マイナス一誠とシトリーさん   作:超人類DX

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翌日です。

やっと本格的にグレモリー様と絡むぞ。
残念なことにおっぱい……てか精神年齢が低くて思春期がまだ来てないからハシャがないけどね。



過負荷で何が悪い
センパイ以外には基本変わらない


 さて、色々あったが、俺は特に別にの何も変わらずだ。

 過負荷(マイナス)がどーたらとかも結局は誰にも為にもならんワケだし、逃げる為にのみしか使わない。

 だから変わらない。

 何時もの通り、空気で気持ちの悪い友達ナイナイの兵藤一誠で変わらない。

 

 

「あーぁ、制服は買い替えかぁ……。

3年ポッチしか着ないってのに、あれって無駄に高いんだよな」

 

「事情アリという事で暫くジャージで過ごして貰います。

本当は直ぐにでも制服を用意したかったのですが、何分急だったので……」

 

「イイっすよ。ジャージ着てようが何着てようが、ガッコーじゃ空気やってるしー」

 

 

 結局センパイんちに泊まり、そのまま朝を迎えてこうして一緒に登校する最中、センパイが用意し、貸してくれた赤ジャージに身を包んだ俺は、済まなそうにしてるセンパイに気にするなと言っておく。

 そもそも制服を破棄する原因は、あの化け物はぐれ悪魔が俺を食ったからなんだし、そこから連れ出してくれた事に感謝すれど文句付ける理由は無いのだ。

 それに……まあ試してないから何とも言えないし成功するかも不明だが、その気にさえなれば『制服がボロボロになったので捨てた』という現実を嘘にして手元に戻せる……かもしれないのだ。

 なのでそこまで悲観する必要もないし、元々あの制服に思入れなんての無いのだ。

 無くなったなら新しいのを買う……それで解決して終わりな事にセンパイが一々気にする必要はないのよ。俺の事だし。

 

 

「にしても、一夜明けて冷静に考えれば考える程、世の中って不思議なもんですわなぁ。

お伽話みたいな話が本当に存在するとは……」

 

 

 昨日はゴチャゴチャと有りすぎて半々で実感が無かったが、今俺の隣をテクテク一緒になって歩いてるこの人が、あの廃屋に居た化け物と同じ存在かと思うと、やっぱ信じられない。

 俺を現実に戻したあの女曰く『彼女達は悪魔とは思えないくらい甘っちょろいんだぜ?』との事らしいが、俺も正直そこは同意出来るね。

 あの紅髪の方の悪魔さんは全然知らんから何とも思わんけど、センパイは少しの付き合いがあるから少しは分かる。

 『変な奴』という意味でな。

 

 

「ごめんなさい。

本当は言いたかったんですけど……」

 

 

 ほら、そんな必要も無いのにわざわざ一匹の人間に謝ってやがる。

 こんなん見せられたら、あのはぐれ悪魔とやらとは違って変な人だとしか思えないよね。

 こう……俺が勝手に抱いていた悪魔のイメージ的には――

 

 

『ふっ、餌の分際で私の正体を自力で知ったからどうなんですか? 餌は餌らしく私に黙って惨めに喰われなさいな。フフフフ…』

 

 

 なーんて眼鏡を外して超冷酷な笑み浮かべ、キラリと犬歯を光らせながら言――――わ、ねぇな。

 無い無い……あり得ねぇわ。

 

 

「? 一誠くん?」

 

「ぁ……い、いや……仕方ないんじゃ? だって俺に言う必要も理由も無かったし、結果的には知った事になってるし、それで良いじゃないすかね? あっはははは……」

 

 

 変な妄想を展開させたせいでボーッとしていた俺に不思議そうな顔を向けてくるセンパイに慌てて気にすんな的言葉を返す。

 うん……無い。あってたまるか。

 そんなセンパイは何か嫌だ。てか嫌いだ。

 

 

「はははははは…………」

 

「?? 変な一誠くん……」

 

 

 取り敢えず笑って誤魔化す俺を、センパイは変な奴を見る目になるが、アンタも大概変だぜと心の中で呟いときながら、そろそろ到着するガッコーまでの道を歩くのであった。

 

 

 

 

 

 ところで、俺は誰かの家に泊まるのは初体験だった。

 そしてそういう時は保護者に一言連絡しておかなければならないらしいのだが、昨日は色々有りすぎて訳が分からなくなっており、加えて携帯電話なんてものも持っておらず、というか保護者……いや両親とは既にまともな会話すら無かったので無断外泊という形となっていた。

 故に、俺が別に家に帰らずとも両親は何も思わないだろうから良いだろうと思っていた……。

 そう、あのチクり野郎がまたチクりやがっていた事を知らないから……。

 

