マイナス一誠とシトリーさん   作:超人類DX

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基本的に彼は1度会って慣れが来た者や、嫌悪感示してくる相手に対してはものっそいウザくなります。


一誠くんとトモダチ
格好いいと思ったから言って何が悪い。


 安心院なじみに教えられ、結局はあの魔王の人は彼女に会ってただけで只の魔王だということも解り、最早初めの頃のキャラ崩れも彼を前にしても二度と起こらない。

 勝てない相手にどうこうしようだなんて勇気も無いし理由も無いのだから、無気力・無関係・無関心の精神に乗っ取って知らん顔しとけばどうって事は無いのさ。

 

 

『此度はありがとうございました魔王サマ……。

あーそうそう……さっきの事が気になったんで『安心院なじみ』に聞いてみた所、アンタを悪平等(ノットイコール)ではない只の魔王だって言ってましたぜ?』

 

『っ!? か、彼女と会ったのかい!? やっぱりキミは……お、教えてくれ彼女は今何処に……!』

 

『さぁ~て? 天国・地獄・宇宙・人の心の中やら夢の中……腑罪証明(アリバイブロック)で何処でも居られるあの女の居る場所は誰にも彼にも解りゃしませんよ――――おぉっと? 唯一奴に近い存在らしい俺に対して無理に聞こうとしたら、安心院なじみちゃんはアナタをどう思うのかな?』

 

『…………っ』

 

『フッ……その内願ってりゃあ来るだろうし、気長に待ってりゃ良いんじゃないですかね? んじゃ……『またいつかとか。』』

 

『…………』

 

 

 ちょっとした仕返しも済ませた俺としては結構スッキリ出来たし何の問題もない。

 魔王の人にだけ聞こえる声量で、安心院なじみの名前出した瞬間の取り乱しっぷりは中々愉快でザマァ見ろと思ったのと同時に確信できた。

 この魔王……かなりあの女にタラシ込まれたんだなぁ……ってね。

 ホント気紛れでやらかしたのにキッチリ禍根は残すなんて、やり手と拍手すらしたくなる。

 

 

「さっき、別れ際に魔王様と何を話されてたのですか?」

 

 

 人間界の学園に戻った俺とセンパイ……と、センパイのお伴の人達は、流れ解散にしますというセンパイの命令の元、何やら俺に言いたげにしてた匙君を副会長以下役員一同が拉致って行くのを生温い目で見送り、残った俺とセンパイは帰り支度をしながら話をしていた。

 兄者達の方は、戻って来るなり重い荷物を捨てられてハッピーだと言わんばかりのテンションで帰ってくのを目撃したんだが、何か知らないけどあの白髪チビ……そして1度たりとも話をしたことが無く、ゲーム終盤で脱落した黒髪の……姫小路だかそんな名前の人が沈んだ目でこっちを見ていたのが何か気になった。

 まあその姫小路さんも白髪チビも紅髪のは人に連れられて今は居ないし、興味も沸かない連中よりセンパイだセンパイ。

 

 

「アレっすよアレ。何かあの人、安心院なじみの行方が気になるらしくてね? センパイが部屋出てた間に彼女から色々と聞いた話の一部を教えただけっす」

 

「………」

 

 

 あの時俺が魔王の人にほんのささやかな仕返し目的で耳打ちしてやった内容を知りたがるセンパイにテクテク帰り道を並んで歩きながら教える。

 すると、嘘じゃ無いのにセンパイの顔は不満そうな顔だった。

 

 

「またその人ですか……」

 

「はい…………え、なんすか?」

 

「………。別に……」

 

 

 安心院なじみの話をすると決まって不機嫌になるセンパイに俺はもしかしなくても地雷を踏んでしまったと気付いた時には既に遅く、そこからの帰り道はセンパイのご機嫌とりに費やしたのは言うまでも無かった。

 

 

 

 

 

 それから暫く経ったある日の休日の出来事の話だ。

 家ですることと言えば一人でボードゲームするか寝るかしかないので、何時もの通り朝早く起きて一人人生ゲームを楽しんでいた訳だが、どうにも俺の居る部屋の外が騒がしい……というか家の住人以外の声が聞こえる。

 両親は朝にどっか出掛けるとか言ってたのを聞いていたので、今聞こえる声は両親のでは無く………というか最近良く聞くような声だった。

 主に兄者と関係の深い連中と言えば分かるだろうか。

 

