ゆるふわだと思います。
街道を覆う石畳の隙間から、ひび割れた貧しさが滲み出ているような曇天だった。
中古の魔導箱車『ガラクタ号』は、今にも壊れそうな駆動音を立てながら、王都へ続く主要街道を這っていた。車内は、四人の獣人たちの体温と、安物の香油、そして焦げ付いた魔素の匂いが煮詰められ、吐き気を催すような濃密な空気に満ちていた。
助手席で、猫獣人のリッツォが手鏡を覗き込んでいる。
硝子の質が悪く、映る顔は少し歪んでいたが、彼女はそれを気にせず、指先で丁寧に紅を塗り直していた。
「ねえ、ルリルちゃん。あとどれくらいで着くの?」
リッツォの声は、砂糖菓子のように甘ったるく、そしてどこか空虚だった。
「私、今日の星占いで『急がないと幸運が逃げる』って出てたんだよねぇ。レイドの報酬、一秒でも遅れると人間たちに全部持っていかれちゃう」
ハンドルを握る羊獣人のルリルは、もこもとした白い髪を揺らしながら、困ったように眉を下げた。
「ごめんねぇ、リッツォちゃん。ウチも頑張ってるんだけどぉ、この子、最近お腹の調子が悪くってぇ」
ルリルの言葉遣いは柔らかく、まさに草食動物のそれだった。しかし、彼女が握るハンドル——革が剥げてボロボロになった円環——には、爪が深く食い込んでいた。
後部座席では、狐獣人のショウが、水晶板(タブレットのような魔道具)を無表情で指先で撫で回している。画面に映っているのは、彼女たちのパーティ『ふわふわり団』の配信状況だ。
「……現在の視聴者数、ゼロ人です」
ショウの淡々とした報告が、車内の空気をさらに重くした。
「『大手ギルドがレイドボスと交戦中!』っていうタイトルにしたのに、誰も見に来ないですね。やっぱり、私たちみたいな底辺獣人が映っても、需要ないんでしょうか。悲しいですね」
「あーあ、アタシもうお腹空いちゃったぁ」
狼獣人のダム子が、だらしなくシートに背中を預けながら欠伸をした。その口からは鋭い犬歯が覗く。
「ねえ、今回のレイド、報酬どれくらい出るのぉ? アタシ、借金取りのおじさんに『次は指かなぁ』って言われちゃってるんだよねぇ。ウケるよね」
「ダム子ちゃん、笑い事じゃないよぉ。私だって新作のドレス欲しいのになぁ」
リッツォが頬を膨らませる。
彼女たちの会話は、まるで喫茶店で交わされる女子トークのように軽やかだ。その内容が、借金や身体欠損、あるいは生活苦といった深刻なトピックであることを除けば。
彼女たちは、この人間優位の社会において、実力も人気もない、ただの「その他大勢」の獣人だった。レイドクエストに向かうのも、英雄的な活躍をするためではない。討伐後の現場に落ちている魔物の素材や、主力が捨てていった換金アイテムを拾い集める——いわゆる「ハイエナ行為」のためだ。
その時、ガラクタ号の速度が不自然に落ちた。
ルリルの細い指が、ハンドルを小刻みに叩き始める。
「……ねえ、みんなぁ。見て見てぇ」
ルリルが、歌うような声で前方を指差した。
彼女たちの視線の先に、一台の魔導馬車が走っていた。牽引するのは生きている馬ではなく、魔法生物を模した自律駆動ユニットだ。しかし、その速度は絶望的に遅かった。優雅に、安全に、貴族的な速度で街道の中央を占有している。
「あららぁ、遅いわねぇ」とリッツォ。
「邪魔ですね」とショウ。
「踏み潰してぇな」とダム子。
車内の温度が、ふわりと下がった気がした。
「ウチね、思うんだけどぉ」
ルリルの瞳は、羊特有の横長の瞳孔がじっと前を見据えていた。声色は変わらず、おっとりとしたままだ。
「こういう、周りの迷惑を考えられないお馬鹿さんは、生きていても辛いだけだと思うんだよねぇ。だから、ウチらが教えてあげないと、だよね?」
