死体…もしくは生きた人間を用いた実験は古くから
意志を持つ者を利用するのは非人道的である。
意志を失った身体を利用するのは
と古き時代から考えられている。
なんとも優しい事だろうか…私はそんな心を持つ者達に、心から
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──
どうやら近頃、子供の角付きが人間と共に小さな村で共生しているようだ。これはとても興味深いことだ。今までの角付きは他種族であれば
にも関わらず突如として現れた特異な角付き。なぜ感情を無くしてそのような思考に至ったのか非常に気になる。
村の場所はこの森を出て半日程度の位置にある。このまま角付きの子供がどう言った方向に成長するのか、観察対象としては打って付けの子だ。
出来る事ならば確保したいものだ。けれどあの子は村の子達と楽しく暮らしている。流石にそれを邪魔しては可哀想だ。
もう暫く待ってみるとしよう。
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残念な事に例の子供は村人を全員殺してしまったようだ。矢張り角付きにとって殺しは生きる
だがあの子は私たち人間に歩み寄ろうとした。それは共に共存するための意志か、それとも人を騙し殺す為の進化なのか。
どちらにせよ生きることへ
後はあの子を捕獲して調べれば良い。
「博士、私は少し出掛けてくる。ゼーリエが起きてきたらそう伝えてくれ」
「にゃ〜」
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森を抜けて暫く歩いた場所にある小さな村。
つい昨日までは魔物すら襲って来ない平和な村であったと言うのに、今では誰一人として生きていない。そこにあるのは元人間だった物と、その中に立つ一人の子供のみ。
成程、あの子の魔法は中々に面白い。魔法自体は非常に単純なものだが、その構築内容が変わっている。
これは単純な魔法の効果では無く、通常の魔法に強力な呪いの効果を含んだ魔法だろうか?
確かに、これは人間では真似が出来ない魔法の類いだ。ゼーリエの言っていた事がよく分かった。
どうかこの子に話が通じる事を祈ろう。
「この魔法、人を宝石に変えるこの魔法はとても美しい。これをやったのは君だろう?」
「最初は人を分かろうと思ったんだけど、やっぱりダメだった。よく分からないや」
矢張りこの子は今までの角付きとは違うようだ。無闇に攻撃してくる事が無く、言葉を解することが出来る。
本能で生きるのではなく、確立した思考に近いもので生きている。
この子は特別だ。次世代の角付きとなる可能性を有した初めの一匹だ。なるべく傷付けずに確保したい。
「君は何故、人を知ろうとしたんだい?」
「さぁ。自分でも分からない。何となくだよ」
「素晴らしいことだ。魔物が人を知ろうとしたのは君が初めてだろう」
「そうかな?でもやっぱり、僕は人を殺したい。魔物だからかな?
《
「おや」
角付きが魔法を行使すると、身体が少しづつだが宝石に変わり始めた。これは本質から変えてしまう程の魔法なのか。これはまずい、強力な呪い型魔法では済まない。
いや、《呪いを無効化する魔法》や《呪いを反射する魔法》が効果を発しない時点で呪いとは別の代物か。魔法を見間違えたのはこれが久しぶりだな。
だがなるほど。
角付きとは言えまだ子供の部類に入るであろうに、なんとも
多方予測するに、対象が生物であれば魂へと干渉しその在り方を宝石へと書き換える…非生物であれば有無を問わずと言ったところか。
凄いものだ。
魂への干渉は未だその全容を把握しきれていない。私が行えるのは精々が姿の変容と寿命の延長…前者に
だがこれは違う。自在の変換に加え保管の機能も有している。つまり死ぬことが無い。これはなんとも欲しい子だ。
「どうするか………《
「!…あれ?」
先程まで目の前に立っている敵に使用していたはずの魔法が、自身へと返って来たことに角付きは首を傾げる。
「ふむ…」
即席で作った魔法だが中々に悪くないな。
根源への干渉であるが故に反射・無効化が出来ないのであれば、干渉してくる効果そのもの自体の対象を入れ替えてしまえばいいだけだ。
簡単に言えば、私が角付きに宝石化の魔法を行使したということにした。
「お兄さん。人間なのは見た目だけなんだね。中身は僕らと一緒だ。いや…寧ろ酷いのかな?」
「それは済まない。これから努力して行くつもりだよ」
「──“嘘つき”」
「酷い言葉だ。私は嘘など吐かないのだがね」
軽く会話をしている間に、子供の角付きは全身が宝石へと変わってしまった。
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私は宝石へと化した子供を小さな小屋の中へと運び入れる。この小屋はゼーリエにバレると面倒な事になりかね無い
ひとまず角付きを台座の上へと寝かせる。
そして事前に《眠りの魔法》を掛けておき、角付きを覆う宝石を別の死体へと移す。
