『 ︎♋︎■︎⬧︎ ︎ ︎ ︎ ⍓︎□︎◆︎ ⬧︎♏︎♏︎❍︎ ♒︎♋︎◻︎◻︎⍓︎ ⬥︎♓︎⧫︎♒︎ ⍓︎□︎◆︎❒︎ ♍︎◆︎❒︎❒︎♏︎■︎⧫︎ ●︎♓︎♐︎♏︎ ︎ ︎ ︎ ✋︎ ︎●︎●︎ ♍︎□︎■︎⧫︎♓︎■︎◆︎♏︎ ⧫︎□︎ ♍︎□︎●︎●︎♏︎♍︎⧫︎ □︎♌︎⬧︎♏︎❒︎❖︎♋︎⧫︎♓︎□︎■︎♋︎●︎ ♎︎♋︎⧫︎♋︎ ︎ ︎ ︎ ♋︎■︎♎︎ ✋︎ ︎♎︎ ♋︎●︎⬧︎□︎ ●︎♓︎ ♏︎ ⧫︎□︎ ♎︎□︎ ❒︎♏︎⬧︎♏︎♋︎❒︎♍︎♒︎ ⬥︎♓︎⧫︎♒︎ ⍓︎□︎◆︎ ♋︎♑︎♋︎♓︎■︎…』
『 ︎♒︎♋︎⧫︎ ♎︎□︎ ⍓︎□︎◆︎ ⧫︎⬥︎□︎ ⧫︎♒︎♓︎■︎ ✍︎』
翌日の放課後。サンズ、白石、吉田、西川…そして、森下はサンズの家に集まっていた。何故森下がいるのか。少し前…
サンズ達は勉強会をするために、一旦サンズの机に集まり、今日の予定を話し合っていた。
「よっしゃあ!テストまで猛勉強してやる!サンズ先生、ご支援ご協力のほど、よろしくお願いします!」
「それを言うなら『ご指導ご鞭撻のほど』じゃないか?」
「まあまあ、細かいことはいいじゃねぇか!俺、今から楽しみだぜ!」
吉田が満面の笑みを浮かべてサンズに話しかけている様子を、公園ではしゃいでいる子供を見ているかのような微笑ましい表情で見つめながら、白石も口を開いた。
「私も男性の部屋に入ったことはなかったので、サンズ君が…いいえ、サンズ先生が『初めて』ですね。」
「私も私も!サンズ君…先生が『初めて』!」
「誤解を生みそうな言葉はやめろ…」
苦笑しながらも、どこか楽しそうに見えるサンズ。実際、サンズはこの状況を面白おかしく感じていた。
さて出発だ、とサンズが机から立ち上がりかけたとき、不意に横から口を挟まれた。
「少しいいでしょうか?」
「…ん?」
話しかけられた方向を振り向く。すると、そこには変人で有名な、森下藍が立っていた…サンズとはとある一件からこれまで話していなかったのだが…
「…あー…よう。」
「よう。」
サンズが挨拶をすると、片腕を上げながらサンズの真似をした。声質まで真似ているが、特にサンズに似てはいなかった。それどころか、少し気持ち悪い…というクオリティだった。
「ふふん。どうですか、この藍ちゃん即席特製県骨サンズ激ウマモノマネは。」
サンズは苦笑しながら、採点を下す。
「いや、全然似てねえな。むしろ不快感が増してるまであるぞ」
「おっと、その言い方は自分の行動が不快だと言っているのと同義ですよ。というか、ひどいですね。今のはかなりの完成度だったと思うのですが。よければ、もう一度やってあげましょうか?」
「勘弁してくれよ…で、用件は何だ?」
サンズが軽く手を振りながら本題を促すと、森下はピタリと動きを止めた。
先ほどまでのふざけた空気が、わずかに引いていく。そして、森下にしては珍しく(こいつと話したことはほぼないので分からないが)真面目な表情を作った。いや、正確にはほぼ変わらない表情だったのだが、サンズは眉の動きが少し変化するのを見逃さなかった。戦いで培った一種のスキルである。
「……勉強会をするんですよね?」
「ああ、そうだが」
「私も参加します」
間髪入れない宣言だった。
「……いやいや待て待て、なんでそうなるんだよ!?」
吉田がすぐさまツッコミを入れる。
「理由は単純です」
森下は人差し指を立てて、ケロッとした表情で淡々と続ける。先程の真面目な表情はどこに行ってしまったのか。
「この中で一番効率よく点数を伸ばせそうな環境だからです」
「お、おう…なんかちゃんとしてる理由だな…」
「それと」
そこで一拍置いてから、森下はサンズの方を見る。
「県骨サンズという存在にも、興味がありますので」
「なんだそりゃ」
