サキュバスになったけど、エロ系の魔法でどう戦えと 作:nyasu
「ここで働かせてください!ここで働きたいんです!」
「何なんですか貴方、えっ、物乞い!金目の物なんてありませんよ!」
「教会なのに?お金ないの?」
「貴方の教会のイメージ何なんですか!」
そんな事言われても、いっぱい寄付とか貰ってたりするんじゃないんだろうか。
聖職者は大体腹黒いんでしょ、アニメで見た。
「だ、大体なんですか!なんてハレンチな、肌が出てるじゃないですか!それにシスターって、聖句の一つでも唱えられるんですか!というか、流れのシスターなんてありませんよ!馬鹿なんですか、どうやって生計立ててくんですか」
「あっ、うん、ごめんね……」
「あっ、えっ、あっ、な、なんなんですか!私が悪者みたいに!」
いや、至極真っ当な事を言ってたと思うよ。
いきなり変な女が働かせてくれで、いいよとはならないもん。
でもお告げ的な感じだから、私に神託を授けた奴は無職でビールだかワインだか飲んでるけど。
「昔は布が少なかったからミニスカだったんだ。聖句とやらも随分と昔で忘れたし、魔法は使えるけど人族は資格とか言うから……」
「あっ、エルフの方だったんですね……すいません、異種族ハラスメントでした」
「ウンソウダヨー、エルフダヨー」
私のクソみたいな言い訳をすんなり信じたシスターから視線を逸らした。
なんか、こう、ね。
騙して悪いが、仕方ないんだ。
チョロすぎないか?大丈夫か?
「それで、働きたいとのことですが……私の一存では決められないです」
「そうだよね……シスターってお手伝い的な、神父みたいなのいるよね」
「……いません」
「ん?」
私は難聴系じゃないので、しっかり聞こえている。
いませんって言った?
名前も知らないシスターは、男を誘ってるのか修道服スカートをギュッと握ってモジモジしている。
そんな動作で男を誘ってると思ってしまう、このサキュバス脳よ……。
「寄付金持って、どっか行きました」
「おぉ……」
「わ、私も街の人にお情けで住まわせてもらってるので、実は正規のシスターかも怪しいです」
「重い重い耐えられない」
詳しく聞けば、そういうなんか組織のことが分かってる神父は借金を背負い、金持って夜逃げ。
手伝いで拾われたシスターは教会の建物以外の物を差し押さえられて住むとこだけは残してやるよと独りぼっちになったそうな。
今は、街のほうで必要最低限のお金を給付されて1年くらい過ごしてるらしい。
この世界に生活保護ってあったんだ、ナマポシスター……可哀想に。
「まぁまぁ、逆にさ。誰も文句言わない訳じゃん。私は仕事見つかるまで雨風凌げれば良い訳なんよ」
「えっ、えぇ……」
「仕事見つけたらさ、家賃として寄付金入れるからさ。人助けだと思って、ねっ!」
「人助け……でも、素性も知らない人ですし……」
「面倒くさいなぁ……認識改変!私は昔からの知り合いシスターだよ!」
私の指先から謎の光が照射され、催眠術物の導入シーンの如く、手軽に簡単に洗脳が行われた。
私の認識改変を受けたものは、おかしな物もそれはそういう物と受け入れる。
「良くぞ来てくれました。シスター……あ、あれ、だって昔からの、名前、知ってるはず、嘘、なんで知らない、いや私は聞いたことが、名前を聞いたことがない?なら、うぅ!頭が……」
「あわわわ、やだな!ソフィア、ソフィアちゃんだよ!久しぶり過ぎて忘れたの?」
「ソ、フィア……あぁ!何で私忘れてたんだろ」
目の前で痙攣し始めたシスターに死ぬほど焦った。
あれか、記憶の矛盾点とか気付くと頭がバグったりするのか。
この魔法の欠点、初めて知ったわ。
「色々あったんだよ、えっと……シスターマルファ?ミカエリス?」
