ようこそ骨の実力至上主義の教室へ   作:ok.ko

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ガスターのテーマ

(…落ち着け、落ち着きなさい、私。)

 

坂柳は、かつてないほどのプレッシャーに襲われていた。無論、目の前のサンズによってだ。坂柳は今までも、サンズは決して油断してはいけない存在、気を抜いてはいけない存在だ、自分と同格、もしくはそれ以下程度の力はある、と見切りをつけてはいたが、その見解は大きく間違っていた…

 

坂柳の目の前に鎮座する、サンズ。そこから発せられるプレッシャーは、もはやニンゲンではなく、モンスターかと勘違いしてしまうほどに大きく、いつもの眠たげな目は面影もなく、鋭く、それでいてつまらなそうに坂柳をじっと見つめていた。

 

坂柳は駒から手を離した。

その一手を見たサンズは、盤面を一瞬だけ見て――すぐに駒を動かす。

先程のような迷いはない。まるで動かす駒が最初から決まっていたかのように。

坂柳の眉がわずかに動く。

 

(……速い…いや…)

 

先ほどの対局でも早かった。しかし、今のサンズの手はそれとは違う。

 

(…速すぎる…)

 

もはや、思考している気配がない。

坂柳は次の手を考える。盤面を見つめ、可能性を一つ一つ検証する。

 

(この形なら…ここを押さえるのが自然)

 

そう判断し、駒を進める。

駒を置く音が、図書室に小さく響いた。

しかし。サンズの手は、その音が消える前に動いていた。音が、反響する。坂柳の視線がゆっくり上がる。

 

「……随分と早いですね」

 

「へへ、まあな」

 

サンズは頬杖をつきながら、気の抜けた声で答える。

 

「そんな難しいゲームでもないだろ?」

 

坂柳は反応しない。

ただ、盤面を見る。

そして――

 

(……おかしい)

 

違和感があった。サンズの一手一手は、どれも自然だ。

むしろ、教科書通りと言ってもいい。

 

だが。

 

どこかが噛み合わない。坂柳は駒を一つ動かした。

すると、すぐにサンズも指す。

また一手。また返される。まるで、こちらの手を待っていたかのように。

坂柳の思考が、静かに加速する。脳がチリチリと熱を帯びていく感覚…

 

(……まさか)

 

盤面を見つめる。

 

一手先

 

三手先

 

五手先

 

そこまで読んだ瞬間。

 

坂柳の指が止まった。

 

(……これは)

 

背中に、冷たいものが走る。

 

(もう……詰みの形が見えている……?)

まだ序盤。駒はほとんど残っている。それなのに。

坂柳の頭の中では、すでに盤面の終わりが見え始めていた。その中心にいるのは

 

 

サンズ

 

坂柳はゆっくりと顔を上げる。

 

サンズは退屈そうに欠伸をしていた。

 

「どうした?指が止まってるぜ」

 

坂柳は数秒、黙ったままだった。そして。

 

「……サンズ君」

 

静かに口を開く。

 

「今の時点で…どこまで読んでいますか?」

 

サンズは一瞬、目を細めた。

 

「へへ、アンタ見えたのか。実は結構すごいヤツだったんだな。分からなかったぜ。」

 

肩をすくめる。

 

「でもまあ」

 

盤面を軽く指で叩く。

 

「アンタがこのまま指したら」

 

 

「あと5分くらいでもう終わるぜ?」

 

坂柳の呼吸が止まる。

 

「……私が、負けると?」

 

「たぶんな」

 

軽い声だ。まるで雑談でもしているような口調。だが、坂柳はその声に安心するわけでもなく、どこかゾッとした感覚に襲われていた。一瞬でも気を抜いたら、サンズに首を取られるような、そんな感覚が。

 

そこからはお互いに無言で指す時間が始まった…

 

が、両者の表情には、盤面の展開がハッキリと写し出されていた。サンズの表情は特に変化せずどこか眠たそうに、ボーッとしながら駒を進めていたが、坂柳は焦っているが無理やりポーカーフェイスを保とうとしているような、そんな表情だった。

 

そこから2分後。決着の時が訪れた。

 

「…負け…ました…」

 

坂柳の完敗であった。言い訳すらすることができない、今までの坂柳の努力を全て嘲笑うかのような、そんなサンズの才能の片鱗を感じた勝負だった。いや、もしかしたら最初から勝負にすらなっていなかったのかもしれない。

 

坂柳は、自分が天才であると自負していた。しかし、それでもホワイトルームのとある少年に絶対に打ち勝つため、並外れた努力を続けていたのだ。

 

だが、今、この瞬間。今までの努力は、全て無駄だったのではないか、と坂柳の心をへし折るかのような、サンズによる虐殺と言っても過言ではない、そんな試合であった。

 

サンズはショックで呆然としている坂柳を少し見ながら、興味をなくしたように椅子から立ち上がり、床に置いてあった鞄を取った。

 

「へへ……そんな顔するなよ。アンタは弱くない。ただ…まあ、相手がちょっと悪かっただけだ。んじゃな」

 

 

 

と、サンズは図書館から出ていった。

 

 

(…ガスターと対戦をしておいて、良かったぜ…あの時は何のために、とか思ってたけどな。へへ)

 

 

 

 

『サンズ君!これ、ニンゲンの世界で楽しくプレイされているボードゲームなんだって!』

 

『ほーん、そうか。で?』

 

『で、じゃなくて!一緒にやろうよ!やってみたいし…一人じゃ出来ないらしいからさ!』

 

『面倒くさいから嫌だな』

 

『ケチャップ1年分上げるよ』

 

『よし、やろう。今すぐやろう』

 

 

(…ガスターとの対戦、楽しかったな…)

 

 

そんな、昔の思い出に浸りながら、サンズはゆっくりと帰り道を歩いていった…




坂柳の心、へし折ってみた!これから頑張って無人島試験まで、書いていこうと思います。長文書けないの許してください
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