マイナス一誠とシトリーさん   作:超人類DX

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そら根回ししない訳もなく、久々に一人◯◯シリーズを楽しんでた一誠の前に彼が来る。


メンヘラハーフ堕天使ちゃん

 人は逆立ちしたって決して神様には勝てない。

 誰かが言った台詞だ。

 英雄の魂を持つ人間達で構成され、人ならざる存在を打倒せんとする派閥があるという話を聞いた事があるが、そういった手合いとはまるで別物――余りにも歪み過ぎているのだ。

 

 

「狂ってる……!

そ、それでも人間かよお前!!」

 

 

 皮肉にもその歪さを生み出す元凶で、最初に知ってしまったのは転生者という存在だ。

 

 

「言うに事欠いて狂ってるってのは酷いぜお兄ちゃん? 俺はただ本人がそう望んでるから仕方なく手を貸しただけだぜ? しかも最初は断ったし、俺よりキミの方が上手く解決できるだろうぜとも言ったんだぜ? なのにキミは全く動かないし、仲間の事よりも、新しく知り合う相手にばっかり気に掛けてたり、そんな連中と仲良くなる事ばかり考えてて気にも掛けやしない」

 

 

 最初はほんの小さな綻びだった。

 それが徐々に風船の様に膨れ上がり、やがて割れる事無く形を歪なものへと変質させていった。

 その歪さは彼と深く関わる者達すらの心を歪め、引きずり込む毒沼の様だった。

 

 

「そもそも嫌な現実から目を逸らして逃げたくなるくらい、キミにだってあるだろ? 誰もが立ち向かえる強さ(プラス)を持ってるだなんて思うのは烏滸がましいとは思わないか? だから俺達は悪くない。」

 

「……!」

 

 

 堕落させ、都合の良い真実に快楽を与える。

 その所業はもしかしたら本当の意味での悪魔なのかもしれない。

 

 

「だからそうさせただけさ。そして今もそうなる。

さぁ、皆さんご唱和お願いします―――」

 

 

 外からの侵入者が、そしてその侵入者を受け入れた世界が生み出した新たな怪物(マイナス)

 

 

「――――It's Reality Escape!!!!」

 

 

 夢と現実の境界線を壊す――それが兵藤イッセー

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日イッセーは珍しく……というか久々に一人だった。

 

 

「いらっしゃいませ! 何名様……ですか?」

 

「一人っす」

 

 

 最近友達が出来てからやらなくなりつつあった一人◯◯シリーズが突然やりたくなったイッセーは、イリナとゼノヴィアをソーナに任せ、今日一日を独りで楽しむ事にした。

 まずはそう――ソーナとはまだそんなに仲良くなかった時期には金があればやってた一人焼き肉だ。

 

 

「えーっと、特上霜降りロース一人前と、特上霜降りカルビを一人前――」

 

「は、はい……」

 

 

 以前は一人と言うと大体微妙な顔をされていたが、久々となる今回は入って顔を見られたその瞬間に吐きそうな顔をされた。

 それは彼の中の性質が完全に解放されてしまったからだろうが、そこはプロだったのか、死にそうな顔色になりながらも10人テーブルにわざわざ座って注文するイッセーに対応していた。

 

 

「よしよし……くふふ」

 

 

 そんな店員さんの気持ちな考えてないイッセーはといえば、運ばれてきた赤く輝く宝石達を前にテンションが上がっており、紙の前掛けをわざわざ装着し、一枚一枚を丁寧に焼きながら一人肉を食べていた。

 

 

「んー……んふふふ!」

 

 

 時刻はまだ昼前。

 開店と同時に一番乗りで入店したという事もあるせいか、店内の客は今イッセー一人だけだ。

 故に肉の焼かれる音と食べる度に、三高なのに、偏屈なせいかけっこんできない男みたいに一人にやついてるイッセーの小さな声だけが虚しく響いていた。

 

 

「あ、ありがとうごさいましたー……」

 

「ふぅ」

 

 

 そんな本人以外は重苦しい一人焼肉を久々に堪能して既に満足なイッセーは、今にもその場にぶっ倒れそうになってる店員さんにお辞儀をされながら退店する。

 一応双子となってる誠八と比べると明らかにヒョロヒョロな体格で、しかも脱いでみると括れすらある程に貧弱な体型で背まで五センチ程の差があるイッセーは、どうもいくら食べても体型がこのままで固定されてしまうらしい。

