仮面ライダージェム   作:黒井福

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第37石:再会する2人

 ジェットグリム達盗賊団は、現在手痛い打撃を受けていた。ボスであるジェットグリム自身は大した事は無いが、部下のチャーロットはジェムとセツナの攻撃をまともに受けてしまい負傷。カルネプラエドも万全とは言い難い状態となり、戦力的にはガタガタになってしまったと言わざるを得ない。

 

 新たなアジトの中で、ボスはベッドの上で眠っているソフィアの頭をそっと撫でると彼女の傍から離れた。その先には包帯を腕に巻いた五右衛門が居て、ソフィアに対しては蔑むような目を向けるもボスには不安そうな目を向けていた。

 

「すみません、ボス。連中にバレちまいまして……」

「気にするな、遅かれ早かれだ」

「ですが、どうします?」

 

 これで彼らは対策室やS.B.C.T.に対する耳目を失った。これまでは五右衛門が情報を流してくれていたというのに、それが望めなくなってしまったのだ。今後彼らは今まで以上に慎重に行動しなければならない。

 

 だというのに、ボスの表情にあまり深刻そうな様子はない。至って何時も通りな様子で、軽く鼻を鳴らす余裕すら感じさせた。

 

「何、大した問題じゃないさ」

「と、言いますと?」

「状況は刻一刻とこちら側に傾いている、と言う事だ」

 

 ボスはそれだけ告げると、小さく笑みを浮かべながらその場を離れていった。五右衛門がその後ろ姿に首を傾げるも、ボスは彼の視線を気にすることなくアジトから出ていくのであった。

 

 

 

 

 一方対策室の方では、幾分か弛緩した雰囲気が漂っていた。件の盗賊団にかなりの痛手を負わせる事が出来た。前回のアジト襲撃の際に、彼らは敵の組織の幹部であるカルネプラエドとチャーロットを完全に倒すとまでは行かないまでもしばらく動けないようにさせる事が出来たのである。これで連中は今後暫く大人しくなる。

 この隙に誠はジェムへの対処に集中しようと進言した。

 

「邪魔が入らない今、ジェムを捕らえる好機です。隊長、今こそジェム捕縛作戦を実行すべきでは?」

 

 真剣な誠の提案に、円も概ね同意している様子であった。ジェムが積極的に市民に被害を出さないようにしているのは周知の事実とは言え、悪事を為している事に変わりはない。それに彼女が動く事でωチームの行動にも支障が出る。無用な被害を出さないようにする為にも、何より法治国家として悪を断罪するのは必要な事であった。

 

 しかしそれに際して、一つ問題があった。

 

「捕縛作戦を実行するのは良いとしてよ、肝心のジェムは何処で何してやがんだ?」

 

 ビートの質問は誠だけでなく唯や剛達に対しても向けて放たれたものであった。組織で活動しているジェットグリム達と違い、怪盗ジェムは個人で活動している。その分活動に際して出来ることは限られてしまう面もあるが、替わりにジェムの隠密性は非常に高く足取りを追う事も出来ていなかった。今何処で何をして、何処を拠点にしているのかも分からない。そんな相手を捕まえるには、どうしても後手に回らざるを得なかったのだ。

 

「すみません。私もジェムの行方を追ってはいるんですけれど、彼女の足取りを追うのは容易じゃなくて……」

 

 唯もそのフットワークの軽さを活かして日々ジェムの行方を追ってはいるのだが、相手も同じくらいフットワークが軽い為足取りを掴む事は容易ではない。己の不甲斐無さに肩を落とす唯に、剛がフォローする様に口を開いた。

 

「警察でも監視カメラのチェックなどを行いましたが、ジェムの足取りを掴む事には失敗しています。南城さん1人の力不足と言う訳ではありませんよ」

「唯一ジェムの足取りを掴む事が出来るとすれば、予告状を出してきた時くらいですが……」

 

 九朗がネットをチェックするが、現状ジェムが予告状を出した形跡は無かった。今は彼女が狙うようなパワージュエルが無いという事か。こうなると地道に調べながら彼女が動くのを待つしかない。自発的に動く事が出来ない以上、街に回らざるを得ないという事実が今の少し弛緩した雰囲気の原因となっていた。

 

 結局この日はジェットグリム達に痛手を負わせる事が出来て良かったというところで話は終わり、ジェムに対しては次の彼女が予告状を出した時にと言う事で纏まった。

 

 その日はそれ以上状況に進展がないまま一日の業務を終え、唯も休息を得る為拠点としているアパートに帰ろうと席を立った。

 しかし帰ろうとする唯を誠が引き留めた。

 

「南城さん、今良いですか?」

「え、はい。どうしました?」

 

 何やら思いつめた様子で声を掛けてくる誠に、唯は困惑を隠せなかった。雰囲気的にジェムに助けられた事に何かモノ申したいという訳では無さそうだ。あれに関しては状況的に仕方なかったとは言え、不甲斐無いと思わずにはいられない部分もあった為素直に自身の無事を喜んでいられなかった。誠であれば状況如何とは言え悪党に助けられるなど言語道断とでも言うかと思っていたのだが…………