「そうだ、ルリルの言う通りだな」
ダム子がにっこりと笑い、足元の雑多な荷物の中から、空になったポーションのガラス瓶を拾い上げた。
「どいてほしいなぁ。アタシたちの貴重な時間を奪うなんて、悪い子だもんねぇ」
ルリルが右足に力を込める。
老朽化した魔導機関が悲鳴のような軋みを上げ、ガラクタ号が急加速した。
排気口からどす黒い魔素の煙を吐き出しながら、前の馬車との距離を一気に詰める。
「おらっ☆」
ダム子が窓から身を乗り出し、軽い掛け声と共にガラス瓶を投げつけた。
放物線を描いた瓶は、美しい軌道で前方の馬車の後部に吸い込まれ——ガシャンッ! という派手な破砕音と共に弾け飛んだ。
「あはは! びっくりしてる! 可愛い反応だね!」
リッツォが手を叩いて喜ぶ。
ショウは冷静に水晶板を操作し、その様子を記録する。
「今の映像、『迷惑馬車に天罰下してみた』ってタイトルで保存しました。」
投擲攻撃、そして執拗な幅寄せ。
前にいた魔導馬車は、たまらず街道の端、泥濘んだ草むらへと退避していった。すれ違いざま、御者台に乗っていた人間の男が蒼白な顔でこちらを見ていたが、ルリルは彼に向けて、とびきり優雅な聖女のような微笑みを向けた。
「道譲ってくれてありがとぉ。次は気をつけてねぇ、お兄さん?」
障害物を排除したガラクタ号は、勝利の凱歌のようにエンジンを唸らせ、レイド現場へと滑り込んだ。
もちろん、到着した頃には戦いは終わっていた。
巨大なスライムの死骸の周りには、すでに解体業者やギルド職員が集まっていたが、彼女たちはその足元をすり抜け、散らばった粘液や、誰も拾わないような小さな魔石のかけらを必死にかき集めた。
「見て見てぇ、この欠片、パン一個分にはなりそうだよぉ」
「アタシも、銅貨三枚分は拾っちゃったぞ。ラッキー」
泥にまみれ、人間の冒険者たちから「邪魔だ、獣人」と罵声を浴びせられながらも、彼女たちはヘラヘラと笑っていた。
尊厳など、とっくに売り払っていた。今日を生き延びるための小銭こそが、彼女たちの全てだったのだ。
数日後。
どんよりとした空の下、ガラクタ号は再び街道を走っていた。
今度の目的地は、鉱山都市近くに出現したゴーレムの討伐現場だ。もちろん、討伐に参加するわけではない。破壊されたゴーレムの破片——建築資材として売れる——を拾いに行くのだ。
「今日はウチ、気合入ってるよぉ。家賃、二ヶ月滞納しちゃってるからねぇ」
ルリルがふんわりと笑う。
「私なんて、もう電気代止まっちゃった。もう4人で一部屋に住まない?」とリッツォ。
「私は構いませんけど、狭いですよ。布団も一枚しかありませんし」
そんな、底辺の暮らしを煮詰めたような会話をしている時だった。
またしても、前方に「壁」が現れた。
それは、巨大な鉄塊のような箱車だった。
窓は漆黒のガラスで塗り潰され、車体には重厚な装甲板が幾重にもリベット打ちされている。まるで移動する要塞だ。その巨体が、街道の幅いっぱいに広がり、ゆっくり、ゆっくりと進んでいる。
「うわ……また変なのがいる」
ダム子が頬を膨らませる。
「アタシたち、急いでんのによぉ。意地悪だなぁ」
「検索結果……該当なし。たぶん、田舎の運送業者でしょう。積載量が多すぎてスピードが出ない。非効率の極みですね」
ショウが水晶板をタップしながら、冷ややかな声で分析する。
「やっちゃう?」
リッツォが小首を傾げる。
「少し脅かしてあげれば、きっと端に寄ってくれるよ。人間って、臆病だから」
「そうだねぇ……ウチらも生きるのに必死だもんねぇ。ちょっとだけ、お願いしてみよっかぁ」
ルリルの瞳から、理性の光がすぅっと消えた。