 

「ハァ……人気者を近くに持つと騒がしいのを我慢しなきゃならんのか……」

 

 

 暴れてる音は無いが、話し声が俺の一人人生ゲームの集中を乱してしまうので、このまま続行するのを諦め、片付けしながらこうやって文句言ったって下のリビングで和気あいあいしてる連中に届く訳も無く、俺は自然と服を着替えて財布を手に持っていた。

 理由は当然外に行く為だ。

 別に彼等が煩く話をしてようが勝手だし、最早金髪の元シスター以上に『住まわせてもらってる』って肩書きが似合ってる俺が都合良く文句言える立場では無い。

 でも煩いのは煩いので、そこから逃れるには外に出るのか一番現実的で得策なので俺はこうして部屋を出て階段を降り、案の定リビングに集まって何か楽しそうにしとる連中を扉の隙間からちょっとだけ見てから玄関に向かおうと回れ右をす…………

 

 

「……………」

 

「……………」

 

 

 る…………って感じで振り返ってみれば、まるでコントを彷彿をさせるタイミングの良さ……いや悪さで俺はいつの間にか背後に立ってたと思われる人と鉢合わせしてしまった。

 トイレから戻ろうとした所で俺を発見してしまったのだろう、その人は俺と顔を合わせたその瞬間から『何でオメーがそこに居るんだよ?』的な目で俺を見ている訳だが、俺から言わせて貰えばオメー等が何で此処に居るんだよっつー話だったりするので覗いた事に罪悪感なんか無い、寧ろ前々から俺を気味悪がってるこの人とは1度も話した事が無いので、一言だけ挨拶してから家を出ようと思い……。

 

 

「あぁ、部屋でのんびりしてたら何か騒がしてね?

どうにも聞き覚えのある声ばっかするからちょっと気になっただけなんですよ……………ええっと、姫小路先輩?」

 

 

 俺は勤めて……最近一人鏡の前で練習した『人当たりが良さそうな胡散臭い笑顔』を浮かべて、一言も発する事無く俺を見てるだけの人……黒髪の人に挨拶をする。

 

 

「………」

 

「あれ?」

 

 

 しかし黒髪の人は何も返さないで、ただただ俺を見てるだけだ。

 

 

「えー無視ですか……。

若干傷付くんだよなぁ。ま、良いけど……それじゃ」

 

 

 別に返事が欲しくて言った訳では無いし、今言ったのも嘘だ。

 ていうか、なまじ返されても逆に困るので丁度よかったりすると内心思いながら、また練習した笑顔を見せると、黒髪の人はビクリと身体を動かしながら、今度こそ嫌悪感丸出しな顔となっていた。

 うーむ……身に覚えが無いのになーっと……。

 

 

「すいません、のいてもらえます?」

 

「…………っ」

 

 

 いつまでもそんなツラしながら狭い廊下を通せんぼすんなと黒髪の人に言うと、そこでやっと微妙に反応しながら横にずれてくれたので、俺はそのまま彼女の横を通り過ぎながら…………。

 

 

「あ、そうだ……。この前のゲーム見てましたぜ。かっこよかったと素直に思いましたよ……………先輩が」

 

 

 俺はこの前のレーティングゲームを見た感想と遅れながらのお疲れ様コールを送っておいた。

 

 

「…………な……」

 

 

 するとどうだ。

 どういう訳かは知らんけど、見ずとも分かる位の殺気が背中越しから伝わり、何やらか細い声を出しているが聞こえた……………って、え? 何で?

 

 

「なんで……そう思うんですか?」

 

 

 今にも爆発しそうなのを必死に抑えてます……そんな気持ちがヒシヒシと伝わる声で漸くまともな会話になった彼女の第一声に、俺は良く解らんままやはり物凄い怖い顔をしていた黒髪の人の方へ向き直す。

 

 

「なんで……って、ただそう思っただけなんですけど? 他に何を言えと?」

 

 

 怒りを助長させるつもりもない、ただ思った事をそのまま口にしたその瞬間だった。

 

 

「私は何もしてないっ!!」

 

 

 確か学園二大お姉様だかという御大層な二つなを持つ黒髪の人らしからぬ、怒りに満ちた顔でそう叫び出す。

 そのせいでリビングに居た兄者の残りのお仲間共がこぞってやって来たせいで俺が居る事がバレてしまった。

 