 

「前は詳しく聞く事が出来ませんでしたが、今は違う。教えてください。晶は……晶は何処に?」

「あ……」

 

 そう言えばそうだと唯は思い出した。先日の会議の最中、誠が不意に口にした晶と言う名前。それが唯の記憶している女性と一致し、更に顔の右半分に火傷があるという部分も合致する。まだかの同一人物の存在に驚いたが、その後のゴタゴタで彼に晶の居場所を教える事が出来ていなかったのだ。

 唯自身半分忘れていたその時のやり取りを思い出し、少し申し訳なく思いながらも頷き立ち上がると彼を伴って自身が拠点としている住宅街へと向かった。

 

「そうでしたね。それじゃあ、行きましょうか」

「はい……!」

 

 期待と不安を綯交ぜにした誠の返事に頷き、唯が警察署を出ていく。

 

 そうして2人で住宅街へと赴き、そこで彼女は自身が寝泊まりしているアパートの近所にある一軒家に辿り着いた。その家の表札には確かに「石動」の文字が刻まれている。誠は壊れモノを扱うような手つきでその表札をゆっくり撫でた。

 

「ここに……ここに、晶が……」

 

 直後誠は衝動に駆られるままにインターホンを襲うとしたが、その指が直前で止まった。唯が不思議そうに彼の顔を覗き込むと、彼は酷く躊躇うような表情で前に動かない指を見ながら時折視線を泳がせていた。迷っているのだ。今更どの面下げて彼女に会えばいいのかと。

 

 それでもやはり晶にもう一度会いたいという気持ちは強いのか、手がゆっくりと前に動き指先がインターホンに近付いていった。あともう少しで指先がインターホンを押し、晶の家の中に来客を知らせるチャイムが鳴り響くと思われた。

 

 次の瞬間、その声は真横から聞こえてきた。

 

「誰? ウチに何か用?」

「ッ!! あ、え……晶?」

 

 予想外の方向から聞こえてきた声に誠の肩が露骨にビクンと跳ね上がる。明らかに不審者な行動に傍から確認できる晶の左目が険しそうに細められるが、振り向いた誠の顔に嘗ての面影を見たのかすぐに晶の表情も驚愕に染まった。

 

「え、え…………ま、マコ、ちゃん……?」

 

 晶自身こんな所で誠と再会するなんて思っていなかったのだろう。まるで幽霊でも見たような顔で唇をワナワナと震わせながら目を限界まで見開き誠の顔を凝視している。次第に呼吸も乱れてきて、心配した唯が声を掛けようとした。

 

「あ、あの、石動さん? 大丈夫ですか?」

 

 そんなに衝撃だったのだろうかと唯が晶の顔を覗き込むと、我に返った晶は唯の手を掴んで離れた所に移動し誠に背を向けると小声で声を張り上げるという器用な事をしながら問い詰めた。

 

「ちょ、どう言う事ッ!? あ、あれ、ま、マコちゃん、よね? 何でアンタがマコちゃんと……」

「落ち着いてください。神宮寺さんとは、その……仕事の関係で交流がありまして。それで、話の中で石動さんっぽい人の事を彼が話してたんで、もしかしたらと思ったら案の定だったんです」

 

 唯の説明に晶はイヤな予感を感じた。そして改めて誠の姿を見て、それがS.B.C.T.の制服であると気付くと予感が確信である事を理解させられる。

 

「(ま、マコちゃん……S.B.C.T.に……)ねぇ、何時から?」

「え?」

「何時からマコちゃんと知り合ったの?」

 

 確認する為に晶が問い掛けると、唯は大雑把ながら誠と知り合った時期を素直に話した。その時期はωチームが来る前であり、同時に仮面ライダーバリアが立ちはだかるようになった時期と合致する。ここで晶は確信した。あの仮面ライダーバリアの正体は誠なのだという事を。知らなかった事とは言え、自分が誠と何度も戦ってきた事に晶は内臓が冷え込むのを感じた。

 

 誠と何度も戦って来ていた事は問題だが、それ以上に問題なのは彼が悪党を許さない性格になっていることと今の自分の活動内容だ。怪盗ジェムの正体が自分である事は絶対に知られてはならない。もし知られたら、その時誠の心は本当に自分から離れてしまう。それだけは耐えられなかった。

 

 2人がヒソヒソと話しているのを離れた所から見ていた誠は、晶が唯とどんな話をしているのか不安になっていた。疎遠になってから数年、彼女は自分に愛想を尽かせていないだろうか。

 

「あ、あの……晶?」

「は、はいっ!?」

 

