─────お台場の夕焼けは、銀時たちの不毛な怒鳴り合いを冷ややかに見守っていた。
かつて戦場で背中を預け合った《攘夷四天王》の再会という歴史的瞬間は、わずか数分で『誰が一番女子高生にモテるか』という、最低に下品で泥沼な言い争いへと変貌を遂げていた。
銀時「おい、待て待て待て。お前ら、さっきから自分が出会った女子高生が如何に自分に懐いてたか自慢してるけどな、俺が一番に決まってんだろ」
銀時が鼻をほじりながら、マウントを取るように言い放つ。
銀時「いいか?結局のところ、誰が一番女子高生に慕われてるかって言やぁ、この俺なんだよ。なんたって俺ァ、公園で未来に悩む健気な女子高生に人生の指針を与えてやったからな。もう今頃、あの子の胸の中は銀さんへのリスペクトでパンパンよ。ありゃ結婚前提だね。将来あの女子高生、大人になったら俺の嫁になってくれるね」
辰馬「アハハハ!金時、甘いぜよ!砂糖と一緒に脳みそ溶けたか!」
辰馬が豪快に笑いながら、銀時の肩を叩き潰さんばかりの勢いで揺さぶる。
辰馬「わしが出会ったお嬢さんはのう、気高き薔薇のようじゃった!嵐のような激しさでわしを拒絶したが、あれは照れ隠しに決まっておる!陸奥の蹴りを喰らうわしを見て、心の中では涙を流しておったはずじゃ!あの気の強そうな瞳・・・わしの商船に乗せて世界を股にかけたいき!」
小太郎「馬鹿を言え、坂本。真のモテ男とは、言葉を交わさずとも魂が共鳴する者のことだ」
小太郎がどこからともなく取り出した看板を小脇に抱え、キリッとした顔で演説を始める。
小太郎「俺が出会った少女は、真に少女の心を掴んだのはこの俺だ。あの女子高生は俺の戦友であるエリザベスの腹に、全幅の信頼を寄せてダイブしてきたのだぞ。あれはもはや、魂の婚約と言っても過言ではない。若さ、幼さ故の純粋な愛・・・やはり時代はロン毛とペンギンを求めているのだ」
晋助「・・・ククク、笑わせるな・・・」
晋助が煙管を燻らせ、一番低い声で割って入る。
晋助「俺ァただ、あの小娘の『情熱』に触れただけだ。俺の眼帯を・・・闇を恐れず、むしろその深淵を覗き込もうとしたあの純粋な瞳・・・あいつは、俺の奏でる
四人は広場の中心で、各々が遭遇した歩夢、彼方、せつ菜、嵐珠との思い出(※脳内で8割美化されている)を語り合い、互いを《ロリコン》《犯罪者》《ストーカー》と罵り始めた。
その様子を遠巻きに眺めている虹ヶ咲のメンバーたちは、戦慄していた。
かすみ「─────ねぇ、あのお兄さんたち、さっきから歩夢先輩たちのこと話してないですか?」
かすみが、引きつった笑顔で小声で呟く。
愛「─────みたいだね。しかも、なんかすごく・・・中身がアレな感じの会話。歩夢、近寄っちゃダメだよ」
愛が苦笑いしながら、歩夢をガードするように一歩前に出る。
しずく「ミアさん・・・あのお兄さんたち、やっぱり音楽の才能はあるかもしれないけど、人間としては致命的かもしれない」
ミア「Yeah・・・しずく、僕も同感だよ。あの銀髪の人、今『結婚前提』とか言わなかった?」
そんな少女たちの冷ややかな視線など露知らず、銀時たちの論争はさらに加熱していく。
銀時「大体よォ、ヅラ!!!お前のところにいた女子高生、ただ寝てただけだろ!!!しかもエリザベスの胴体に寝込んでるだけじゃねぇか!!!事案だよ!!!職質一発でアウトだよ!!!」
小太郎「ヅラじゃない、桂だ!いいや、やはり女子高生という幼い少女は正義だ。あの無防備な寝顔・・・守ってやりたい、その一心で俺のジャスティスが爆発した。ロリコンではないが、あの子のような可憐な蕾が花開くのを一番近くで見守る権利は俺にある!それより高杉、貴様は何だ?不協和音アンバランスメロディーだと? 中二病も極まれば立派な公害だぞ! どんな少女か知らないが、貴様の電波な言動にただ困惑していただけではないのか?!」
晋助「─────壊すだけだ。俺への不敬な口を叩く奴は、全員、俺のおやつ代にしてくれるわ」
銀時「おやつ代じゃねーよ!!!テメェの眼帯、本当は健康そのものなのバレてんだよ!!!ファッション眼帯の分際でハードボイルド語るんじゃねーよ!!!」
辰馬「アハハハ!まあ待て、みんなまとめてわしの船で吉原にでも─────」
銀時「お前はまず、副艦長の許可取ってから喋れ!!!宇宙を股にかける前に、自分の
銀時のツッコミが絶好調に響き渡る中、彼はふと、自分たちの発言を客観的に振り返ってしまった。
晋助は女子高生に《闇》だの《獣》だの言う。
小太郎は女子高生が《エリザベスの胴体で寝ていた》と事案。
辰馬は女子高生を《商船に拉致》しようと企み。
自分は女子高生に《家賃の肩代わり(家事込み)》を期待している。
銀時は天を仰ぎ、お台場の赤い空に向かって、全細胞の力を込めて吠えた。
銀時「─────っつーか、おい!!!待てよ!!!今の会話全部まとめると、俺たち全員ただのロリ大好き野郎じゃねぇかァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!侍の誇りどこいったァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!十年ぶりに再会して、第一声がそれかよ!!!」
小太郎「─────あ」
小太郎が動きを止める。
晋助「─────確かに」
晋助が煙管を落としかける。
辰馬「アハハ・・・それは言えておるのう・・・」
辰馬が力なく笑う。
銀時「武士道だの維新だの、格好つけて松陽の顔面に泥塗りまくってんじゃねーよ!!!全員
銀時の自虐を極めた絶叫が、広場に虚しく響き渡る。
すぐ傍で、自分たちが話題にされていた本人である歩夢たちが、白い目で見守っているとも知らずに─────
次回へ続く・・・・・・