「んじゃ、試合だ……使用ポケモンは3体、ポケモンワールドチャンピオンシップス形式で同時出しで入れ替えありだ」
コイツは使えるなと思える使わせてもらう。
ナナコとヒリメオが試合をすることになり監督さんが勝負のルールについて説明をすればお互いに納得した。問題はここから……ナナコは特になにも考えていない。ヒリメオは目を閉じて呼吸を整えて意識を高めている。
「いくぞ……3,2,1!」
「頼んだで、ベイリーフ!」「頼んだよ、カイロス!」
ナナコが出したのはベイリーフ、それに対してヒリメオが出したのはカイロスだった。
監督は……なにも言わねえ……今はあえてなにも言わないようにしている。今の段階で評価したり口出しをしたりしても意味が無い。何故それを出したと言う疑問をぶつけてそれに対する答えを出さなきゃならねえ。頭で納得の行く答えを。
「いくで!ベイリーフ、はっぱカッターや!」
「カイロス、思いっきり突っ込んで」
「うぉ……見た目通りのカイロスだな」
先に動いたのはナナコのベイリーフではっぱカッターが飛び出た。
ヒリメオはそれを見て避けることを選ばずにカイロスに突っ込む事を指示すればカイロスは……全くと言ってダメージがねえのか直ぐにカイロスが戦いやすい間合いに詰め寄った。
「カイロス、シザークロス!」
「カィ!」
間合いを詰めるのに成功したらシザークロス……ベイリーフはまともに受ければ倒れた。
それを見たナナコは目を見開いた……
「相性の差があったとしても一撃……思っている以上に鍛え上げられている。群れのオヤブンな個体か?」
「それに負けた個体……とは言え実力はゲットした段階で充分にある」
本当に、そう本当にカイロスはタイプ的な問題で今まで出すに出せなかった。
ただオヤブン個体で実際にオヤブンやってただけあってか、ゲットした段階でかなりのレベルがあった。それを更に鍛えている……ただまぁ、むしタイプの宿命か使いどころが難しい。
「むしタイプのポケモンはピンキリなところあるけど、いいじゃん……俺はあのカイロス好きだぜ」
「まぁ、その手の仕事をするのがカイロスなんで」
「ああ、わかってんのか」
「そりゃまぁ」
何故使用ポケモンを3体にしたのかについてとかそういうのは色々と直ぐに理解出来た。
監督さんはあのカイロス好きと言うがカイロスにはそういう仕事があると言うかそれがカイロスの仕事だ。
ナナコは自慢のベイリーフを倒されたことで落ち込んだが両手を頬でパンっと叩いて意識を切り替える。
「2番手はお前や!ピジョン!」
「ピジョ!」
2番手に出てきたのはピジョン……まぁ、こんなもんかって感じのピジョンだな。
ヒリメオはモンスターボールには手を付けない。交代は出来るが……まだまだカイロスはピンピンしていて技の枠を3つも残している。
「いくで!ピジョン、つばさでうつや!」
「カイロス、てっぺきで受け止めて!」
ひこうタイプのポケモンだからそれを活かしてひこうタイプの技で戦う……が、あまりにも単純過ぎる。
ピジョンはつばさでうつ攻撃をしてくるのでカイロスはてっぺきで防御を上げてそのままガッチリと翼を掴んだ。腕であり移動手段でもある翼を掴まれたから当然バタバタする。
「思いっきり振り回してからぶん投げて!」
カイロスはハンマー投げの様にピジョンを振り回す。
最初はジタバタしていたピジョンだったがカイロスの怪力に歯が立たず思いっきりぶん回されてまともに身体が動かせず最終的に投げ飛ばされた。ピジョンは空には居るが空を飛んでいる状態じゃない。
「カイロス、いわなだれ」
ここからピジョンがなんとかして体勢を取り戻そうとするがもう遅かった。
ピジョンの頭上の上には無数の岩があり雪崩落ちる……当然といえば当然だがピジョンはなにもすることが出来ずに雪崩に巻き込まれて倒される。ここからピジョットになることや気力で起き上がる事は無い。
同じ日……いや、違うか。ヒリメオの方が後にポケモントレーナーになった。コレは確かな話だ。それにも関わらず大差が見える。
「流石は無冠の五将……そこらの奴とは違うな」
「俺、褒めてどうすんだよ」
「入れ知恵してんだろ?」
「そりゃまぁ……」
まだカイロスしか出していねえが、圧倒的な力の差が見えてしまっている。
監督さんは特に怒ったりすることはしねえ……ヒリメオを見ているが、ヒリメオは優等生でナナコは劣等生……まぁ、そんなもんだ。一応はクリスタルのイワークを渡しても問題は無いトレーナーかどうか審査されているから優秀な奴だ。
「こっから一発逆転や!!頼んだで、スピアー!」
「スピ!」
最後に出てきたのはスピアー……まぁ、可も不可も無いって感じだ。
スピアーは同じむしタイプのポケモン同士なのか燃えているし、ナナコも逆転をしてやると闘志を燃やしている……
「スピアー、こうそくいどうで撹乱するんや!」