 

「おはようソーナ……と、セーヤの弟君」

 

「む……」

 

「リアス……」

 

 

 あの男が余計な事言ったせいで話が拗れる事になるとは……静かな佇まいで俺の前に現れた紅髪の人を見たこの時は、まだ分からなかった。

 

 

「……。ええっと、紅髪の人……あ、先輩でしたっけ?」

 

 

 あの男とツルんでいる正体悪魔な人……名前は確かあの女がちょこちょこ言ってた覚えはあるが、忘れてしまっているので暫定的に紅髪の人と呼ぶ事にし、早速その名で呼んでみると、紅髪の人はしょっぱい気分にでもなったのか、顔を顰めている。

 

 

「私の髪を見てその渾名って所かしら? 残念だけど私はリアス……リアス・グレモリーよ弟君――いえ、兵藤一誠君?」

 

「あ、そっすか………はい」

 

 

 紅髪の人と呼ばれるのはお気に召さなかったらしく、ええっとグレモリー――――やっぱ紅髪の人に名前を教えて貰ったので、まあ取り敢えず話をする時はグレモリー先輩とでも呼ぶ事にする。

 …………って、あら? そういや俺って初対面の人相手にこんな喋れたっけ?

 う、ん? …………………………………………あ。

 

 

「あ、え……あ……その……すいません」

 

「え? 急にどうし――」

 

「勘弁してください。自分が対人恐怖症な事忘れてたってだけです。

人と喋るとかちょっと苦手なんで勘弁してください」

 

 

 急に自分の性格(キャラ)を思い出してしまい、途端に身体の震えが止まらなくなったので、コッチを困惑した顔で見てくる紅髪の人を避けるかの様に、さっきから黙って紅髪の人を見ていたセンパイの後ろに隠れた。

 くそ、あの女とかセンパイとかとフツーに喋ってた事で折角忘れてたのに……ちきしょう。

 

 

「な、何で隠れるのよ……。私まだ何もしてないのに……」

 

「そ、そういう人間なだけです――ってか今『まだ』とか言いましたよね?

てことはその内何か俺にする気ですか?」

 

「しないわよ! 私はただ――」

 

 

 何のつもりで俺等の前に現れたのかは知らんが、知らん他人……ましてやあの男と行動してる時点で信用が一切出来ない。

 どうせ奴の事だ、俺に対してロクな事言ってないに決まってるからな……いや実際そうだけど。

 

 

「落ち着きなさい、二人とも」

 

 

 センパイを盾にして隠れる俺、それを困惑と少しの怒りで俺を睨む紅髪の人という朝っぱらからの風景にしてはシュールな光景。

 そのシュールな絵の『文字通り』中心に居たセンパイが、俺と紅髪の人両方に対して一言声に出すと、そらまでざわついていた俺の精神は一気に落ち着きを取り戻し、紅髪の人も俺に対して何か言おう開き掛けた口を閉じた。

 

 

「リアス、貴女が私達の前に現れた理由は分かってます……昨日の事ですね?」

 

「ソーナ……ええ、そうよ。その……昨日……」

 

 流石生徒会長というべきか、俺とは違って他人相手に一切テンパる事なく紅髪の人と話をする姿に、情けなくとも頼もしさを感じながら、相変わらずセンパイを盾にする形でいる俺をチラチラ気にしながら何か言いたそうにしている紅髪の人。

 その視線を受け、何が言いたいのかと一瞬考えるが、昨日という時点で例のはぐれ悪魔とやらの事なのは明白というか、もうそれしか無かった。

 

 

「…………。彼には昨日全て話しましたから、そのまま続けても構わないわ」

 

 

 それは馬鹿な俺の八千倍頭も察しも良いセンパイも分かっており、例の人外サミットについて俺を前に話して良いのか迷ってる御様子の紅髪の人に淡々とした様子で続けろと促している様も、やっぱしスゲーと思ってしまう。

 

 

「話した……そう、話したのなら話は早いわね。

それなら今日の放課後、二人で部室に来て頂戴。

聞きたいことが今ので一つから二つに増えたから」

 

「構いません……一誠くんは放課後大丈夫ですか?」

 

「え? あ……いや、はい……」

 

 

 結局の所、この紅髪の人が俺等の前に現れたのは何処で仕入れたか分からない昨日の出来事についてであり、俺も来いということはその現場に俺が居た事すら既に見抜いているということ。

 ともなれば、今センパイに確認されたのに『嫌だ』とは言えるワケも無いので、ただただ頷きながら了承する他俺には道が無かった。

 

 

「だ、そうです。ではまた放課後に……」

 

