「……えへへ……う〜ん……」
「悩むのか喜ぶのかどっちかにしろよ」
4つ目のジムを制覇し、次に向かうのはアサギシティだ。
アサギジムに関してはキヨシが根回ししてるのかそれとも何もしてないのか、どちらにせよタンバジムにも寄る予定ではあるからアサギシティには通る。
ヒリメオはバッジケースを取り出して笑みを浮かべる。それと同時に悩んでいる。
喜ぶのか悩むのかどっちかにしろよと呆れていればヒリメオは答えた。
「あのね……私が一番みたいなの」
「なにがだ?」
「ジョウトリーグに出る為の駒を一番進めているのが……これってさ、早いのかな?それともハナミヤくんの力が強すぎるのかな?」
「……」
また絶妙なまでに答えるのが難しい質問が飛んできた。
ジョウトリーグまではまだまだ時間があるし中にはコンテストと並行している所謂二刀流の奴も居る。その中でヒリメオはバッジを4つ集めている。このポケモンはどういう風に鍛えればいいのか何故それを鍛えなければならないかなんかをしっかりと教えているし考えさせている。
「逆に聞くが、同期はどうなってんだ?」
「いやぁ、それが顔を合わせた事が全くと言って無くてどんな人なのかさっぱりで」
ヒリメオが遅い早いの話をする場合はどうしても比較対象は必要になる。
俺は当然論外だ。原作知識、ゲーム知識、元から高いスペックととにかく基準にする事が出来ない。シゲルはオーキド博士の孫で文武両道だけじゃなくて資質以外にもポケモンと触れ合える環境にも恵まれている。サトシもサトシで論外……彼奴は幾つかのご都合主義によって成り立っている。ホビーアニメの主人公だから当然と言えば当然だろうが。
ヒトカゲを選んだトレーナーには1度も顔を合わせた事は無い。
そいつを基準にと言いたいところだが、そいつもある意味原作キャラ、シゲルとサトシを成り立たせる為の引き立て役、言わば噛ませ犬だ。
「同期の顔を知らねえのか」
「ほら、ライバルは全員って言うでしょ」
「上手くねえ……人には人のペースがある。一番大事なのはゴールに辿り着くこと。それが出来てから他の事を採点する……逆を言えば、ゴールに辿り着くことが出来なきゃ論外だ」
同期の顔を知らねえのに呆れるがヒトカゲを選んだ奴に関してはマジで知らねえから人のことを言える義理じゃない。
俺が怒っていると思って誤魔化そうとしているが、そんな程度で怒る程に俺は短気な人間じゃねえ。
一番大事な事については言っておく。
今のヒリメオと俺の一先ずの目標としてはジョウトリーグに出ることだ。ジョウトリーグに出ると言う1つ目のステップを踏んでいることだ……バッジ4つは次のステップを歩むことが出来ているかどうかの証だな。
「同期が居て一番でこのペースで行けば修行に時間を割くことも出来る……それ以上はなにを……安心感が欲しいか?」
「……うん。ハナミヤくんはサラッとやってるから色々と考えちゃって」
「フハッ、
同期の中で最もジョウトリーグに近いと言われていてマンツーマンで教えている。
それなのにも関わらずヒリメオは基準みたいな物が分かりたい。今のペースならば充分なんだがと考えたが、俺の存在が逆に邪魔をしている。自分と同じジムリーダーに挑み、自分よりもレベルの高いポケモン同士でのレベルの高いポケモンバトルをしている。
スポーツのプロの選手がOB訪問で学校に訪れた際に生徒に対して君には磨けば光るものがあると上から目線で言っているのと似ているか。
コレは……俺がなにかを言って解決する問題か?
