虹ノ魂 〜未来の歌姫たちと伝説の英雄たち〜   作:MLBU

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14話 夢や希望を未来に齎すのが子どもや若者 金や欲望といった汚い話ばかりするのが大人

 

 

 

 

─────お台場の海沿い、お洒落なテラス席。

そこには、まるでこの世の《光》と《闇》を極端に濃縮して並べたような、異様な光景が広がっていた。

それも─────ギャグ的な意味で。

 

一方に座るのは、未来への希望に瞳を輝かせ、放課後のスイーツを囲んで談笑する虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の面々─────通称、《子ども組》。

もう一方に座るのは、昼間からだらしなく背中を丸め、人生の酸いも甘いも通り越して『渋柿』のようになった攘夷四天王の男たち─────通称、《大人組》。

 

 

歩夢「・・・ねぇ、聞いてよ侑ちゃん! 次のライブ、みんなで新しい衣装のアイディアを出し合ってるんだけど、すごくワクワクしちゃう!」

 

 

歩夢が純粋な笑顔で、ジュースを飲む。

その横で、せつ菜が熱っぽく語る。

 

 

せつ菜「はい! 誰もが主人公になれる、そんな愛と勇気に溢れたステージにしたいんです!」

 

 

彼女たちの会話には《夢》《希望》《努力》《友情》といった、少年漫画のようなキラキラした単語が宝石のように散りばめられていた。

まさに思春期の子どもらしく、純粋さが形作った、華やかな聖域であった。

 

─────だが、その隣のテーブルからは、そんな若者たちの教育にこれっぽっちも良くない、ドロドロとした大人たちの会話が漏れ聞こえてくる。

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

銀時「・・・おいヅラ。俺、昨日パチンコで全財産スった。今、俺の財布の中には一円玉と、昔拾ったゲーセンのメダルしか入ってねぇ」

 

 

銀時が死んだ魚のような目で、空になった苺牛乳のパックを啜る。

 

 

小太郎「・・・銀時、ヅラじゃない、桂だ・・・そして安心しろ。俺も昨日の逃走資金で、家賃の半年分を費やしてエリザベスの特注クリーニング代に充てた。今の俺の全財産は、この道端で拾ったどんぐり三つだ」

 

辰馬「アハハハ!おまんら景気が悪いのう!わしなど、昨日の商談で掴まされた金塊が、全部メッキだったき!今は宇宙船の燃料代もなくて、ヒッチハイクで宇宙へ帰る計算じゃ!」

 

晋助「クククッ・・・俺など、今朝起きたら眼帯の替えがなくて、代わりにトイレットペーパーを巻いてきた・・・少しでも湿気たら、俺の暗黒の左目が露わになるぞ」

 

銀時「お前らが一番終わってるわ!!!」

 

 

大人たちの会話には《金》《借金》《家賃》《ギャンブル》、そして《内臓の不調》といった、不潔で不健康な単語が淀みのように溜まっていた。

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

かすみ「あの・・・おじさんたち?」

 

 

あまりの温度差に耐えかねたかすみが、顔を引きつらせて声をかけた。

 

 

かすみ「さっきから聞いてれば、最低な話ばっかりじゃないですか!かすみんたち、今から世界を幸せ(ハッピー)にする計画を立ててるんですよ!?少しは応援するとか、カッコいいアドバイスとかないんですか!?」

 

 

銀時はゆっくりと顔を上げ、鼻をほじりながらかすみを見た。

 

 

銀時「幸せ(ハッピー)?んなもん、腹が減ってる時には一銭の価値もねーんだよ、お嬢ちゃん・・・いいか、大人ってのはな、子どもや若者と違って、幸せ(ハッピー)を探すことじゃねぇ。いかに『不幸(アンハッピー)』をやり過ごして、ババアの取り立てから逃げるか、その一点に集約されるんだよ」

 

晋助「夢なんてのはな、寝て見るもんだ」

 

 

と晋助がトイレットペーパーの眼帯を指先でいじりながら冷酷に告げる。

 

 

晋助「現実は、起きた瞬間に昨日脱ぎ散らかした靴下の臭いに絶望する・・・そこから始まる戦場だ」

 