サンズはため息混じりに頭をかいた。その横では、白石がくすりと小さく控えめに笑っていた。
「森下さんらしいですね」
「褒め言葉として受け取っておきます」
西川もケラケラ笑いながら頷いた。
「うん、人数多いほうが効率いいしね。いいんじゃない?」
「…サンズ、お前は?」
吉田が一縷の望みを託すように、サンズに顔を向ける。そんな吉田の様子を見て苦笑しながら、サンズは森下に向けて口を開いた。
「なぁ、アンタ。」
「何でしょうか?」
「…ホントにそれだけか?」
「それだけ、とは?」
森下は首をわずかに傾げる。
その仕草は自然体で、嘘をついているようには見えない――少なくとも、普通の人間なら。
だが。森下の目の前にいるのは、サンズである。サンズに対して動揺をポーカーフェイスで隠しておくことなど、常人…いや、この世界にいるニンゲンには不可能なことだ。事実、サンズは森下の表情の微妙な変化に気づいていた。
(…口の開き方…)
森下は通常であれば口を開く瞬間、約0.7秒程度で声を発する。だが、今の森下は通常の倍…約1.3秒程度で喋っていたのだ。僅かな秒数のズレ。普通ならば気付くとなど不可能だろう。だが、研究者であるサンズに隠し通すことは不可能だった。今まで、そのような研究は何度も行ってきている。
(…じゃあ、コイツは何を隠してる?)
周りの様子をざっと観察する。
ついでに、自分が今どんな状況にいるのかを頭の中で組み立てる。すると、答えはすぐに出た。
「…オイラの推測だが…」
「…何でしょう?」
「アンタ……
坂柳と葛城に、オイラの見張り頼まれてたんじゃないか?」
教室の空気が一瞬で凍りついた。
吉田が「は?」と間の抜けた声を漏らし、西川の笑いも止まる。
白石だけが、わずかに目を細め、微笑んでいた。
森下は――動かない。が、サンズは見逃さなかった。一瞬だけ、森下の表情が驚愕に染まっていたことを。
そのまま一分ほど…いや、10秒も経っていなかったかもしれない。
しばらく経ってから、森下はゆっくりと口を開いた。
「……なるほど」
ぽつりと、そう呟いた。
「なぜ、そう思ったのですか?」
サンズは笑いながら人差し指を立てる。
「まず、1つ目だ。周りの奴らは関係のないフリをしていたが、意識が完全にこっちに向かってる。今だって聞こえてないフリをして、オイラの話を聞いているだろうさ。」
事実、サンズの背後では、近くの席にいる人物の呼吸のリズムがおかしかった。まるで、緊張している自分を落ち着けようとしているような。
一定のリズムを装いながら、その合間に“間”がある。
(……やっぱ聞いてるな)
サンズは内心で小さく呟く。視線を向けるまでもない。こういうのは、わざわざ確認する方が野暮だ。
背後だけではない。前の席、斜め前、窓際――視界の端に映る連中も同じだ。
ペンを走らせる手が一瞬だけ止まり、スマホを弄る指の動きが、ほんの少し遅れる。極めつけは話している奴らの表情だ。窓際で楽しく話をしているような声を出しているが、サンズが言った瞬間、言葉が止まった。
どいつもこいつも、“無関係”を装うのが下手すぎる。
(まあ、気持ちは分かるけどな)
サンズは小さく肩をすくめた。続けて薬指を立て、再度話し始める。
「2つ目だ。アンタとオイラには関わりがほぼない。1回顔を合わせたきりだ。アンタのような、平たく言ってしまえば他人が、今このクラスで争いをしている状況でオイラに話しかけてくるとは到底思えないな。」
森下の表情が微かに強張っていく。無表情を意識していたのだろうが、サンズにはバレバレだ。
「そんで、3つ目だ。」
そして、サンズは決定的な言葉を放つ。
「オイラ、簡単に言うと、嘘をついてるかついてないか、見ただけで分かっちまうんだよ。アンタが動揺しているのかどうか、とかな。」