「そうね……これ以上は二人のお邪魔になっちゃうし、私も皆を何時までも待たせる訳にもいかないから行くわね。

それにしても……ソーナは変わったわね」

 

「……………人間界(ココ)での私は支取蒼那よ」

 

「はいはい、じゃあまた放課後ね支取さん。

そして一誠君? ふふふ」

 

 

 何やかんやで話は終わりを迎え、放課後また紅髪の人と会う事になったという流れで纏まった。

 センパイを終始本名で呼んでいたのを最後の最後で訂正させ、紅髪の人は苦笑いしながら生徒会長としての名前を呼びながら最後の最後でセンパイの後ろから様子を伺っていた俺と目を合わせてウィンクしてから一足早く学校へと続く道を歩いて行った。

 

 

「もう一人の悪魔さんね…………あ?」

 

 

 スタスタと姿勢良く歩く紅髪の人の背を見て、小さく呟く俺はその横にのそのそと現れた御供の人達の中にあの男の姿があり、何やら此方を見ている事に気がつく。

 

 

「……」

 

「…………チッ、こっち見てんじゃねーよ」

 

 

 その瞬間、俺の胸の中にどす黒いナニかが涌き出てくる。

 俺を気に入らんとばかりに見ているあの野郎のツラの皮を今すぐ剥いでやりたい……そんな出来もしない衝動は、奴の姿が消えるまで止む事は無かった。

 

 

「あの女の言った通りか……。

どうやら奴が悪魔に転生ってのをしたのはマジらしいね……チッ」

 

 

 別に奴の人生なんぞ蚤にも興味無いし、出来れば今後一切関わりたくも無い。

 だけど、あの紅髪の人と放課後また会うという事は自動的に奴と物理的な距離が近くなる訳だ。

 ハッキリ言って、奴の近くに居るだけでストレスが速攻でカンストする自信があるので今から既に憂鬱だった。

 

 

「ハァ……」

 

「大丈夫ですか? 何か、勝手に話を進めちゃったみたいで……」

 

「いや、センパイ居なかったらまともな会話も不可能でしたから。

フォローありがとうございます……」

 

 

 幻実逃否(リアリティーエスケープ)で『奴が存在しているという現実を逃否』してやりてぇが、目覚めたばかりで半端状態の今はまだ無理だ。

 俺がこのままマイナス成長でもすれば何時かは可能かもしれないが、まだ先は長そうだぜ……と、助けてくれたセンパイにお礼を言いながら未だその背に隠れていた状態から離れて隣に立つ。

 

 

「本当はリアスが冥界からの命令で始末する予定だったはぐれ悪魔を、私が勝手に始末してしまいましたからね……。

眷属を持つ王としてきちんと話し合わないと……」

 

「はぁ……何か俺のせいですいません……」

 

 

 考えなくとも、センパイを面倒な事に巻き込んだのはほぼ間違いなく俺のせいだ。

 あのまま居辛い場所から逃げずにセンパイと普通に帰ってれば今頃――

 

 

「そう、か……昨日のことが無ければ俺は過負荷(マイナス)能力(スキル)にも目覚めなかったし、センパイの正体も知らなかったのか……」

 

 

 過負荷(マイナス)はどうでも良いとして、昨日の事が無ければ俺はセンパイの上っ面しか知らなかったと今気付き……………あれ?

 

 

「ねぇ、センパイ……」

 

「なんですか?」

 

 

 センパイを知った……と今こうして改めて実感したその瞬間、自分の中で変な感情がグルグル回っているのが何なのかが分からない。

 だから無意識にセンパイに声を掛けると、いつもの様にセンパイは俺の話を見て返事をくれる。

 

 

「俺って昨日食い殺されたじゃないですか?」

 

「……。天気の良い朝にする話じゃあ無いですが、事実ですね」

 

「で、昨日話した通りに俺は復活し、センパイの家で互いに話し合ったじゃないですか?」

 

「そうですね……それが?」

 

 

 急に昨日の話を切り出す俺に相槌を打ちながら、何が言いたいのかと問うセンパイは何時もの眼鏡で真面目そうな顔だ……。

 何にも変わってない、ただ単に昨日の事でセンパイが悪魔だって事を知っただけで、センパイは俺を化け物はぐれ悪魔とは違って食い殺そうとはしない。

 だから俺は……いや、違う。食い殺されないという所じゃ無い……。

 そこから先の……。

 

 

「センパイが悪魔なんだなって知った昨日の事を改めて思い返してたんですよ。

そしたら……なんての? 自分でも良く分からないけど腹の中がフワァっとするっていうか……心地良い気分というか……そんな気分にさっきから……」

 

「え?」

 

 

 腸が煮え繰り返るのは数あれど、こんなフワフワはさた気分になるのは初めて……いや、久しぶりで何なのかが良く分からないというべきなのか?

