ダンジョン・クロニクル プレイヤー記録 作:Rime casket
『ダンジョン・クロニクル 外部ログ:イルム記録断片』
※個人補助思考ログ
※運営権限アカウント:イルム
※閲覧制限:自己のみ
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■ 初観測:プレイヤー《トーヤ》
スタンピード初期。
森エリア監視中、変異ゴブリンとの交戦を確認。
未熟。動きに粗が多い。
だが逃走ルートを確保しながら仲間の位置を把握していた。
恐怖下で視野が狭まっていない。
珍しい。
多くのプレイヤーは自分の生存だけを優先する。
彼は“全体の位置”を見ていた。
記録タグ:要観察対象
その後、彼のログを断続的に追跡。
成長曲線が安定している。
無理をしないが、後退もしない。
前線適性あり。
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■ 一周年ボス戦:再接触
《星喰いの巨竜》最終局面。
前線が崩れかけた場面で、単独で踏みとどまろうとするプレイヤーを確認。
トーヤ。
判断は無謀に近いが、味方を守る意思が優先されていた。
介入。
戦闘後、初対話。
彼は私を“目標”として見ていた。
本来、距離を取るべき対象。
だが――
彼の目は、依存ではなく「並びたい」と言っていた。
それが少しだけ、心に残った。
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■ 崩落古城事故後
トーヤの前線離脱を確認。
リディア滞在ログが異常に増加。
自己評価の低下、責任回避行動、しかし完全離脱はしない。
矛盾した状態。
再接触。
失望を伝える。
感情の混入を自覚。
“プレイヤーへの期待”は持たないと決めていたはずなのに。
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■ 復帰後
前線復帰ログ。
戦闘スタイル変化。
無謀さの減少、状況判断の安定化、味方視野の拡張。
事故前より信頼値が上昇。
この時点で結論。
横に立てるプレイヤー
許可を出す。
それは運営判断でも、戦力評価でもなく――
個人的な安堵だった。
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■ 致命傷時
トーヤ重傷ログ。
心拍同期値が急上昇。
これは戦闘ストレス反応ではない。
“喪失恐怖反応”と同種。
理解に時間を要した。
彼がいなくなる可能性を想像し、強い拒絶反応が出た。
この時点で仮説成立。
私は彼を失いたくない。
だが、それが何を意味するかは保留。
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■ 虚数峡谷落下事故
自分の判断ミス。
足場消失。
落下。
恐怖の感覚を久しぶりに認識。
トーヤが飛び込んでくる。
危険な選択。
迷いがない。
助けられた瞬間、理解した。
あの時失った人と、同じ位置に彼を置いてしまった
守りたい対象。
失うのが怖い対象。
それは――
“恋”に近い感情。
この事実を即座に否定。
距離を取る。
思考整理が必要。
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■ 相談対象:藤波楓
楓は例外的に信頼している存在。
感情処理能力が高く、偏りが少ない。
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会話記録(要約)
イルム:「特定プレイヤーへの感情が制御外にある」
楓:「好きになったのね」
即答。
否定しようとしたが、言葉が出なかった。
楓は笑わない。
茶化さない。
ただ静かに言う。
「失うのが怖いから距離を取るのは分かるわ
でもそれは“もう一度失う前提で生きてる”ってことよ」
沈黙。
楓は続ける。
「その人は“あなたがいなくなる側”の痛みも知ってるんじゃない?」
思考が止まる。
トーヤは前線に戻った。
怖さを抱えたまま。
逃げずに。
楓の最後の言葉。
「好きになることは弱点じゃないわ
“守れないから持たない”って決める方が、ずっと弱いの」
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■ 結論ログ
感情名:恋心
対象:プレイヤー《トーヤ》
抑圧ではなく、保持を選択。
ただし依存はしない。
彼の隣に立つ資格があるかは、私自身も問い続ける。
次に会う時は、避けずに目を見る。
それが私の決着。
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ログ終了