マイナス一誠とシトリーさん   作:超人類DX

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短すぎたから長く書き直した……と言っても短めですが。


閑話:安心院さんの安心トーク(チラリもあるヨ)

 結局何で俺は変なゲームの観戦に付き合ったのかわかりゃしない。

 魔王の人は何も聞かずに喋るだけ喋って帰ってしまうし、ロクにゲームしてんの見なかったし。

 なるほどこれが時間の無駄って奴なんだな。学習したぜ、うん……。

 

 

「さっき魔王の人が言ってた『あの人』がアンタなのか、それを聞きに来た」

 

 

 世間の事を一つまた知ったそんな俺は、2度目となる学ラン姿と謎の教室に居たりする。

 センパイがゲームに勝った紅髪の人に挨拶してる間の僅かな時間を使い、ある人物に会うために眠ってみた所、気が付けばこんな格好と場所にいるという訳だ。

 所謂夢の世界というこの場所……確証なんて無かったが、どうやら現実で意図的に念じながら意識を手放せば来れるっぽく、ハッとした頃には学ラン姿で椅子に座らされ、教壇に行儀悪く座った例の女が微笑して俺を見ている。

 只存在してるだけの人外こと安心院なじみ。

 俺に過負荷(マイナス)という存在を教え、能力(スキル)を覚醒させる手伝いをしてくれた掴み所が一切無いこの女に俺は聞きたいことの主語を取っ払って聞いた。

 どうせ俺が何を聞きたいかなんて言わなくても解ってるだろうし、案の定長い黒…………いや、今改めて見ると少し茶色っぽい髪を持つ安心院なじみは人付き合いが上手そうな笑みのまま『フッ』と小さく息を吐く。

 

 

「なんだいなんだい? キミから僕を求めて来た理由が優男君の話を聞きに来たってだけかい。

あーぁ、まさか一誠君にそっちの趣味があるとは……」

 

「ねぇよ。知ってんだろうが……」

 

「まぁね。

皮肉な事に僕はキミの両親よりもキミを解ってるつもりだ。大方さっきキミがトークしてた相手であるサーゼクス・グレモリー君が僕と面識あるのかとか……そんなことを知りたいんだろう?」

 

 

 相変わらずの余裕こいた態度だこと。

 いや、実際“余裕”なんだよね。

 コイツにとってすれば全部がカスでくだらねーんだからな。

 

 

「まぁね。あの魔王の人の言葉に妙な引っ掛かりを覚えて、何と無く気になっただけ」

 

 

 回りくどい言い方なんぞこの女にゃ通用しないので、ドストレートに訪ねと、本日の安心院なじみ意地悪では無いらしく、ニコリと微笑んだ。

 

「簡単な質問だし暇だから答えてあげる。

うん、結論から言うと彼には昔一度会った事はあるぜ?」

 

 

 なんてことぁ無いさって顔で宣う安心院なじみ。

 コイツの言う昔が一体どれ程の時間なのかはお察しレベルで敢えて口にはしないが、どうやら魔王の人が言ってた『あの人』はコイツで確実らしい。

 そこから考えると、やはりあの魔王の人は……。

 

 

「いーや違うね。彼は僕とは何の関係もない『只の』サーゼクス・グレモリー君だよ。

キミや僕の持つ様なスキルは無く、単純にそういう種族だからとか、そういう血統だからという理由での人外さ」

 

「わざわざ先回りして貰って光栄です……」

 

 

 俺の思考を先読みしてアッサリと否定した。

 “僕等に近い”と言ってたのは単純に勘か何かで言ってたのか……。

 

 

「だが、あの様子からしてアンタの影響を受けてるって感じだったんだが……」

 

 

 軽い性格らしい魔王の人が一瞬だけ見せた醒めた表情とあの言葉はなぁ……なんて考えてると、安心院なじみは微笑みそのままで座ってる教壇の上で足を組直す…………ってオイ見えてるんだけど……。

 

 

「ちょこっとだけ昔の話になる。

ある日の朝の事だ。持ってた新品の消ゴムの角が欠けちゃったんで、腹いせに表に出て迷える子羊共の人生相談紛いな真似を飽きるくらいまでやったんだ。

その中にはまだ若造だったグレモリー君が居たのは何と無く覚えている」

 

 

 っと、真面目な話だし見えてる事は言わないで置こう。

 

 

「なるほど……で? 共感させて悪平等(アンタ)にでもしようと?」

 

 

 あの一瞬だけ見せた魔王の人の顔は醒めてたというか、色んなものに対して『くだらねぇ』って心理が見え隠れする様子なのはちゃんと覚えている。

 今こうして教えて貰って思い返してみれば、絶対強者が故に持つ『安心院なじみ』と似通った考えを持っていると推測出来たのだが、安心院なじみは教壇に座って組んでた足を組み替えながら首を横に振る。