 思い切って誠が晶に声を掛けてみれば、彼女は唯との会話を中断して飛び上るほど驚きながらぎこちない動きで振り返った。改めて見る彼女の姿は、顔の右半分を長く伸ばした前髪で隠しフードを目深に被って他人に顔が見え辛くなるようにするという、記憶にある高校時代の晶からは想像もできない姿であった。その事に痛ましさと申し訳なさを感じつつ、誠は気持ちを落ち着ける為にも確認を取った。

 

「晶……晶なんだよ、な?」

「う、うん……久し振り、だね。ま、マコちゃん」

「~~~~ッ!」

 

 実に数年ぶりに聞く晶の声と、彼女の口から紡がれる愛称にそれだけで誠は感無量になりそうになる。こうして彼女と再会するまで随分と長かった。あまりの感動にそのまま晶に近付き抱きしめてあの時の事を謝りたくなる衝動に駆られる。

 

 だが理性がそれをギリギリのところで抑え込んだ。晶が今の自分にどんな感情を抱いているか分からないのに、そんな事をする訳にはいかない。誠は理性を保ちつつ、先ずは当たり障りのない会話で場を繋げた。

 

「あぁ……久し振りだな、本当に。元気そうで良かったよ」

「うん……マコちゃんも、元気そうだね?」

 

 幼馴染の会話にしては随分とぎこちないが、それも仕方が無いだろう。離れる切っ掛けとなった出来事が出来事なのだ。互いに相手に対して負い目がある。

 

 詳しい事情を知らない唯は、このまま自分が居ては邪魔になるかと気を利かせてその場を離れようとした。

 

「それじゃあ、私はこれで……」

 

 だがそれは晶と誠の2人に引き留められた。

 

「ま、待って! お願いだからここに居て……」

「えぇっ!? で、でも私、ハッキリ言って部外者ですし……」

「そこを何とか、俺からもお願いします!」

「えぇ~……」

 

 誠に至っては普段の丁寧な言葉づかいも何処かへ行ってしまい、素の言葉遣いで唯を引き留めてくる。その勢いに圧された唯は仕方なくその場に残る事にしたのだが、流石に人通りが少ないとは言え何時までも路上で長話する訳にはいかないと建物の中に入る事を提案した。

 

「なら、立ち話もあれですし私か石動さんのお家に入りましょう」

「そうですね……晶の家、大丈夫か?」

「ご、ごめん……家は、ちょっと……今、父さん居ないし」

 

 真也が居ないのは事実だが、晶が家への立ち入りを渋るのはそれが理由ではない。彼女の部屋にはジェムの怪盗衣装などがあるのだ。もしまかり間違って2人が部屋に入るような事があり、自分の正体が怪盗ジェムであるとバレるような事になっては元も子もない。

 

「なら、私の家に行きましょう。あまり広くはないですけれど」

「すみません、お邪魔します」

 

 そうして3人は唯の家に上がり込む。唯が活動の拠点としている仮の住居のアパートの一室は、必要最低限の家具以外物が少ない質素な部屋であった。

 

「何て言うか、物が少ない部屋ね?」

「仕事の関係であちこちを転々としてるので、余計な物を置いてる余裕が無いんですよ。適当に腰掛けててください。今お茶淹れるんで」

「いえ、そんなお構いなく。こっちの事情で南城さんの部屋に失礼させてもらっているのに……」

「それこそお気になさらず。事情はどうあれお客さんなんですから」

 

 唯は2人に茶を淹れるべくキッチンに向かい、湯を沸かし始める。その後ろ姿を暫く眺めていた晶と誠であったが、沈黙に耐えきれなくなったのか晶が思わず口を開いた。

 

「マコちゃん……S.B.C.T.に入ったんだね?」

「え? あぁ……もう晶みたいな人を出したくなかったから」

「そっか……うん、凄いと思う。それに比べて、私は……」

 

 誠は胸を張って生きていける道を自ら選び突き進んでいる。それに対して自分は人前に出ず、後ろ暗い事を続けていた。しかも誠の様な気高い信念がある訳ではない。ただ只管に自分の目的の為だけに、多くの人々に迷惑をかけている。日の光の下を行く誠と日陰者の自分、どこまでも混じり合わないのだと否応なしに理解させられ晶は彼に顔向けできなくなり顔を俯け膝を抱えてしまった。

 

「晶?」

「ゴメン、マコちゃん……私、やっぱりもう行くね」

 

 もう晶は耐えきれなかった。どんなに頑張っても自分は誠の傍にはいられないのだという事を理解させられ、心が張り裂けそうになったのだ。このままここに居たら、心の苦しさでどうにかなってしまいそうだった。

 

 立ち上がり足早にその場を離れようとした晶であったが、誠は慌ててそれを引き留めた。

 

「ま、待ってくれ晶ッ!? せめて話を、話をさせてくれッ!」

 

 反射的に強い力で晶の手を掴んでしまい、晶は手に走る痛みに小さく悲鳴を上げた。それに気付いた誠は手の力を緩めるも、晶の手だけは放そうとせず立ち上がりながら胸に秘めていた想いの一部を打ち明けた。