「スピッ!」
こうそくいどうをしてカイロスの周りを飛び回るスピアー……思ったよりも素早さを持ってる。
ただ……それだけだ。これはその気になればピジョンで出来たことで面白さもなにも持っていない。
「スピアー、ダブルウィングや!」
「カイロス、1発は受けて2発目を止めて!」
スピアーはダブルウィングで攻めてきた。1発目をカイロスは受けたが直ぐにスピアーをガッチリと止めた。
ここからどうするのか、スピアーはジタバタしているがカイロスのパワーに勝つことが出来ねえ……
「カイロス、ハサミギロチン!」
カイロスはハサミギロチンを使った……最後の最後でロマン砲に走ったか。
スピアーは真っ向からハサミギロチンを受けて戦闘不能になった……
「ヒリメオ、お前残りの2体は?」
「ピカチュウとマグマラシです。順番で言えばピカチュウ、マグマラシですけど時と場合によってはマグマラシを先に出します」
ナナコは1体も倒せなかった……カイロスはまだまだ戦える状態で酷いダメージを負ってねえ。
目に見えて落ち込んでいるが問題はここからだ。
「まぁ、取りあえず言わせてもらうが……ひっでえポケモンバトルだな」
「……え!?」
「ああ、お前は問題は無い。ナナコ、お前のポケモンバトルはホントにひっでえポケモンバトルだったな」
「なっ……なんでそないな事を言われなアカンねん!」
「事実だろうが。酷いポケモンバトルだろ……ヒリメオのカイロス、まだまだ余裕で戦えんぞ」
監督からの評価、ナナコとのポケモンバトルはナナコがひっでえポケモンバトルをしたと真っ当な評価を下した。
ナナコはそこまで言われる筋合いは無いと言うが俺はマジで酷いポケモンバトルだとは思っている。
「安心しろ、ちゃんと説明してやるしちゃんと分かるようになる……そもそもでなんで最初にベイリーフを出した?……お前が新人トレーナーならそのベイリーフは最初のポケモンだろ?」
「なんでって、そら最初のポケモンやから一番戦ってて自信があるし」
「そうじゃない……持っているポケモンになんのコンセプトも無いのなら1番手に出すポケモンは切り込み隊長だ。初手に一番強い奴を出してどうする?ベイリーフは体力は無限じゃないんだぞ?……ヒリメオ、なんで最初にカイロスを出した?」
「今のところカイロスは進化は見つかってません。進化しないポケモン=進化するポケモンよりも持っている基礎的なパワーが高いです。私のカイロスはパワー自慢のポケモンなので先ずは1体目、試合の流れを掴みに行く為に選びました」
「流れ……」
「そう、流れだ。お前だって野球が好きいや、スポーツが好きならば流れって言葉を聞いたことぐらいはあるだろう。1人の成功で大逆転、1人の失敗でそのまま終わる。他にも色々とあるが流れってのは言語にして説明する事が出来る……1体目のポケモンにエースを出して流れを掴み取るつもりだったのならバカ丸出しだ」
試合の流れという言葉を耳にすれば意識が引き締まるナナコ。
最初に流れを掴んだのは間違いなくヒリメオのカイロス……初手でエースを出したナナコはバカだな。
「ハナミヤ、説明出来るか?」
「エースってことは一番強いが、最初に出すものでもない。使用ポケモン3体以上の場合はここぞと言う大事な時をキッチリと決めとけばそれでいい。初手で出して仮にコケた場合、特に今回は初手で簡単に倒れた。そうなったら流れが圧倒的に悪くなる。巻き返そうにも使えるカードが潰れてる」
「その通りだ……じゃあ、次にピジョンだ。初手でベイリーフを選んで速攻で潰されてからのピジョン、ひこうタイプだからセオリー通りだがそこはいい。ただし問題は攻め方だ……ひこうタイプ特有の空を飛べるを全くと言って活かしていない。ただ普通に突っ込んだ……ヒリメオ、てっぺきはその手のポケモン対策だろ?」
「はい。カイロスはパワー自慢である程度の防御力もあるけど弱点はやっぱりキツいんです……だから受けてからの相手の弱点を、幸いにもカイロスはいわタイプやかくとうタイプの技を覚えてそれはカイロスの自慢であるパワーと上手く噛み合うタイプの技です。ひこうタイプのポケモンは高い機動力を持っていますが、結局のところそれを活かした近距離戦闘かもしくは特殊攻撃です。特殊攻撃主体の場合でしたらいわなだれじゃなくて岩の破片を飛ばすタイプのストーンエッジで相手に特殊攻撃をさせる為の一手を生み出さない様にします」
「エアームドみたいなポケモンだったら?」
「その時はその時で交代を視野に入れます……切り込み隊長としての役割、流れを作ったからその場合ですとマグマラシに。マグマラシで攻めて残りの1体にしてピカチュウに交代。その場合のピカチュウは攻撃主体でなく状態異常や能力変化系の技での弱体化を、そしたらもう1回カイロスでパワー勝負をします」