 その際また見えてしまい、色が白と分かってしまった事については全く関係ないのでソッとしとこうと思う。

 

 

「いーや、そんな事は全く考えてなかったぜ? 只単に僕はチョロチョロと色んな所に行っては適当な奴にそれっぽい事を言っただけ。

どうやら彼は僕の話を聞き、独自で解釈して勝手に共感してるみたいだけど、決してグレモリー君は平等主義じゃ無いし見下しもしてないからな。

大体、今在るこの世界に(ノットイコール)であり悪平等(ぼく)は存在しないさ」

 

「的が外れてとんだ赤っ恥だな俺は……」

 

 

 違うのかよ……てっきり人外同士の徒党を組みましたいな事を密かにしてんのかと勝手に思い込んでたのに……。

 だがしかし、悪平等か。言い得て妙だ、平等なだけの人外さんであるこの人にゃあな。

 

 

「そもそも、魔王だの神だの龍神だのなんて僕の興味の対象外だし」

 

「なんで?」

 

「つまんねープライドか何かで同族同士や他種族と潰し合って勝手に数減らしてる連中なんぞ平等にカスだから。彼等も確かに人外だけど……僕とは相容れない人外さ」

 

「ふーん?」

 

 

 良くわからんが、要するにどうでも良いという事は分かった。

 じゃあ俺は何だろ……蝿かな?

 

 

「そうかもね……と言ってやりたいけど、キミは少しだけ僕の中では特別だったりするんだぜ?

何せ、過負荷(マイナス)とはいえ唯一僕に近付いたある種のイレギュラーなんだもん。

キミ以外に本当の意味での過負荷(マイナス)異常性(アブノーマル)を持つ人間は居ないしね」

 

「なぜ?」

 

「過負荷や異常者……では無く、神器(セイクリッド・ギア)があるからだよ」

 

 

 あぁ、成る程……神器は確か本人の才能を具現化させたもんだもんな……多分。

 アブノーマルでもあるしマイナスでもあるだろな……アレは。

 

 

「それが何故、キミに神器とはまるで関係ない僕に近い存在……能力持ち(スキルホルダー)となったのか……。

5歳の誕生日に現れた謎の兄が原因のトラウマか、それともその前の――」

 

「俺の話はどうでも良いだろ」

 

「おいおい何だよ、拗ねるなって~」

 

 

 本当に何でも知ってやがるなこの女。

 怖い女だよ本当。

 

 

「確かに今は一誠くんの話じゃ無かったね。ごめんごめん話を戻そうか。

まあ、兎に角彼は単に僕を『覚えていた』ってだけ何処にでも居る只の魔王さ。

キミじゃ逆立ちしても勝てねーってだけは言っておくよ」

 

「あ、そう……」

 

「キミ以上……いや以下であり、負完全である球磨川禊君なら勝てずとも色々やらかしてくれるだろうし、主人公の頃の黒神めだかちゃんならもしかしなくても勝てるかな」

 

「ごめん、いきなし知らん名前出されても困る。誰だし」

 

 

 意味深な名前を意味深な笑み浮かべて呟く安心院なじみは何故か地味に楽しそうに見えた気がした。

 

 

「単なる週刊少年ジ○ンプ内の登場人物さ。

キミが知らないのも無理は無い、だってキミは集○社組じゃ無いしねー」

 

「あ、あぁ?」

 

 

 サッパリ何を言っとるかわからん。

 何だよ週刊少年ジャ○プって……? ホッピングなら知ってるけど、そんな漫画雑誌は聞いた事が無いんだが……って、答えてくれそうもねぇなこの顔は。

 

 

「ま、良いか。とにかく色々教えてくれてサンキューな。取り敢えず俺は帰る」

 

 

 会いに来た理由の大半は把握した。

 となれば最早此処には用は無く、そろそろセンパイが戻ってくる頃合いだろうし、帰ろうと席を立つ。

 何やかんやでこの女にゃ世話になりっぱなしだな。

 

 

「ん、もう帰るのかい? 色々教えたんだからもう少し付き合って欲しいんだけどなぁ」

 

「今は無理だ。センパイがそろそろ戻って来るだろうしね」

 

「あらら、随分と彼女に対してお熱だな……はいはい、分かった分かった。さっさと戻ってイチャコラしてきな」

 

 

 ……。何かムカつく言い方だな。

 

 

「……………わかった。帰って寝たらまたコッチ来るよ」

 

 

