 

『ここで試合終了!ハナミヤ選手、ギャラドス1体でしかも技の枠を後1つ残した上でサイゾウ選手に勝利!圧倒的だ!!』

 

「ガラガラ、ドードー、ゴルダック……すまない……すまない」

 

 フハッ、少しはマシな試合が出来るかと思ったがそんな事は無かった。

 エースが強いだけでエース頼み、エースを支える他のポケモン達が上手く機能してない情けねえパーティだ。

 

 サイゾウは全くと言ってなにも出来なかった事を悔やむんじゃなく、謝っていた。

 ポケモン達が弱いんじゃなくて自分自身がポケモン達の力を出し切る事が出来なかったと思っているが、両方だ。ポケモン達も弱いしサイゾウがポケモン達の力を出し切る事が出来なかった。

 

「こんなもんか」

 

 1回戦にシゲルと当たってシゲルを歪めてしまったからか少し物足りない。

 サイゾウに対してお前が無能と言っても面白くねえ……毎回、相手を不幸だと思わせるのは難しいが、勝てたからそれでいい。

 強い相手とバトルしたいって言うならチャンピオンリーグにまで進めばいい。チャンピオンリーグにはキヨシ達が居るからな。

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