吸血鬼、ゾンビ、スケルトン。まぁ他にも妖怪とかいろいろいるけど、この世界では全部人間と仲よく共存してるし、ほぼ同じ扱い。夜遊ぶか、昼遊ぶかくらいの違いでしょ?って感じで、大雑把なタヨーセーって感じ。
吸血鬼がいるお陰で献血したらお金貰えるし、ゾンビは夜勤が主力だから人間は定時で上がってぐっすり眠れるし、スケルトンは……なんだろ?あ、無限に働けるらしいよ。あと、食べ物要らないらしいし、お化け屋敷にいたらすっごい怖い。あれホントトラウマ。
何が言いたいかってさ、人間以外も楽しくやってるって事。いい事だよね、平和でさ。
アタシはそれが気に食わない!
何故なら、アタシは逆張りが大好きだから。流行りもののゲームをするなんてダサいと思ってるし、流行りのアニメを見るなんてニワカのする事だよ、全然アニメの事分かってないと思う。気持ち悪いとも思うね。
そーゆー事、世間では「冷笑」って言うらしいね。妹に「ねーちゃんさぁ、冷笑やめーよ。正直おもんないしダルい」って言われたから知ってる。
いやいや、そういうんじゃねぇし!信念があって逆張ってんのよ!そこら辺の面倒臭いだけのキショヲタクと一緒にしないで欲しいね!――
「ねーアンタめっちゃ面白いね、RIN(りぃん)交換しよーよ」
「嫌です」
「ヤバい、こういうタイプの人初めてだからテンションアガるんだけど。仕事終わったらお茶しよ?」
「話してないで手を動かして下さい」
「恋愛ゲームとかで見る「おもしれー女」ってこんな感じでしょ。マジおもしれーんだけど」
「遠慮って言葉は貴方の辞書にあるんですか?」
「無いよ」
「でしょうね」
夜。とある倉庫で、無視され続けながらも話すのを止めない変わり者と、如何にも真面目って感じのしっかり者が働いている。
――アタシの名前は
「……貴方、どうして私なんかに構うんですか。私なんかつまらない人間でしょう」
ミヤナは、手を止めて翰林をチラリと見る。
「はい良くぞ聞きましたっ!」
翰林は目を輝かせ、「それそれ〜」とでも言いそうな動きをしている。
「アタシはね〜、見つかってない魅力を見つけるのがでぇ好きなんですよ〜!」
自慢げ…というか、得意げに話していて、自分の”好き”に誇りを持っているようだ。
「ふぅん……「誰も知らないのに知ってる私カッコイー」って事ですか」
スマした顔で翰林に見向きもせず、作業に戻ってスっと毒を吐く。
「違いまーす、無駄にプライド高いだけの有象無象と一緒にしないでくださーい」
「貴方はプライド低い有象無象って事ですか」
「有象無象が違う!」
「プライド低いのもどうかと思いますよ」
「ぐぅっ、正論でぶん殴るのやめてー。メンタルゾンビレベルで崩れやすいんだからぁー」
胸を抑え、撃たれたような反応で泣き真似をする。
「……貴方はそこらの有象無象と何が違うんですか」
「あんたと話すのが好きなトコかな。有象無象共はネットでしかイキれないけど、アタシは違うよ。現実でも逆張って、嫌われてそーな人に話しかけたりしてる、行動力ある逆張り生物だからっ」
翰林はやっぱり得意げだ。さっきまでは胸を抑えていたのに今では胸を張っていて、切り替えが早い。
「私って人に嫌われてると思われてるんですか」
「アタシそういう人分かるんだよね〜、合ってるでしょう?」
ミヤナは棚に、どんどん薬品が入っていそうなビンをキチッと入れていくが、翰林はいそいそと仕事に戻ったと思えばすぐに放り出し、身振り手振りを混じえてペラペラと話し始める。
「無礼ですね、初対面なのに。まぁ正解ですよ」
「やっぱりぃ〜?アタシの勘は当たるからね、占いとか出来ちゃうかもねぇ」
「占いがお仕事の方への侮辱ですね、水晶玉に足の小指ぶつけて折れちゃえばいいのに」
再び、スマした顔で毒を吐く。
「冗談じゃ〜ん、酷いこと言わないで〜」
背後から馴れ馴れしく両肩に手をポンっと置き、右肩からミヤナの顔を覗く。
「私の喜怒哀楽の中で今一番強いのなんだと思います?」
「楽!」
「怒」
「照れ屋さんめ……」
苦笑いで手をパッと離し、「降参」と言うように上げてみせる。
「貴方って殴っても大丈夫な種族ですか?できればグーでいきたいんですけど」
「ミヤナちゃんが先に教えてよ、そしたらアタシも言うからさ」
仕事に戻り、ドクロの様なマークが描いてある小さなビンを興味有り気に見ながら問う。
「人間です」
若干目を伏せて、新しいダンボールを開けながら答える。
「なんで嘘付くかな〜?ここ人間が触ったらヤバいやつ置いてるとこだよ?人間が来る訳無いんだよね」
ビンをフリフリっと振って「ほら、見て」とでも言いそうな動作をする。
「ふぅん、それは分かるんですね。ただのバカって訳じゃないんですか」
「そもそもバカじゃない」
「嘘付いてごめんなさい、ホントは……」
翰林の自己主張やばいですが、二話からはちょっと大人しくなります