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あの日以降、この森へと侵入してくる角付きは一匹として居ない。強力な魔物は何度か侵入しては居るものの、それらはゼーリエが魔法の実験台として
つまりここ最近の森は非常に安定し安全という事だ。しかしそれはこの森の中でだけのこと…今現在、
鳥の目を利用してではあるが、外界にて強力な力を保有した魔物が大多数
角付きにとって主食となり得るのはどうやら人間
とは言え人間にも化け物じみた戦士が居るらしく、対応は充分に追いついていると見える。出来れば内数匹の角付きを此処へと引きずり込みたいところではあるのだがね。
しかし人間・エルフ・ドワーフの三種族が無差別に襲われているのに何故、角付きのことが話題へと挙がらないのかと思っていたが…大抵は殺されるか言ったところで気にも止めていないようだ。これでは広まるものも広まらないと言うものだな。
それから外界で闊歩する角付きだが、どうやら以前侵入した角付きよりも強力な個体がそれなりに居るようだ。
もしかすれば角付きの王でも誕生した可能性もあるのだろうか?
角付きの王ともなれば、私の知り得ない魔法を有しているかもしれない。とは言え旅に出る気にもなれないのだがね。
正直に言ってしまえば面倒臭い。
飽きれば《記録した場所へ飛ぶ魔法》を使用すれば良いだけなのだろうが、魔力の消費が馬鹿にならない。
それに角付きの王が存在しない可能性の方が高い。リスクが合わないな。
それに以前戦った時は私の結界内だったが故に魔法を多少加減することが出来たが、外界ではどうなるか想像が付かない。
最悪災害のように世界を襲ってしまうかも知れない。幾ら私とて感情はある。無実の者を殺せば申し訳ないと思う。
「ままならんな…」
矢張りこちらから出向くのではなく、彼らに出向いて貰うのが一番か。対処も処理も楽に済む。
魔法で誘い込めないのであれば、何らかの囮を操り
そのように考えていれば、ゼーリエが2階から降りてくる。
「エトワール。《魔物を殺す魔法》を改良した。少し付き合ってくれ」
「魔物で試せばいいのでは?」
「これは防御魔法が使えるものでなければ意味が無い」
「それならば仕方がない」
運が良い事に今日は雲一つない夜だ。
魔法を使うには打って付けの日だな。まぁ天気が悪ければ操り晴れに変えてしまえば良いのだが、私は自然の流れを楽しむ派でね。
さて、魔法を試すのは家から少しばかり離れた場所で行う。ゼーリエの改良したと言う《魔物を殺す魔法》はその名の通り魔物を殺す事に特化した魔法だ。
それを一体どの様に改良したのか、実に楽しみだ。
「撃つぞ」
「何時でも構わなないぞ」
「《
「!」
(これは…)
瞬間、月の照らす世界に真っ赤な血が舞う。
ゼーリエから放たれた銀色の魔法は、エトワールの防御魔法を軽々と貫通し右腕を吹き飛ばした。
今の魔法は実に面白いものであるな。
私の展開していた防御魔法は《魔法を反射する魔法》。
だがゼーリエの放った魔法はそれを無視し綺麗に穴を開けた上、私の右腕
現状私の有する魔法の総数は膨大だ。故に当然似通った魔法も存在している…だがこれ程までに美しく洗練された、命を奪う
これは正に、戦う者であるが故の魔法。
もはや《魔物を殺す魔法》とは全くの別物と言ってもいい。
「素晴らしい。防御魔法に必須な構築箇所を乱し
「初めてだな。お前が私の魔法を褒めたのは…しかしそうも簡単に見破られるの悔しいものだ」
「そうかい?私は以前から君の魔法は素晴らしいと思っているよ。さて、私も頑張らなくては…《
突如放たれた魔法により、辺り一帯が
その攻撃に対してゼーリエは
何時もならばこのような乱雑な魔法は使わないのだが…これから手合わせする相手は彼女だ。当然本気で来るだろう。
であれば、こちらも相応の態度を以って挑まなければな。
「よく避けられるものだ」
「ギリギリだ。それに無理矢理避けたのは分かるだろ?」
「油断しているのが悪い…君のよく言う言葉だろう?どうする?まだやるのかい?」
「当然だ」
瞬間、2人は一切のズレなく同時に魔法を放つ。互いに使用するのは中遠距離攻撃魔法。
エトワールは《
傍から見た光景は美しい物だろう。