彼女にとって、前方の車両は「人間」が乗っている乗り物ではなく、単なる「排除すべき障害物」に過ぎなかった。
アクセルペダルが床板に触れるまで踏み込まれる。
ガラクタ号が咆哮を上げた。
限界まで酷使されたエンジンが、悲鳴に近い振動を車内に伝える。
鉄塊のような箱車の背後に、衝突寸前の距離まで肉薄する。
「おーい、どいてくれぇ! アタシたちが通るぞぉ!」
ダム子が窓から半身を乗り出した。手には、道端で拾った拳大の石塊が握られている。
「聞こえないのか? 耳、悪いんじゃねぇのか?」
ブンッ、という風切り音と共に、石塊が投げ放たれた。
それは吸い込まれるように黒い鉄の箱の後部ハッチに激突し——カンッ! という硬質な、しかしどこか虚しい音を立てて弾かれた。
その瞬間。
世界の時が止まったかのようだった。
前方の鉄塊が、物理慣性を無視してピタリと停止したのだ。
あまりの急停止に、ルリルは反射的にブレーキを踏みつけた。キキキキキッ!! という耳障りな摩擦音と共に、ガラクタ号は黒い箱車のバンパーまで数センチの距離で静止した。
「もぉ〜、危ねぇぞ! 急ブレーキなんてマナー違反だ!」
ダム子がぷりぷりと怒りながらドアを開けようとした、その時。
「……あ」
ショウの喉から、空気が漏れるような音がした。
彼女の指が、水晶板の上で震えている。
「……訂正します。検索、ヒットしました。この紋章……『双頭の冥竜』。これ……闇ギルド連盟の筆頭、『煉獄(れんごく)の鉄槌』の……装甲輸送車です」
車内の空気が、瞬時に凍りついた。
『煉獄の鉄槌』。
それは、気に入らない相手がいれば村ごと焼き払い、法執行機関すら手を出せないとされる、裏社会の絶対強者。人間、亜人問わず、彼らに逆らって五体満足でいられた者はいないと言われる、生ける伝説級の殺戮者集団。
黒い箱車の後部ハッチが、重々しい蒸気の音と共に開いた。
そこから滲み出てきたのは、圧倒的な「死」の気配だった。
最初に降り立ったのは、全身を真紅のミスリル合金鎧で固めた、身の丈二メートルを優に超える屈強な戦士だった。その手には、ダム子が投げた石など豆粒に見えるほどの、巨大な戦斧が握られている。斧の刃には、乾ききっていない赤黒いシミがこびりついていた。
続いて、全身から冷気を撒き散らす魔術師や、凶悪な傷跡を顔に刻んだ剣士たちが、無言で降りてくる。
彼らは一言も発しなかった。
ただ、その眼光だけで、ガラクタ号の中の四人を射抜いていた。
「獲物を見つけた」という捕食者の目。
「ひっ……」
リッツォの喉から、可愛らしい声とは程遠い、引きつった悲鳴が漏れた。
「う、嘘だよねぇ……? なんか、すごく怒ってるみたいだよぉ……?」
「アタシ、石なんて投げてない……! 投げてないよ! 手が滑っただけ!」
ダム子は慌てて車内に戻り、ガチャンと鍵をかけた。全身の毛が恐怖で逆立っている。
屈強な戦士が、鼻息荒く一歩踏み出した。
石畳が、その重量でメキリと音を立てて砕ける。
彼は戦斧をゆっくりと持ち上げ——そして、鬼のような形相で咆哮した。
「我らが進路を塞ぐ羽虫どもがぁぁぁ!! その薄汚い魂、根絶やしにしてくれるわぁぁ!!」
「い、いやぁぁぁ!! ルリルちゃん! 出してぇ! 早く出してぇぇ!!」
リッツォが泣き叫び、ルリルの肩を揺する。
「う、動いてぇ! お願いだから動いてよぉぉ!!」
ルリルは半泣きになりがら、ギアを強引にバックに入れた。
ガリガリガリッ! という嫌な音が響くが、構ってはいられない。アクセルを全力で踏み込む。
ガラクタ号は、振り下ろされた戦斧の一撃を紙一重で回避し、無様なほど急な後退で距離を取った。
ドォォォン!!