 

「朱乃……? それに兵藤君じゃない。こんな所で何をしてるの?」

 

「どーも。何か知らねぇっすけど、急にキレ出したんですよ」

 

 

 珍しき組み合わせのせいか、紅髪の人が目を丸くしながら怒る黒髪の人と俺とを交互に見て状況を知ろうとするので今あった事を正直に教える。

 しかしながら、紅髪の人も兄者もその他も全く俺を信じて無いって顔だ。

 

 

「朱乃が声を荒げるなんて余程の事が無ければ無い筈よ? 何を言ったのよ……」

 

「いや、だから……ほら、この前のレーティングゲームでしたっけ? あれについてこの人に『お疲れ様でした、格好良かったっす~』……みたいな感じで普通に言っただけっすよ? そしたらヒス起こしたんすよこの人」

 

「っ!!」

 

 

 チラッとこっち睨んでる黒髪の人を一瞥しながら正直に説明をすると、一瞬俺を殴ろうとしたのか飛び掛かろうとしていた所を金髪の男と白髪のチビに止められる。

 うん……何でこんな怒ってるのかが分からないし、紅髪の人が心の底から呆れた顔でコッチ見てるのかも分からない。

 

 

「…………。それは怒るわよ。貴方、最初から最後まで見といてそのコメントなの?」

 

「そうですよ? 確かに終盤この人はリタイアしてましたけど、一般小市民代表としての意見は『格好いい』ですね。うん……」

 

 

 うん、あんな手から変なもん出したり剣振り回したりなんて人間は無理だし、昔そんなものに憧れてた時期もあった事を思い返せば素直にそう思うのに、何故か黒髪の人は更に怒りメーターを上げながら食って掛かった。

 

 

「私は何もしないまま脱落したんです。それを格好いいとアナタは呑気に良く言えますね……!」

 

「良く言えますねって……じゃあ何ですか? アンタは負け犬じゃねーかアーホとでも言えば良かったんすか? じゃあ言ってやるよ……」

 

 

 要はこの黒髪の人は罵倒されたかったらしい。

 うん、ならお詫びの代わりに目一杯言うよ。

 

 

「『あーあ』『王様の次に偉い位置に居る癖して』『相手の一人も倒せずにリタイアしちゃってさー』『それで女王(笑)とか――」

 

 

 キレてる黒髪の人のお望み通り、罵倒してやろうと半笑いな顔になり、抑えられてる彼女を指差しながら思い付く限りの悪口を言ってやった。

 それなのに、何故か俺は殴り飛ばされて玄関の扉に背中からダイブしていた。

 例によって兄者のお陰でね。

 

 

「イタタタタ…………。え? ちょっと意味が分からない。

普通に労いの言葉を掛けたらキレられ、文句言えっつーから文句言ったら殴られるとか……訳わかんねーなアンタ等は」

 

「黙れよ……人の気持ちも察する事を知らないのかよ……!」

 

 

 盛大にダイブしたせいで、玄関に並んでた靴がグッチャグチャにしてしまったままドアを背を預けて座り込む俺を怒った顔して見下ろす兄者がまたまた良いこと言ってるつもりの台詞を並べてる。

 

 

「そうやってお前は――」

 

「ちょっと待とうぜ」

 

 

 しかしながら、今回は前々からこの良いことばっか言おうとしてるだけの兄者に言いたいことがあるので、また何か尤もらしい事を宣おうとするところを止め、ひっそりと 幻実逃否(リアリティーエスケープ)で『兄者に殴られてダメージを負ったという現実から逃避する』――という感じで使用し、ガタガタの身体と腫れ上がった頬を真っ白な状態にしてからスクッと立ち上がってから兄者………そして驚く他の面々を1度見てから俺は頬を擦りつつ口を開いた。

 

 

「前から『お兄ちゃん』に言いたい事があるんだけどさぁ」

 

「腫れが……無くなってるだと……?」

 

 

 腫れた頬を手で覆い隠しただけで、端から見たら腫れが癒えたとしか見えない演出を盛り込ませ、驚く連中を無視して話を続ける。

 

 

「そうやってすぐ殴るのは構わんよ。

でもさ、それだったら俺が言おうとする前に止めれば良いんじゃないの? こんな中途半端に言わせてから殴り掛かるよりも」

 

