が、此処で『親しみを込めて安心院さんと呼びたまえ』な人の一京スキル発動で一誠の下半身が復活するが、何故か服は戻らず…………というあらましの基スタートです。
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ぼーっとする頭の中に、例のセーラー服女が言ってた通りに様々な情報が勝手に流れ込んでくる。
この世に蔓延る悪魔やらその他人外。
人を越えた知識や力を持つ存在。
人でありながら人としては欠陥品とも言える存在である
そして俺は……。
「間違いなく死んでいた……。
下半身も無くし……本当に一誠くんなのかも判別出来ない程に血まみれだったのが、何故か今こうして消えた下半身と共に『いつの間にか何事も無かったかのように再生し』生きている」
「……………」
「……。いえ、この際その事はどうでも良いんです。
本当……本当に良かった……」
あの廃屋での復活し、その場に何故か居たセンパイが喰われて失った下半身と共にこの世へと舞い戻った俺を泣きながら抱えて連れられたこの場所は……そう、去年のクリスマスに来た事があったセンパイの家だ。
あの女の言ってたサービスとはこの事なのか、復活した俺の身体は少々の傷を負った程度のダメージ間で修復しており、失った身体も元に戻っている。
なるほど、こうして現実を知れば知るほど、とことん出鱈目な女だと今更ながら再確認させられるぜ。
「気分はどうですか?」
「…………」
足がある感覚もどてっ腹貫かれる直前の頃と全く同じな事を、センパイの家のリビングにあるソファに薄いタオルケットの下で確認している俺に、何故か知らないけどずっと泣いていたセンパイが具合の調子をしきりに聞いてくる。
この人もあの化け物と同じ存在な事も既に知った今、ハッキリ言って信用が全く出来なくなっている。
しかしながら、ボロクズの血まみれで、普通なら触りたくもないモノへと成り果てた筈の汚い俺を、全く意に返さず抱えて此処に運んでくれたのも事実だし、まあもしかしたら血だのスプラッターだのの耐性が悪魔故に見慣れているってだけなのかもしれないが、いくら馬鹿な俺でも今センパイが向けている顔が、マジで俺を心配しているという事くらいは分かる。
それに、あのセーラー服女曰く『そこら辺で勝手に落ちぶれたはぐれ悪魔と純粋な悪魔は一応違う』との事らしいし、奴の言葉を鵜呑みにするつもりも無いが……これまでセンパイに世話になった事実はちゃんとある。
だから俺は…………。
「ちと身体は痛いですが……まあ平気っすね」
たとえ裏切られるとしても、センパイだけは信じてみたい。
それが俺の答えだった。
なぁに、裏切られるのも失うのも
「そうですか……良かった……」
「心配掛けたみたいですね……はは」
安堵する表情で笑うセンパイに俺も同じく笑う。
この顔も俺を食いそびれる事も無くて安心したという顔では無い……俺はそう思う事にした。
というか、こんな顔で人食家ってのがイメージ出来ねぇんだよな。
「……。さてと、どうやら俺もセンパイも互いに話さなきゃならない事が多く出来たみたいですね」
そんな事よりも、まずはこの現状を互いに理解しないといけない。
俺はセンパイが悪魔である事を知った上で生きなければならないように、センパイは俺が何故自力で蘇生したばかりか失った身体まで復活させたのかという理由を知らないとならない。
そうしないと俺はセンパイに対して不信感を抱かせてしまうからだ。
「……。そうですね……」
その考えはセンパイにもあったらしく、深刻そうな顔で頷いて見せる。
うむ、普段は感情で動くタイプじゃない人だけに、こういう時はスムーズで助かる。
「流石、話が早くて助かりますね……支取蒼那――――あ、いや……ソーナ・シトリーさんでしたっけか? 本当の名前は?」
「っ!?」
だから俺は一気に確信を突いてやる。
あの女から貰った荒唐無稽な知識から引っ張り出したセンパイの悪魔としての本名を脈絡無く口にすることで反応を確かめる。
すると案の定、センパイの顔は『何でその名前を?』といった感じの、驚愕に満ちた表情に変わる。
まあそりゃそうだわな。