矢張り私の考えは合っていたらしく、この子は魔法に魂の書き換えを受けたのにも関わらず問題なく生きているようだ。
もし《眠りの魔法》を掛けていなければ、間違いなく襲って来ただろう。
さて。
私が角付きについて知りたい事は幾つかあるが、最も気になっているのはその繁殖能力だ。今現在、外界に生きる角付きの数は大多数だ。
時折空気中の魔力から生まれ落ちるのを目にすることがあったが、あれでは今の数に至ることは有り得ない。
となれば可能性として彼・彼女らには人間同様に生殖機能を有していると考えるべきであろう。
しかし角付きには愛などと言う感情はまず無い。繁殖を行っているのならばそれは本能からの生存が
だがその考えもこの子の出現によって多少なりとも揺らぎ始めると言うものだがね。
もしもの可能性としてではあるが、この子以外にも僅かながらの感情への理解を求める個体がいたとするのならば、愛を知ろうと行為へと及んだとしてもおかしくは無い。
寧ろそうであるのならば嬉しい限りだ。
無論。
この子が特に異質であり、
「さて。それでは始めるとするか」
私はハサミを手に取り角付きの服を脱がす。
「おや。男の子かと思っていたが…女の子だったとは、悪い事をしてしまった。しかしこれは私の進化に必要な
どうやら生殖器は女性のそれで間違いは無い。
角付き特有と思われる箇所も見られない。
切開をしなければ全容が解らないが、人間と大差は無さそうだ。切開後は復元の類いの魔法を使用すれば問題無い。
次に私はメスを手に取り、角付きの腹を開く。
角付きから出てきた血の色は人と同じ赤色だ。匂いも同じ。
続いて
当然と言うべきかは分からないが、胃もあるようだ。形に変わりはない。
心臓も人のそれと
子宮も
これならば角付き同士による
私は魔法で開いた腹部を元に戻し、今度は脳へと取り掛かる。
脳に関しての知識はあまり持ち合わせていないが、ある程度は理解出来る。
腹とは違い脳は厚く形成された
どうやら脳の方に関しても、臓器と同じく人と変わりは無い。これ以上脳を調べることは無いと判断し、ゆっくりと元に戻す。
角付きの意識はまだ正常だ。まだ問題は無い。
角付き特有の魔力は矢張り魂そのものからか。
魂に関してはその殆どが不鮮明だ。とは言え、調べなければ始まらない。
倉庫にしまってある幾つかの魔導具を用意し、彼女の周りへと並べていく。
古典的な物だと思うかもしれないが、こう言った概念に対して最も有効なのがその古びた儀式になる。
そこに魔法を使用すると、彼女に纏わる魔力に色が付き始めた。魔力の色は魂の色そのものだ。
通常、人間やエルフやドワーフそして角付きの魔力に色は無い。強い白、もしく透き通る透明なものだ。これは不純物が混ざっておらず、正常に魔力と言うものの全てが機能していることを示す。
しかしこの子は全く違うようだ。
魔力が何処までも暗く
吸い込まれそうな
であればこの子は本来
下手に手を出して悪影響を受けてしまえば、最悪私が死んでしまうな。
とは言え魂の抽出と移植は可能だろう。
確かあの村にはこの子とよく似た死体があった筈だ。肉体の形状が類似していれば、移植が成功する可能性が高くなるやもしれない。
失敗する可能性があるにしろ、試す価値はある。
私は再び村へと足を運び、目的としていた死体を持ち帰る。
性別を始め、身長・肉体・魔力の波長が最も近い子だ。この子であれば魂が定着してくれる…と願っておこう。
成功パターンとしては身体が壊れない・魂が消滅しない・感情が宿る。
最悪これらの内どれかが発生すれば成功と判断してもいいだろう。
失敗パターンは身体の崩壊・魂の消滅・本能の暴走となる。
当たり前ではあるが、失敗する可能性の方が圧倒的に高い。人の子から魂が抜けているとは言え、肉体そのものが角付きの魂に耐えられず崩壊してしまう可能性がある。
「どうか、耐えてくれたまえ」
私は魔法を発動し、角付きの魂を人間の少女の身体へと移し替える。小さな針の穴に糸を通すかの如く
その魂は、ゆっくりとだが人間の体へと定着を始める。
暫く経った頃…少女の身体が大きく跳ね上がり、隣に寝かしていた角付きの身体が消滅し始めた。
これは魂が元の身体から完全に
だが成功したのは魂の移行のみであった。
その後一時間程が経過すると、少女の肉体も角付きと同様に魔力へと代わり始め最終的には消滅してしまった。
「矢張り肉体が魂の情報量を受けきれないか…」
角付きは人間と違い、魂に宿る情報量が桁違いに多い。その所為で魂が存在としての枠を埋めてしまい、魔族同様に魔力の粒子となって消滅してしまうようだ。
肉体も出来るだけ酷似したもので無ければ駄目そうだ。でなければ魂に記録された肉体の形との違いによってエラーが生じ、また同じく消滅してしまうだろう。
これは何とも難しい問題だな。
「次はより慎重に選ばなければいけないね」
人類の進歩に最も必要なのは過去と今だ。
過去があるが故に、今進化する事ができる。
進化に感情論は必要ない。
必要なのは、
それが未来に繋がり、私へと収束する。