──???年後──
旅をする三人組の冒険者。
エルフの魔法使い。
人間の魔法使い。
斧を背負った人間の戦士。
彼らは今、目指すべき場所に向け歩みを進めている。
その道中、星の見える夜空に、人間の魔法使いがふと疑問に思ったことを口した。
「そういえばフリーレン様。ハイター様たちと見たという
「え?どうしたのいきなり。そんなこと聞かれても分かんないよ。多分私が生まれる前からなんじゃないかな?少なくとも、私が初めて見たのは小さい時だったよ」
「なるほど。では、この世界ができた時から降っているのですね」
「フェルンは私をなんだと思っているのさ…」
人間の魔法使いは、エルフの魔法使いの言葉に少し驚きながらも、納得した声で話す。
「でも、ほんの少しだけ星から魔力を感じるんだよね。もしかしたら、誰かが降らせてたりして」
「何言ってんだよフリーレン。そんなこと出来たらマジのバケモンじゃん。魔王よりやばいんじゃね?」
「もし居たらね。居るわけないでしょ、そんな化け物。居たら今頃世界なんて滅んでるよ」
星の照らす夜の中、三人の笑い声が森に微かに響いた。
▼
──
「ゼーリエ。私は星を降らせられるようになったぞ」
「…バケモノかお前は」
「突然酷い事を言ってくれる。なに、降らせると言っても地上に降らせることはしないさ」
「私はそう言う事を言いたいわけじゃないんだがな…」
「はっはっはっ」
私はここ最近、魔物や角付きに関しての実験及び研究を一時中断している。理由としては実験の最中にゼーリエにどうしてか気付かれてしまい、こっぴどく叱られてしまったからだ。
矢張り魔物や角付きを使った事では無く、人間の死体を使ったのがいけなかったようだ。こうなると暫くは手が出せないだろう。
そういった訳で、私は実験を中断し元々
元から行っていたというのもあり、さほど時間は掛からずに完成した。この魔法に攻撃性はない。虹を作る魔法と言った危害の及ばない魔法に該当する。
「なんだ。またくだらん魔法か」
「そう言ってくれないで欲しいものだ。中々に良いものだぞ?流れ星というものは」
「流れ星?なんだそれは。興味が無いな」
「一先ず、明日にでも降らせるつもりだ」
「好きにしろ。私は見るつもりは無い」
▼△▼△▼△▼
虫や動物の声が
雲ひとつ無い空には、果てしないまでの星々が海を成し、その星々の下には何処までも暗い大地が広がっている。
「にゃぁ〜」
「…どうにも、星というものは不思議でね。目に映せば何故だが、古い記憶が蘇って来る。君はどうだい?ゼーリエ」
「さぁな。古い記憶と言われても戦った記憶しかない」
そう言うゼーリエは少し離れた木にに背を預け、その場に座りながら博士を
昨日は興味が無いと言っていたが、結局のところ彼女は魔法使いという事か。
私と同じ何処までも魔法を追い求める人間ならば、
「君が友人で何よりだな」
「なんだ突然?!気持ち悪いことを言うな鳥肌が立つ!変な薬でも飲んだのか?!」
「はっはっはっいや済まない…君が何処までも私と同じく魔法が好きで良かったと思っただけだ」
いやはや全く。
彼女がこの世界に於ける最初の友人でなければ、きっとこうも長い時を共にすることは無かったのだろうね。
「ゼーリエ。君には何か願いたい事柄はないのかい?」
「願い?そうだな。それなら強い奴と戦いたい」
「であるなら。今から目にする流星に、その願いを込めると良い」
「何を言っている?」
「星は、神と云う存在に近く在る。それが流れ更にその近くへと行きその耳へと届く。故に、願いを込めるんだ。
《
「ッ!」
視界を包む果てしないその魔力が、青く淡い柱となって
これ程の魔力と輝き、気付かない者の方が少ないだろう。きっとこの光景は誰もが目にしているだろう。
だがこの青い光に恐怖を感じるという事は誰も無い。ただ感じるは尽きぬ幸せと暖かな感情のふたつであった。
「これは…今までの魔法とは比にならない…」
エトワールの魔法は通常のモノに比べその細かさが大きく異なっている。今回彼の作った魔法は、空に降るそれに強く願った者の想いに僅かながらも手を差し伸べる効果が含まれている。
それの副作用として現れるのが、感情への干渉である。
「どうだいゼーリエ。この星降る空は?案外、美しいものだろう?」