俺は彼女からすれば只の一般人で彼女の本名も人間でも無い事すら知らない筈の奴だ。
それが急に本名で呼ばれたら例え悪魔だろうが、例外無く少しはビックリするに決まってる。
「私……一誠くんにその名前を教えた事がありましたっけ?」
「ないですよ」
「なら、どうして……」
「あの化け物――っと失礼、はぐれ悪魔とやらに喰い殺された時に知りました」
あの化け物とセンパイは皮肉にも同種なので、流石に化け物呼ばわりしたら失礼かと訂正しながら『嘘では無い事実』をそのまま伝える。
が、それだけではやはりセンパイも納得する訳が無く、俺に本名を呼ばれた事に対しての驚きがまだ残った状態で怪訝そうに顔をしかめている。
「分かりません……。
あのはぐれ悪魔が私を知っており、名前を一誠くんに教えたとしても、何故私がソーナ・シトリーだと断定出来たのが……」
「出来るさ……だって教えたのはそのはぐれ悪魔とやらではなく、死んだ後の夢に現れた変な女なんだもの」
「……。はい?」
人に説明するってのも難しいものだ。
今俺が何気無く言った事に対してポカーンとしているのを見てよーくそれが分かる。
「夢に現れた女の人……ですか?」
「そ、夢……。
死んだ先の意識の中に居た長い黒髪の変な女に全部教えて貰ったんですよ。
この世には人だけじゃねぇ……様々な人外生物がいるってね……」
「…………」
取り敢えず納得云々前に全部話してしまおうと、かなり無理矢理に話を進めるせいで、いよいよセンパイの顔が俺の頭の心配の顔となっている。
まあ仕方無い、俺だって自分で言っててワケわからないもの。
「は……まあ、こんなアホ過ぎる話を信じるってのも無理な話かな……」
「ちょっとだけ話が飛びすぎて整理が上手く付かないだけですから大丈夫です。
私は……一誠くんの言った事すべてを信じます……」
ヘラヘラと笑う俺に、センパイは真面目な顔で言った。
どうやら信じないのでは無く、信じようとしているらしい……。
ホントにいい人だよ……アンタは。
「その黒髪の方のお陰で、言えなかった私の秘密を知ったのは分かりました……少し気に入りませんが」
「え、何で?」
「……。だって……その女の人と二人だったなんて……何か嫌です」
最後の方の声が小さくて何を言ってたのか聞こえなかったが、どうやら俺がセンパイの正体を知った理由を取り敢えずは納得してくれたみたいだった。
少し怒ってるのが気になるがな。
「その女の人は今何処に?」
「さあ? 何せ夢の中ですからねぇ。
現実に存在するのかも果たして……」
「……。なら良いですが……。
私もその人とお話がしてみたかったから少し残念かな……」
「はぁ……」
妙にセーラー服女を気にするセンパイに俺は首を傾げる。
まあ、確かに悪魔云々をよく知ってる謎の存在と考えたら気になるのも仕方無いが、何で機嫌が少し悪いのかがよく分からん。
あの様子からして、セーラー服女が何かアンタ等にするって様子は無かったしな……ほっといても害なんて無いと思うぜ…………とまあ、借りを返すつもりでセーラー服女のフォローをしたら、ますますセンパイの機嫌が悪くなっていく。
「やけに庇いますね……その女の人を」
「え……いや別に庇ってるというか、センパイが一々気にするような女でも無いんじゃね? と思ったんで……」
「ふーん?」
「な、なんすか……」
気付けばセンパイの俺を見る目がじと~っとしたものになっており、微妙に居たたまれない気分になってきた俺は咄嗟に話をすり替えようと話題を変えた。
「え、ええっと……取り敢えずその女から全部を聞いてセンパイの秘密を知ったって事で、次は俺がこうして失った筈の身体を持って生きている理由を」
「あ……それは確かに気になりますけど……まさかそれも例の女の人の力、ですか?」
「え? え、あー……一応そうですかね。
まあ、これに関してあの女は切っ掛けに過ぎませんが」
「どういう事ですか?」
あ、食いついた。これで話を何とかすり替えられる。
此処で上手いこと納得して貰えれば、ミッションコンプリートだ。
あの女のお陰で目覚め始めてる俺の
幸い、人間には
「先に力の名称を言わせて貰いますが……
