「オーキド博士、一応は並べ終えましたよ」
「おお、そうか」
現在、四天王やチャンピオン達が激闘を繰り広げている。
チャンピオンリーグで無様に敗退した俺はと言えばオーキド博士の研究所でオーキド博士の手伝いをしている。
理由?オーキド博士から盗める技術を盗む為だ。
オーキド博士と言えばポケモン研究の第一人者であるが、それと同時に様々なポケモンの分野に精通している。
ポケモン川柳とか言うクッソしょうもねえものからポケモンフーズの作り方まで色々と熟知している。
オーキド博士の手伝いをするのを条件にオーキド博士から盗めそうな技術を盗む。
「同じ辛いきのみでも、クラボのみとマトマのみでは使い方が違うんだ。スパイシーなのがクラボのみ、マトマのみは痛みに近い辛味を求める人向けだ」
ただ一言、言わせてくれ……なんでお前が居るんだと。
タケシもオーキド博士の研究所を手伝っている。聞いた話によればマサラタウンで倒れているところをサトシのママさんが拾って家のことをしてもらっており、ついでにオーキド博士のお手伝いをしている。
タケシは一流のブリーダーを目指しているだけあってかポケモンフーズ等の知識が豊富だ。
タケシから盗める技術は多いと感じているが……
「フハッ……無理だろ」
タケシも俺からなにかを盗めないのかを考えている。
俺はオーキド博士の手伝いをしながら、オーキド博士が持っている研究資料やポケモンに関する本を読んで知識として蓄えている。
専門的な分野も見ているからオーキド博士がポケモン研究者にでもなるのかと聞いたが、使えそうだから覚えているだけだ。
「お前自身は完成してるし、サトシのフォローをしたいと思ってんなら諦めな」
「ああ……この数日、お前のことを見ていたけどサトシと大分異なっている」
俺はサトシのことをセキエイ大会でバカにしてやった。
その事についてタケシは俺のことを酷いやつだなんだと否定的なことを言ってくるかと思ったが特に無かった。
俺とサトシの間にある大きな力の差はある。
タケシはトレーナーとして駆け出しの頃の俺とバトルをした。そしてトレーナーとして1つの形に一応は纏った俺のバトルを見た。
サトシのことを見守っていた事や両親がダメ野郎だから任されていたジムリーダーとして鍛え上げた観察眼を持っている。
その観察眼から見た俺とサトシの間には大きな力の差があるのだとハッキリと理解している。
「特別ななにかを探そうとしてる時点でもうヘボなんだよ」
『剛力』の異名を持っているネブヤはポケモン達をXLサイズやオヤブン個体サイズ並みに鍛え上げている。
『雷獣』の異名を持っているハヤマはポケモンの技を一度に複数指示する事で無駄な硬直時間を無くしスピーディーにバトルできる。
『夜叉』の異名を持っているミブチはポケモンに3つの高度な技術を覚えさせそれを使っての揺さぶりをかける。
『鉄心』の異名を持っているキヨシはどんな状態でも折れずに勝ち目を探す不屈のメンタルを持っている。
無冠の五将の4人はそれぞれ自分なりの答えを導き出している。
俺も自分なりの答えに関しては導き出せている。『悪童』らしいかと言われれば話は別だがそれでも他に負けない武器、頭脳があると言える。特に練習しなくてもフラッシュ暗算とかも簡単に出来るからな。
「俺は別に特別ななにかはしていない。俺からなにかを盗もうたって盗めそうな物は無いだろう?」
オーキド博士の手伝いをする傍ら、ポケモンの育成をする。
オーキド博士の研究所に全てのポケモンが居るから同じタイプのポケモン同士の技の競い合いや、違うタイプのポケモンとの交流で鍛え上げている。
タケシにはその光景は隠していない。
なにかスゴい特訓をしている様子は無い。覚えている技も大抵は育てていけば勝手に覚える技で、中にはニドキングの様にレパートリーが豊富なのもいるが、全員がなんでも出来るようになれとは言っていない。
俺のポケモン育成は仮にタケシがブリーダーでなくトレーナーとしての道を進み続けてれば至る極々普通の光景だ。
メインのタイプを鍛える。どの能力を伸ばしたいのかを決める。自分なりの戦闘スタイルを導き出す。シゲルもしている極々普通の事だ。
「ああ……ホントに普通だ。Zワザを会得していたから特別な事はあるのかと思ったけど」