「…」
エトワールは空を観ながらそう言葉を呟いた。
それに対してゼーリエは、視線の先を空へと向ける。そしてその瞳に映った光景に、彼女の瞳はより輝きを増した。
その場に留まる星々の中で、一層と輝きを放ちながら流れてゆく星たちに、ゼーリエは自身でも気付かない内に見入っていた。
「はは…!ははははははは!お前は、お前と言う奴は本当に変わっているなっ!アハハハハハ」
「よく言われるよ。それでどうだろうか?君はこの光景を、どう感じた?」
「…あぁそうだな。確かにこれは存外、悪いものじゃ無いな」
「そう思ってくれたならば何よりだ」
この星に願うと言う行為をする者がこの世界に居るのかは解らないが、願う者が居るのならば私は、その者の願いが叶うのを願うとしようか。
だが出来ることならばこの先の未来で、誰もがこの流れ星を美しいと感じられることを願うのも良いか。
「それで?次はいつ降らせるんだ?」
「五十年後だ」
「何故だ?」
「…古い知人が占い師をやっていた。そんな彼がお前に合った数字だと言ってくれたのがこの五十という数字だ。ただそれだけのことさ」
「そうか」
理由を聞いた割には、ゼーリエは大して興味の無いような反応を見せた。
「ついでとするのならば、運のいい人間であれば二度見ることが出来るからだ。私達からしても丁度いい時間では無いかな?」
「それもそうだな」
「にゃぁ〜…」
エトワールとゼーリエが言葉を交わしていると、博士が少し怒ったような顔をして声を上げる。
「あぁそう言えばまだ夜を食べていなかったね。ふむ、今日は外で食べるとしようか。二人はどう思う?」
「にゃぁ〜!」「どちらでもいい」
「では決まりだ。偶にはこう言った事もありだな」
▼
──???年後──
ずっと先の未来。変わる事の無い美しい夜空には、“
その下では、魔王を討伐した事を祝して祭りが開かれていた。
その魔王を倒した勇者、魔法使い、戦士、僧侶の四人が言葉を交わしていた。
「知っているかいフリーレン。この
「何それ?そんなの嘘に決まって──」
「あ、私それ知ってます!」
「俺も知ってるぞ。まぁ実際、叶った事は無いがな」
勇者の言うそれを知らなかったのか、魔法使いは有り得ないとばかりに否定しようとするのに反して、僧侶と戦士はそれを知っているような反応を見せた。
「ほらやっぱり、そんなの
(あれ?でも昔、同じことを聞いたような…?)
「そうなのか?でも叶ったら面白いだろ」
「確かに!私もなにか願うとしましょうかね」
「どうせ死ぬ程酒飲みたいとかでしょ?」
「ちょっとフリーレン酷すぎません?!」
「間違っては無いだろ」
「だな」
「皆さん?!」
四人の会話はまるで魔王や魔族との戦いの苦しさを感じさせないような、とても楽しそうなものであった。
「アイゼンはなにかないのかい?」
「俺か?俺は…そうだな。ゆっくりと余生を過ごすのも良いかもしれないな」
「それは願いでないのでは?」
「そうでも無いだろ。魔王を倒したと言っても、魔族や魔物は居るんだ。ゆっくりとした日々を過ごすのは難しいだろ」
「「確かに」」
そう言う戦士の言葉に、勇者と僧侶は納得した様に反応する。
「フリーレンはどうなんだ?」
「無いよ。願ったところで叶わないんだから、意味なんて無いでしょ?」
「まったくフリーレンは…」
「そう言うヒンメルこそどうなのさ?」
「僕の願いは星に頼ったらダメな気がしてね」
「なにそれ、意味が分からない」
「ハハハ。でも願うことならある。君が悲しむ事の無いようにってね」
「?」
「随分難しそうな顔をするな…」
(だけどフリーレン。例え君に伝わらなくても、僕は心の底から想う。どうか君がこの先、生きる楽しみを、仲間と分かち合う幸せを、僕が教えてあげられなかった事を知っていって欲しいと、強く想っているよ)
嘗て未来の誰もが星に願いを込める事を願った魔法使いのその願いは、長い時を経て叶い。
ひとりの勇者が願った、ひとりのエルフの魔法使いに幸せになって欲しいと言う想いもまた…少し先の未来でゆっくりと芽吹き始める。
又の名を──願いの叶う流れ星。
厳密には流れ星と流星群は違いますがそこはご容赦を。
次話は三本同時投稿となります。