 

 以前ソーナに『死ぬほど羨ましい体質ね』と言われた事があったぐらいだ。

 

 

 

「次はジローのところにでも行こうかな」

 

 

 そんなヒョロガリなイッセーの次なる一人シリーズは、ソーナ達よりも更に前にトモダチになった猫達と戯れる事だった。

 チワワにすら噛み殺されかけるくらいには殆どの生物から嫌われるイッセーだが、ジロー呼ぶその白猫母子達のみだけはどういう訳かまったく嫌われない。

 だからなのか、イッセーは最初にできた親友としてその猫達を大事にしている。

 

 

「お土産お土産と……」

 

 

 しかもその猫達にのみ制御する気のないマイナスを駆使して意志疎通まで可能にしている程の筋金入り。

 お土産を用意したイッセーの足取りはより軽く、トモダチの待つ場所へと向かおうとしたその時だった。

 

「失礼、兵藤一誠君だな?」

 

「?」

 

 

 猫缶も買ったし、『猫を駄目にする』というキャッチフレーズに惹かれて買ったブラシも用意してイザ出発というタイミングでいきなり話し掛けられてしまうイッセー。

 自分にわざわざ話し掛ける者なんて限られてるし、ましてや聞いたことのない声だと思って振り向くと……。

 

 

「………………誰ですか?」

 

 

 ごっついとしか感想が言えないおっさんがそこには居た。

 背丈も体格も自分より一回り以上は大きいし、何よりこんなおっさんに知り合いは居なかった。

 ひょっとして通り魔か何か? と思いつつもついつい思った事をそのまま言ってしまったイッセーに、そのゴツいおっさんは他の初対面の存在に比べたら大分マシな物腰で名を名乗った。

 

 

「突然ですまない、私は堕天使のバラキエルという者で朱乃の父親だ」

 

 アザゼル並の『良い声』をしたゴツいおっさんはバラキエルという者らしい。

 久々にいきなり殴られない挨拶をされたイッセーは少しだけ抜けた声を出している。

 

 

「はぁ、朱乃さんの……?」

 

「あぁ、兵藤誠八君から聞いてな、彼の弟だというのも聞いている」

 

「…………」

 

 

 なるほど、お兄ちゃまがねぇ? と、どうせボロクソに言ったんだろうなぁと思うイッセーだが、先程から凄まじく残る疑問があった。

 

 

(朱乃さんって誰だっけ?)

 

 

 こんなゴツい人の娘だし、さぞかしゴツそう娘さんなんだろうが、生憎一誠は全く覚えがなかった。

  いや、勿論朱乃というのは姫島朱乃の事なのだが、生憎一誠は呼んでも苗字か、最悪ただの先輩呼ばわりだったので下の名前の記憶が抜け落ちていたのだ。

 

 

「えーっと、その……何か用でも?」

 

 

 それなのにこのバラキエルというゴツいおっさんはその朱乃という人物と自分が関わりがあるみたいな事を誠八から聞かされてるらしい。

 一体全体その朱乃さんというのは誰の事なんだと一誠は取り敢えず誤魔化しで話を引っ張りながら記憶を辿る。

 

 

「取り敢えず場所を変えよう。

少しついて来て貰えるか?」

 

(えぇ? ジローとコジローと遊ぶ予定があるんですけど……。てか堕天使のバラキエルって思い出したぞ? 姫島先輩の事かこれ?)

 

 

 その結果一応は思い出せたが、込み入った話があるらしいバラキエルによってジローとコジロー達との時間が潰されてしまった。

 断る事はできなくもないが、このゴツいおっさんの気性がまだわからない内に断りもして半殺しにでもされたらジローとコジロー達と遊ぶどころじゃなくなる。

 結局は弱者は強者に逆らえない運命だったと一誠はトボトボと連行される囚人みたいな気分でバラキエルについていき、人気の無い廃神社みたいな公園に連れていかれた。

 

 

「単刀直入に言う。朱乃に近付くのはやめて貰えるか?」

 

「……………ハァ?」

 

 

 結局ジローとコジロー達の時間を潰されてしまうはめになった一誠がバラキエルに連れられて、廃神社みたいな公園に到着すると、いきなり開口一番にそんな事を言われてしまう。

