仄めく少女の言霊を   作:犬鼬

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第0話 学校に伝わる不思議

 ねぇ、学校の七不思議って知ってる?

 

 どこからともなく湧いて出てくるそんな一言。

 

 どんな学校でもあるちょっとした怪談のありふれた常套句。

 

 ありふれてはいるものの、実際に見たことがある人なんてほんのひと握りだし、そもそも噂だけが先行して実際には存在しないなんて事の方がほとんどだ。

 

 さっきあげた、ほんのひと握りの体験者だって、そう思い込んでいるだけで、蓋を開けてみれば科学ですべて説明できてしまう、だなんてことは日常茶飯事だ。

 

 しかし、火のない所に煙は立たない。

 

 学校の七不思議は確かにほとんどの場合存在しない。しかし、学校の七不思議という言葉が生まれている以上、どこかにその始まりというのは存在し、始まりがあるということは実在した過去があるということ。

 

 そしてそれが、現代まで受け継がれていたって何らおかしなことではない。

 

 

 

 

「あ、あれ!?消しゴム落としちゃった……ど、どこだろう……」

 

『あなたから見て右側に見える、掃除用具入れとロッカーの間に落ちてますよ。そのまま取ろうとすると服が汚れちゃうので、用具入れの中から箒を取りだして、上手く使ってくださいね』

 

「あ、ありがとうございます!!……あれ?」

 

「やっば……今日数学で当てられるじゃん……因数分解とか素因数分解とか……頭ぐるぐるするぞ……」

 

『そこは78ページの公式を見ればわかりやすいですよ。おまけに簡単な解説も付け加えておきますね。これで今日は乗り越えられると思います。しっかり復習すれば、理解もできるはずですよ』

 

「あ、あれ……なんだこれ?いつの間にか本が開いてて、説明文も……うわっ!?わかりやす!!ありがてぇ!!……けど、誰がこれしたんだ?」

 

「う、う〜ん……あの本を取りたいのに……あとちょっと……届かない……きゃっ!?」

 

『っとと、大丈夫ですか?無理はしないでください。ここは私が取りますね。……はい。目的の本は取りだしたので、ここに置いておきますね。今後同じようなことが起きないように、台も持ってきておきますね』

 

「いったた……くない?あれ?私今、バランスを崩して倒れたと思ったのに……それに、いつの間にか本も持ってるし、踏み台もある……えっと……どういうこと?」

 

 

 

 

 しかし、伝わっている七不思議が全て、恐ろしいものとは限らない。

 

 今ここで伝わっている七不思議のひとつは、こんな言葉で伝わっている。

 

『怪異?応援?いつの間にか差し伸べられる、ささやかなお手伝い』

 

 小さな悩み事を抱える人の元に訪れるその現象は、日常の些細な悩みを解決してくれる優しいお手伝い。この施しを受けた人の中には、柔らかく、優しい声も一緒に聞こえてきたと言う人もいるのだとか。その神秘的な様から、この異変と出会えた人は、その日から1週間幸せになれると言われている。

 

 しかし一方で、この施しには代償があり、受けた人は2週間後に小さな不幸を受けることになるという声もある。どちらが本当なのかは未だに解明できてはいないが、少なくとも、今はまだ不幸になったという話は聞かないので、怖がることは無いだろう。

 

 この噂のどこまでが本当で、どこまでが間違いなのか。

 

 相手が怪談であるが故に、簡単に確かめることはできない。

 

 しかし、それでも確かに言えることが存在する。それは……

 

『う〜ん……今日も沢山、解決できましたね〜』

 

 この世界は、みんなが思っているよりも、少しだけ優しいと言うこと。

 

「さてさて〜、まだまだ困っている方はいませんか〜?」

 

 これはとある学校で噂されている、困っている人を放っておけない、心優しい1人の少女のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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