私とゼーリエは《冷気を防ぐ外套》を
そして侵入した角付きであるが、魔力量はかなりのものだ。“賢者の石(仮)”を取り込んだ私には届かないものの、ゼーリエに近しい魔力量を有している。
それに加えて強大な魔法を行使出来るとなれば、非常に厄介この上無い。出来れば私は
例え戦闘へ特化した魔法を持ち
「所でエトワール。私は角付きの魔力を感じないと言うのに、なぜお前は分かるんだ?」
「最近改良を施した結界によるものだ」
以前ゼーリエが結界を抜けて来た時より幾度か改良を
次に外側に展開している《違和感なく特定の場所に近づかない魔法》には、結界内に踏み入った対象を私の脳へと直接報せる仕組みを組み込んだ。
当初はゼーリエも魔力探知を使用出来るように作ろうと考えたのだが、想定以上に時間が掛かる上に魔導具への負荷許容量をオーバーしてしまい永続的な維持が不可能になってしまう。
とは言えあと20~30年時間があれば完成する…のだが、なんともタイミングの悪い者たちだ。
「お前と言う奴は…一言くらい言っておいて欲しいな」
「はっはっはっ済まんな。しかし君の事だ。魔力探知など無くてもどうにでもなるのではないか?」
「当然だ」
「それは何より」
一言二言交わしながらも、私たちは角付きのいる場所へと向かう。
私の考えでは角付きは魔物の進化型、もしくは魔力の集合体だ。もしこの仮説が適応されるのであれば、角付きに取って天候に於ける有利不利は存在しないだろう。
対して此方は魔導具が無ければ凍死しかね無い状況…アドバンテージは圧倒的に敵方が上か。
逆に此方の有利を挙げるのであれば、地力の魔法の手数と言ったとろか。
ゼーリエから聞いた情報によれば、角付きは一種の魔法以外は使用しないらしい。それが事実であれば例え戦闘経験のない相手であろうとも、対処は容易だ。
などと思考を
「…居るのだろう?出てきたらどうかね?」
「おい馬鹿か?何考えてる。不意打ちをすれば良かっただろ。その方が手っ取り早く済んだ」
「それでは魔法が見れないだろう?私は探究者だ。知りたいと思った事はとことん知る
そんな私の呼び掛けに対して、応えるかのように2匹の角付きが姿を現す。
1匹は女の角付き。左腰に剣を携えている。魔法使いと言うよりかは戦士の類だろう。
もう1匹は男の角付き。こちらは女と違い剣を持っていない。当たりは男の方か。
出来れば殺したくは無いな。殺さず会話でどうにか出来ないものか?平和的に行けるならそうしたいものだ。確かめたい事が幾つもある。
「まさか、人間とエルフが居るなんてね」
「同感。それにこの森に入ってから魔力が見えない。きっとアレのどちらかの仕業だ」
「だよね。ならアイツら殺せば解決だね」
私達の目の前で
ひとまず今は目の前の2匹で我慢をするしかないか。
「ゼーリエ、1匹ずつといこう。私は男の方、君には女の方をお願いしたい」
「面倒な方を押し付けてくれるな」
「負けてしまうかい?」
「負けるとは一言も言っていない。あの程度は何匹も倒している」
「ふむ。それは安心だ」
「なに?貴方達、私達に勝てるつもりなの?」
「当然に決まってだろ」「はてどうだろうか?」
「「……」」
私とゼーリエの意見が僅かながら別れた。
仕方が無いだろう?私は戦いが苦手なんだ。勝てるかなどと問われて自信満々に『当然だろ』と言えるわけが無い。
「人間。俺を舐めてるな?」
「そんなことは無いとも。私は単に無駄だと思っているだけだ」
「それを舐めると言うんだ。《
「まずいな」
男の方が魔法を口にした途端、雪が、天候が、森全体が意志を持ったかの如く暴れ始める。
私とゼーリエは標的を二手に分けるように分散する。
私の予想では角付きは
「平和的に行きたいのだが」
「無理だな」
「嫌になる。私は楽しむ為に魔法を使いたのだけれどね。無用な
「!」
私の放った魔法が角付きへと飛び爆裂音を響かせる。大抵はこの魔法で終わるのだが、角付きは木々を操りそれを
吹雪の中うっすらと見える角付きには一つの傷もついていない。
魔力・魔法・技術・才能。
どうやら角付きには見事なまでにこの四種が
「なんだその魔法は」