 近付くのはやめとは何の事だと本気で訳がわからない一誠も思わずこんな声を出してしまうと、バラキエルは続けざまに言った。

 

 

「キミは兄と違って転生悪魔でないことは聞いている。

にも拘わらず我々の事を知り、ソーナ・シトリーや追放された元悪魔祓い達と繋がりを持っている事もな……」

 

「………」

 

「それでだ……その、あまりこういう事は言いたくないが、キミに良からぬ噂が立っているのでな、娘を心配する父親としてはあまり近づいて欲しくないのだ」

 

「……………………………」

 

 

 申し訳無さそうにしつつも、割りとハッキリお前に変な噂が立ってるから朱乃に近づくなと言うバラキエルに、一誠は少し白けた気分になる。

 

 

「それって誰が言ったんですかね? ひょっとしてお兄ちゃますか?」

 

「………………」

 

 

 どうせそんな事を言うのはあの誠八だろうと思って試しに聞いてみるとバラキエルは無言になった。

 その時点で完全に図星だと見抜いた一誠はハァァと大きなため息を吐く。

 

 

「当たりって所ですか? どうせ碌な事は聞いてないでしょうね?」

 

「……キミがソーナ・シトリー達をたぶらかしていると」

 

「あ、そうっすか」

 

 

 相変わらず変な根回しだけは上手いなあの人は……と、もっと別の努力でもしたら良いのにと呆れる一誠。

 バラキエルというゴツいおっさんに自分の悪評を振り撒く暇があるなら、その姫島朱乃をどうにかしてやれば良いのに……と。

 

 それにそもそもバラキエルの認識は間違えているのだ。

 

 

「あのですね、あの人に何を言われたか知りませんが、俺はアナタの娘さんに近づいた事なんてありませんからね?」

 

「何だと? しかし彼は娘がよく戦車と共にキミと話をしていると……」

 

「いえですからね? 頼んでもないのにお宅の娘さんとその戦車って子が構ってちゃんオーラ振り撒きながら居座るだけなんですよ」

 

「構ってちゃん……?」

 

 

 そもそも一誠達は朱乃や小猫を寧ろ、誠八から逆恨みされる原因のひとつとして近寄られるのを嫌がってすらいる。

 それなのにその二人は何がしたいのか、勝手に聞いてもない過去を語ってネガティブになるは、帰れと言ってるのに構ってちゃんになって居座る。

 いくら過負荷だろうが、迷惑なものは迷惑なのだ。

 

 それをあたかも自分から朱乃に近づいて何かやってる様に言われるのは心外だった。

 

 

「第一そう思うならアナタが娘さんに注意でも何でもしたら良いでしょう? 俺がセンパイ――ソーナさんをたぶらかしてる野郎だからやめとけとでも言ってさ?」

 

「それは――」

 

「それをいきなり娘に近付くのはやめてくれ……って言われても知るかよって話ですわ」

 

「…………」

 

 

 だからついつい口調が乱暴に――しかも天性の煽りスキルのせいで喧嘩腰に聞こえてしまう。

 

 

「あぁ、言えないんでしたっけ? おたく、相当娘さんに嫌われてるみたいだし?」

 

「っ!?」

 

 

 その結果、ヘラヘラし始めた一誠の一言に大人としての理性が一瞬完全に消し飛び、バラキエルの腕が一誠の胸ぐらを捕らえ、そのまま吊し上げるように持ち上げられてしまった。

 

 

「貴様……!」

 

 

 心にある嫌な部分を的確に突っつく様な言い方に、ついカッとなってしまったバラキエルは凄まじい形相で掴み上げた一誠を睨む。

 だが一誠は恐怖におののくどころか、寧ろそのヘラヘラした態度をよりいっそう深めた。

 

 

「親子関係が上手くいってないからって俺に当たって解決するんですかね? だったら好きなだけ殴っても良いですよ? 解決できるならね?」

 

「くっ……!」

 

 

 ヘラヘラと何を考えてるのかまったくわからない、誠八よりも小柄で若干童顔の一誠の笑みにバラキエルは顔を歪めながらもその手を少し乱暴に放す。

 

 

「あーぁ、シャツが伸びちまったよ……」

 

 

