「にいさま!いそいでください!」
「ハァ ハァ。待てって ハァ 言ってるだろ•••。」
僕は手を引かれながら、妹の後ろを着いていく。
「おやくそくのおじかんにまにあわなくなっちゃいますよ〜。」
「少し遅れるくらい だって許してくれるはず•••タブン」
ミーン、ミーンという
蝉の鳴き声が聞こえてくる。
僕の手を引く妹がどんな顔だったのか、どんな名前だったのか。
どうしても俺は、思い出すことが出来なかった。
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────ズキン──── ズキン
瞼を開け天井を見上げる。
体を起こし、両開きの窓を開ける。
────ズキン────ズキン
窓から見える世界はツギハギだらけで、ふとした瞬間にズルッ、と崩れて落ちてしまいそうだった。
────ズキン────ズキン
「あ、おはようございます、志貴。」
己が立っている場所が恐ろしく不安定なものに思えてくる。ただなぞるだけ、それだけで何もかもが崩れていく世界。
──ズキン──ズキン
「•••志貴?」
この世全ての死が視える。そんなバケモノがこの世に存在していていいものなのだろうか。
──ズキン──ズキン
「志貴!」
突如として響いた声に驚き、視線を下に向けると、そこには友人の小鳥遊ホシノが立っていた。
「ど、どうしたんだよホシノ、びっくりしたじゃないか。」
「どうしたもこうしたもないです。世話の焼ける同級生を迎えに来てみれば、顔を真っ青にしながら突っ立っているのですから心配にもなりますよ。」
「え•••。」
ホシノに指摘されてようやく知覚出来たのか。頭が割れるように痛い。なんで俺はメガネも着けずに、呑気に景色なんか眺めていたのだろうか。
メガネをかけて視界を戻す。
「悪い、ぼーっとしてた。後から行くから先行っててくれ。」
「そんな状態の人間を放ってはいけませんよ。とりあえず家に上げてください。ユメ先輩には私から遅れると伝えておきます。」
「そうか•••。悪い、鍵開けとくから勝手に上がってくれ。」
そう言って窓を閉めると、椅子に腰掛けて目を瞑り体を休める。
どうも気分が優れない。昨夜のパトロールで疲れが溜まっていたのだろうか。
2ヶ月ほど前からホシノに認められて、パトロールにもついていくようになったものの、まだ魔眼については明かしていない。明かしたとしても、信じてもらえないか、信じてもらえたとしても警戒させてしまうだろう。
「志貴、入りますよ。大丈夫そうですか?」
玄関の扉を開けて、ホシノがそう声をかけてくる。
「ああ、まあこれくらいなら多分大丈夫。少し休めば問題ないよ。」
「•••今日のパトロールはお休みにしましょう。無理をして体を壊すわけにはいかないでしょう。」
「いや、でも「いいから休みなさい。」はい•••。」
「ユメ先輩には遅れると伝えてありますので、焦らずゆっくり支度してください。朝ごはんくらいは準備してあげましょう。」
そういってホシノは台所に向かった。
ホシノを家に上げること自体初めてのことではない。時折、ユメ先輩と2人で遊びに来ては、皆でゲームをして遊んだりしているのだ。
ちなみに、薄い本のようなものは我が家には置いていない。
電子で購入した上でフォルダの奥底に保存してあるからバレる心配もまあないだろう。
洗面所で顔を洗いパジャマを脱ぎ洗濯機に入れて、持ってきていた制服に着替える。
台所から焼けたトーストの匂いが漂ってくる。意外なことに、ホシノはそれなりに料理が出来るらしい。普段から自炊していたりするのだろうか?学校ではコンビニ弁当だったりゼリー飲料だったりで済ませているのであんまりそういうイメージがなかったから意外だった。
洗面所から出てリビングに向かうと、机には焼けたトーストと目玉焼き、それとコーヒーが置かれていた。
「ありがとう、ホシノ。助かるよ」
ホシノは暇を持て余しているのかコーヒー片手にソファに腰掛け、テレビを観ている。
「別に、構いませんよ。」
そんな感じで雑談を交わして、焼けたトーストに齧り付く。うん、おいしい。
「•••また通り魔が出たのですか。」
ホシノはどうやらニュースを見ているらしい。内容は•••ああ。
「殺人鬼か。キヴォトスで殺人なんて、起こり得るんだな?ヘイローがあるんだからそんなことは起こらないものだと思ってた。」