 

「晶……すまなかった」

「え?」

「あの時、病院でお前を受け止めきる事が出来なかった。お前が大怪我をして心も傷付いた姿が衝撃的すぎて、ちゃんと受け止めてあげる事が出来なかった。それがお前を追い詰める事になる事に、考えが及ばなかった。本当にすまない。お前を傷付けるような事をして」

 

 誠からの謝罪は晶にとってあまりにも衝撃的であった。晶はてっきり、誠は醜い火傷痕を付けた自分に愛想が尽きたのかと思っていたのだ。あの時、病室でロクな受け答えをしなかった誠は、醜い顔になった自分と距離を取ろうとしていると。

 

 だがそれが間違いであった事を今やっと晶は理解した。誠は晶の事を嫌ってなどいない。それどころか、当時の対応を彼自身激しく悔やんでいたのだ。

 

「そ、そんな……私こそ、マコちゃんを遠ざけるような事言っちゃって……」

「晶……」

「マコちゃんに、こんな顔見られたくなかった……嫌われたくなくて……怖くて……だから……」

 

 誠は知らなかった。晶が自分に嫌われる事を恐れて、自分を遠ざけるような事を言って病室から追い出したのだという事を。彼女が抱いていた怖れを、彼はここで漸く知る事になったのだ。

 

 2人は互いにすれ違っていた事を、ここで漸く理解したのである。

 

「そんな……俺が晶を嫌う訳ないだろ? あの時は、確かにびっくりして満足に受け答え出来てなかったし、その所為で晶に勘違いさせたのは事実だから謝る。悪かった。でも、俺はお前の事を嫌いになったりした覚えは一度もない」

「本当? 本当に? だって、これ…………」

 

 徐にフードを取ると、晶は顔の右半分を覆い隠している前髪をかき上げてその下に隠されていた火傷痕を見える様にした。目元から頬の中程に掛けてまで残る痛々しい火傷痕、右目も白濁しており機能していない。改めてまざまざと見せつけられた晶の火傷痕に、誠の口元が硬く結ばれ茶を淹れ終えて戻ってきた唯も思わず息を飲んだ。唯は晶の火傷痕を見るのは二度目だが、不意に見えてしまったあの時とはやはり印象が違う。

 

「ね? こんな酷い顔だよ? こんな顔、マコちゃんだって嫌でしょ?」

 

 震える声で晶は突き放すような事を口にすると、さっさと再び火傷痕を隠して立ち上がろうとした。もうこれ以上、自分に向けられる視線に耐えられそうになかった。

 だが立ち上がろうとした晶の手を、誠は掴んで引き留めた。彼と手が触れ合った事に一瞬晶の心臓が跳ね、呼吸が止まりそうになったが辛うじて平常を維持してその手を振り払おうとした。

 

「……放して」

「放さない」

「何で?」

「もう放したくないからだ」

 

 晶は自身が胸に抱えていた辛さ、苦しさをたった今打ち明けた。彼女は自分の火傷痕が他人に敬遠される原因であると考え、誠からも敬遠される事を嫌がり彼から距離を取ろうとしているのだ。ならば、ここで誠がするべきは彼が抱えてきた想いを正面から晶に打ち明ける事である。

 

「俺は晶の顔が醜いだなんて思った事、一度もない。火傷痕があろうがなかろうが、晶は晶だ。俺の好きな晶だ!」

「えっ!」

 

 誠の口から飛び出たまさかの言葉に晶は言葉を失った。晶だけではない、お茶を持ってきた唯も突然の告白にお茶の乗ったお盆を持ったままその場で立ち尽くしてしまっている。

 

 2人の反応を気にする事無く誠は言葉を続けた。

 

「あの頃から、俺はずっと晶の事が好きだった!」

 

「素っ気無い態度を取って悪かった。あの頃は人気者だったお前に近付く度胸が無かった」

 

「その所為でお前に変な勘違いさせちまった、悪かった。あの頃の俺はバカだった」

 

「だから今ハッキリ言う。俺はあの頃も、それに今も、晶の事が好きなんだ! その顔の傷だって俺は受け入れる。晶が嫌ならずっと隠してもいい。でも俺は、お前の顔の傷を理由にお前を嫌ったりなんてしない!」

 

 次から次へと紡がれる誠の言葉は、それまで晶が心に形成してきた硬い殻を打ち破るだけの力を持っていた。気付けば晶は足から力が抜け、その場にへたり込んでただ黙って誠の言葉に聞き入ってしまっていた。左目は限界まで見開かれ、潤んで真っ直ぐ誠に向けられている。

 

「本当? 本当に?」

 

 夢見心地の様な気分になりながら、晶は問い掛けた。夢なら覚めないでくれと願いながら縋る様に紡がれた言葉に、誠は彼女を抱きしめる事で答えにした。

 