「単なる魔物を殺す魔法さ。実に便利でね。魔力の消費が少ない。それでいて威力も高い。君には効かないようだが」
「あぁ。残念だったな」
吹雪が動きを変える。先程までただ強く吹いていた雪が、私の身体に巻き付くように襲い掛かる。
これは防御魔法を使用したとしても質量で突破されるな。これだから戦いは嫌いだ。
私は痛い思いはしたくない。殺すという勿体無い事もしたくない。目の前の角付きには言葉というものがあるのに、なぜそれを使わない?知性を持ち合わせながらもそれ程に高くないのか?面倒な者たちだ。
全く嫌になる。これが角付きか。少しばかり──
──面白味に欠ける。
「《
「ま、」
「…はぁ…疲れるな」
軽く目を
意志を持ったかの如く暴れ狂っていた木々や雪、その元凶たる角付きまでもが美しく氷像へと化している。
「言っただろう?戦いは苦手なんだ。加減がよく分からない」
▼△▼△▼△▼
(side.ゼーリエ)
エトワールと別れた後のゼーリエは女の角付きと戦闘を繰り広げていた。
なるほど。
ただの戦士かと思えば中々に面白い魔法を使うじゃないか。斬撃を飛ばすと言うよりかは切断する刃を飛ばしてきているな。
「貴女。逃げてばかりね」
「なに。興味深い魔法だから見ていただけだ。《
「!」
(体が動かない…)
先程まで
それを確認したゼーリエは角付きへとゆっくり近づく。すると遠くから甲高い鐘の音が鳴り響いて来た。
エトワールの奴が勝ったか。アイツめ…何が戦いは苦手だ。
「あっちは終わったみたいだぞ?」
「待って。ごめんなさい。もう誰も傷つけないわ。だから許し──」
「《
ゼーリエは角付きの命乞いを無視し魔法を放った。それは角付きの身体を貫き、角付きは
「何を言うかと思えば…許すも何も無い。お前は魔物だろ?生かす理由は無い」
▼△▼△▼△▼
(side.エトワール)
存外
正直あそこまで話が通用しないとは思いも寄らなかった。魔法に関してももはや面白味を感じられない。アレは私にでも出来る。他の角付きがどうかは分からないが、少なくとも興味は薄れたな。
「お前の事だ。生かしておくと思ったんだが」
「致し方なくと言うものだ。さて、素材を取る暇もなく消え去ってしまってはやる事が無い。帰って食事をしよう」
「そうだな。博士がまた怒る」
そうして角付きを倒した私達は家へと戻った。
今回角付きと戦って思った事は、非常に面倒臭く関わりたくない。話が通じない、戦闘に関する才能は有っても使う魔法は私も使えるものであった事。
何処かに私の使えない魔法を使う者が居るかもしれないが、今暫くは様子見でいいだろう。
「戻ったぞ。博士」
「にゃ〜」
「魔導具を
「に、にゃ…シャァーッ!!」
ゼーリエが博士へと抱きつけば、これでもかと威嚇をし抵抗する。幾ら魔導具を纏っていたとは言え手は冷え切っているからな。
博士の反応は正しいか。
「はっはっはっ。あまり博士をいじめてやるな。ほら。今日はシチューだ。ゼーリエ、手伝ってくれたまえ」
「悪いなエトワール。今日は疲れたからパスだ」
「ふむ。それは残念だ。手伝ってくれたら菓子を出そうと思ったのだが」
「任せろ。私にできないことは無い」
「流石ゼーリエだ。さ、作るとしよう」
▼△▼△▼△▼
今回相手にした角付き共は実に面倒だった。だが人間と角付きでは魔法の使い方が違うの事も解った。
人間は魔法をイメージとその構築が必要となってくるが、角付きはそれらを必要としない。まるで手足を動かすのと道理だ。
この面で言えば、角付きと私は少しばかり似ているか。生前の知識と
そして同様に角付きの有する魔法も人間には行使できない…イメージの出来ない代物だ。
角付きは非常に面倒な者達だ。
言葉は話すがそれに感情は
矢張り角付きは魔力で出来た存在なのだろうか?もしそうなのであれば
そもそも魔力体ならばどのようにして産まれる?もしや自然発生によるものだろうか?もしくは生殖機能は保持している?気になるものだ。面倒だからと言って殺すべきではなかったか。
次出会った時は必ず捕獲するとしよう。
厄介者達だがこう考えると矢張り面白い。
また興味が湧いてきた。