「OK、ナイス判断……ちゃんとしてるな」
「ハナミヤくんが色々と教えたり課題を与えてくれたりしますから」
褒めてもなんも出ねえよ……ナナコは悔しそうにしている。フハッ、徹底的にボロボロに言われて無様だな。
「お前はザ野球好きならばポケモンバトルでも野球の打順でも1番はどういう奴にすればいいのかわかるだろ……野球の世界に置いて1番打者はとにかくヒットを出せる奴だ。ポケモンバトルに置き換えればなにかしらの爪痕を残せる奴や切り込み隊長、流れを生み出したり引っ張ってくる……カイロスはむしタイプで見た目通りの技しか使えない。だが、それを武器に切り込んで流れを作り出した」
「っ……」
言われてみれば確かにそうだと納得も理解もしている……逆に言えば言われなければそれが何なのかすら分かってねえ。
見事なまでに無様な醜態を晒している。最高だねぇ
「2番手のポケモンは1番手のポケモンがどういう行動をしたかによってやる事は変わる。野球でも2番は色々と求められる、ヒットした奴を更に塁を進ませるのかそれとも自分がヒットするのかを……まぁ、俺の野球理論じゃちょっと違うが」
「だろうな……あんた、パワー自慢のスポーツだろ」
「ちげえよ。パワーと頭を使うんだ」
おっと、そうだったな。
パワー自慢の野球をしていることを指摘すればパワー自慢でなくパワーと頭を使う……小手先の技術や細かなフォローとか読み合いとかじゃなくて頭とパワーだ。
「監督さんの野球ってどないな野球なんです?」
「野球ってスポーツに必要なフィジカルトレーニングを重視している……勿論、野球ってスポーツに必要な技術もある程度は高めるが。『剛力』のネブヤはスポーツは筋肉があれば解決するって言っていたがまさにその通りだ。平日4日はフィジカルトレーニング、土日は野球スキル……細かなメカニックなメンテナンスや質より量が必要な守備を捨てて圧倒的なパワーで勝負する。それが俺の野球でそれで俺は彼奴等を甲子園まで連れて行った」
練習時間が50分なら筋トレ重視、野球というスポーツに必要な筋肉を鍛えるのを重視する。
土日は野球に必要なスキル、地道な反復練習じゃなくて流れというものがどういう感じに生まれるのかを頭と体に叩き込む。
「時期的には多分だがそろそろだろう……思っていたよりポケモンバトルが上手く出来ていないのを」
「っ!……それは……」
「世の中には頭がおかしい宇宙人みたいな化け物が居るがそれは例外中の例外だ……ポケモンバトルはポケモントレーナーが一番頑張らなきゃならねえ。気合いを見せろとかそういう言葉は大事だが、それは精神論であってどういう風にフォローしたりするかについて、最近のトレーナーは色々と充実している割に考える事について放棄をしてる……そして不幸な事にそれで勝ててしまう。そしたらある日躓いてそこから何をすればいいのかが分からなくなる……そういう時は頭を柔らかくしなきゃならねえが、初心に帰るの意味を履き違えるバカも多い」
ポケモンバトルが上手く出来ていないことを指摘されればナナコは反応した。
まぁ、メガシンカとかで誤魔化せるがベイリーフが進化してメガニウムになったとしてメガシンカ無しで戦えるかって聞かれれば答えはNOっつーか、フシギバナとかの他の選択肢があってそっちを選んだ方がいい。無論、メガニウムだけで戦わせる方法はあるにはあるが。
「遊びのポケモンバトルをするななんて言わねえ……けど、それ以上を望むのならそれ相応の努力はしねえと……少なくとも、頑張れって言葉を使っている時点で限界は見える。与えられた課題に対して納得や理解がしやすい答えに持っていく為の努力はして当たり前だ……ポケモントレーナーとして今後やってくのなら、ちゃんと考えろ。何をどうすればいいのかを。少なくとも、今はポケモンバトルの施設やポケモン図鑑なんかがあるんだ。それを使えば上は目指せる……とは言え、コイツみたいな宇宙人がいるから世の中そう上手くはいかねえがな」
俺を引き合いに出すんじゃねえよ。
「まぁ、俺は別にこのままジョウトリーグに出れなくても構わねえがよ……テメエと同じ日にポケモンを貰った奴等は順調に勝ち上がってる。このまま無様な姿を晒してくれよ」
「っ…………」
引き合いに出されたから言ってやるかと言ってやればナナコは逃げ出した。
まともに考えてポケモンバトルをしていない、自分よりも後にトレーナーになった奴に負けている……
「そこは優しい言葉じゃないんだね」
「フハッ、先ずはゴール出来るか出来ないかの世界だぞ?あいつは絶賛後ろを走ってる状態なんだ……このままヒリメオだけがジョウトリーグに出れば、期待している奴等の顔に泥を塗る」
こういうときに優しい言葉をかけるものだが俺はかけねえ。
ヒリメオはそこを指摘するが特に怒るような素振りは見せねえ……コレが俺だと受け入れている。