「本当だ、晶。やっとこうして言う事が出来た。お前が俺の事をどう思ってくれてるのかは分からないが、これが俺の気持ちだ。やっと言えたんだ」

 

 思いの全てを打ち明ける事が出来た。後は晶の答えを待つのみと誠が彼女の背中に回していた手を戻して解放しようとした。だがその前に、今度は誠の背中に晶の手が回されギュッと抱きしめ返してきた。晶の巨乳が誠の胸板に押し付けられるが、その事を気にしている余裕は今の誠には無かった。

 

 何故なら誠の胸の中から、晶がすすり泣く声が聞こえてきたからだ。

 

「晶?」

「う、ぐすっ……! よ、 良゛がっ゛だ……私゛、グスッ、私、マコちゃんに嫌われてなかった……怖かった、ずっと、怖かった。でも、でも……!」

 

 晶の涙は安堵と歓喜の涙だった。これまでずっと、再び誠に受け入れてもらえる顔になろうと必死だった。こんな醜い顔では彼にも嫌われてしまうと言う恐怖心が彼女を突き動かしていた。だが全ては取り越し苦労だった。誠が自分を受け入れてくれるという事実を今ようやく受け止め、緊張から解放された衝撃で晶は止め処なく涙を流していたのである。

 

「私も、私もずっとマコちゃんの事好きだった! ううん、だったじゃない、大好き! 昔も今も、マコちゃんが大好き!」

「今まで待たせて悪かった。でももう終わりだ。隙だ、晶!」

「うん、うん!」

 

 2人は心の底から互いに対する好意を打ち明け、ずっと止まっていた時計が動き出すのを感じていた。互いに力強く抱きしめ合い、それまで離れ離れだった時間を取り戻す様に相手を求めた。その光景を傍から見ていた唯は、こちらは感動と安堵に目を潤ませている。

 

(良かった……神宮寺さんも、石動さんも)

 

 唯は2人と友人と言う程の関係ですらないが、自分が仲介となって2人の関係を修復出来た事には素直に誇らしさを感じていた。これで2人が前に進む事が出来るのであれば、これ以上に嬉しい事は無い。

 

 等と思っていたら、2人が熱い視線を向けながら見つめ合い始めた。その視線に見覚えがある唯は感動が急速に引っ込み胸騒ぎを感じていると、その予感が的中する様に2人の顔がゆっくりと近付き始める。このままだとあと少しで2人の唇が触れ合うという状況に、唯は咄嗟に強めに咳払いをしてしまった。

 

「ん゛ん゛っ!!」

「「あっ!?」」

 

 唯の咳払いに2人は我に返ったのか顔を放して揃って唯の方を見る。視線を向けられた唯は内心で申し訳なさを感じつつも、2人に節度を持ってもらうべく頬を赤くしながら険しい視線を2人に向けた。

 

「お2人共? 気持ちは分かりますがここ、仮とは言え私の家ですからね? 愛し合う事を悪いとは言いませんしお好きな様にとは思いますが、時と場所は弁えてくださいね?」

「「ご、ごめんなさい……」」

 

 流石にこれは自分達も悪いと思ったのか、晶と誠は唯の前で正座して頭を下げた。唯が正体を知らない晶はともかく、普段から張り詰めた雰囲気の誠がそんなしおらしい姿を見せる事に唯も肩から力が抜け笑みを浮かべてしまう。

 

「全く…………フフッ!」

 

 笑いながら唯は少し冷めてしまったお茶の入った湯飲みを2人の前に置いて自身も湯呑を手に腰掛ける。

 

「ともあれ、お2人の問題が解決した様で何よりですよ。特に神宮寺さんなんて、普段の雰囲気がすっかりなくなっちゃって」

「ま、まだ撃鉄を起こした拳銃みたいでしたか?」

「あれ程とは言いませんけど、張り詰めてて近付き難い時があったのは事実ですね」

「も、申し訳ないです」

 

 あれから少しは気を付ける様にしてはいたが、それでも気を張りつめてしまう場面は多かった。お陰で口調はそのままでも変に威圧してしまう事があったと、誠は唯や周囲の者達に申し訳ない気持ちになる。

 

「もういいですよ。今ので神宮寺さんの気持ちもよく分かりましたし、今後は大丈夫でしょうしね」

 

 唯が意味深に晶に視線を向ければ、晶は自分と誠を引き合わせてくれた唯に感謝した。

 

「あの、ありがとう。あなたが居なかったら、こうしてマコちゃんと仲直りする事も出来なかったかも」

「偶然ですよ、気にしないでください」

 

 実際今回の事は晶にとってこれ以上ないくらい僥倖であった。これまで誠の事を想い、怪盗として幾つもの罪を重ねてきた。だがもう、彼女にこれ以上罪を重ねる理由が無くなった。この顔でも誠は彼女を受け入れてくれるのだ。ならばもう、これ以上頑張る必要が無かった。

 