私の放つ金色の魔法、ゼーリエの放つ銀色の魔法。それがぶつかり合った瞬間に雨の如く降る魔力の粒子。
雲一つない夜空であるが
だが撃ち合っている側はそういう訳でも無い。
互いに放つ魔法は防御魔法を意に介さない理不尽な魔法だ。上手く避けるか身体の一部を犠牲にしすぐさま復元し体勢を立て直すかだ。
これが本当の命の奪い合いであったのならば他の魔法も使用するだろう。しかし今行っている撃ち合いは自身の魔法を楽しく使う時間だ。その中で本気の魔法を使用するのは
「チッ」
(エトワールめ。ここ百年で何となく感じてはいたが、これ程までの化け物だったか。押し切られる)
「どうかしたのかい?表情が辛そうになってきているぞ?」
「ほざけっ!」
ゼーリエの辛そうな状況に対して、私は煽るように発言をするが負けじとそれに言い返してくる。
今の戦況はやや私が
このまま撃ち合いが続けばどちらに転ぶかはまだ分からない。しかし私もゼーリエも長引かせるつもりは無い。次の一撃で決まるだろう。
「《
「《
同時に放った魔法は互いの中間で衝突し、目を
最後に立っていたのはエトワール…では無くゼーリエであった。最後の最後でエトワールは加減を
その結果として、ゼーリエの放った魔法がエトワールの魔法を弾き消しそのまま左肩を貫いた。
「最後。お前が手を抜かなければ私の負けだった」
「さぁ、それはどうだろうか?私は戦いが苦手だ。本気を出しても負けただろう」
「…そうか」
私は今の戦闘によって負った負傷を、《身体を復元する魔法》を使い完全に元に戻す。
ふむ。分かってはいたが矢張りゼーリエの戦い方は上手い。流石にと言った所か…私とこうも戦い方が違うとはな。これはこれで勉強になった。
この先やむを得ず戦いとなった時に参考とさせてもらうとしよう。
「戻ろうか」
「あぁ。今日の食事はお前が作るんだな。勝ったのは私だ」
「仕方がない、敗者は勝者の言う事に逆らえないからね」
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私たちが森の中で魔法の研究をしている間、外界は更に酷い状況へと陥っていた。
角付きは減るどころか増える一方…正直多少なりとも死に絶えるかと思っていたが、想定よりもしぶといようだ。強者と部類に入る角付きは単独行動、もしくは2匹かそれ以上での行動をしている。
角付きでは無いが、強力な力を持った魔物は自身の
被害の面で見れば大幅な上昇だろう。
何やらそれらの魔物を討伐する為に、勇者と名乗る人間や英傑と呼ばれる者たちが対処に当たっているようだ。だが最終的には強力な角付きによって殺されてしまっている。
哀れな事に、その死さえも強力な魔物の仕業という事になっている。早く角付きのことを理解しなければ、
それに角付きの間で魔王と言う言葉を耳にした。
魔王…言葉通りならば魔物の王もしくは魔法や魔に関する王なのだろうが、どうやら一部の角付きは反抗の意を持っているようだ。
しかし私個人としては非常に気になる…が、関われば間違いなく面倒な事になるだろう。となれば関わらないに越したことない。
だが迷宮という物には興味がある。噂では魔導書や魔導具といった代物が眠っているらしい。
迷宮の主も特殊な魔法を使うと言う。これは近くに迷宮が現れたら行けば良いだろう。
「エトワール。どうかしたのか?」
ソファーで寝ていたゼーリエが目を覚まし、そう尋ねて来る。
「どうやら外が非常に面白いことになっているようでね」
「なんだ?旅にでも出るつもりか?」
「いいや、旅に出るつもりは無いよ。出るとしても、あと千年か二千年後だろう」
私はまだまだ此処に引き籠もり研究したい事が山のようにある。
故に今直ぐ旅に出ずとも良いのだ。それこそ千年以上先でも問題は無い。角付きが滅びそうになった時にでも、旅を始めるとしよう。
流石に今の素材では限界が近くなっているからな。それに角付きが減少し始めたら10匹程度捕まえておきたい。
「さて。私は博士と散歩に行ってくるとする。朝食は作ってあるからゆっくりと食べるといい」
「あぁ。ありがとう」
「ほれ。博士行くぞ」
「んにゃ〜」
それに、私は何気にこの生活が気に入っている。この何ともない日常、生前では味わえなかったものだ。
無理に旅に出る必要は無い、今はただこの生活を送るだけで満足だ。