先ほどまでガラクタ号のボンネットがあった場所が、粉々に砕け散り、クレーターが出来ていた。
「ひぃぃぃ! 殺されるぅ! 本当に殺されちゃうよぉ!」
「逃げてぇ! 全力で逃げてぇ! ショウちゃん、逃げ道探してぇ!」
「探してますけどぉ! どの道も封鎖されてますぅ! 私たち、詰んでますぅ!」
ショウの声が裏返る。いつもの冷静さは微塵もない。
ルリルはハンドルを切り返し、Uターンして来た道を逆走し始めた。
涙目で、鼻水を垂らしながら、それでも口調だけは染み付いた可愛さが抜けない。
「ごめんなさぁい! 許してぇ! ウチ、もう二度としませんからぁ!」
背後からは、あの巨大な装甲車が、見た目からは想像もつかない速度で追いかけてきていた。
殺意の塊が、轟音と共に迫ってくる。
数分間の、永遠にも感じる逃走劇。
魔法弾がリアガラスを吹き飛ばし、風切り音が耳をつんざく。
もう駄目だ、ミンチにされる、そう覚悟した瞬間——
ウゥゥゥゥゥゥゥ――!!
甲高い魔笛の音が、空から降り注いだ。
それは救いの音ではなく、無慈悲な社会の管理システムの音だった。
上空から、王都警備隊の飛竜騎兵たちが降下してくる。
青と白の制服に身を包んだ彼らは、逃げ惑うガラクタ号と、それを追う殺戮者集団の両方を包囲した。
『そこまでだ、貴様ら!』
拡声魔法で増幅された警備隊長の声が響き渡る。
ガラクタ号の四人は、恐怖のあまり互いに抱き合って震えていた。
「終わったぁ……終わっちゃった……」
リッツォがファンデーションの崩れた顔を手で覆う。
しかし、警備隊たちの切っ先が向けられたのは、彼女たちではなかった。
『ギルド『煉獄の鉄槌』! 貴様らにかけられていた国家反逆罪、および大量破壊兵器密輸の容疑で拘束する!』
「……は?」
ダム子が間の抜けた声を漏らす。
後方では、黒い装甲車の扉が開き、あの屈強な戦士たちが臨戦態勢を取っていた。しかし、上空を制圧した飛竜部隊に加え、地上からも重装歩兵が現れ、完全に退路を断たれている。
圧倒的な戦力差を前に、さしもの『煉獄』の面々も、憎々しげに武器を捨てるしかなかった。
「クソッ……! なぜバレた! このルートは監視網の死角だったはずだぞ!」
屈強な戦士が悔し紛れに叫ぶ。
それに対し、降り立った警備隊長——堅物そうなエルフの男——が、冷ややかに告げた。
「ああ、確かに隠密行動は見事だった。だがな……」
隊長は、ボロボロになったガラクタ号を指差した。
「あんな派手に騒ぎ立てる馬鹿がいれば、嫌でも目がいく。貴様らがあの『馬鹿な車』に構わず無視していれば、我々も気づかなかったかもしれんがな」
車内の空気が、一瞬で変わった。
「……ねえ、聞いた? 今の話」
ショウが、素早く水晶板の録音機能を停止させながら、瞳に光を取り戻す。
「私たち、囮として機能したってことですよね。これ、言い逃れ……いえ、交渉の余地があります」
「え? そうなのぉ?」
ルリルが顔を上げる。さっきまでの死にそうな顔はどこへやら、羊のようなあどけない表情に、計算高い色が混じる。
四人は素早く目配せをし、意思を統一した。
ルリルがおずおずと窓を開ける。
「あ、あのぉ〜、警備隊長様ぁ?」
ルリルは首をこてんと傾げ、最大限に「無害な市民」を演出した。
「ウチら、怖かったんですぅ。あの人たちが悪いことしてるって気づいてぇ、必死で通報しようとしたんですけどぉ、追いかけられちゃってぇ……」
「そ、そうなんですぅ! 私たち、正義のために戦ったんですぅ!」