普通にジョウトリーグを目指しているトレーナーとは戦っている。極稀にしか負けなくて勝ち続けているヒリメオだが、そいつらは弱い。ポケモンリーグに出場する最低基準の能力も持ち合わせていねえ。それはヒリメオにも言えることだが……
「ごめんね……答えを出しにくい問題を出しちゃって……もっとざっくりと出来れば楽なんだけどね……」
「それが出来りゃ苦労はしねえ……そろそろそのタイミングは来る奴は来るからな」
今シーズンが始まって3ヶ月ほど経過している。
新人トレーナーは御三家を貰って旅立っているが……壁にぶつかる奴はぶつかる。生のポケモンと触れ合わなきゃ分からねえ多くの事を学んでいて、そこで挫折する奴は挫折している。
「こう、気分を晴らしたいね……何処かにバッティングセンターとかないかな?」
「近くに街はあるがなんでバッティングセンターなんだよ?」
「え、ハナミヤくん知らないの!?この辺、野球激戦区なんだよ!特にもう少し行けば野球好きの聖地である甲子園があるんだよ!」
「……まんまかよ」
「え?」
「いや、気にするな」
ジョウト地方と言えば近畿地方をモチーフにしている。
野球の聖地である甲子園みたいなものはあってもおかしくはないだろうが、まんま甲子園って……まぁ、トンチキな競技も◯◯甲子園って言っている。普通ならば
ダイレクトに甲子園と言っているが……まぁ、気にしても仕方ねえか。
取りあえずは道に従って歩いていけば街に辿り着いたのでポケモンセンターに向かいポケモン達の回復をする。
「あれ、ウツギ博士通話中?」
ポケモンの入れ替えをしようとヒリメオはウツギ博士に連絡を入れるが、ウツギ博士は現在通話中で出るに出れなかった。
何処か頼りない雰囲気を醸し出しているまだまだ若手なポケモン博士だが将来は大物になると有望株で色々とスポンサーが出ていたりするしオーキド博士同様に新人トレーナーを送り出している。他の人との通話はなにもおかしくない。
「いや〜スゴかった。ホンマにスゴかった。野球ファンならば誰もが一度は見たいエレブーズvsヒバニーズの甲子園での試合は。ウチもベイリーフ達も興奮して」
『ふふ、そうだね。アレは生で見るべきだと……ナナコちゃんが欲しいエレキッドやエレブーに関してだけど、今のところは大量発生の目撃情報は無いね』
「そうでっか……ああ、憧れのエレブーが欲しい!アレは勝利の女神様や」
「あれ、この声って」
隣で通話をしている俺達より先に座っている奴の方からウツギ博士の声が聞こえる。
テレビ電話で顔を覗かせるのはマナー的な問題で失礼だがヒリメオはその声は間違いないと顔を覗かせればウツギ博士がテレビ電話に映っていた。
『ヒリメオちゃんじゃないか。アサギジムを目指しているからそこは通るだろうけど、偶然があるんだね』
「ウツギ博士、この別嬪さん誰なん?」
『誰もなにも、君と同じ今年新人トレーナーになった娘だよ……ケンタくん達と違って今年の子は繋がりが無いからこんな所で出会うだなんてね。ヒリメオちゃん、この娘は』
「どうもどうも!ウチはナナコ言います……いや〜……同期の子にはじめて会えたわ」
「ヒリメオだよ、よろしくねナナコちゃん……あ、ウツギ博士。ポケモンの交換を、次のアサギジムにワルビルを出したいので……なにを送ってほしいですか?」
『じゃあ色違いのミロカロスを。色違いはどう違うか是非とも見てみたいな……ナナコちゃん、すまないがボールを転送させてもらうよ』
「了解」
結果としてウツギ博士と通話を成立させたので便乗しワルビルを送ってもらう。
色違いを研究したいとミロカロスと入れ替える形で……ナナコは興味深そうにボールの転送を見ていた。
『ナナコちゃん、旅を楽しむのもいいけれどくれぐれも寄り道はし過ぎちゃダメだよ……去年旅立ったジュンイチくんなんて実力はあるのに寄り道のしすぎでジョウトリーグに出れなかったんだから』
「いやぁ、ジムリーダー、ごっつぅ手強くて……ほな、また」
ウツギ博士がナナコに対して忠告をすればテレビ電話が切れた。
ジムリーダーやジョウトリーグ云々の話になるから、ポケモントレーナーか……
「そういえばアンタは誰なん?」
「ハナミヤだ……お前、ポケモントレーナーでいいんだよな?どっからどう見ても」
「見ての通り根っからのエレブーズファンやで!!」
野球の法被と言いぶら下げているメガホンといい完全に阪神タイガースのファンにしか見えない。
その事についてナナコは否定するどころか誇らしげにしている……別にこの世界じゃポケモンをもらったらポケモントレーナーやコーディネーターにならなきゃならねえ義務とかはねえし、好きな物があるならそれはそれで構わねえが……
「ナナコちゃん、よかったらポケモンバトルを」
「トレーナー同士でやることと言えば勿論や!……と言いたいんやけど、ちょっと待ってくれへん?」
「調整中か?」
「いや、ちゃうねん。ちょっとこの街に気になるのが……このエリアで去年、無名ながらも甲子園に出た野球チームがあんねん!どんなチームなのか練習を見たいんよ」
お前、さっきウツギ博士に寄り道は程々にしておけって言われただろう。
まぁ、俺達の妨害にならない以上は下手にああだこうだ言わねえ……いや、むしろ言ったらダメだ。同期であるヒリメオが一番前に走っているにも関わらず自分は情けない醜態を晒していると落ち込ませねえと。
「無名ながらも甲子園って、スゴいね」
「そやろ!どないな野球するか気になるしプロ注の選手も何人かおるらしいし、見たいんよ」
「見たいって見れるものなのか?」
「割とあっさりと見れるで」