 けど世話になってるのは本当だし、俺は借り物はちゃんと返す主義だ。人から物を貸して貰った事はねーがね。

 だから奴にとってすれば俺は蟻以下でしか無いが、俺にとっては……。

 

 

「おやおや、言ってみただけなのに随分と律儀だね。

彼女に嫉妬されちゃうなこれじゃあ……」

 

「ハッ、アンタとか? ねーよそんなもん。

俺は単純に『トモダチ』が好きなだけで、そのトモダチの頼み事だからだよ」

 

 

 『今は』俺にとっていい人だから勝手にトモダチになってもらってるに過ぎねぇ……。

 そして俺はトモダチに借りっぱなしは嫌だ……只それだけだ。

 

 

「ふ~~~~ん?」

 

「何だその目は……いや、大体解るわ。

カスにトモダチ扱いされたかねーってか? ハン、残念だが勝手に決めた事だ……アンタどう思おうがな」

 

「いやそうじゃない。僕を一方的に好きになる奴とか、悪平等(ぼく)になる奴は多かったが、トモダチと抜かす変な奴はお前で二人目だなと思ってな」

 

「変で結構だね」

 

 

 フッと鼻で笑う安心院なじみに腹が立つことは無い。

 寧ろ今言ってた一人目が誰なのか地味に気になる。

 そいつも俺みたいな負け犬なのか、それとも…………っとと、そんな事よりこれも言っとかないと。

 

 

「それとだ、さっきから足を組み直す度にスカートの中が見えてるから気を付けな……自称アンタのトモダチのお節介だ」

 

 

 センパイを見習えセンパイを……と続けようとしたけど、最近のセンパイは時たま怖い時があるから言うのは止めといた。

 よし、やっと言えたぜ。全く、こっちはハラハラしてたんだからね!

 

 

「え?」

 

 

 俺の言葉にキョトンとした安心院なじみが、目線を自分の足元へと見やり、やがていや~な笑みに変貌させる。

 

 

「大丈夫だよん。これは計算してギリギリ見えない様にしてあるからね」

 

 

 とか言ってまた足を組み直す安心院なじみの顔は自信満々と言わんばかりである。

 しかしながら太股は見えるし普通に中も見えてるから計算もクソもなかったりする…………あ、これわざとやってんのか?

 

 

「うん、普通にギリギリじゃねーしモロに見えるよ。

流石にガキの俺でも見てて恥ずかしくなるぜ」

 

「ほっほーん、何やかんやで一誠君も年頃かい? まあ、本来のキミは“馬鹿みたいな性欲持ち小僧”だし、僕個人としては責めるつもりなんて無いよ。

ほれほれ、何なら捲って見せてやろーか? んん?」

 

 ……………。あ、これわざとだ。

 腹立つ笑顔でワケわからんこと言いながらスカートの端摘まんでやがるし。確信犯だったんだな……あれ、言葉の使い方間違えてるかも。

 まぁ良いか……。

 

 

「いやだからね…………うん、アレだな。あんたって割りとビッチって奴だよね」

 

 

 見たからといってどうも思いやしねぇ……………………ってのは最近センパイと仲良しになってから段々と嘘になってきたが、それでもトモダチのスカートの中身を見せろ言う程猿じゃない。

 寧ろ俺としては、よく巷で聞くビッチギャルって言葉が半端無く今の安心院なじみに似合って見えてしまって、みっともねぇと思ってしまうんだ。

 だって考えてみろ。例え一方的の自称で余計なお世話だとしても、トモダチの人外が人にパンツ見られてハァハァする変態だったなんて……………な、嫌だろ? だから言って置くんだよ……その他にも理由はあるけどね。

 そんな意図を込めた俺の軽いジャブ言葉に、笑いながらもちょっとだけ眉をピクリと動かす安心院なじみは、そのまま笑ったまま口を開く。

 

 

「……。あっそー。それなら今度シトリーさんを此処に招待した時に僕がうっかり――

『実は一誠君はパンツと太股フェチだったりするんだぜ? ソースは僕のを見た時の反応』

――なんて言ってみた後に彼女がどう行動するか賭けてみないかい? 相当愉快な事になるに僕は一票を入れる」

 

「………………。それはヤメテ」

 

 

 何時かこの安心院なじみをポカンとアホ面にして『ザマァ見ろ』とケタケタ笑って気分が良くなりたいなぁなんて思ってて、案外早く叶うかと思ってた矢先の核兵器持ち込みに、半端もんの過負荷(マイナス)である今は無理だわと悟った瞬間だった。

 うん、センパイを引っ張って来たら負けるわそんなもん。

 ちくしょう……ニタニタしおってからに……パンツでも太股フェチでもないのに……。

 

 

 




結論

彼女は一人。
彼も一人。
今のところは……。

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