「何が言いたい……」

 

「え、わかんない? うぅむ、頭の良い『お兄ちゃん』なら分かるとおもったんだけど、まぁ良いや。

だからね――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大概が後手にしか回れてねーのに、偉そうに説教垂れんなよ中途半端偽善者ヤロー」

 

 

 前より距離感が縮まったが故に口にしたこの言葉は、兄者の顔を途端に歪めさせるのに十分だったらしく、これ以上何も言わずであった。

 よし、ザマァ見ろ。

 

 

「っ………い、一誠ェ……!!」

 

「はぁ……止めなさいセーヤ。

ホント兵藤君は的確に人を傷付ける言葉ばかり口にするわね……とことん私達に似てるわ」

 

「はぁ? 勘弁してくださいよ。アンタ等と一緒くたにされても困るし……俺は人間ですよ」

 

 

 人間であり、中途半端な過負荷(マイナス)ってだけで、俺はお前らじゃ無ければ似てもしねぇ。

 だからセンパイを俺方面に全力で引きずり込んだんだからな。

 ズレてんだよ……魔王の人然り紅髪の人然りね。

 

 

「そうね、アナタは人間で私達では無い……

だからこそ、気になるのよ………『今さっきセーヤから負った傷をどう治したのか』のかをね」

 

 

 ギラリとした目付きで俺を見据える紅髪の人から、嘘は通用しないというオーラがバシバシ伝わり、俺は思わず笑ってしまう。

 笑ってしまうからこそ。

 

 

「はぁ……あのさ……」

 

 

 俺は前々から余計な真似をしてくれた事に対する仕返しを今この場でしてウサを晴らす為、隠し持っていた釘と杭を奴等に投げ付けてやろう――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………。何をしてるのかしらリアス?」

 

 

 とは思わず、実は兄者に殴られて玄関まで吹っ飛んでひっくり返ってるその隙を見て、センパイをコッチに呼び出してたので、後はセンパイに頼ることにしました。

 

 

「そ、ソーナ……? 何で此処に……」

 

「決まってるでしょう……一誠くんに会いに来ただけです」

 

 

 そして今日のセンパイは目が違うぜ。

 だってねぇ……?

 

「一誠くんの頬がまた腫れている理由はちゃんと教えてくれるんでしょうね……皆さんは?」

「「「「え!?」」」」

 

 

 幻実逃否(リアリティーエスケープ)で消した傷をまた元に戻したからね。

 俺の頬はズキズキの真っ赤に腫れ上がってるぜ。

 そして一言言うのも忘れないぜ。

 

 

「今回に限っては俺は普通に殴られたあげく、この人達はこの腫れた頬を自分で治したとか訳の解らんことを事を言うんですよ……。

しかもそのワケを言わないとボコボコにするとも……いやマジで怖いっすわ」

 

「なっ!? そ、そんな事言ってな――」

 

 

 再び腫れ上がった頬をセンパイに擦って貰いながら、被害者アピールをする俺に紅髪の人が慌てて弁解しようとするが、何時にも増して氷の様に冷たい目をしてるセンパイは最後まで聞かずに口を開く。

 

 

「じゃあこの腫れた頬はなんですか? あなた方は人間相手に悪魔の腕力で殴ったんですか? 例え手加減しても許される話では無いのは判るでしょう?」

 

「ぅ……ち、違うのよソーナ……これには――」

 

「理由があると? 良いでしょう、なら言ってください。

それで一誠くんが悪ければ私からも謝罪しますが、そうで無かった場合は覚悟してください。

私達を知ってるとはいえ、人間である一誠くんに対して力を行使したと魔王様にご報告させて頂きますので……」

 

 

 冷徹な表情で、押し黙ってしまう連中に言い放ったセンパイは俺の手を引きながらリビングへと向かう。

 うーむ……やっぱ黒髪の人よりセンパイの方がカッコ良かったぜ。




どうなったかはお察し。

補足。
魔王様もリアスさんもその他さんも、過負荷と言う存在を知らないが為に、彼を自分等と同類だと勘違いしてます。

その2
唯一ソーナさんは端から端まで知ったので勘違いは無く、寧ろ進んで一誠の居る領域に進む――いえ後退してます。

次から聖剣かな

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