森下に向けてウィンクするサンズ。しかし、視線は緩むことなく森下の瞳を観察していた。
(…このガキンチョは顔に出やすい。特に目だ。目を見りゃ何となく分かる。)
森下の視線が、ほんのわずかに揺れた。
それは一瞬。
瞬きと同じくらいの時間――だが、サンズにとっては十分すぎる答えだった。そして、森下は思いっきりため息をつき、諦めたかのような表情で口を開いた。
「…お見事です、県骨サンズ。まさか、ここまでとは…」
「ハハハ、そりゃどーも。」
サンズは軽く肩をすくめながら言う。だが、その声色は先ほどまでの軽さをわずかに潜めていた。
森下は数秒だけ黙り込む。
そして――小さく息を吐いた。
「……ええ。概ね、その通りです」
あっさりと、肯定した。
「おいおいマジかよ!?」
吉田が思わず声を上げる。
「いや、否定しろよ普通!なんでそんなあっさり認めてんだよ!」
「隠す意味がありませんので」
森下は淡々と返す。
「既に看破されていますし、ここで取り繕う方が非効率です」
「効率で全部決めてんのかよ…」
西川が呆れたように笑う。
一方で、白石は静かに森下を見つめていた。
「……それで?どこまでが本当なんですか?」
その問いに、森下はわずかに視線を動かす。
「見張り――という表現は、やや語弊があります」
「へぇ?」
サンズが片眉を上げる。
「正確には、“観察”と“報告”です」
「……言い方変えただけじゃねえか」
「本質的には同じですね」
悪びれる様子もなく言い切る森下。
その態度に、吉田が頭を抱えた。
「いや怖ぇよこいつ…」
サンズはそんなやり取りを聞き流しながら、森下をじっと見ていた。
「で?誰の指示だ?」
「先ほど、あなたが口にした通りです」
「坂柳と葛城、か」
森下は無言で頷く。
教室の空気が、再びわずかに張り詰めた。
その名前の持つ意味を、この場の全員が理解している。
サンズは、ふっと小さく笑った。
「なるほどな。オイラ、思ったより警戒されてるらしい」
「自覚がなかったのですか?」
「まあな。今まで気づかなかったぜ。」
「冗談でしょう」
「さあ、どうかな。コツコツ信頼を積み重ねてきたと思ったんだけどな?」
そう言いながらも、サンズの目はどこか楽しそうだった。
(要するに、あのガキンチョ達のツマラナイ勝負をオイラが邪魔するかもしれない、って警戒してるわけだな。そんな面倒くさいこと多分しないのにな。多分)
「で、アンタはどうする?」
「どう、とは?」
「報告を続けるのか、それとも――ここで降りるか」
森下は一瞬だけ考える素振りを見せる。
だが、その答えはすぐに出た。
「続けますよ」
即答だった。
「……へぇ」
サンズの目が細くなる。
「そいつは面白い」
「観察対象が興味深いので。単なる報告で終わらせるつもりはありません」
「お前、それ完全に趣味入ってるだろ」
吉田がツッコむ。というか、内心全員が思っていたことだ。
「否定はしません」
「ハハハ、怖いぜ。洒落にならないぞ…しゃれこうべだけに」
思いっきりサンズは肩をすくめる。 そのやり取りに、場の空気が少しだけ和んだ。
吉田が深くため息をついた。
「……もういいや。なんか考えるの疲れた」
「同感です」
白石も小さく頷く。
そして――
サンズは軽く手を叩いた。
「はいはい、じゃあ話は終わりだ」
「え?」
「え、じゃねえよ。勉強会するんだろ?」
「……あ」
一同が固まる。
完全に本来の目的を忘れていた。サンズは呆れたように笑う。
「ほら、行くぞ。オイラの家、来るんだろ?」
その言葉に、森下は一瞬だけ目を瞬かせ――
小さく頷いた。
「ええ。観察の続きも、ありますので」
「だからそれやめろって」
吉田のツッコミを背に、
サンズたちは教室を後にした。
――その背中を、
いくつもの視線が、静かに追っていた。