「フハッ……んな淡いもんに期待してどうすんだ?バカにでも分かる強いはあるがバカにでもなれる最強はねえんだよ」
俺がなにか特別な事をしているかと思っていて色々と観察しているが、特に変わったことはしていない。
特別ななにかを見つけ出してそれも自分も真似して成功者になってやる?んな簡単に成功者にになれるわけねえだろ。バカが。
「そもそもでサトシはやっと失敗をしたんだ……その失敗を受け入れることもまともに出来てねえ無能だがな」
「……お前がサトシを煽ったからだろう」
「フハッ、雑魚に雑魚って言って何が悪い。失敗したら失敗という経験を得られるなんて言うが、まずは失敗をしたという事実、なにを失ったのかを気付かないといけない。負けたら次こそは勝ってやると思っているだけで、負けた要因なんかを全く理解してねえ。プラスだけじゃなくてマイナスを見ないといけない」
少なくともサトシはプラスしか見ていない。いい部分のみを見ていて、致命的な弱点を理解したりしていない。
全ての方面に置いて完璧な存在なんざこの世の何処にも居ねえってのによ。
「言葉には力がある、言葉を使う能力に関してはサトシは秀でてるだろう……だが、それだけだ。追い詰められれば咄嗟の機転を閃く能力も秀でている様に見えるが、それは違う」
「そうか?」
「ああ。あいつが時折見せるポケモン達にする無茶な命令なんかの正体はポケモンに関する知識が無い事から生まれている副産物だ。例えばポケモン図鑑にはポケモンの技が載っていてどういう技なのか説明がある。説明通りの方法で使うのが普通だが、サトシは固定概念に捕まらずトリッキーなバトルをしている」
「なるほど……」
「絶妙なまでに噛み合ってねえんだよ。あいつの性格と持ってるポケモンとポケモンバトルのスタイルが」
サトシのポケモンバトルは攻撃と素早さを重視している物だ。
だが、進化していないポケモン達が多くてみずタイプのポケモンならみずタイプの技だけで済ませている。
性格的に、相性を突いて戦う知的なプレイよりも同じタイプのポケモン同士でぶつけると意地を張ったりする。
真正面からの勝負に対応出来なかったりした場合、サトシは搦手を使う。その搦手はこの技とはこう使うべきだと言う固定概念が無いから出来ることだ。
固定概念が無いのはいいことだ。
新しい考えや発想が出来るっていうのは武器になる……だが、固定概念が無いせいでサトシは理屈よりも感情で動いている。
「俺がわざとポケモンを教えればあいつは対抗してフシギダネをフシギバナに、ゼニガメをカメックスにぶつければあっさりと負けた……進化後のポケモンだから進化前のポケモンが出来ることの殆どが出来る。サトシの機転を狙った奇策の閃きは強いが、どうしても真っ向からの勝負の力が足りない。それなのに真っ向からの勝負に挑もうとする。もうそれは完全に悪癖だ」
「なら、どうすればいいんだ?進化させる以外になにかあるのか?」
「フハッ、それを考えるのがサトシの仕事だ。自分の性格とスタイルとポケモンが噛み合わない。コレクション要素としてポケモンをゲットするんじゃなくてなにをどうしたいのか。俺は最初にオーキド博士に言ったからあんま言われなかったが、サトシはオーキド博士にポケモンまだかって催促されまくってるのを知ってんだぞ」
俺も何回かは聞かれたりしたが、オーキド博士はポケモンはまだか?の催促をしている。
研究対象であるポケモンは欲しいと思うのは極々普通の事……そしてサトシはまともにポケモンをゲットしていない。
「ポケモンの特徴を理解する。そして切り捨てる事だ」
「切り捨てるって、使えないポケモンだから捨てろって言うのか!?」
「ちげえよ。ここでコレは使えないと認めることだ……相手がほのおやみずタイプのポケモンに対して無理にリザードンで挑む理由はあるか?このパーティにこれは使えないなと、選ばないっていう事を選ぶことだ。ポケモンには18個のタイプがある。そして物理攻撃と特殊攻撃がある。物理攻撃タイプと特殊攻撃タイプに分けてゲットして36体、他のポケモンには真似できないスタイルを持っていたりしてるポケモンを含めれば全部を含めて50体ぐらいゲットしてれば問題はねえ……だが、ポケモンリーグに出せるのは3体か6体だ」