 人知れず晶がそんな事を考えていると、不意に誠のスマホから着信音が鳴った。素早く誠がスマホの画面を見れば、発信者はアイリスとなっている。

 

「こちらω7、どうした?」

『誠さん、一般市民からの通報でヤジュエルと思しき怪人の出現が報告されました』

「ッ! 了解!」

 

 やっと晶と気持ちが繋がったと思った矢先に舞い込んだ仕事に、誠は一瞬顔を顰めそうになるが彼女の手前そんな姿を見せる訳にはいかないと自分を律してスマホの向こうのアイリスに頷くと唯にもこの情報を共有した。

 

「南城さん、ヤジュエルです」

「私達の出番ですね」

「あ……」

 

 手早く行動に移る2人に対し、晶は離れていく誠に名残惜しそうに手を伸ばした。同時に彼女は葛藤する。ヤジュエルが出たのならそれは仮面ライダージェムの出番だが、ついさっきジェムを止めようと決めたばかりである。にも拘らず、ヤジュエルが出たら動くのはどうなのだろうかと思わずにはいられない。

 だがそれ以上に彼女が狼狽える理由は、下手に戦いの場に出れば誠との戦いになってしまう可能性がある事だった。彼が変身する瞬間を直接見た訳では無いが、彼がこの街に来た時期とバリアの出現時期を考えると十中八九、誠がバリアであると確信している。

 

 狼狽える晶の姿をどう捉えたのかは分からないが、誠は彼女に優しく笑みを浮かべると今一度彼女をそっと抱きしめ安心させるように頭を撫でた。全身から伝わる彼の温もりに、晶は直前まで感じていた不安も一気に忘れてしまっていた。

 

「大丈夫だ晶。この程度すぐ終わる。また今度、次は2人でゆっくり話そう。な?」

「う、うん……!」

 

 誠に宥められた晶は唯の部屋を出ると、アパートの外で2人を見送った後半ば夢見心地で家へと帰った。

 

 そしてリビングの椅子に腰掛けぼんやりとしていると、返ってきた真也が我が子の妙な姿に首を傾げた。

 

「ただいま……って、晶どうしたんだ? 何か様子が変だけど?」

「え? あ……うん」

 

 最初、真也に対し生返事を返すだけだった晶だが、少し何やら考えると思い切って先程考えた事を父にも伝えた。

 

「父さん、あのね…………私、ジェムを止めようかなって思うの」

「えっ!?」

「実はさっき、マコちゃんに会ったんだ。幼馴染のマコちゃん」

 

 晶は先程誠と再会し、そこで言葉を交わして想いが繋がった事を真也に伝えた。そして誠がこの傷も受け入れてくれるというのであれば、自分に怪盗を続けてパワージュエルを集める理由ももう無いという事も。

 

 これまで真也が自分の活動の為に色々と奔走して手助けしてくれていた事も理解している為、唐突にこんな事を伝えるのは申し訳ないと思い俯きながら晶は胸の内を明かした。だからだろう、彼女は気付かなかった。

 

 父が自分に向ける目が、今までに見たことが無いくらい冷めている事に…………

 

「だから私、もう怪盗からは足を洗おうかなって。あ、でも……これまで悪い事をしてた訳だし、どうしよう……このまま逃げるのは、良く無いよね? いっその事自首……でもそれでマコちゃんに嫌われたら……いやだけどそんな……」

 

 異変に気付かず1人ブツブツと呟く晶。自首してこれまでの罪を償う事も視野に入れ始めた彼女に、真也は音も無く近づくと彼女の肩を優しく叩いて顔を上げさせた。

 

「ん? 何、父さ――」

 

 顔を上げた晶の目の前に、白く輝くダイヤモンドが突き付けられた。以前晶が回収して、真也に預けて加工してもらっていたパワーダイヤモンドである。そのあまりにも強い輝きは、一瞬で晶の意識を塗り潰した。

 

「ッ!?!?」

「晶……綺麗だろう? もっと欲しいだろう? こんな輝きを、取り戻したいんだろう?」

「ぁ……ぁ…………!」

 

 急速に晶の中で意識が塗り替わっていく。その不快感に抗う様に顔を背けようとする晶だったが、視線は目の前の美しい宝石から外す事が出来ず震える手で宝石が嵌った指輪を受け取ってしまう。そして実際に宝石を手にすると、その顔には愛おしそうな笑みが浮かび頬擦りする勢いで顔を近付けた。

 

「ぁぁ、ぁ……!」

「誠君もきっと晶がこんな輝きを取り戻す事を心の何処かで期待している筈だ。だから晶、頑張ろう。お父さんがお前を支えるから」

「う、うん……わたし、がんばる……そうだ、やじゅえるがでたんだ……いかないと」

 

 まるで寝言の様な力の無い言葉を口にしながら、晶は立ち上がるとゆっくり自室へと向かい怪盗ジェムの衣服に身を包んでいく。そして着替え終わる頃には意識がハッキリとし始め、一瞬何故自分がこの姿になっているのか側から無くなってしまっていた。