エマ「違うよぉ!」

 

 

とエマが悲しそうに声を上げる。

 

 

エマ「もっと、こう・・・スイスの山々のような、澄んだ心はないのかな?!」

 

しずく「エマさん、無駄ですよ」

 

 

としずくが冷静に制する。

果林も同じくして頷いていた。

 

 

果林「あの大人たち、魂の洗濯を一回もしてないんだわ。全部、黄ばんでるのよ」

 

小太郎「黄ばんでると言うな! これはヴィンテージだ!」

 

 

小太郎が堂々と胸を張るが、その胸元にはさっき辰馬に吐きかけられた痰の跡がまだ薄っすら残っていた。

 

 

辰馬「アハハハ! お嬢ちゃんたち、そんなに元気がいいなら、わしが良いことを教えてやろう!」

 

 

辰馬が爽やかな(しかし内容は最低な)笑顔で身を出す。

 

 

辰馬「世の中、金じゃないと言うが、結局は金なんじゃ!金と女こそが全て!笑顔を作るにも、まずは資本が必要じゃき─────どうじゃ?お嬢ちゃんたちのその可愛い写真を、わしが宇宙のオークションに─────」

 

村塾組「このロリコン売人野郎ォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!」

 

 

銀時、小太郎、晋助の三人が、即座に辰馬をテーブルの下へ蹴り落とした。

「あ、ありがとうございます・・・?」と戸惑う歩夢たちに、銀時が真剣な(フリをした)顔で向き直る。

 

 

銀時「いいか、お前ら。辰馬(こいつ)みたいな大人には絶対なるんじゃねーぞ─────あと、道端に落ちてる苺牛乳は飲むな。高確率で中身が入れ替わってるからな」

 

侑「何の教育ですかそれは?!!」

 

 

と侑がツッコむ。

子どもたちの純粋な『アイドル道』に対して、大人たちが提示するのは、あまりにも泥臭く、不潔で、それでいて不思議と『生き抜く力』だけは無駄にある『サバイバル道』だった。

 

結局、その日の交流は、銀時がかすみの持っていたコッペパンを半分強奪し、小太郎が璃奈の『璃奈ちゃんボード』の裏に勝手に『指名手配犯・桂小太郎をよろしく』と落書きし、晋助がせつ菜に「・・・このトイレットペーパー、少し巻いてみてくれ」と頼んで通報されそうになる、という最悪の結末を迎えた。

 

 

かすみ「・・・・・・もう!最悪です!せっかくのミーティングがめちゃくちゃですよ!」

 

 

かすみが怒って席を立つと、虹ヶ咲のメンバーたちもそれに続く。

 

 

「・・・でも」と歩夢がふと振り返った。

 

 

歩夢「あの人たち、あんなに汚いことばっかり言ってるのに・・・何だか、凄く仲が良いよね。喧嘩してるみたいだけど、本当は信頼し合ってるっていうか・・・」

 

侑「・・・類は友を呼ぶ、だね」

 

 

と侑が笑う。

去っていく少女たちの華やかな後ろ姿を見送りながら、銀時は残されたパンの耳を口に放り込み、そんな彼女たちの後ろを小太郎たちと共に歩く。

 

 

銀時「・・・けっ。眩しすぎて、こっちの目が潰れそうだぜ・・・」

 

小太郎「全くだ・・・だが、あの眩しさを守るのが、俺たち汚れた大人の仕事だろう?」

 

 

小太郎が珍しく格好いいことを言ったが、晋助がボソリと付け加えた。

 

 

晋助「─────まずはお前のその、痰まみれの着物を洗濯してから言え」

 

銀時「お前もトイレットペーパー変えろよ!!!」

 

 

再び始まった、汚い罵り合い。

お台場の平和は、今日もこの『純粋な少女たち』と『汚れた大人たち』の奇妙なバランスの上で、騒がしく保たれているのであった。

 

 

 

 

次回へ続く・・・・・・

 

 

 

 





気づいてると思いますが、予約で投稿しています。
ミスをしていないか、ドキドキしますよね・・・笑
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