普通はそういうのは極秘事項とかそういうので見るに見れないイメージがあるが、割とあっさりと見ることが可能と言う。
アレか?謎の野球大好きおじさんとかがスター選手がスターになる前から大好きでした的なのを言うためにか見やすいのか?……それを終えた後ならばポケモンバトルをしてもいいと言っているのでついでだから俺達も見ていく。
「おぉ……なんか全体的に大きいね」
練習場で練習をしている野球選手達が居た……プロじゃなくてアマチュアで俺達より歳上だ。だが、全体的にデカい。
ヒリメオは一番最初に感じ取ったのは選手達がデカい……縦にも横にも大きい。
「筋トレをしっかりとしているな」
ネブヤの奴が趣味が筋トレで健康の為にって付き合っていたから筋トレの基礎的な知識はある。
選手達がしているトレーニングは筋トレが多い。ピッチャーが投球練習をしているが30球程で終わっている。バッティング練習をしているが硬球を丸めて更に小さくした物をボールとして打っている……
「どう見える?」
「う〜ん……ザ・スポーツの基礎だね……」
「え、なんの話?」
練習を見ていてあることを連想する。ヒリメオはそれに気付いているがナナコはそれに気付いていない。
「へぇ、分かるんだな」
「あ、邪魔でしたか?」
「いや、構わねえよ。1人でも野球好きが増えりゃそれで構わないから……でも、それを分かるってのは中々にいい観察してんじゃん」
監督と思わしき人物が俺達の声が聞こえたのか反応した。
余計な事を言ってしまったのかと思ったがあっさりと流してくれる……割と話し合いが通じそうな監督だな。
「お前達は見たところ旅のトレーナーで野球好きな感じか。うちの練習を見てどう思う?」
「……どうって、なんやイメージしてるのと大分違いますな」
「そのイメージってのはなんだ?」
「そら、素振り300回とか」
「……お前はさっきザ・スポーツマンって言っていたな。それはどういう意味か説明できるか?」
監督がナナコに練習内容を見てイメージとは異なる練習をしていると返答すれば、逆になにをイメージしているのかを聞いた。
それを聞いたら数秒だけ無言になった。目がコイツもかと落胆をしており今度はヒリメオに質問をと言うよりは説明を求める。
「スポーツ選手は余程変な競技じゃないと体が大きくて力があって足が速いのが正義です……見た感じ野球の技術よりも、そういうスポーツ選手にとって必要不可欠な基本的な体作りを重視した練習をしている感じです……違うんですか?」
「いや、その通りだ。うちは体作りを重視しているチームだ……無冠の五将の1人、『剛力』のネブヤのポケモンバトルと同様に下手な小細工でなく圧倒的なパワーを売りにした野球をしている」
「……もしかして、知ってます?」
「ああ……もし俺がスカウトする権利を持っていたのならば、ネブヤの次にスカウトしたい野球選手としてスカウトしたいと思っている『悪童』のハナミヤ。ああ、そう身構えるな。お前等は本業トレーナー、趣味野球だが俺達は本業野球、趣味ポケモンバトルみたいなところだ」
ネブヤの名前を出したので俺について知っているのかを聞けば知られていた。
選手としてスカウトしたいと言っているが、無粋な真似はしないと言い切った。
「体作りって、今時食事トレーニングとか当たり前やないですか」
「ああ、そうだな。今時の強豪なら飯にも力を入れるのは当たり前だ……だが、それを踏まえてもうちはフィジカル作りを重視している。理由は2つ、1つはこの街は1時間しか練習が許されないから……なにせ合格するのが至難と言われる高校があって勉強を中心にする政策を取っていて更には近年のブラック部活動問題で1時間しか許されていない方針だ」
「……え!?1時間の練習!?」
「なんだったら街の政策でどんな部活動でも強制的に休みにしないといけない日もある。週1でな」
「はぁ!?そんなんで甲子園出場したん!?嘘や!?」
たった1時間しか練習が出来ていない。こんな所で冗談を言うことをするタイプではなさそうだが、ヒリメオもナナコも驚きを隠せない。スポーツが強い所となればどうしても朝から晩までミッチリとした練習メニューを組んでいて毎日汗を流しまくっている…………
「嘘じゃない。マジだぜ」
「……相当合理的でありながら非合理である野球をしていますね」
「おっと、それ以上はコイツラには言うなよ」
「何故です?別に隠すものではないでしょう?」
「最近のポケモントレーナーは昔よりも色々な事が発展していて全体的にポケモンが鍛えやすくなったにも関わらず
俺は既にある程度は完成していて俺がなにかを言うと横槍を入れるからと監督は口出しをするなと言う。
確かに監督の言っている事も一理ある。
「なにも言うなとは言いますけど、代わりになにか授けてくれるんですか?」
「ああ、授けてやる……ポケモンバトルでも野球でも通じる話だ」
「え、あの……いいんですか?」
「俺はよくいる甲子園球児大好きおじさんならぬポケモンリーグ大好きおじさんだ、最終的には野球の道を選んだがポケモンバトル学で学んだ経験や知恵はしっかりと野球に活かせている。朝から晩までのミッチリとした特訓もいいが、それが出来ないのが悲しい現実だ」
俺がなにも言ってはいけないと言うが俺はヒリメオに色々と教えている立場なので教えなければならない。
今ここでと言うのならば言わないがと軽く煽れば知識を授けてくれる……運が良いのか悪いのか、ナナコがここに居る。監督が出してくる問題に対してナナコは少ししか理解出来ていない。だがヒリメオは理解出来ている。コイツは使えるな。