リッツォも身を乗り出し、涙で濡れた瞳をうるうるとさせる。
「か弱い乙女なのに、頑張ったんですよ?」
警備隊長は、呆れたような目で彼女たちを見下ろした。
目の前には、どう見ても整備不良の違法改造車。車内からは異臭がし、乗っているのは品性の欠片もない獣人たち。
しかし、結果として彼女たちの無謀な運転が、凶悪犯の確保に繋がった事実は覆せない。
隊長は深く溜息をつき、部下に目配せをした。
「……事情は分かった。貴様らの行動が、結果的に『煉獄の鉄槌』の確保に貢献したことは認めよう」
「やったぁ!」
ダム子がガッツポーズをする。
「じゃあ、アタシたち英雄じゃん! 報奨金とか出る系?」
「調子に乗るな」
隊長の声が低く響き、ダム子は「ひいっ」と縮こまる。
「本来なら、危険運転致死傷未遂、公務執行妨害、その他諸々で即刻投獄するところだ。……が、今回の大手柄に免じて、刑事罰については不問とする」
「ふ、不問……! つまり、無罪ってことですか?」
ショウが食いつく。
「『刑事罰は』な」
隊長はそう言い捨てると、懐から羊皮紙の束を取り出し、サラサラと羽ペンを走らせた。そして、その束をルリルに突きつけた。
「感謝状の代わりだ。受け取れ」
ルリルが震える手でそれを受け取る。
そこに書かれていたのは、目が飛び出るような数字の羅列だった。
『道路交通法違反(速度超過120km以上)』
『車間距離不保持』
『整備不良車両運行』
『騒音規制法違反』
『道路施設破損(ガードレール・石畳)修繕費』
合計金額の欄には、彼女たちが半年間飲まず食わずで働いても返せないような額が記されていた。
「逮捕はしない。だが、行政処分は別だ。……分割払いは役所で相談しろ」
警備隊長はそれだけ言うと、踵を返した。
『煉獄』のメンバーが手錠をかけられ、連行されていく。
嵐が去った後の街道に、ガラクタ号だけがぽつんと取り残された。
「……」
四人の間に、重苦しい沈黙が流れる。
助かった。殺されずに済んだ。牢屋にも入らなくていい。
だが、手元に残ったのは、借用書よりも重い現実だった。
「ねえ……これ、どうするのぉ?」
リッツォが、羊皮紙の端を摘んで、汚いものを見るように言った。
「私、こんなの払ったら、化粧水も買えないわよぉ」
「ウチ、もう車検通せない……。ガラクタ号、廃車になるかも……」
ルリルがハンドルに額を押し付けて呻く。
「……まあ、ポジティブに考えましょう」
ショウが、ひび割れた水晶板を見つめながら、乾いた声で言った。
「逮捕されたら、配信アカウントが凍結されるところでした。罰金なら、まだ『借金返済耐久配信』というネタで稼げます。……地獄は続きますが、生きてはいますよ」
「はぁ……。結局、アタシたちは貧乏くじ引く運命なのかよ…」
ダム子が空になった財布を逆さまに振る。小銭が数枚、チャリンと悲しい音を立てて床に落ちた。
「とりあえずぅ、帰ろっか」
「そうだねぇ」
「お腹すいたねぇ」
ルリルがキーを回す。
エンジンは一度だけ大きく咳き込み、黒煙を吐いて、どうにか息を吹き返した。
ガラクタ号は、以前よりもさらに遅く、重苦しい音を立てて走り出した。
背後の夕焼けが、彼女たちの前途を暗示するかのように、毒々しい紫色に染まっていた。
反省の色など微塵もないまま、彼女たちは今日もまた、転がり落ちるように明日へと向かっていくのだった。
ハートフルコメディを目指しています。
評価や批評をお待ちしております。