虹ノ魂 〜未来の歌姫たちと伝説の英雄たち〜   作:MLBU

10 / 27
10話 トキメキと侍の学び舎

 

 

 

 

─────お台場の喧騒から遠く離れた、緑深い山あいの村。

 

黒髪のツインテールに緑色のグラデーションをした女子高生・高咲侑(たかさきゆう)は、地図アプリが電波を失ってから三十分以上、同じような畦道を歩き続けていた。

夏休みを利用して、新曲のための《心の音》を探しに一人旅に出たはいいものの、あまりにも長閑すぎる風景に、自分がいま何世紀にいるのかさえ怪しくなってくる。

 

 

侑「・・・流石に迷いすぎちゃったかな。でも、空気がすごく美味しい」

 

 

侑は足を止め、額の汗を拭った。

黒いツインテールが、微風に揺れる。

周囲には古い民家が点在しているが、その中でも一際、清廉な空気を纏った木造の建物が目に留まった。

 

軒先には《松下村塾(しょうかそんじゅく)》と書かれた古びた看板。

門構えは質素だが、手入れの行き届いた庭からは、誰かが大切にこの場所を守り続けていることが伝わってくる。

侑は何かに引き寄せられるように、その門を潜った。

 

 

侑「・・・・・・すみません、何方かいますか?」

 

 

声をかけると─────奥の縁側から一人の男性が姿を現した。

 

腰まで伸ばした長い髪、穏やかな光を湛えた瞳。

そして、女性かのような穏やかな雰囲気で見る者の心を一瞬で解きほぐすような、慈愛に満ちた微笑み。

男性は侑の姿を認めると、驚く風もなく、低くも心地よい声で語りかけた。

 

 

男性「─────これは珍しい客人ですね・・・どうしましたか? このような田舎で、迷子になってしまったのでしょうか」

 

 

男性の名は、吉田松陽(よしだしょうよう)

かつて国を揺るがした動乱の渦中にありながら、教え子である坂田銀時と共に死線を潜り抜け、今はこうして再び静かに私塾を開いている。

 

 

侑「あ・・・はい。ちょっと散歩のつもりが、随分遠くまで来ちゃったみたいで・・・此処は、学校なんですか?」

 

松陽「ええ、小さな塾ですよ。今は皆、外へ遊びに行ってしまっていますがね─────私は吉田松陽。君は?」

 

侑「高咲侑です。東京のお台場、虹ヶ咲学園っていうところから来ました」

 

松陽「侑さん、ですか。良い名前だ。誰かを助け、導くような優しさを感じます」

 

 

松陽は縁側を指し、「良ければ少し休んでいきなさい」と促した。

侑は遠慮なく腰を下ろし、目の前の庭を眺めた。

そこには、かつてこの場所で学び、戦い、そして今もなおどこかで騒がしく生きている『彼ら』の気配が、陽だまりのように残っている。

 

 

侑「松陽先生・・・は、ずっと此処で教えているんですか?」

 

松陽「一度、長くこの場所を離れたことがありました─────ですが、教え子の一人が、また私をここへ連れ戻してくれたのです・・・彼は今頃、江戸(東京)の街で誰かの力になっているはずですよ。少し、騒がしすぎる形ではあるでしょうが」

 

 

松陽が遠い空を見上げる。

その視線の先─────遥か彼方の江戸(東京)やお台場では、彼の教え子たちがそれぞれの『スクールアイドル』と奇妙な邂逅を果たしていた。

 

銀髪の侍が、公園のベンチで少女の不安をジャンプ一冊で吹き飛ばし。

逃げの長髪攘夷浪士が、巨大なペンギンと共に少女のお昼寝を全力で守り。

狂える鬼兵隊の総督が、中二病の言葉遊びで少女の情熱を煽りながら、部下に女子高生を餌付けさせ。

三人はそれぞれ騒がしく─────出会っていた。

 

 

侑「ふふ、なんだか楽しそうですね」

 

 

侑は、松陽の言葉から伝わってくる温かな信頼に、思わず笑みをこぼした。

 

 

松陽「ええ。彼らは皆、自分勝手で、不器用で、けれど誰よりも真っ直ぐな魂を持っています・・・侑さん、君もそうなのではないですか? 君の目には、誰かの夢を応援したいという、強い光が宿っている」

 

侑「・・・・・・分かっちゃいますか? 私自身はスクールアイドルじゃないんですけど、みんなが大好きで・・・みんなが輝く姿を、一番近くで見ていたいんです」

 

松陽「それは素晴らしいことです。誰かのために心を動かせる人は、誰よりも強く、美しい・・・君のような子どもが健やかに笑える世界。それこそが、私や彼らが求めた答えなのかもしれませんね」

 

 

松陽は立ち上がり、台所から持ってきた冷たい麦茶を侑に手渡した。

教科書には載っていない歴史。

語られることのない戦い。

そんな重苦しい過去を感じさせない程、今の松陽はただ一人の『教師』として、『大人』として、目の前の少女の未来を祝福していた。

 

 

松陽「侑さん。もし道に迷ったら、いつでもここに来なさい。この松の木の下で─────君の話を聞きましょう」

 

侑「はい!有難う御座います、松陽先生!」

 

 

逢魔ヶ刻(おうまがどき)

侑は松陽に教えられた道を進み、帰路についた。

心の中には、今までになかった新しい旋律が鳴り響いている。

侍という大人たちが守ろうとした『平和』と、子どもたちがスクールアイドルという夢見る『輝き』。

二つの異なる世界が、今、お台場という舞台の上で静かに、けれど激しく混ざり合い始めていた。

 

─────物語は、まだ始まったばかり。

十三人のスクールアイドルと、一騎当千の侍たち。

彼らが織り成す騒がしくも愛おしい日常は、これから更なる混沌と奇跡を呼び込んでいくことになる。

 

侑は、赤く染まった空を見上げながら、自分たちの街で待っている仲間たちを想った。

 

 

侑「─────よし。帰ったらみんなに、すっごく面白いお土産話ができそう!」

 

 

足取りは軽く、彼女のツインテールが弾む。

それは、誰も知らない『平和』の続きを描き出すための、小さな一歩だった。

 

 

 

 

次回へ続く・・・・・・

 

 

 

 





これにて、銀魂キャラと虹ヶ咲キャラをそれぞれ邂逅することできました!
これはまだまだ序の口の序の口の序です!(何回言うんだ)
此処からが本番になっていきますのでよろしくお願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。