 

「あ、あれ? 私何で着替えて……」

 

 困惑していると手の中にあるパワーダイヤモンドが目に入った。その輝きに晶はまるで自分がやるべき事を思い出したかのように窓から外に飛び出していく。

 

「そうだ……パワージュエルを集めるんだ。パワージュエルを集めて、その力でこの顔を元に……!」

 

 晶は家から飛び出すと建物の屋根を跳んで跳ねて騒ぎが起きている場所を探した。誠達が向かっていった方から凡その方角を特定してそちらへと向かえば、現場に近付くにつれてざわついている人の数が増えていく。中には何処からか慌てて逃げている人の姿もあって、それが晶にヤジュエルの出現場所を教えてくれていた。

 

 程無くして現場に辿り着くと、そこでは赤い体色の熊の様なヤジュエルがセツナとバリアを相手に戦っている様子が晶の目に映った。

 

「ハッ!」

「フンッ!」

 

 セツナがすれ違いざまに迅雷で切り裂き、バリアがバリアロッドで殴りつける。2人の攻撃にしかし、ベアーヤジュエルは堪えた様子を見せず逆に爪の生えた剛腕で殴りかかって行った。

 

「オォォォォッ!」

「うわっ!?」

「くっ! タフな奴だ!」

 

 2人掛かりでも圧倒出来ていない辺り、あのベアーヤジュエルの力は予想以上に強いらしい。晶が手を出すには十分な状況だ。

 だがいざ変身しようとすると、晶の中で何かが叫びを上げ変身しようとする手が止まってしまう。

 

「ッ!? う、く……このまま行ったら、私、マコちゃんと……」

 

 今出れば確実に誠が変身したバリアと鉢合わせする。彼はジェムの正体が晶であると知らない。ヤジュエルを倒すまではともかく、倒した後は確実に自分にも攻撃を仕掛けてくるだろう。それが分かっていながら変身して戦いに向かうのは、晶としても本意ではなかった。先程は何故かジェムを止めようと思った事も忘れてしまったが、誠が戦っている現場に飛び込むのはどうしても躊躇してしまった。

 

「って言うか、そもそも何で私こんな……? 私、もうジェムは止めようって……」

 

 何故また戦おうと思ってしまったのかが分からず困惑する晶。

 

 だが彼女が何時までも悩む時間は無かった。彼女が見ている前で、誠が変身したバリアが防御を崩されベアーヤジュエルに殴り飛ばされたからだ。

 

「ぐあぁぁぁぁっ!?」

「神宮寺さんッ!?」

 

「っ!? マコちゃんッ!」

 

 それを見てからの動きは早かった。晶は素早くジェムに変身し、追い詰められそうになったバリアの前に降り立ちベアーヤジュエルの前に立ち塞がったのである。

 

「変身ッ!」

《Change of Cut, Cloth Quartz! Commit the Phantom Thief!》

 

 変身したジェムはベアーヤジュエルの前に降り立つと、同時に抜いたファントムシューターで何発も銃弾をお見舞いして牽制した。次々と銃弾が体に突き刺さり弾けるダメージに、ベアーヤジュエルは堪らず怯んで後退していく。

 

 突如目の前に文字通り降って湧いたジェムの姿に、セツナはバリアを手助けしながら頼もしいという気持ちを言葉に乗せる。

 

「ジェムッ!」

「また来たか……」

 

 純粋にジェムの参戦を頼もしく思うセツナに対し、バリアは彼女に助けられた事に思うところがあるのか呻く様な声を上げた。その声を聞き、ジェムはバリアに変身しているのが誠であると改めて確信した。前々から何度も彼の声を聞いているが、中身がそうであると確信して聞けばなるほど確かに間違いなかった。バリアに変身しているのは誠だ。そしてジェムは、彼と何度も戦ってきたのである。

 

「ッ……」

 

 ジェムは腹の奥から何かが込み上げてくるのを感じながらそれを気合で飲み込んだ。本当なら自分も膝をついた彼を助け起こしたい。だがそれをする事が出来る段階はとっくの昔に過ぎ去ってしまっている。運命の悪意を呪いながら、ジェムはその苛立ちをヤジュエルにぶつけるべくファントムエッジを抜き飛び掛かった。

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

 ジェムの鋭い斬撃がベアーヤジュエルに襲い掛かる。だが彼女の斬撃をベアーヤジュエルは片腕で受け止め、反撃の剛腕による殴打を放ってきた。ジェムは攻撃直後で体勢が崩れている中で、攻撃の際の勢いを利用して体の軸をズラしてベアーヤジュエルの攻撃を紙一重で回避する。剛腕の先にある爪がジェムの胸元の装甲を僅かに掠るが、彼女はそれに怯む事無く左手をベルトのバックルに持っていきレバーを引いて高速回転したバックルで右手の指輪の宝石を研磨した。その際に発生した強烈な光にベアーヤジュエルの目が眩まされ大きな隙が出来る。