 だが確かな事はあった。

 誠八の言う通り、この少年に朱乃を近づけさせたら何か取り返しのつかない事になりそうだと。

 何の力も持たなそうな少年だが、バラキエルにはその予感があった。

 

 

「……。事情はわかった、娘には俺が必ず言おう。だからキミは何があっても朱乃に近付かないでくれ」

 

「勿論ですよ! 俺は約束を破らない事に定評があるので、安心してくださいね?」

 

「っ!!!」

 

 

 ニコリと人畜無害そうな笑顔を見せた一誠に、思わず嫌悪感で手が出そうになったバラキエルは必死に拳を握り締めて抑える。

 

 

「親としては俺みたいな人間と関わりがあるだなんて心配ですものね? ええ、ええ、わかりますよその気持ち」

 

 

 だがどちらにせよ、後は朱乃を説得するだけ。

 幸い話のわかる誠八と組めば芽はあると自分を納得させる事で落ち着きを取り戻そうとするバラキエルだが……。

 

 

「だからここで言います!

俺は、俺の大事な人以外がそこらへんで変な獣に食い殺されてしまおうが、助けてくれと泣き叫ぼうが、おたくの娘さんが強くて悪くて変態な男に拉致されてこれからエロい事されるとわかってようが、アナタに言われた通り、絶対に近づきませんよ!」

 

「!」

 

 

 剥き出しにしたマイナスという存在はあまりにもバラキエルの心の弱い部分を嫌らしく突っついてくる。

 

 

「だから安心して説得でもなんでもしてください?

あ、それとアナタも後になって『何で娘が目の前で危険な目にあってるのに助けないんだ!』とか変な言い掛かりをつけるのはやめてくださいよ?

だってアナタが近付くなって言ったんですから? そうなったとしても『俺はまったくもって悪くない。』」

 

 

 無尽蔵の負の感情(マイナス)という未知なる存在はバラキエルの記憶に嫌になるくらいに残ってしまうのだ。

 

 

 

 

 

 ほぼ台無しになってしまったバラキエルとの邂逅も()()に終わった一誠は少し遅れてジローとコジロー達に会いに行き、思う存分戯れた。

 そして家に帰り、ソーナ、イリナ、ゼノヴィアの三人でのんびりしてその日は終わる予定だった。

 

 

「おかえりなさい、そしておじゃましてます」

 

「同じく」

 

「………えぇ? 言った側からですか」

 

 

 だがそうは問屋はマイナスだった。

 家を完全に追い出され、そのままソーナの家に住む様になった一誠を待っていたのは、その構ってちゃん1号と2号……つまり小猫と朱乃だった。

 

 

「おかえりなさいイッセー」

 

「ただいま……あの、何であの二人が?」

 

「勝手に来て、勝手にあがりこんで、勝手に居座ってるのよ」

 

「TVまで占拠されて、おか◯さんといっしょが見られなかったんだ……」

 

 

 さも平然とリビングに居座り、夕方のニュースを見ながらお茶してる小猫と朱乃が何故居るのかを三人に聞いてみると、どうやらまたしても勝手に来て居座りだしたらしい。

 ゼノヴィアが子供向け番組が見られなかったとしょんぼりしているからに、図々しさもどうやらパワーアップしてる模様。

 

 

「はぁ……落ち着く」

 

「何にも考えなくて良いとはこんなに素晴らしい事だったなんて……」

 

「…………………」

 

「ねぇイッセー君? そろそろこの二人ぶち壊しても良いわよね?」

 

「流石にリアスに一言言いたくなってきたわ」

 

「ひとりでで◯るもんまで見られない……」

 

 

 この光景を先程のバラキエルに是非見せたいと一誠は思う。

 

 

「ねぇ、さっきさアナタの父親と出くわしたんだけど」

 

「え?」

 

 

 いや、もう言ってしまえ。

 これを言えばいくら朱乃でも配慮くらいはするだろうと一誠は思いきって先程バラキエルにあれこれ言われた事を話してしまう。

 

 

「ち、父と会った?」

 

 

 一誠が父親と会ったと聞いた朱乃は途端に動揺し始める。

 無論、ソーナやイリナ達も少し驚いていた。

 

 

「な、何か言われたの?」

 

「言われましたね、アナタに近づくなとかなんとか……俺が近付いた覚えなんかないけど」

 