 とにかくこの分からない気分になっていると、上手く説明出来ないままセンパイに話すと、センパイは目を丸くしながら固まっていた…………って、何でだよ。

 

 

「あれ、センパイ?」

 

 

 変な事言ったか? とちょっと心配になって目を丸くしっぱなしのセンパイの顔を覗き込むようにして顔を近付ける。

 そういやこれも昨日以前だったら、他人相手に此処まで接近するなんて絶対出来ない事だったのに、自分から何の躊躇無しに出来てるな……俺。

 

 

「(ハッ!?)な、な、なんですか?」

 

 

 ボーッとしてたのか、顔を近付かせて初めて意識が戻ったセンパイが、珍しく吃っている。

 

 

「いや、だから今俺が感じてる意味不明なこの感情が何なのかなぁ……って」

 

「さ、さぁ? 抽象的過ぎて私にはわかりませんね! 全く! これっぽっちも!! 解りません!!!」

 

「あ、あぁ……?」

 

 

 ささっと俺から少し離れ、妙に大きな声で知らぬと顔を逸らして言うセンパイに俺は何をそんなテンパってるのかが分からずに首を傾げてしまうのと同時に、この珍し過ぎる反応からいって何か知ってるだろと思うんだ……ふむ。

 

 

「センパイって嘘吐く時顔を逸らしますよね。

今もそうだ……てことは――」

 

「えっ……う、嘘……!?」

 

 

 何てことない、普通に他愛のない話でもするかの様に然り気無く口にした俺の言葉にハッとするセンパイに、俺は内心ニタリと笑ってしまう。

 割りと単純な所もあるんだな……とね。

 

 

「はい、勿論嘘ですよ。

まあ、お陰でセンパイが今嘘吐いた事はわかりましたが……」

 

「なっ!?」

 

 

 自分なりにカマを掛けてみた所、見事に引っ掛かってくれたらしく、センパイはショックを受けた顔となる。

 まあ、馬鹿にカマ掛けられりゃあそうもなるのは仕方ないけど、俺は俺で今も感じるこの妙な気分が知りたい……だから俺は『悪くない』。

 

 

「う、うぅ~! そ、それも過負荷(マイナス)というのに目覚めたが故ですか? 変に意地が悪くなってますよ」

 

「いやそれは全然関係ないですよ。

普通にこの妙に悪くない気分が何なのかセンパイに聞こうかなと……ははは」

 

 

 恨めしそうに俺を睨むセンパイだが、何故だかちっとも怖いとは思わず、寧ろ自分の中にあるざわざわがより心地よくなり、思わず笑みが溢れてしまう。

 

 

「し、知りません! 自分で分からないのを私が分かる訳ないじゃないですか! ふ、ふん!」

 

「あ、ちょ……」

 

 

 だけどしかし、センパイからすれば小馬鹿にされた気分でしかないらしく、変な意地を張る子供みたいにわーわーと言ってから俺を置いてさっさと歩き出す。

 しまった、やりすぎたと後悔しても今更で、ヤケに顔真っ赤にしながらズンズンと歩くセンパイに走って追い付き、その横を歩きながら次はフォローの言葉をと口を開くも、あんまり効果は無さそうだ。

 

 

「信用してないとか言っといて……くぅ……!」

 

「え、あぁ……それ撤回しますわ。

センパイだけなら信用しま――もが!」

 

「そ、それ以上真顔で言うのは止めてください……!

身体が熱くてどうにかなにそうだから……!」

 

「もがもが……」

 

 

 信用してますと口にしようとした瞬間、真っ赤になってるセンパイが、初めて見るようなテンパり具合で俺の口を無理矢理塞ぎ、取り敢えず黙れと鬼気迫る声で言うので、その迫力と相俟って俺は黙って何度も頷くしか出来なかった。

 …………余計な事聞いたのか俺は?




補足

一誠が他人(ソーナさん)に対して無意識に心を許し始めてます。
ちなみに、一応一般的な羞恥心はあるので、ラッキースケベが発動したらそれなりにテンパります(あるかどうかは別にして)。


その2
幻実逃否(リアリティーエスケープ)
皆々様の感想の通り、身に降り掛かる現実(イヤなコト)を嘘へと書き換え、己の中で打ち立てた都合の良い嘘を現実にさせるスキル……とまあ、聞こえは良いですが、彼の心理状態によって蚊レベルにもなるし神滅具以上にもなるかもしれないし、安心院さんを100年程は黙らせられるかもしれない。

要はぶれっぶれで振り幅がデカイスキルです。

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