 

「ガァッ!?」

「フンッ!」

「ゴッ!?」

 

 動きを止めたベアーヤジュエルの胴体は無防備だった。ジェムはその隙を見逃さず、柄頭に片手を当てると全体重をかけてファントムエッジをベアーヤジュエルの体に押し込み刺し貫いた。刃が表皮を突き破り体の中を貫く感覚にベアーヤジュエルの口から悲鳴が上がる。

 

「このっ!」

「ガフッ!?」

 

 ファントムエッジを突き刺したジェムは今度は蹴り飛ばすようにして刃を引き抜く。刺突に続き蹴りを受けたダメージに、ベアーヤジュエルはひっくり返り身動きが取れなくなった。だがジェムは容赦しない。倒れたベアーヤジュエルを踏みつけると、ファントムシューターの銃口を向け動けないベアーヤジュエルに何発も銃弾を叩き込んだ。

 

「ギャァァァァッ!?」

 

「じぇ、ジェム? どうしたの?」

「んん?」

 

 普段のジェムの戦いは可能な限り優美さにも拘った戦い方だ。舞うような動きを心掛け、見ている者を見惚れさせるような動きを見せる。だが今の彼女からは何処か鬼気迫った何かを感じる。その事にセツナだけでなくバリアも怪訝な顔を仮面の下でするが、ジェムはその事に気付く事無く銃撃でボロボロになったベアーヤジュエルを蹴り飛ばし、ファントムシューターのシリンダーを引き出しパワークオーツを押し付けエネルギーを充填した。

 

《Leading jewel,Quartz》

 

 銃口に光が集まり、ジェムが銃口をベアーヤジュエルに向ける。ジェムの攻撃で著しく体力を消耗したベアーヤジュエルは逃げる事も防ぐ事も出来ず、彼女が引き金を引くのを待つしか出来ずにいた。

 

 そのまま放たれたクリスタルショットは狙い違わずベアーヤジュエルの体を粉砕し、爆炎の中から砕けたパワージュエルと被害者と思しき人が飛び出しその場で倒れた。

 それを見届けたジェムは、一息つくと振り返りバリアの事を見詰める。バリアは既に立ち上がっており、ジェムに向けてバリアリボルバーを向け警戒していた。

 

「ジェム……」

「ッッ! ぅぅ……」

 

 一瞬、ジェムは今この場で変身を解き彼に素顔を見せたい衝動に駆られそうになった。だがなぜかそれをする事も出来ず、言いようのない不快感を振り払うように何も言わず2人に背を向けその場から姿を消した。

 

「ッ、待てッ!」

 

 バリアは咄嗟に発砲するが銃弾は掠りもせず、それどころかジェムの異変に違和感を感じたセツナに引き留められてそれ以上の事は出来なかった。

 

「神宮寺さん、待って!」

「南城さん、何故止めるんです?」

「分かりません。分かりませんけど、今日のジェムは何か……変。今は迂闊に刺激しない方がいいかもしれません」

 

 セツナに宥められバリアは今一度ジェムが逃げて行った方を見て変身を解除する。険しい表情で見つめる先に、ジェムの姿は既にいなくなっていた。

 

 一方、逃げ帰ったジェムは家に入るなり変身を解くと、そのままの勢いでトイレに駆け込むと胃から逆流してくるものを全て便器の中に吐き出した。

 

「うげぇぇぇぇっ!? うげ、うぇぇ……げほ、げほ……」

 

 何が何だか分からない。さっきまで心が満たされていたような気がするのに、何がどうしてこうなったのか分からなかった。一頻り吐き出した晶は、そのまま口元を水道で洗うと冷蔵庫の上のピルケースをひっくり返し中の錠剤を全て出し中身を口の中に流し込んだ。もう水も必要ない。口の中の錠剤を噛み砕いて嚥下する。

 

「んぐ、ん……! はぁ、はぁ…………う、うぅ……!?」

 

 そして幾分か落ち着いて来ると今度は心苦しさと悲しさが込み上げてきた。晶はその場に崩れ落ちると、何が悲しいのかも分からず涙を流しすすり泣く。

 

「うぐっ……う、うぅ……!? 誰か、助けて……マコちゃん……!?」

 

 薄暗いリビングに、晶のすすり泣く声と誠に助けを求める声が響く。

 

 だが今、一人寂しく泣く彼女に寄り添ってくれる者は誰も居ないのだった。




という訳で第37話でした。

遂に晶と誠が再会です。最初は戦いの中で傷付いたジェムが変身解除されて、そこで唯と誠の前で正体を明かされるという展開を考えていたのですが、書いてく内にここで2人が再会するという展開になりました。再会はしましたが、誠の方はジェムが晶である事をまだ知らないので、本番はある意味でここからであると言えます。

執筆の糧となりますので、感想評価その他よろしくお願いします!

次回の更新もお楽しみに!それでは。
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