─────お台場に流れる夕風は、先程の『JKジャー』が残したオレンジ色の煙と、あまりにも不条理な五十億円という数字によって、重苦しく停滞していた。
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の面々は、誰もがスマホを握りしめ、かつて見たこともない桁数の電子マネー残高を凝視していた。
しかし、その瞳に《欲望》の濁りは一切なかった。
歩夢「ねぇ、みんな─────これ、やっぱり私たちが持ってちゃいけないお金だよね」
歩夢が静かに、けれど芯の通った声で切り出した。
その言葉に、せつ菜が力強く頷く。
せつ菜「はい!『大好き』を届けるスクールアイドルが、出所不明のロリコン支援金で贅沢をするなんて、正義に反します!魂が汚れてしまいます!」
ランジュ「ランジュも同意よ。お金は自分の力で稼いでこそ価値があるわ。こんな天からの(文字通りの)棚ぼた、ランジュの美学が許さないわね!」
彼女たちの決断は早かった。
その場で手際よく操作を行い、五十億円という天文学的な数字は、瞬く間に国内外の複数の慈善団体、児童福祉施設、そして『お台場の自然を守る会』などへと、一円の未練もなく全額寄付された。
侑「・・・・・・ふぅ。これでスッキリしたね、みんな!」
侑が晴れやかな笑顔で空を仰ぐ。
そこには、純粋無垢な少女たちの、一点の曇りもない《
─────その直後である。
背後から、地獄の底から這い上がってきたような、ドロドロとした怨嗟の声が響いたのは。
銀時「・・・・・・寄付? 今、なんて言った、お嬢ちゃん? キフって、あの、無償で、他人に、金を、やる、あの、慈善活動のことか・・・?」
銀時が、膝をついたまま、幽霊のような青白い顔で問いかけた。
その目は完全に焦点が合っておらず、口角からは一筋の涎が垂れている。
歩夢「はい!全部寄付しました!困っている人たちのために使ってもらうのが、一番だと思ったので!」
歩夢が満面の笑みで答えた瞬間、銀時は「あ、あ、あ・・・」と意味不明な声を漏らしながら、その場に崩れ落ち、アスファルトを爪が剥がれるほどの勢いで掻きむしった。
銀時「五十億ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!俺の、俺たちの五十億がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!! 寄付?!!寄付だとォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ??!!!! お嬢ちゃん、慈善団体の前に、目の前の『今月の家賃が払えなくて大家に命を狙われてる慈善団体(個人)』に一億くらい寄付してくれてもバチは当たらなかっただろォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!」
小太郎「銀時、落ち着け─────と言いたいところだが、俺も・・・今、俺の心の中の《国家転覆用予算》が音を立てて消え去った絶望で、視界が真っ白だ・・・」
小太郎がエリザベスのプラカード(『桂さんの財布は常に真っ白じゃないですか』)も見えない程に打ちひしがれている。
辰馬「アハハ・・・ハ・・・五十億あれば・・・わしの艦隊、あと三個は買い足せたのに・・・それが、森の植樹・・・?恵まれない子へのランドセル・・・?綺麗すぎて、わしの鼻血が止まらんぜよ・・・」
辰馬は鼻血を流しながら、空を舞う鳥を虚空で見つめている。
晋助「・・・クク・・・笑えねェ・・・俺ァただ、あの金で、世界を壊すための最新型爆弾をポチろうとしていただけだ・・・それが、まさか、パンダの保護活動に使われるとはな・・・俺の復讐心が、愛護精神に浄化されて消えていくぜ・・・」
晋助までもが、その『汚れた野望』を純粋さという名の暴力で粉砕され、絶望の淵に立たされていた。
エマ「銀時さんたち、どうしたの? そんなに悔しがらなくても、お金はまた頑張れば稼げるよ!」
エマが聖母のような微笑みで励ますが、その言葉こそが、借金とギャンブルにまみれた大人たちにとっての最強のトドメとなった。
銀時「稼げねーんだよ!!!頑張っても稼げねーから、俺たちはこうなってるんだよ!!!」
銀時が地べたを転がりながら叫ぶ。
銀時「いいかお嬢ちゃん!!!努力は報われるなんてのはな、お前らみたいな光り輝く才能のある奴らのセリフなんだ!!!俺たちみたいな、ジャンプの発売日を生き甲斐に、マヨネーズと苺牛乳で命を繋いでるゴミクズにとっては、あの五十億は『人生の上がり』だったんだよォォォ!!!」
栞子「・・・汚いです・・・あまりにも大人の欲望が汚すぎます・・・」
栞子が、ゴミを見るような目で一歩下がった。
栞子「・・・ミアさん。これが、私たちが将来対峙しなければならない『社会の闇』なのですね・・・」
ミア「・・・そうだね。僕、一生高校生でいたいよ。あんな風に、金の亡者にはなりたくない・・・」
かすみ「ふん!これだから大人は!私たち
ミアが真顔で頷き、かすみはぷんぷんと目の前にいる汚い大人に怒っていた。
キラキラと輝く夕日に照らされ、友情と情熱を語り合う十三人の少女たち。
対して、影の中で泥水をすすり、消えた五十億への未練で「ぺっ、ぺっ」と八つ当たりの痰を吐き散らす四人の大人たち。
『類は友を呼ぶ』とは言うが、もはや『類』どころか、住んでいる次元が違っていた。
銀時「・・・・・・おい、高杉、ヅラ、辰馬・・・もういい。俺たちは、俺たちの
小太郎「・・・ああ・・・俺たちの夜明けは、まだ遠いようだな・・・」
辰馬「アハハハ・・・わし、とりあえず、落ちてる一円玉探すき・・・」
背中を丸め、トボトボと去っていく《元・英雄》たちの後ろ姿。
歩夢たちはそれを見送りながら、深く、深くため息をついた。
歩夢「ねぇ、侑ちゃん─────あの人たち、本当に『国を救おうとした』んだよね?」
侑「・・・多分、救おうとして、逆に国に愛想を尽かされたんじゃないかな・・・」
侑の言葉が、風に乗って銀時たちの耳に届き、彼らは再びその場に膝をついた。
虹ヶ咲の純粋さは、時として、どんな刀よりも深く大人たちの心を切り裂くのだった。
次回へ続く・・・・・・
ラブライブキャラにはこんな大人になってほしくないものですね・・・笑
まぁ銀魂キャラはそれがあるから良いけど・・・笑