「リアリティー……エスケープ……? マイナス……?」
あの女の力によって、米粒程度でしか無かった俺の
それが良いことなのか悪いことなのかは俺には分からないし、この力だって果たして使う時が来るのかどうかも知らない。
今ある
「マイナスとは? それは
「いえ、ソレとは全く関係無い別の力ですよ。
そんな
神器と一緒にしちゃあ、神器に怒られちゃうぜ。
誰も得なんかしない力こそ……
「なら一体……。
その力で一誠くんは今こうして五体満足で生きているというのは間違い無いので私は信じますが……出来ればどんな力なのかを知りたいです……」
「良いでしょう。センパイになら何でも教えますぜ」
どうやら普段の付き合いがあるお陰で、結構信じてくれているっぽく、既に俺に変な力があるって前提で質問をしてくる。
だから俺は正直に言う。
センパイにだけ……俺の持つ
そして――
「で、あの……俺の服は?」
「ありません。発見した時の一誠くんは下半身をはぐれ悪魔によって失い、大量に出血してましたからね……残った上半身の所の服ももはや着られる代物じゃあ無かったので捨てましたよ」
センパイは俺のマイナスを知り、俺を信じてくれた。
力のこと……マイナスという人種の事全てを。
そしてそれでもセンパイは……全く変わらず俺を信じてくれ、今はすっかり何時もの調子となった。
「だから全裸なんだね……。チッ……こうなりゃ現実逃避でもして――いやダメだ。
まだ目覚めたばっかで加減が分からないし、取り返しのつかない事になるかもだから使えねぇ……。
でも服着ないと帰れないし……うぬぬ」
「だったら今日は此処に泊まっていってくださいな。
明日の朝までには服を用意しますから……ね?」
「え? いやぁ……それは……」
タオルケットの下は全裸だったりする俺に、センパイは嫌に微笑みながら何て事無いぜとばかりに言うが……いくら俺でも深い関係でも無い女の人の家の中で全裸で居るなんて真似は流石に恥ずかしい。
だけど服を用意出来るのは現状センパイのみであり、そのセンパイは明日の朝までには用意するから今日は此処で寝ろと言っているので、今は外に出ることが出来ない俺にはどうすることも出来ない。
「ふふ……一誠くんの事も更に知ることができましたし、私の秘密も知って貰えた……。
まあ、その黒髪の女の人経由ってのは少し気に入りませんが……」
「いやだから服……」
「むぅ、良いじゃないですか朝までそのままでも。
ああ、もしかして寒いとか? それならくっついて一緒に寝ますか? 私は全然構いませんよ?」
ニコっと……何故か頬紅くして全身を隠してソファに横になる俺に向けて言ってくるセンパイに頬がひきつった。
いや、だって何が良いんだよ……全然よかねぇっつーか……冗談でも全裸野郎にくっついてやろうと言うなし。
びっくりするわそんなもん。
「い、いやいい……結構ですから服だけ……せめてパンツだけでも買って来てほしいというか……」
たまに変な時がセンパイにはあるんだが、俺は初めてこの時背筋に悪寒が走った気がしたのを誤魔化すつもりで、下着だけは何とかしてくれと要求する。
するとセンパイは、それまで頬を染めながらの笑みから、何処か不満げな顔に変化させた。
「む……まあ確かに全裸のままってのも不健康ですね。わかりました、今買ってきますね」
「あ、ありがたき幸せ……」
よかった……いくら馬鹿でも他人の前で全裸は流石に恥ずかしいので本当に良かったと、財布を手に持っているセンパイに向かって何度もペコペコと頭を下げて感謝した。
「あ、そうそう、関係ないですけど……私、一誠くんの全部を文字通り見ちゃったので、いつか責任をとってくださいね?」
「は?」
そんなこんなで身動きとれずの夜を迎える事となったという以外は何とか無事に終わらせる事が出来た。
ただ、俺のパンツ買いに行こうとリビングを出る直前、物凄い良い笑顔でそんな事を言われた意味がワケ分からんかったがさ……。
次回は…………不器用なイチャイチャお泊まり回か、はぐれ悪魔始末し損ねたグレモリーさんが、現場にあった血痕から一誠と断定し、何でピンピンしとるのかと問い質す回かのどっちかです。