ダンジョン・クロニクル プレイヤー記録   作:Rime casket

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重なる逢瀬。重なる心

――前線の合間に、少しずつ

 

ログイン689日目

 

イルムと“デート”と呼んでいい時間が、少しずつ増えてきた。

 

最初は買い物のついで。

次は素材探しの寄り道。

そのうち目的がなくても街に来るようになった。

 

お互い、まだ慣れていない。

 

でも逃げない。

 

それだけで十分進歩だった。

 

 

◆ 1回目:夜のリディア

 

夜の街は昼と違って静かだ。

 

NPCの店は閉まり、露店の灯りだけが残る。

 

イルムは人が少ない時間帯を好む。

 

並んで歩く。

 

会話は少なめ。

 

でも沈黙が気まずくない。

 

噴水の縁に座って、街を見下ろす。

 

「前はここ、騒がしい場所ってだけだった」

 

イルムが言う。

 

「今は?」

 

「…落ち着く」

 

それを聞くだけで、来た意味がある気がした。

 

 

◆ 2回目:装備じゃない店

 

アクセサリー屋。

 

完全に戦闘性能ゼロの店。

 

俺が「場違いじゃないか?」と言うと

 

イルムは真顔で返す。

 

「視覚的パラメータも精神安定に寄与する」

 

つまり気分転換らしい。

 

棚の中の小さなペンダントを見る。

 

淡い青の石。

 

俺が何気なく手に取ると、イルムが一瞬固まる。

 

「似合うと思っただけだ」

 

そう言って渡すと、

 

イルムはしばらく見つめてから受け取った。

 

「…ありがとう」

 

その日、イルムの装備に小さな青い光が増えた。

 

 

◆ 3回目:屋台チャレンジ

 

前は甘いものに戸惑っていたイルムが

 

自分から屋台を指さした。

 

「今日は、あれ」

 

焼きリンゴ。

 

一口かじって、少し考える。

 

「…前より甘さに慣れた」

 

「成長だな」

 

「環境適応」

 

ちょっと誇らしそうなのが可愛い。

 

 

◆ 4回目:高台の丘

 

街外れの丘。

 

リディア全体が見える場所。

 

初心者の頃、ここから森を見ていた。

 

イルムは静かに街を見下ろす。

 

「ここから始まった人、多いんだよな」

 

俺が言う。

 

イルムは頷く。

 

「だから、あなたがここに戻る理由が分かった」

 

俺は笑う。

 

「前線と同じくらい大事な場所だからな」

 

イルムは少し考えてから言う。

 

「私も、好きになってきた」

 

それは街のことか、時間のことか。

 

聞かなくてもいい気がした。

 

 

◆ ぎこちなさの変化

 

最初は距離の取り方が分からなかった。

 

今は並んで歩くのが自然になった。

 

触れることは少ない。

 

でもたまに手が当たっても、離れない時間が少し長くなった。

 

前線では完璧な連携。

 

街では少しずつ、呼吸を合わせている途中。

 

それが心地いい。

 

 

◆ 周囲の反応(継続中)

 

「またあの二人だ」

「前線カップルきた」

「壁役リア充」

 

うるさい。

 

でも前より気にならない。

 

イルムも無反応を装いつつ、以前ほど歩幅が速くならない。

 

 

◆ 今日の日記

 

「イルムと何度目かの街歩き

特別なことはしていない」

 

少し考えて書き足す。

 

「でも前より自然に隣にいる」

 

最後に。

 

「戦闘じゃない連携も、少しずつ上達してる気がする」

 

セーブ。

 

画面が暗転する前に思う。

 

前線で背中を預ける信頼と、

 

街で並んで歩ける安心は、

 

似ているようで少し違う強さなのかもしれない。

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