「アンネですよ。どうしたんですか、ソフィア。まさか貴方も忘れてたんですか?」
「ソ、ソンナコトナイヨー」
とにかく、私の就職が出来た。
シスターアンネは甲斐甲斐しくも世話を焼いてくれた。
なんと、年齢は14歳らしい。
中二かぁ……右腕が!とか私の頃は騒いでたり、やたら黒いフード被ってたな。
「ベッドはここです!」
ふんすふんす、とでも聞こえてきそうドヤ顔である。
この年齢で一人暮らしとか大変だな。
「久しぶりだから街のことを教えてくれない?忘れちゃった」
「そうですよね!子供の時以来だから……あれ、いつだっけ……」
「ほ、ほら!4歳くらいの時よ!」
そーでしたと、脳が矛盾でバグる前に修整する。
ふぅ、危ねえぜ。簡単に脳破壊できそうで洗脳って怖いわ。
「ここトリトスは、トリトス伯爵領の領地です。ダンジョンがあって、採掘作業や採取作業が盛んです」
「ふんふん、それで?」
「美味しいパン屋と可愛い雑貨屋さんなら知ってますよ!」
「うん?……あー、終わりかー」
子供に聞いた私がマヌケだった。
そんなに詳しくないよね。
でもそっか、ダンジョンとかあるんだな。
「取り敢えず、どうやって生活してたの?」
「よくぞ聞いてくれました。ふふん、私は信者さんの依頼で生活してたんですよ」
「例えば?」
「野菜の収穫、動物のお世話、子供のお留守番、ゴミ出し、まだまだありますよ!」
「あー、うん、子供のお手伝いだねぇ……」
なんか思ってたんと違う。
生活費、足りなくなるだろう。
クソぉ、仕事しなきゃな。
「仕事探さなきゃね」
「そんなの簡単です。街のみんなに、困ってないか聞けばいいんですよ!」
「なるほど、ポジディブだな」
「ではご近所さんさんに聞いてみましょう!」
もう信者じゃなくて、ご近所さんって言い始めちゃったよ。
やれやれ、これがやれやれ系主人公って奴か。
意外と人望があるのか、それとも街の人が暇なのか。
シスターアンネの呼び掛けに、すぐに人が集まった。
「みんな集まってくれてありがとう!こちら、システーソフィア!今、仕事探してるの」
「なんだって……」
「無職ってことじゃ……」
「やーねー、若いのに」
おい、なんでザワつくねん。
やめたげてよ、私が可哀想だろ。
「だから、誰か仕事を紹介して」
「女が出来る仕事なんて1つしかねぇべ」
「エルフなのにニートってことじゃ」
「やーねー、憲兵呼ぶ?」
街の住民、というかご近所さんからの視線が冷たかった。
仕事してないってそんなにダメなことですか!
「おい、ウチ、来るか?」
「マサさん!やめとけ、よそ者だぞ」
「何がよそ者だ。ガキにどうこうされるほど、俺は衰えちゃいねぇや」
「アレはエルフよ、見た目に騙されちゃダメよ」
な、なんか始まった。
そうか、まぁ、そういうのもあるか。
なんか田舎的なあれこれ。
「エルフもカカシもあるか!尻込みするのような俺じゃねぇや」
「あー、また始まった。こうなったら止まらねぇんだ」
「でもよぉ、仕事なんてあんのかい?」
「探しゃ仕事なんて腐るほどあらぁ、問題はやる気あるかだ。どうだ、ウチの農場でやれるんけ?」
「で、出来らぁ!」
そして、私の就活パート2が決まった。
箱から取り出して左へ、箱から取り出して左へ、コイツは……右だ!
「やはりな、俺の目に狂いはなかった!」
「すごいぞマサ、どこで見つけてきた」
「全部オスだ、残ってんのはメスだぞ!」
私の周囲で年寄り達が盛り上がっていた。
そう、私の今の仕事は生まれたてのモンスターの雌雄を判定する仕事なのだ!
「思ってたんと違う」
「エルフってすげー!」
「熟練の精度だ、10年はやってるぜ!」
「おい!養鶏所の奴らから仕事来たぞ!」
これ、ひよこ鑑定士だ!