「な……!?」

 

 

 当然父と一誠が会ってたその内容を気にする朱乃に一誠は全部話してやった。

 これで少しは迷惑だと理解してくれるだろう……と、最初は戸惑いを見せていた朱乃に思いながら。

 

 しかし聞いてる内に朱乃の表情は冷たくなっていく……。

 

 

「だから言ったんです、『言われなくてもおたくの娘さんが困ってようが近付かないし、ド変態などこぞの男に拉致られてエロいことをされようが、アナタに言われた通り絶対に近付きません!』ってね」

 

「…………………………………」

 

「まったく、お兄ちゃまがどんな説明をしたかは知らないけど、変な誤解をされちゃ堪らないぜ」

 

「大変だったのねイッセーくん……」

 

「ご苦労様……。

ほら、ぎゅってしてあげるからおいで?」

 

「わーい」

 

「あっ、コラ!? 然り気無くイッセー君と密着するな!!」

 

「それにしても兵藤誠八はどんな説明をしたんだ? それではまるでイッセーが姫島朱乃に近付いてるように取られてるじゃないか」

 

「確かに勝手に押し掛けてるのは私たちですからね……。変な説明はやめてほしいですよ」

 

 

 ちょっとはスッキリしたと言わんばかりに言い終えた一誠がソーナに抱き締められて癒され始める中、朱乃の身体がかすかに震え始めた。

 

 

「? 副部長?」

 

 

 それに最初に気付いたのは小猫であり、ゆっくり震えていた朱乃が静かに立ち上がると……。

 

 

「…………………………………………………………………………………………………………」

 

 

 まるで某負完全が安心院なじみによって蘇ったヒトキチ君を前に浮かべた凄まじい負の表情とほぼ同じ―――いや、なまじ顔が整ってるだけにそれ以上かもしれない迫力の形相に思わず全員が声を殺してしまった。

 

 

「私の生き方まで縛るつもりなの、あの男は……!」

 

「あ、あれ? そういう意味じゃないんだけどな」

 

 

 どうやら変な解釈をしたらしく、完全に実の親父に向かって憎悪しかない感情を示す朱乃に、一誠は困った様に首を傾げながら、然り気無くソーナの胸に顔を埋めた。

 

 

「父――いえ、あの男のせいでとんだ迷惑をかけました」

 

「いやだから、イッセー君が言ってるのはアンタが来るなって事で――」

 

「すぐにでもあの男に話をつけに行きます」

 

「聞いてます? …………リアスもよくこんな爆弾みたいな子を女王にしてたわね」

 

「大丈夫ですわ、即座に縁を切りますから。そうすれば何の問題もありませんわ」

 

「だからそういう問題じゃないと思うのだが――駄目だ、聞いちゃいない」

 

「ふ、ふふ……私と母から勝手に逃げた癖に今更偉そうに……!」

 

 

 完全にメンヘラスイッチが入ってしまった朱乃は、ただ一人くつくつと嗤っている。

 

 

「副部長の気持ちがわかるので、私は寧ろ賛成の気分です」

 

「だからそれはキミ達の中での話だろ? 何で俺達を巻き込もうとするかなぁ。

見ての通りさ、俺もうセンパイ達とこうしてのんびり生きれたらそれで良いのよ? こうやってセンパイに優しくされてればそれで満足なんですよ」

 

「最近妙に多いわよね……はぁ、三ヶ月程前が懐かしいわ……。

誰の目も気にしないでいられたし……はぁ、早くイッセーの子供を身籠って実家から勘当されたいわ」

 

「ふざけるな、それは私だこのやろー」

 

「……。ふっ、どうせ私は友人止まりさ……ぐすん」

 ひたすら怠い。

 ナチュラルにソーナといちゃつきながらイッセーはメンヘラみたいに笑い始める朱乃を見て思うのだった。




補足

悪気はないけど、大体煽り口調になってしまう。


その2
話を聞いた瞬間、クマー先輩ばりの顔芸を発動させるハーフっ娘ちゃん。
尚一誠はこれを期にもう来るなと言ったつもりだったのに逆効果だった模様。

その3
ちなみに話してる途中でソーたんにぎゅってされててナチュラルに胸を顔でぐりぐりやってたらしい……。

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