「本来ならありえないはずですよ。銃で致命傷を受けることはないし、ましてや刃物でなんて。」
そう、そもそもとして生半可な刃物じゃヘイロー持ちの人間の皮膚に通らないのだから、ニュースのような事件はキヴォトスでは起こり得ない。
じゃあ、なんで生徒が斬られるなんて事件が起こるんだろうか。
考えられるとしたら俺の持つ魔眼のような力を持った人間がいるという線だろうか。
この世界には神秘という概念があるのだから、魔眼を持つ人間がいる可能性だってあるだろう。魔眼ではなくともそれに似た超能力を持つ人間がいてもおかしくはない。あとは殺害を可能にする武器とかだろうか。
「トリニティの自治区だけで発生しているってことは、もしかして犯人はゲヘナの人間だったりするのかね。」
トリニティとゲヘナは犬猿の仲だという。それに、ゲヘナの現生徒会長はかなり過激な人物だとも聞く。
「どうでしょう。でもトリニティでもそういう噂は流れているらしいですよ。」
「ふーん。」
まあ、ゲヘナにもトリニティにも、立ち入る予定はないので、そこまで気にする必要もないだろう。
食事を終え、台所に食器を運び水に浸ける。洗い物は帰ってからでもいいだろう。洗面所に向かい歯を磨き、身嗜みを整えてリビングに戻る。
「さて、そろそろ出ようか。」
「そうですね、行きましょうか。」
そう言ってカバンを手に立ち上がりアパートを出る。
もう既に時刻は9時を過ぎている。あまりユメ先輩を待たせるのも悪いので、ホシノを後ろに乗せ自転車を漕ぐ。
学校まではそこまで遠くはない、10分も漕げば着く距離だ。
ホシノと雑談しながら通学路を駆け抜けた。
──────「おはようございますユメ先輩。」「おはようございます。」
生徒会室の扉を開けると、ユメ先輩がいつもの席で何かのチラシを眺めていた。
「あ、2人ともおはよー。志貴君、体調は大丈夫?あんまり無理をしちゃダメだよ?」
そう言ってユメ先輩が心配そうに見つめてくる。
「今は大丈夫です。ご心配をおかけしました。」
「全くですよ。体調管理くらいちゃんとしてくださいね。」
「はい•••。」
「ところでユメ先輩。さっきから何を見てるんですか?」
「え?えっとねーこれ。」
そう言ってチラシをホシノに渡す。気になったので、後ろから俺も覗き込んだ。
「一日限定10本、幻のロールケーキ?」
「へえ、美味しそうですね。」
「そうでしょ?ただねーこのお店トリニティのお店なんだー。」
それを聞いたホシノは表情を変える。
「ダメですよ、ユメ先輩。通り魔事件の犯人がまだ捕まっていないんですから。」
「わかってるよぉホシノちゃん、あーあぁ食べたかったなぁ。」
心底残念そうにそう言ってユメ先輩は項垂れる。
「気持ちはまあ、わからなくもないですけどね。」
──────「じゃあ今日はここまでにしますか。」
「そうだねぇ、ちゃちゃっと戸締りをして帰りましょー」
部屋の点検をして、荷物を持ち生徒会室をあとにする。
「志貴君は明日お休みだよね、ちゃんと休むんだよ?何かあったら連絡してね。」
「わかりました。じゃあまた、さようならユメ先輩、ホシノ。」
そうして、校舎から出て家へと向かう。
「•••明日こっそりトリニティに行って、ロールケーキを買いに行こうかな。いつもお世話になっているし、そのお礼ってことで。」
日中の明るい時間であれば人目もあるし、襲われることもないだろう。
お気に入り登録ありがとうございます。余程のことがない限りは続けていくつもりなので暇つぶしに見て行ってください。
伏せ字の方のアンケートは今夜で締め切らせて貰います。皆さん投票していただきありがとうございました!
3/2 追記
次話投稿もうちょいかかるかもです。進捗7割と言ったところですが、ここから筆が進まず停滞なうです。筆者のやる気が出るような素晴らしい曇らせ小説を皆さんも書いてください。オラに元気を分けてケロぉ
アンケート機能お試し。迷ったので運に任せようかなと、選んでください。
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蝨ァ豁サ
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陷エ貊会スス諛キ?霑エ?セ