他の地方リーグは違うらしいが、セキエイ大会は8回試合があった。
5回戦までは使用ポケモン3体、準々決勝からは使用ポケモン6体だ。
「セキエイ大会で出せる最大数は33体だ。相手の手持ちに合わせたりしてパーティ編成をしなきゃならねえ。エース運用を考えたりすれば嫌でも重複する。50体ほどゲットしていたとしても、出番が回ってこない可能性が普通にある……出番を与えたいって私情を優先せず、コイツに出番は無いと切り捨てる。それも大事だ」
誰でも使えるとかそういう風に考えるのはいいが上に行くには切り捨てる事も大事だ。
このポケモンは色々と事情があって戦力として物足りないから使わないと言う事を選ぶ。
全員に出番を与えたいとかそういう感情があるかもしれねえが、それだけでどうにかなるほどに甘くはない。
「これから先、サトシが新しくポケモンをゲットしたとして使い分ける事が出来るか?いや、そもそもで……あいつはでんきタイプをピカチュウしか頼らないって意地を張ってやがる」
ピカチュウ以外の選択肢を、ピカチュウに出来ないでんきタイプの戦闘は幾つかある。
それがあるかないかだけでかなりの戦術のレパートリーが増えるが、サトシはポケモンとは友達だなんだでそれをしない。
「ポケモンを友達と言うならば言ってやるよ。友達には利用価値がある時と無い時があるってな」
「……酷いやつだな。でも、言っている事は間違いじゃないな……」
俺の暴言は酷いとタケシは言っているが、酷いことを言っているだけで間違いじゃない。
何でもかんでも理屈だけで、合理的に動けとは言わねえよ。だが、感情論だけで動けとも言わない。ただ上を目指してるならば特別ななにかを求める前に普通が出来るようになれ。
対人戦の競技ならばスーパープレイってのはある。
だが、そのスーパープレイを意図的に起こし続けるのは無理だ。何処ぞのキセキの世代のSGみたいに常時何処からでもシュート入れれるとかいうチートは早々に無い。スーパープレイをするのでなく、普通のプレイを普通に行う為に普通の練習を行う。
サトシの場合はその普通ってのが圧倒的に足りない。
スーパープレイをポンポンと起こせるのはスゴいが、それを除けばサトシは二流止まりのトレーナーだ。
「普通の修行か……あまりした覚えはないな」
「フハッ、逆にそれをせずにここまで来ちまったサトシが哀れだね」
俺から盗めそうな技術がないのかを見るが無いとタケシは分かった。
自分でなくサトシが使える物が無いと判断している。サトシは勝ち進んだのはホントに哀れだ。
「お前がなにかをアドバイスしたり逆になにもアドバイスしないのも勝手だが、サトシ自身が変わらなくちゃなにも始まらねえ……」
サトシは1回挑戦し、失敗に終わった。今まで運良く勝ち残れただけでちゃんとした強さを持って勝ち進めたわけじゃない。
それを反省して今度はお情けのバッジじゃない実力で勝ち取ったジムバッジを手にする。だが、それでも勝てなかった。
ここまでならばまだ分かる。だが、その次にサトシがとった行動である初心に帰るってのが理解出来ない。
サトシにはサトシのやり方があるとしてそれでもダメだった。自分のやり方でもダメでここがダメだったと反省してパワーアップした自分のやり方でもダメならば他人がどういう風に成功したのかを聞く。他人の成功談を集めても自分が成功するとは限らないが、他人の成功談の中には自分が手を出したことが無いジャンルがある。
何でもかんでも出来るようになれとは言わねえ。
だが、自分が手を出したことが無いものの中に自分を強くする可能性はある……現にシンジと言うトレーナーとぶつかってサトシは色々と見直したりした。シンジの全てじゃないが一部は受け入れた。シンジもサトシの一部を認めている。
「優しさじゃなくて厳しさを持っていないサトシには上に行くのは無理だろうがな」
褒めて伸ばすだけが育成じゃねえんだよ。
サトシの個性を消さず伸ばせる方法は無いかとタケシなりにサトシへのフォローを考えている。俺というセキエイ大会優勝者からなにか盗めるものはないのかを見たが無かった……結果として分かったこととして俺とサトシの間には、ポケモンを勝利に導く能力の差が激しいぐらいだ。