―――――――――――――――――――――――――
そして、今に至るわけだ。
「では、お邪魔しますね」
そう言って部屋の中へと入っていく白石。続いて吉田、西川、森下も入室する。
「おお……意外と普通の部屋だな……」
「もっとこう……変な実験器具とかあると思ってた」
「失礼だな。あるにはあるが、見えないところに置いてるだけだ」
「あるんじゃねぇか!!」
吉田のツッコミが響く。森下は無言で部屋を見渡していたが、不意に机の上のノートに視線を止めた。
「…サンズ、このノートは?」
「ハハハ、別に見てもいいぞ。」
「ちょ、俺も見たい!」
「私も私も!」
「私も見てみたいです。」
森下は一歩だけ机に近づき、ノートへと手を伸ばす。ほんのわずかに、慎重さが混じっていた。
(…やっぱ気になってるか)
サンズはその様子を横目で見ながら、壁にもたれかかる。
「好きに見ろよ。爆発はしねぇから安心しな」
「爆発する可能性があったのかよ…」
吉田が引き気味にツッコむが、誰もノートから視線を外さない。森下がページをめくる。
パラリ、と乾いた音が部屋に響いた。
「……」
「…こ、れは…」
ノートに書かれていたものは、大量の式だった。
i\hbar \frac{\partial \psi(\mathbf{r},t)}{\partial t}
=
\left(-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2 + V(\mathbf{r},t)\right)\psi(\mathbf{r},t)
i\hbar \frac{\partial \Psi(\mathbf{r}_1,\mathbf{r}_2,\dots,\mathbf{r}_N,t)}{\partial t}
=
\left[
\sum_{i=1}^{N}\left(-\frac{\hbar^2}{2m_i}\nabla_i^2 + V_i(\mathbf{r}_i)\right)
+
\sum_{i<j} U(\mathbf{r}_i - \mathbf{r}_j)
\right]
\Psi(\mathbf{r}_1,\mathbf{r}_2,\dots,\mathbf{r}_N,t)
[\hat{x}_i, \hat{p}_j] = i\hbar \delta_{ij}
\Delta x \, \Delta p \geq \frac{\hbar}{2}
\hat{H} = -\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2 + V(\mathbf{r})
\langle A \rangle
=
\int \psi^*(\mathbf{r},t)\,\hat{A}\,\psi(\mathbf{r},t)\, d^3r
\hat{p} = -i\hbar \nabla
\psi(\mathbf{r},t)
=
\sum_n c_n \phi_n(\mathbf{r}) e^{-iE_n t/\hbar}
\int |\psi(\mathbf{r},t)|^2 d^3r = 1
i\hbar \frac{d}{dt}\langle A \rangle
=
\langle [A,H] \rangle
+
i\hbar \left\langle \frac{\partial A}{\partial t} \right\rangle
…何が何だか分からなかった。
さらにページをめくると、さらにびっしりと式が敷き詰められていた(式を敷き詰め、ってな)。
吉田は無言でノートを閉じた。
「…さて、勉強しようぜ、勉強!」
その吉田のひと言で、勉強会が始まったのだった。
ウィングディングス文字これで大丈夫かな…